著者
飯田 宏樹
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.709-718, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
34

麻酔科医は喫煙患者では周術期管理に苦慮することを経験してきた.喫煙は呼吸・循環機能を含め全身に影響を与えることは広く知られているが,周術期禁煙の意義は十分には理解されていない.周術期においては,喫煙者は非喫煙者に比べ,死亡,肺炎,予期せぬ気管挿管,人工呼吸,心停止,心筋梗塞,脳卒中等の死亡率・術後合併症のリスクが高くなることが示されている.最近では術前の禁煙期間が1週間長くなると,術後合併症が19%減少することが報告されているので,できるだけ早く術前禁煙を達成させることが大切である.ここでは周術期禁煙の意義を示すとともに,手術直前まで喫煙している患者に対する麻酔管理をいかに行うべきかも含めて提示する.
著者
中村 好美 吉村 文貴 田辺 久美子 山口 忍 杉山 陽子 飯田 宏樹
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.107-110, 2019-06-25 (Released:2019-06-28)
参考文献数
6

セロトニン症候群は,中枢および末梢神経シナプス後部のセロトニン過剰刺激によって精神状態の変化,神経・筋症状,自律神経症状を生じ,薬物の過剰摂取だけでなく,薬物の投与または薬物相互作用によって発症する.今回われわれは,慢性疼痛患者に対する少量のデュロキセチンとトラマドールの併用により,セロトニン過剰状態を起こした3症例を経験した.3症例とも併用開始直後に焦燥感があり,発汗過多,動悸,振戦のうちの1つ以上の症状が出現したが,両薬物もしくはデュロキセチンの内服中止直後に症状が改善した.セロトニン症候群の診断基準を満たしていないが,セロトニン過剰状態と考えられ注意が必要であった.デュロキセチンはCYP2D6を阻害するためトラマドールの代謝が抑制され血中濃度が上昇し,セロトニン過剰状態を引き起こしたと考えられた.さらに1症例ではCYP3A4阻害薬であるビカルタミドを内服しており,これもトラマドールの代謝を阻害したと考えられた.慢性痛を有する患者は多剤併用されることが多いが,薬物相互作用をよく理解し副作用の出現に注意が必要である.
著者
飯田 宏樹 松本 茂美
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.033-040, 2013 (Released:2013-03-12)
参考文献数
16

多くの神経障害性疼痛のガイドラインにおいて,デュロキセチン(DLX)は第1あるいは第2選択薬に分類され,重要な位置を占め,本邦でも唯一疼痛疾患に保険適応が認められている抗うつ薬である.米国では,神経障害性疼痛に加えて,慢性腰痛等の運動器疼痛にも適応が認められている.DLXは副作用が少なく,忍容性が高い薬剤である.鎮静作用が強くなく,体重増加作用が明らかでないことから,他の鎮痛薬(プレガバリン,オピオイド等)との併用薬としても使いやすい特徴を有する.鎮痛作用の中心は直接的な鎮痛効果であり,抗うつ作用を介しての間接的な作用は弱い.併せて当科での使用状況を適応疾患・副作用を含めて概説したい.
著者
竹田 智雄 棚橋 徳重 飯田 宏樹 太田 宗一郎 加藤 洋海 山本 道雄
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.441-446, 1989-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
22

三叉神経障害を経過中の早期に合併した混合性結合組織病の一例を経験した. おもな臨床症状は, レイノー現象, 左顔面のしびれ感, 四肢筋肉低下, 多発性関節痛, 嚥下障害, 全身筋肉痛であり, 血清学的には抗核抗体陽性 (speckled patern), 抗RNP抗体陽性, 抗Sm抗体は陰性であった. 三叉神経障害は, 第二枝および第三枝に著明であり, ステロイド療法に抵抗性であった. チクロピジンにより一時的に寛解したものの再び増悪した. SGBにより症状は改善し, さらにSGBとOHPの併用により, 左上歯肉部を除いてほぼ左右差がなくなる程度まで改善した.
著者
杉山 陽子 飯田 宏樹
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.7-13, 2019-02-25 (Released:2019-03-12)
参考文献数
35

喫煙はさまざまながんの発生に関連していることが明らかであるにもかかわらず,がんと診断された後も喫煙を継続する患者がいる.しかし喫煙はがん患者のQOLに最も影響する“痛み”にも悪影響を及ぼす.喫煙者は非喫煙者に比較してがんに関連する痛みの頻度や程度が大きい.ニコチンは急性作用として鎮痛効果を有するが,喫煙者のような慢性的なニコチン摂取は痛みのプロセシングを変化させ,さらにニコチン摂取の中断による離脱症状で痛覚過敏が生じる.喫煙は創傷治癒を遅延させ組織損傷を助長する.また,さまざまな薬物と相互作用があり抗がん薬や鎮痛薬の作用を減じて痛みを増悪させるリスクもある.しかし痛みがあると喫煙欲求が増すため患者は痛みと喫煙の悪循環に陥る.よって,がんと診断された時点から痛み治療に並行して禁煙支援を行うことが,がん患者のQOL維持に重要である.
著者
杉山 陽子 飯田 宏樹 田辺 久美子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヒト培養気道上皮細胞株において、タバコ煙抽出液(CSE)曝露後に気道炎症の初期段階として産生される気道粘液(MUC5AC)を測定した。GABAB受容体刺激薬であるバクロフェンを前処置または後処置したがMUC5ACの産生量に影響はなかった。GABAB受容体拮抗薬を同様に投与したが有意な変化はみられなかった。CSE暴露後の気道上皮細胞株において炎症収束因子(リゾルビン)の発現を経時的に測定したが有意な変化がみられず、測定方法や測定時間の設定に問題があった可能性がある。気道上皮細胞において喫煙で惹起される炎症の発生・収束にGABABの関与を証明することはできなかった。