著者
渦岡 良介 仙頭 紀明 森 友宏 風間 基樹
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.5_80-5_93, 2011 (Released:2012-01-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1

2008年岩手・宮城内陸地震では大小合わせて50箇所を越える河道閉塞が発生し、河道閉塞の下流に位置する地域に深刻な影響を与えた。地震時の斜面崩壊によって生成される天然ダムの浸透や越流に対する安定性を検討するためには、天然ダムの土質構成やその力学特性が必要となるが、蓄積されているデータは少ない。そこで、本研究では2008年岩手・宮城内陸地震で発生した湯ノ倉温泉地区の天然ダムを対象とし、その地盤工学的特性を明らかにすることを目的として原位置試験、堤体材料を用いた室内土質試験を実施した。その結果、湯ノ倉温泉地区の天然ダムの天端付近では深度によって岩塊比率が異なること、岩塊以外の堤体のN値は10程度で比較的軟弱であること、高塑性の堤体材料の透水係数は現場透水係数より小さく、その耐侵食性は非塑性の土より大きいことなどがわかった。
著者
若井 明彦 佐藤 真吾 三辻 和弥 森 友宏 風間 基樹 古関 潤一
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.79-90, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
9
被引用文献数
5 7

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震,およびそれに伴う余震によって,東北地方は甚大な被害を受けた。本稿では,宮城県仙台市周辺の丘陵地におけるいくつかの造成宅地の被害状況について,JGS東北支部・関東支部合同第一次調査団が実施した調査結果をまとめる。まず,これまで仙台市内に造成されてきた宅地群の分布や造成年代を俯瞰し,既往の地震での被害有無との相関性や現象把握の留意点を整理する。続いて,今回の地震で深刻な被害を受けた4つの造成宅地の被災事例を順に報告する。一連の事例紹介に先立ち,1978年宮城県沖地震による同様な宅地被害の後に復旧および地すべり対策工のなされた仙台市太白区緑ヶ丘3丁目地区を取り上げ,同対策工特に地すべり抑止杭の存在と今回の被害箇所との関係について検討するとともに,今後の造成宅地の耐震性向上のための技術上の教訓を取りまとめる。
著者
清原 雄康 風間 基樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00303, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
23

火山灰質土であるしらすからなる野外盛土を2004年に作製してから2021年で18年が経過した.この間降雨時における体積含水率やサクションの変化,草木本類の有無が浸透挙動に及ぼす影響,貯留率や水分特性曲線による保水性の経年変化などを定量的に把握した.盛土表層付近では細粒分が顕著に減少,間隙比が増加し,内部でも植物根の侵入が生じていた.木本類が有る時の方が無い時より体積含水率は低めに推移し,降り始めから体積含水率が最大になるまでや表面流下が生じ始めるまでの所要時間,連続雨量は増加傾向で,葉面貯留の影響が生じた.断続的な降雨では表面流下に至るまでに時間を要した.盛土内部の貯留率は2018年以降で最大60%と2004年の最大80%より約20%低下し,水分特性曲線の履歴も保水性が低下する傾向に変化した.
著者
風間 基樹 岡田 直仁 中村 晋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.722, pp.207-217, 2002-12-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
28

強震動を受け強非線形化した地盤の地震時挙動を解析するため, 高速ウェーブレット変換を用いた時間-周波数領域の非定常地震応答解析手法を提案した. 提案手法は地震動が入力されてから非定常に変化する地盤のせん断剛性と減衰定数を, その時点までに地盤が受けた累積損失エネルギーと最大ひずみレベルに基づいて規定する方法を示している. この方法の特長は, 地盤の時々刻々の剛性低下が陽な形で計算結果として出力されることであり, 一種の非線形解析となっている. また, 提案手法を用いて神戸ポートアイランドで観測された強震記録を対象とし, 液状化による剛性低下を伴う地盤の強震時挙動解析に対する適用性を検討した.
著者
長尾 和之 澤野 幸輝 松崎 孝汰 風間 基樹 河井 正 加村 晃良
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.198-215, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年,異常降雨や大規模地震に起因して高速道路の切土および盛土のり面が被災し,物流や日常生活に影響を与える事象が顕在化している.一方,高速道路の延長は約4割が供用30年以上を経過し,経年劣化のリスクの高まりが懸念される.本報告では,NEXCO東日本の最近の降雨等によるのり面の災害事例とその「素因」および「誘因」を紹介するとともに東北地方の高速道路ののり面で発生した213箇所ののり面の災害事例から,東北地方ののり面災害に大きく影響を与える地形,地質および盛土材料などの「素因」を抽出した.さらには,降雨による切土および盛土ののり面災害の規模と「素因」の関係やのり面災害の規模と頻度の関係など,のり面の「予防保全」のシステム作りに資する分析を試みたものである.
著者
東畑 郁生 風間 基樹 柳沢 栄司 杉戸 真太 片田 敏行 岩下 和義 大川 出 石川 裕
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

既住の地盤の地震応答解析法が,軟弱地盤において振動を過小評価することを最大の問題としてきた。前年度までの活動で、軟弱地盤は硬い地盤よりゆれやすいと考えなければ被害の実態、あるいは過去の地震記録にあわないことも判明していた。そこで今年度は2とおりの解析方法を開発、あるいは提案した。第1の方法は、既住の等価線形化手法に周波数依存性の考えを取り込んだ。不規則な地震時加速度には低周波かから高周波まで、多くの成分が含まれている。低周波成分は変位やひずみを大きくし、高周波成分は最大加速度を発生する。また土の剛性や減衰比はひずみ振幅に依存する。大ひずみほど剛性は小さく減衰は激しい。従来の等価線形化解析では、算出された最大ひずみにもとづいて剛性と減衰比を調節してきた。そのためひずみの大きい低周波成分も歪の小さい高周波成分も、一律に同じ剛性と減衰比を与えられていた。最大加速度を与える高周波成分が、歪は小さいにもかかわらず、低周波成分の大きな歪に影響されて過大な減衰を与えられてきた。その結果、最大加速度は過小評価された。新しい手法では、周波数成分ごとに歪を評価し、それに応じて剛性と,減衰比とを独立に決定している。高周波成分の減衰比は小さくなり、最大加速度をより妥当に評価できるようになった。第二の方法では、地層の連続性という概念を導入した。沖積地盤は過去1万年あまりの連続した堆積作用の結果できた。堆積した土質は、一時時な洪水堆積物を除くと、連続である。土の年齢も連続であり、有効応力も深さ方向に連続である。したがって、土の動的性質は深さ方向に変化はしても連続である。この連続性が当てはまらないのは、地質学でいう不整合部分である。既住の解析では地盤を層や要素に分割し、層間では物性が連続していない。そのため余分な波動反射が起こり、振動エネルギーが地表まで到達しにくくなっている。そしてその度合は高周波ほど著しい。新しい解析では剛性が深さ方向に連続するものとしている。剛性を深さのべき関数としてあたえ、地盤振動の微分方程式を解析的に解いた。それによると地表付近に軟弱層が厚く存在しているときほど、連続性を考慮したことによる増幅特性の増加が著しい。現在までに減衰比も考慮した解析理論ができており、今後不規則振動と土の非線形性を考慮に入れていきたい。以上の成果は今後の事例研究を通じ、有効性の確立に努めていく。