著者
周 菲菲
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.111-135, 2013-12-20

この論文は,観光研究におけるアクター・ネットワーク論的なアプローチ の必然性と可能性を探求する。まず,従来の観光研究における全体論的な視 点の欠如とモノについての考察の不足といった問題点を指摘する。観光地対 観光者という二分法や,イメージ論のような表象分析の枠では,観光実践の 複雑性を十分に研究することができない。ここで,関係の生成変化に注目し, 人やモノ等の断片的な諸要素を,諸関係を構成する対称的なアクターと見て, それらのアクターが織り成すネットワークの動態の過程を把握するアク ター・ネットワーク論に注目する。そして,観光におけるモノの物質性と場 所の多元性の存在を論証し,観光者のような特定のアクターが観光ネット ワークの中で他のアクター(地域イメージ,モノ等)を翻訳し,自らの実践 に導く様相を,先行研究に基づいてまとめる。さらに,中国人の北海道観光 を例として,アクター・ネットワーク論に基づき,個的実践の共有化の過程 と,地域イメージのブラックボックス化の過程をまとめた。最後に,観光研 究へのアクター・ネットワーク論的アプローチを,地域の複数性を提示する 研究として提示してみた。
著者
周 菲菲
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.85-102, 2012-12-26

グローバリゼーションが進む中,人,モノや情報がいわゆる「時間と空間の圧縮」(Harvey,1989)を経験している。そこで,グローバルで脱領土的な社会生活が生まれるとされるが,その最も顕著な例は観光である。現在,インターネットのグローバルな普及によって,双方向性の情報コミュニケーション革命が発生し,観光者は受動的な客体ではなく,観光を「制作」する主体ともなっている。観光イメージやヒト,モノがグローバルな科学技術と連動して越境する,こういう観光の複雑なメカニズムや出来事を解き明かす為には,インターネットについての質的なアプローチが要請されている。そ こで,筆者は本稿でまず中国人観光についての研究におけるインターネットの重要性を論じ,従来の観光研究におけるインターネット研究をレビューし,更にオンライン・インタビュー,バーチャル・エスノグラフィー,焦点インタビューといった質的オンライン研究のいくつかの手法を取り入れ,北海道への中国人観光者を考察した。本研究により,インターネット時代の観光研究に新たな方向性を示したい。
著者
周 菲菲
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
北海道大学大学院文学研究科研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
no.13, pp.111-135, 2013

この論文は,観光研究におけるアクター・ネットワーク論的なアプローチ の必然性と可能性を探求する。まず,従来の観光研究における全体論的な視 点の欠如とモノについての考察の不足といった問題点を指摘する。観光地対 観光者という二分法や,イメージ論のような表象分析の枠では,観光実践の 複雑性を十分に研究することができない。ここで,関係の生成変化に注目し, 人やモノ等の断片的な諸要素を,諸関係を構成する対称的なアクターと見て, それらのアクターが織り成すネットワークの動態の過程を把握するアク ター・ネットワーク論に注目する。そして,観光におけるモノの物質性と場 所の多元性の存在を論証し,観光者のような特定のアクターが観光ネット ワークの中で他のアクター(地域イメージ,モノ等)を翻訳し,自らの実践 に導く様相を,先行研究に基づいてまとめる。さらに,中国人の北海道観光 を例として,アクター・ネットワーク論に基づき,個的実践の共有化の過程 と,地域イメージのブラックボックス化の過程をまとめた。最後に,観光研 究へのアクター・ネットワーク論的アプローチを,地域の複数性を提示する 研究として提示してみた。
著者
周 菲菲
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.25-43, 2021

<p>インターネットの普及によって大きく変容する中国人観光者によるオンライン・オフラインの多様な消費実践において、日本は「工匠精神」すなわち「匠の精神」(「職人気質」)の国として新たに形成されている。その実態を理解するために、本稿はアクターネットワーク論を参照しつつ、trip shoot(旅の写真やビデオの作成を中心とするスタイル)をはじめとする多様な個人旅行や、「遊学」や「研学」ツアーに関して参与観察や聞き取り調査を行うことによって、「ブラックボックス」として閉じられた「匠の精神」の内容とその形成のメカニズムを詳細に検討する。それに加え、研究参加者によるSNS投稿の分析と、インターネットにおける半構造化インタビューや動画サイトの視聴コメント分析といった、量的調査を含むオンライン調査による非干渉型の検証を結合した、観光をめぐるハイブリッド・エスノグラフィーの方法論的達成を目的とする。さらに、中国人観光者の「遊学」における「匠の精神」が、中国における伝統の再創造に再帰的につながっていることを明らかにする。</p>
著者
周 菲菲
出版者
北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター = Center for Northern Humanities, Graduate School of Letters, Hokkaido University
雑誌
北方人文研究 = Journal of the Center for Northern Humanities (ISSN:1882773X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.29-46, 2013-03-31

This article deals with the destination image of Otaru, which has several sides and is changing because of the visiting of Chinese tourists. Tourism is planned on the destination image, and is centered on the consumption of the image. Tourists confirm and renew the image on the trip, and finally, will create new image which would affect the tourists’ image reflectively. Internet has especially great influence to the destination image during the process nowadays. Aiming to clarify the destination image of Otaru, the writer uses the actor-network theory and finds Chinese tourists consuming different images from China. The writer will show how the images are consumed and re-produced in tourism examining three cases. Moreover, as seeing new sides of the images, we will figure out the consumption of the destination image works as a network which links the people, things and informations around.