著者
馬嶋 正隆
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1)ラット尿中キニナーゼは、血中のそれと全く異なり、carboxypeptidase Y-likekininaseとneutral endopeptidaseであることが判明しているが、それぞれのキニン分解酵素のebelactoneBとthiorphanを、ラット高血圧モデルに長期間にわたり投与した。その結果、ebelactone B投与で高血圧の発症が完全に抑制された。その際には、心重量の減少、体内ナトリウムの貯留の解消、髄液・赤血球内ナトリウムレベルの低下が認められた。高血圧予防という新しい概念の抗高血圧薬のシ-ドコンパウンドになる可能性があることが判明した。2)上記のモデルに、リポゾーム化したcarboxypeptidase Y-like kininaseのアンチセンスオリゴヌクレオチドを、腎選択的にターゲッティングし、血圧と腎電解質の排泄を、経時的に測定した。処置後、アンチセンスオリゴを投与した例で、ランダマイズドコントロールオリゴ投与例に比べて血圧の低下が認められた。それに伴って、尿中ナトリウム排泄の増大が確認された。ジーンターゲッティングの高血圧治療への応用が考えられる。3)血中カリウムイオンを極くわずかでも増大させると、尿中カリクレイン分泌が増大することが判明しているので、カリウムイオンレベルをセンスするなんらかの機構が存在することが想定された。その機構の一つとして、ATP-sensitiveカリウムチャンネルが分泌に関与する可能性が判明した。グリベンクラミドのようなATP-sensitiveカリウムチャンネルブロッカーを使うと、カリクレイン分泌が高まる。尿細管細胞がゆっくりとした脱分極を起こして、細胞内カルシウムイオンを増大させ、分泌のためのサイトスケルトンの収縮のもたらすものと推定された。
著者
馬嶋 正隆 藤田 朋恵 林 泉
出版者
北里大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

マウス皮下組織にsarcima-180あるいはNFSA腫瘍細胞株を接種するとゆっくりとした腫留の形成が認められる。これらの動物にACE阻害薬のリジノプリルあるいはAT1受容体格抗薬のTCV-116を投与すると、血管新生および腫瘍増殖は強く抑制された。腫瘍周囲ストローマを含む試料でAT受容体サブタイプの発現解析を行うと、AT2およびAT1bは全く検出されず、AT1aのみ検出された。免疫組織化学でAT1の組織内発現を調べると、AT1を発現しているのは腫瘍細胞ではなくむしろ腫瘍周囲めストローマであった。致死量の放射線をWTのC57BL/6に照射し、WTあるいはATlaノックアウトマウスめ骨髄細胞を尾静脈より移植し、その後LLCを接種すると、AT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、腫瘍増殖および血管新生の著しい抑制がみられた。AT1aノックアウトマウスには、欠損する遺伝子にLacZ遺伝子を導入しているので、β-galの免疫組織化学をおごなうと、確かにAT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、ストローマ部位で陽性像が認められた。さらに同部位でVEGFの発現を調べると、AT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、減少していることが判明した。骨髄より間質に浸潤するストローマ細胞のAT1aを選択的にノックアウトすることで、がん依存性の血管新生、増殖が抑制され、遺伝子を改変した骨髄細胞移植が固形腫瘍の治療になりうることを示すことが出来た。