著者
林田 賢史 村上 玄樹 高橋 裕子 辻 一郎 今中 雄一
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.50-55, 2012 (Released:2012-03-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

Objectives: The aim of this study was to examine which of the two groups have higher lifetime medical expenditures; male smokers or male nonsmokers. We conducted this investigation using a Japanese single cohort database to calculate long-term medical expenditures and 95% confidence intervals. Methods: We first constructed life tables for male smokers and male nonsmokers from the age of 40 years after analyzing their mortality rates. Next, we calculated the average annual medical expenditures of each of the two groups, categorized into survivors and deceased. Finally, we calculated long-term medical expenditures and performed sensitivity analyses. Results: The results showed that although smokers had generally higher annual medical expenditures than nonsmokers, the former’s lifetime medical expenditure was slightly lower than the latter’s because of a shorter life expectancy that resulted from a higher mortality rate. Sensitivity analyses did not reverse the order of the two lifetime medical expenditures. Conclusions: In conclusion, although smoking may not result in an increase in lifetime medical expenditures, it is associated with diseases, decreased life expectancy, lower quality of life (QOL), and generally higher annual medical expenditures. It is crucial to promote further tobacco control strategically by maximizing the use of available data.
著者
池田 敬 児玉 大夢 松浦 友紀子 高橋 裕史 東谷 宗光 丸 智明 吉田 剛司 伊吾田 宏正
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.47-52, 2016 (Released:2016-07-01)
参考文献数
18

ニホンジカ(Cervus nippon)を効率的に捕獲する際に,給餌に醤油を用いた場合の選択効果を実証することを目的として,採食試験を実施した.調査は北海道洞爺湖中島において,4地域9地点の給餌場所で2012年11月7日~17日に行った.醤油区と牧草区,醤油を散布した牧草区(醤油牧草区)の3種類の給餌区を設定し,期間中に3回~5回給餌し,自動撮影カメラを利用して各区に対するシカの選択頻度(1時間当たりの撮影頭数)を算出した.各給餌区の選択頻度は(1)調査期間を通しての各給餌回後および全体についてと,(2)各給餌後24時間以内の時系列データに再配列したデータセットでの2時間毎の頻度の二つの区分で別々に評価した.醤油区の場合,二つの区分の両方で選択頻度が低かった.給餌後の変化を見ると(1)の区分では,牧草区と醤油牧草区の選択頻度は1回目の給餌で少なく,回を重ねるごとに増加した.醤油牧草区の選択頻度は,5回目を除いて他の2区と比べて有意に高かった.一方,(2)の区分では,醤油区の選択頻度は他の2区よりも明らかに低く,醤油牧草区の選択頻度は全体的に牧草区よりも高かった.結果的に,醤油単体を給餌した場合はニホンジカに選択されにくいものの,醤油を散布した誘引餌は通常の餌よりもニホンジカに選択されやすいことが示された.
著者
林田 賢史 村上 玄樹 高橋 裕子 辻 一郎 今中 雄一
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衞生學雜誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.50-55, 2012-01-15
被引用文献数
2

Objectives: The aim of this study was to examine which of the two groups have higher lifetime medical expenditures; male smokers or male nonsmokers. We conducted this investigation using a Japanese single cohort database to calculate long-term medical expenditures and 95% confidence intervals.<br> Methods: We first constructed life tables for male smokers and male nonsmokers from the age of 40 years after analyzing their mortality rates. Next, we calculated the average annual medical expenditures of each of the two groups, categorized into survivors and deceased. Finally, we calculated long-term medical expenditures and performed sensitivity analyses.<br> Results: The results showed that although smokers had generally higher annual medical expenditures than nonsmokers, the former's lifetime medical expenditure was slightly lower than the latter's because of a shorter life expectancy that resulted from a higher mortality rate. Sensitivity analyses did not reverse the order of the two lifetime medical expenditures.<br> Conclusions: In conclusion, although smoking may not result in an increase in lifetime medical expenditures, it is associated with diseases, decreased life expectancy, lower quality of life (QOL), and generally higher annual medical expenditures. It is crucial to promote further tobacco control strategically by maximizing the use of available data.<br>
著者
高橋 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.10, pp.2254-2258, 2017-10-10 (Released:2018-10-10)
参考文献数
26

非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)は単純性脂肪肝に,炎症,細胞障害,線維化が加わり,予後不良の進行性疾患である.その成因として,内臓肥満に伴うインスリン抵抗性,脂質異常症,アディポカイン異常,酸化ストレス亢進,ミトコンドリア機能低下,小腸からのエンドトキシン等の複数の要因の集積によって進行するmultiple hit theoryが提唱されている.最近,NASHの成因の一部として内分泌異常が注目されている.中でも成長ホルモン(growth hormone:GH)-IGF(insulin-like growth factor)-1系が重要な役割を果たすことが明らかになった.成人GH分泌不全症においては脂肪肝/NASHの合併頻度が増加し,GH補充療法によって改善する.GHは肝細胞における脂肪合成を抑制するが,IGF-1の新たな作用として,IGF-1が線維化促進の鍵となる肝星細胞の細胞老化を誘導することによって線維化を改善することが明らかになった.IGF-1は動物モデルにおける一般のNASH,肝硬変を改善することから,臨床応用が期待されている.
著者
今井 浩三 山下 健太郎 林 敏昭 村上 理絵子 高橋 裕樹 杉山 敏郎 千葉 進 谷内 昭
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.324-328, 1993-08-31 (Released:2009-01-22)
参考文献数
10

31歳女性.数年の経過で全身倦怠感があり,自宅で臥床していたが,全身倦怠感,関節痛,頭痛および眼瞼下垂を主訴として,精査を求めて平成4年4月当科入院.諸検査より慢性疲労症候群(CFS),シェーグレン症候群ならびに重症筋無力症を疑われたが,アメリカCDCの診断基準に基づいてCFSと診断した.一方, CFSは他の慢性疾患が除外されなければ診断できないため,鑑別診断を試みた.シェーグレン症候群に関しては唾液分泌能試験およびSchirmer試験陽性であり,疑い例とされたが,自己抗体を含めて他の検査は陰性であった.重症筋無力症については眼瞼下垂,外眼筋麻痺が認められ,またテンシロンテスト陽性と判断されたが,誘発筋電図,抗AChR抗体は陰性で確定診断に至らなかった. CFSは注目すべき疾患と思われるが,本症例のようにいくつかの自己免疫疾患と鑑別が困難な場合もあると思われ,その点で興味がもたれたので報告した.

8 0 0 0 OA 魚の性

著者
高橋 裕哉
巻号頁・発行日
1995

性 sex が科学の分野で取り上げられたのは20世紀に入ってからで、形態学的な研究に始まった。性という用語は学問上は "雌雄性sexuality" という意味で用いられる。性の科学が具現化されたのは主に遺伝学によってであるが、後に実験形態学、生理学、生化学がこれに加わって総合科学としての "性の生物学 biology of sex" を成立させ、一般に性とよばれるものが如何なるものか、という問題を追求し続けて今日に至っている。性には雄と雌の二種類があり、それぞれ♂と♀に記号化される。この両者は峻別され得るものだろうか? 1929年、この分野の先駆者の Max Hartmann は "性の相対性 relative sexuality" の理論を提唱した(Hartmann, 1956, 参照)。これは Ectocarpus siliculosus という藻類での研究に基づいたもので、この藻の遊走子では雄と雌が大体定まっているが、雄とみられる遊走子間、または雌とみられる遊走子間で受精が行われる、すなわち或る雄が雌的に、または或る雌が雄的に働く場合がある。生殖細胞にはこのような "両性的 bisexual" な性質があり、仮にその雌的な性質をF、雄的な性質をMで表すとすれば、FとMの大きさの差が外的な性質として現れてくることがあるのである。 この考え方によれば、全ての動物の雄、雌というのは厳然と区別されるべきものではなく、個体は本質的に両性的であり、また雌雄のいずれにもなり得る両能性 bipotentiality を具有している。すなわち、雌雄というのはあくまでも現象的なもので、FとMの拮抗作用の表れにすぎない。通常は遺伝的な性組成を基盤としてFとMの差が大きく保たれ、特にいわゆる高等動物では、それらの現象的な雌雄が明瞭に分離されている。しかし性決定遺伝子やその修飾に関連する遺伝子(F-遺伝子とM-遺伝子)の作用が明確な脊椎動物においてすら、生殖細胞の両性的かつ両能的な性質は保守されており、それに基づいた様々な雌雄性の表れ、たとえば雌雄同体現象や性転換現象が認められるのであり、それらが硬骨魚類では最も顕著に表現されているのである。 生殖細胞の性的両能性は、それが個体発生の、または生殖腺の形態形成のどの時点まで保持されているか、すなわち生殖細胞の精子形成と卵形成への方向付けがどの段階で確定されるかという問題と、そのような性的両能性の不可逆的な喪失を導く因子は何かという問題を生ずる(Reinboth, 1982)。特に後者の問題は性の生物学における究極の問題といえよう。性の表現様式が脊椎動物では他に類をみないほど多様であり、性的に不安定な状態にあるとされる硬骨魚類は、これらの問題の追究にとってまたとない好対象なのである。
著者
内田 恒之 関根 隆一 松尾 憲一 木川 岳 梅本 岳宏 喜島 一博 原田 芳邦 若林 哲司 高橋 裕季 塩澤 敏光 小山 英之 柴田 栞里 田中 邦哉
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.42-47, 2020 (Released:2020-03-15)
参考文献数
31

背景: サルコペニアは胃癌をはじめ各種悪性腫瘍の短期・長期成績に関与するが, 骨格筋の質を表す脂肪化と術後感染性合併症 (IC) の関連性は明らかでない. 目的: 腹腔鏡下胃切除 (LG) を施行した胃癌症例における骨格筋脂肪化と術後ICとの関連を明らかにする. 方法: 2009年から2018年までのLG施行早期胃癌173例を対象とした. 周術期諸因子と術後ICの関連を後方視的に検討した. 骨格筋脂肪化は術前CT画像によるIntramuscular adipose tissue content (IMAC) で評価した. 結果: 術後ICは20例 (11.6%) に認めた. 多変量解析による術後ICの独立危険因子は男性 (P=0.003) , Prognostic nutritional index低値 (P=0.008) , IMAC高値 (P=0.020) であった. IMAC高値群は低値群に比較し高齢 (P=0.001) で高Body mass inedx (P=0.027) であり糖尿病並存例 (P=0.021) が多かった. 結語: 骨格筋脂肪化はLG後の術後IC発生の危険因子であった. 適切な術前栄養・運動療法の介入が術後IC制御に寄与する可能性がある.
著者
鈴木 祐輔 太田 伸男 倉上 和也 古川 孝俊 千田 邦明 八鍬 修一 新川 智佳子 高橋 裕一 岡本 美孝 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.193-200, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
21

鼻噴霧用ステロイド薬は,鼻アレルギー診療ガイドラインにおいて花粉症治療の中心的な薬剤として推奨されている。しかし初期療法としての鼻噴霧用ステロイド薬と,抗ヒスタミン薬を中心とした併用療法の効果について比較した報告は少ない。今回我々は,スギ花粉症患者20 例を鼻噴霧用ステロイド薬(デキサメタゾンシペシル酸エステル)群(DX-CP 群)6 例と,第二世代抗ヒスタミン薬(オロパタジン塩酸塩)にモンテルカストを追加併用した抗ヒ+抗LT 薬群14 例に分け,治療効果につき検討を行った。検討項目は鼻症状,JRQLQ No.1 によるアンケートおよび鼻腔洗浄液のeosinophil cationic protein (ECP) と血管内皮細胞増殖因子(VEGF) の濃度とした。DX-CP 群では飛散ピーク期と飛散終期の鼻症状スコアの上昇を抑え,鼻閉症状では有意にスコアを減少させた。抗ヒ+抗LT 薬群では飛散ピーク期に症状スコアが上昇したが抗LT 薬を併用した飛散終期にはスコアが低下した。QOL スコアではDX-CP 群の飛散ピーク期において抗ヒ+抗LT 薬群に比べ有意にスコアを抑えた。鼻腔洗浄液中のECP 値, VEGF 値はDX-CP 群ではシーズンを通じて値の上昇を抑えた。よってDX-CP は抗ヒスタミン薬や抗LT 薬と同様に季節性アレルギー性鼻炎に対する初期療法薬として非常に有用であると考えられた。
著者
山田 和彦 永田 靖典 高橋 裕介 莊司 泰弘 鈴木 宏二郎 今村 宰 秋田 大輔 石村 康生 中篠 恭一
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、超小型衛星に搭載可能な姿勢センサ群を開発し、ISSから放出される超小型衛星EGGを利用し、大気の影響を無視できない超低高度軌道での軽量膜面を有する宇宙機の挙動の実測を行った。超小型衛星EGGの運用において、希薄気体中における軽量な膜面に働く大気抵抗の影響により軌道が変更することを確認するなど、そのダイナミクスを理解するためや解析ツール開発の参照となる貴重な実測データを得ることができた。これらのデータは、運用終了時の衛星を非デブリ化する技術等、将来、超小型衛星にとって重要な技術開発のために役立つと期待される。
著者
山下 裕之 上田 洋 高橋 裕子 三森 明夫
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.306-309, 2012-05-20 (Released:2013-04-12)
参考文献数
17
被引用文献数
2 5 1

The patient was a 74-year old male who presented with a skin rash, cough, and impaired consciousness. Adiffuse, systemic, dark red rash was observed and he was admitted. Varicella infection was diagnosed based on the varicella-zoster virus (VZV)-IgM levels. The extremely high VZV- IgG levels observed were unlikely to be present inaninitial infection and the infection was thought to be a reoccurrence. Diffuse nodular shadows measuring ≤5mm indiameter were observed on chest computed tomography (CT) ; this was consistent with the typical imaging findings of varicella pneumonia. The cerebrospinal fluid (CSF) was positive for CSF VZV-IgM antibody, CSF VZV-PCR, and CSF antibody titer index. A diagnosisofvaricella meningitis was made. When both respiratory and neurological symptoms are observed inpatients with varicella infection, it is necessary to consider a combined diagnosis of varicella pneumonia and varicella meningitis/encephalitis and perform chest imaging and a CSF examination. Repeated asymptomaticre-infection isconsidered necessary in order to maintaina life long immunity to varicella ; however, the opportunities for asymptomaticre-infection are decreasing with the declining birth rate and trend toward small families. As a result, reoccurrences of varicella infection in the elderly are expected to increase with rapidlyincreasing longevity.
著者
松村 秋芳 高山 博 高橋 裕
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.202-206, 2008 (Released:2008-12-27)
参考文献数
29
被引用文献数
3

高等学校理科の検定済教科書における自然人類学に関連した記述(1952年以降)について調査した。これまでの学習指導要領の改訂の機会に学会の新しい情報がどの程度改訂版の教科書に盛り込まれてきたかについてしらべたところ,更新された記述内容は必ずしもその時代の新しい知見を反映していなかった。最近2回の学習指導要領の改訂では,霊長類としてのヒトという視点から基礎事項の記述が充実してきていることが見出された。人類の起源と進化について理解し,生物としてのヒトの本質を知るために,どのような教材が適切か,どの程度最新の知見を考慮すべきかは難しい問題だが,複合領域としての特性を生かした記載がなされるよう,配慮がなされる必要があると思われる。