著者
榛沢 理 藤江 俊秀 高野 聡子 稲瀬 直彦
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.405-409, 2016-09-25 (Released:2016-10-08)
参考文献数
7

背景.慢性活動性EBウイルス感染症(chronic active Epstein-Barr virus infection;CAEBV)と,それに伴うEBウイルス関連NK/T細胞リンパ増殖症は稀な疾患であり,肺病変に関する報告は少数のみである.症例.37歳女性.発熱,頸部リンパ節腫大および肝逸脱酵素上昇に対して精査され,末梢血中のEBウイルスDNAの増加からCAEBVと診断された.約1か月後,咳嗽と呼吸困難を自覚し,急性呼吸不全を認め入院した.胸部CTでびまん性すりガラス影があり,BAL液のCD4陽性細胞の増多とEBウイルスDNA増加を認めた.末梢血中にEBウイルス感染T細胞の腫瘍性増殖があり,EBウイルス関連T細胞リンパ増殖症(EBV+T LPD)およびその肺病変と診断した.結論.気管支鏡検査がEBV+T LPDの肺病変の診断に有用であった症例を経験した.
著者
高野 聡子
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.223-231, 2017

「精神薄弱児施設」とは、精神薄弱児を収容し教育と24時間の処遇を提供した入所型の施設である。国内では第二次世界大戦までに約10か所の精神薄弱児施設が創設され、精神薄弱児を保護するとともに、精神薄弱児のための教育を施設内で提供した。本稿では、戦前期に創設された精神薄弱児施設に関するこれまでの研究を、2000年代とそれ以前とに分けて整理し、(1)発掘された資料の保存を進め、史資料に基づいた研究がなされること、(2)施設ごとに異なる精神薄弱やその程度に関する用語を再検討すること、(3)精神薄弱児施設で行われた教育内容・方法を障害児教育史に位置づけること、(4)精神薄弱児施設が受けた欧米諸国の教育や処遇方法の影響を検討すること、を精神薄弱児施設史研究の今日的意義と課題であるとした。
著者
高野 聡子
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.15-29, 2021

<p>1953 (昭和28) 年に「教育上特別な取扱を要する児童・生徒の判別基準」が作成され、特殊学級および養護学校の対象になる者と、精神薄弱児施設の対象になる者とに分けられた。本論文では精神薄弱児施設の視点から1953年から380号が通達される年の1962年までを対象に精神薄弱教育との関係について検討した。検討の結果、精神薄弱教育は精神薄弱の程度によって、精神薄弱児施設は児童福祉法の規定によって、それぞれの対象となる精神薄弱児を設定していたことが明らかになった。だが、精神薄弱児施設のみならず特殊学級および養護学校の設置数も十分ではなく、在宅指導の精神薄弱児数が一定数おり、精神薄弱児施設は年齢超過者の問題、施設内学校および学級の設置問題など多様な問題を抱えていた。そのため精神薄弱児施設は特殊教育が精神薄弱児施設に想定した代替的機能を担ってはいたが、精神薄弱児施設にとってそれは施設機能の一部であった。</p>
著者
高野 聡子
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.99-108, 2005-03

1919(大正8)年に藤倉学園を創設した川田貞治郎は、藤倉学園創設以前の1916(大正5)~1918(大正7)年の約2年半、アメリカ合衆国でアメリカ精神薄弱施設における教育と保護の方法を習得した。彼は、H.H.ゴダードが研究部門長を務めるヴァインランド精神薄弱者施設において、ビネ知能検査の精神年齢とIQを用いた精神薄弱分類基準を習得し、それを「児童研究」に発表した。藤倉学園創設後、彼は、ビネ知能検査を実施し、精神年齢とIQを用いた精神薄弱分類基準を「教育的治療学」の体系に盛り込むこととなる。「教育的治療学」でのビネ知能検査の使用目的は、対象児の選定と精神薄弱の程度と分類であり、検査結果は、精神薄弱の知能の程度を把握する基準として用いられた。また、ビネ知能検査では把握できない知能、たとえば注意力と反応力などについては、教育的治療学の「心練」が使用された。