著者
高村 学人
出版者
中日本入会林野研究会
雑誌
入会林野研究 (ISSN:2186036X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.5-20, 2020 (Released:2020-05-01)

所有者不明土地問題を解決する立法の一つとして表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化法が制定された。本稿では、この法が入会に由来する土地に与える影響を考察し、入会集団の力を活かす法実施のあり方を提唱する。所有者不明土地問題は、入会地の全面積を所有者不明土地にカウントし、入会集団のほとんどが既に消滅したとの事実認識に立っている。この認識は誤っているが、それに起因して入会地に対しても利用の実質を見ず、登記上の名義にのみ注目し、その変則をトップダウン的に解消することを法は目指している。今後、字名義の土地を市町村帰属と見做したり、ポツダム政令の効力を拡張する見解・運用が一般化した場合、入会地の多くが機械処理的に公有化される恐れがある。本稿は、このような法運用ではなく、入会地を利用してきた地縁的結合を法的に組織化し、他の政策も併せて動員することで土地の共同管理の担い手へ再生させる法実施を行うべきことを主張する。最後にそれに向けた既存の法制度の活用法と研究上の課題を提示する。
著者
高村 学人 山下 詠子
出版者
中日本入会林野研究会
雑誌
入会林野研究 (ISSN:2186036X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.2-15, 2021 (Released:2021-04-05)

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化法は、字名義地や所有権登記なき記名共有地等の変則型登記の解消を目指すものであり、入会林野の土地に甚大な影響を与える。本稿前半では、このインパクト推計のため3つの集計を行った。1)昭和49年全国入会慣行調査の集計から2割程度の入会地で所有権登記がないこと、2)2000年の世界農林業センサスの慣行共有事業体調査から字名義地が多く含まれるムラ・旧市区町村名義が入会林野の所有名義として最も割合が高く、全県に存在すること、3)全国の地方法務局で既に探索が開始された表題部所有者不明土地の公示情報から山林・原野等の地目の割合が25.8%を占めることがわかった。1966年に制定された入会林野近代化法は、変則型登記の解消も目的としていたが、期待された効果を発揮できず、その整備実績は低迷が続いているため、今後、表題部所有者不明土地適正化法の実施を通じて入会地の所有名義の変則解消が進む恐れがある。そのため、本稿後半では、地方法務局で表題部所有者不明土地適正化法を実施する主任登記官が入会権に関連しうる土地の探索調査や更正登記をどのような認識のもとで行っているのか、の全国アンケート調査の案を各県庁の入会林野近代化法担当者への調査、各市町村の認可地縁団体担当者への調査の案と併せて提示した。
著者
高村 学人 安枝 英俊 齋藤 広子 秋山 靖浩
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我が国の住宅市場でマンションに関しては、新築購入よりも中古購入が割合として上回るようになったが、マンションの居住環境を大きく左右するのは、マンション全体の管理の質である。しかし、この情報は、情報の非対称性の問題のため購入者に届きにくい。そこで本研究は、管理の質の情報が実際にどのように提供され、それを促進するにはどのような法制度が必要か、国内での購入者アンケート調査、米仏との比較法研究を通じて探求した。結論は、仲介業者の役割強化の立法が有効であるというものであるが、しかしこのような立法を持つ仏米でなお問題が残ることも同時に明らかとなった。
著者
渡辺 公三 高村 学人 真島 一郎 高島 淳 関 一敏 昼間 賢 溝口 大助 佐久間 寛
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フランス人類学の定礎者マルセル・モース(1872-1950)はデュルケームの甥であり、フランス穏健社会主義の指導者ジョレスの盟友であり、ロシア共産主義の厳しい批判者であった。その人類学分野以外での活動もふくめて思考の変遷を、同時代の動向、学問の動向、学派(デュルケム学派社会学)の進展との関係を視野に入れて明らかにし、現代思想としての人類学の可能性を検討する。そのうえでモースの主要業績を明晰判明な日本語に翻訳する。