著者
垂石 智重子 上松 友希 酢谷 朋子 高田 基志 鈴木 照
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.39-42, 2014-01-01 (Released:2014-01-22)
参考文献数
13

若年2型糖尿病に合併した糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoasidosis, DKA)により心停止を来した症例を経験した。症例は35歳,男性。2型糖尿病に対し内服治療を受けていた。全身倦怠感を訴え近医に往診を依頼した。診察中に意識消失したため当院救急外来に搬送された。到着後心停止となったが,31分間の心肺蘇生にて自己心拍が再開しICU入室となった。ICU入室時,著明な高カリウム血症と低ナトリウム血症,高血糖を認め,さらに浸透圧利尿による血液濃縮を認めた。軽度低体温療法を施行しつつ,血糖,電解質補正および循環管理を行った結果,第13病日に症状改善し,ICUを退室した。2型糖尿病は本来ケトーシス抵抗性であるが,本症例では清涼飲料水の多飲により,いわゆるソフトドリンクケトーシスを引き起こし,それに伴うアシドーシスなどが誘引となり高カリウム血症を来し心停止に至ったと考えられた。
著者
高田 基志 山本 拓巳 井上 智重子 酢谷 朋子 新家 一美 鈴木 照 土肥 修司
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.289-293, 2009-07-01 (Released:2010-01-20)
参考文献数
12

患者は67歳,女性。めまいと嘔吐を主訴に経過観察入院となったが,入院3日目に胸部不快感とSTの上昇を認め,緊急心臓カテーテル検査が実施された。冠動脈に有意狭窄はなかったが,心尖部の収縮低下を認め,たこつぼ心筋症と診断された。ICU入室時,頻脈を認めたため,ランジオロールにて心拍数のコントロールを試みた。また悪心・嘔吐に対してドロペリドールを投与したところ,急激な血圧低下と頻脈を来たした。急速輸液とフェニレフリン投与は無効であった。ランジオロールを増量したところ,血圧の上昇を認めた。プロプラノロール内服によりランジオロールを漸減でき,入室3日目に一般病棟に転床した。しかし後日イレウスを来たし,不幸な転帰をとった。病理解剖の結果,褐色細胞腫が判明した。本症例の左室壁運動異常の原因は過剰カテコラミンによる微小循環障害と推察された。またランジオロール投与は左室壁運動を正常化し,循環動態を改善したと考えられた。