著者
高橋 明彦
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.25-35, 1991-01-10 (Released:2017-08-01)

作者は、作品の原因であり生成の場でありその所有者である、といった特徴を持つだろう。その特徴は、読解のために要請された機能であるにも拘らず、逆に読解の基盤として実体化される。一般的な作家論は、これを素直に受け入れ、その現実に安住感を持ち、作品理解を作者の名の下に統合する。しかし《多田南嶺の浮世草子》は、「八文字屋浮世草子」と「多田南嶺」との間に微妙な緊張関係を強いる。が、作者を実体として捕捉しえない多田南嶺という存在こそ、その時我々の前に純粋な作家論の対象として幻出する。
著者
高橋 明彦
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.69-80, 2005

楳図かずおが「恐怖」をどのように描いてきたかを検証した。「恐怖マンガ」という言葉を作ったのは楳図であるが(一九六一年)、まず、それ以前の作品の特徴を民俗性、怪奇性、幻想性の三点において検証した。ついで、これらを統合して恐怖マンガという語彙が獲得され、「怪奇」と区別しうる「恐怖」という概念が成立する。ついで、一般に言われる、楳図の描く恐怖モチーフが「怪奇」から「恐怖」へ変遷したとする説を再検討した。「怪奇」と「恐怖」とは変遷可能な同位対立的関係にはなく、「恐怖」とは「怪奇」を包摂する根本概念なのである。また、その包摂関係を成立させているのが、楳図における認識論的な遠近法主義である。加えて、神を描く存在論的な在り方についても論じた。
著者
高橋 明彦
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.69-80, 2005-11-10 (Released:2017-08-01)

楳図かずおが「恐怖」をどのように描いてきたかを検証した。「恐怖マンガ」という言葉を作ったのは楳図であるが(一九六一年)、まず、それ以前の作品の特徴を民俗性、怪奇性、幻想性の三点において検証した。ついで、これらを統合して恐怖マンガという語彙が獲得され、「怪奇」と区別しうる「恐怖」という概念が成立する。ついで、一般に言われる、楳図の描く恐怖モチーフが「怪奇」から「恐怖」へ変遷したとする説を再検討した。「怪奇」と「恐怖」とは変遷可能な同位対立的関係にはなく、「恐怖」とは「怪奇」を包摂する根本概念なのである。また、その包摂関係を成立させているのが、楳図における認識論的な遠近法主義である。加えて、神を描く存在論的な在り方についても論じた。
著者
中野 雅史 佐藤 整尚 高橋 明彦 高橋 聡一郎
出版者
東京大学大学院経済学研究科
雑誌
経済学論集 (ISSN:00229768)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.2-30, 2017-01-01 (Released:2022-01-25)
参考文献数
32

本稿では,粒子フィルタを活用したポートフォリオ構築の新しい手法を提案する.特に,モンテカルロ・フィルタに基づく資産の期待リターンとボラティリティの推定により,平均分散ポートフォリオのパフォーマンスが飛躍的に向上することを示す. 我々は,状態空間モデルの枠組みにおいて,非対称性を持つボラティリティに加え,期待リターンに関する状態変数も確率過程として取り込むことにより,ボラティリティの時間変化と整合的なリターンを予測する.その結果,一般的な移動平均・分散に基づく平均分散ポートフォリオのみならず,等ウェイト(Equal Weight),最小分散,リスクパリティ(Risk Parity)などのリターン予測に依拠しない手法を凌駕する運用成果が実現可能なことを明らかにする. また,投資対象としては,国内外の株式・債券に加えリート(REIT)を組み入れ,空売り禁止条項や取引費用,投資比率制約も考慮することで,より現実的な国際分散投資を考察する.さらに,ポートフォリオのパフォーマンス指標として,複利リターンやシャープ・レシオに加え,実務的には重要な指標であるソルティノ・レシオや最大ドローダウンも採用し,多角的に評価することにより,我々の提案する手法の有効性及び頑健性を確認する.