著者
ゼラート ウルテ 黒田 忠史
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.335-366, 2006-05

ドイツの連邦憲法裁判所は、1987年7月14日の決定でもって従来の判決を完全にくつがえし、弁護士の職業上の自由への介入は、弁護士会が定めた「身分倫理指針」のようなものではなく、憲法に従った民主的な決定手続をへて制定された法的規定(法律または規則)に基づいて行われるべきであるとの判断を示した。その後、1994年9月20日に連邦弁護士法の改正法、すなわち「職業法(BRAO)の新規定に関する法律」が、そして1996年12月に「弁護士職務法」(BORA)と「専門弁護士法」(1997年3月発効)が制定された。従って今日では、弁護士の職業上の義務と身分[倫理]上の義務との間には区別がなく、弁護士の職業上の義務の多くは後者BORAの中に含まれている。ドイツの弁護士が遵守すべき職業上の義務としては、職業上の独立性、守秘義務、ザッハリヒカイト、双方代理の禁止、預った財産の注意深い管理、継続研修義務、広告制限、相手方弁護士迂回の禁止、民事事件の訴訟代理受任義務、相談支援・刑事弁護受任義務、欠席判決請求の事前通知義務、代理人変更の迅速通知義務、成功報酬および紹介料の受領禁止、弁護士活動記録書類の引渡し義務、職業賠償保険加入義務、法服着用義務、他の法律職従事者として同一事件の扱うことの禁止などが重要である。近年ドイツの弁護士のこのような職務上の義務は、欧州統合やグローバル化の進展、弁護数の急増と競争激化のなかで、絶えず見直されなければならなかったのである。In völliger Abkehr seiner bisherigen Rechtsprechung entschied das Bundesverfassungsgericht mit den Beschlüssen vom 14.7.1987, dass Eingriffe in die Berufsfreiheit eines Rechtsanwalts Regelungen voraussetze, die durch demokratische Entscheidungen entsprechend der Verfassung zustande gekommen sind, nicht aber durch Standesrichtlinien. In der Folgezeit kam es zur Novellierung der Bundesrechtsanwaltsordnung, nähmlich zum Gesetz über die Neuordnung des Berufsrechts(BRAO) vom 2.9.1994 und auch zur Berufsordnung für Rechtsanwälte(BORA). Daher wird heute nicht mehr zwischen den Berufs- und den Standespflichten eines Rechtsanwalts unterschieden und die Mehrzahl anwaltlicher Berufspflichten ist in BORA enthalten. Unter den Berufspflichten der deutschen Rechtanwälten sind berufliche Unabhängigkeit, Verschwiegenheitspflicht, Sachlichkeit, Verbot der Vertretung der widerstreitenden Interessen, sorgfältige Behandlung der ihm anvertrauten Vermögenswerte, Fortbildungspflicht, begrenzte Werbung, Pflicht zur Übernahme der Prozessvertretung in Zivilsachen, Pflicht zur Beratungshilfe und zur Strafverteidigung, begrenzte Werbung, Verbot der Umgehung des Gegenanwalts, zuvor angekündigter Versäumnisurteil, unverzügliche Mitteilung des Mandatswechsel, Verbot des Erfolgshonorars wie der Provision, Herausgabe der Handakten, Berufshaftpflichtversicherung, Berufstracht, Versagen jeglicher Berufstätigkeit u.s.w. vor allem wichtig. Diese Berufspflicten der deutschen Rechtsanwälten sollten in den letzten Jahren sowohl durch EG-Integration und Globalisierun wie auch durch Steigerung der Anzahl der Rechtsanwälte und die größere Konkurrenz immer wieder geprüft werden.訳:黒田忠史
著者
黒田 忠史 三阪 佳弘 野上 博義 深尾 裕造
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、主要五カ国(独・英・日・仏・米)における法曹養成制度と法学教育制度の「歴史的類型」を理念型として析出し(黒田論文「法曹養成の歴史的諸類型」)、それらが近・現代200年にわたる各国特有の国家と法のあり方、および社会構造史的な基礎、とりわけ法律家集団と官僚制の各国あり方によってどのように規定されて成立したのかを明らかにしようと試みた。そのために、各国の歴史的諸制度とその改革の経緯に着目し、そのための史料や文献を収集し分析する作業に取り組んできた。これによって、各国における法曹養成と法学教育の実情が、史料に即してかなり明らかになった。歴史的に概観する研究報告論文の他に、共同研究者による個別的歴史研究としては、まず黒田(研究代表)がアメリカにおいて弁護士事務所での見習教育からロースクールでの法曹養成に転換していった原因とプロセス、法曹団体の役割と性格、およびProfession「理念」について、そしてドイツについてはグナイストの「自由弁護士」論とベルリン法学協会の果たした歴史的役割について研究した。イングランドについては深尾がLaw Society関係史料にもとづき19世紀後半のイギリスでの法科大学院設立運動の隆盛と挫折の過程を分析、フランスについては野上が革命後の弁護士職の歴史と特殊フランス的法律家秩序の変容のプロセスを、三阪が第三共和政初頭における司法官試験導入過程を研究した。三阪と黒田は、日本の司法官試験・弁護士試験と弁護士団体について比較法史的観点から研究をおこなった。本研究の成果の全体については、平成14年10月5/6日に開催される第50回法制史学会研究大会シンポジウム「歴史の中の法曹養成」において報告し、そこでの討論とあわせて公刊することになっている。