著者
貞包 英之
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 社会科学 = Bulletin of Yamagata University. Social Science
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.93-110, 2013-02-15

In this paper, we elucidate how suicide related to life insurance has played a crucial role in the social life of Japan since World War II. In particular, since Japan’s period of high economic growth, it has been observed that suicides by middle-aged men, who tend to have higher life insurance subscription rates than other people, have drastically increased and that economic problems have occupied a more important role as the cause of such suicides. This transformation has a significant connection with the rapid spread of life insurance, which has been caused by the growth of the finance systems of small- and medium-sized enterprises, as well as the development of the nuclear family during the postwar period. Life insurance has supplied a large amount of capital for these enterprises and has enabled families to survive after a loved one’s death. As a result, suicide in connection with life insurance has been deeply imbedded in contemporary Japanese life. This reason for suicide has been utilized as a major means of donation to others and a symbolic challenge to the wealthy. Although it is estimated that suicide in connection with life insurance is now decreasing due to the transformation of economic conditions since 2000 and the changes in life insurance agreements, this sociological significance of suicide has not been lost.
著者
貞包 英之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.593-607, 2008-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
41
被引用文献数
2 or 0

2002年末より,ネットをとおして知り合った者が自殺をともに企てる「ネット自殺」と呼ばれる事件が流行する.2005年末までに2度の波が観察され,そのなかで未遂を含め計69件,のべ204人がこの事件に参加したのである.事件の最大の特徴は,他の集団自殺でのようには幻想やイデオロギーの共有が確認されなかったことにある.事件では他者の介入をなるべく排除した自殺が選択された.つまりネット自殺では集団で行われながら,個々に孤立する「私的」な死が観察されたのである.近代社会は,問題状況としての死を社会と対立する否定的な要素として想定してきたといえよう.たとえば死のタブー化を主張する議論では,生を規範とする社会から死が否定的なものとして締め出されていることが問題とされる.またアノミーを前提とした議論では,社会の正常な秩序が欠如する際に自殺は発生するとされる.しかしネット自殺では,こうした近代的な図式に回収されない自殺の現象が確認された.すなわち事件では集団形成と矛盾せず,それゆえ社会の否定的要素とならない死が観察されたのである.そうした自殺を発生させることで,事件は自殺の前提となる配置を変えたあらたな社会の形成について示唆している.本論は,ネット自殺事件をとおしてそうした現代社会の特徴を探る試みである.
著者
貞包 英之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.593-607, 2008-03-31

2002年末より,ネットをとおして知り合った者が自殺をともに企てる「ネット自殺」と呼ばれる事件が流行する.2005年末までに2度の波が観察され,そのなかで未遂を含め計69件,のべ204人がこの事件に参加したのである.<br>事件の最大の特徴は,他の集団自殺でのようには幻想やイデオロギーの共有が確認されなかったことにある.事件では他者の介入をなるべく排除した自殺が選択された.つまりネット自殺では集団で行われながら,個々に孤立する「私的」な死が観察されたのである.<br>近代社会は,問題状況としての死を社会と対立する否定的な要素として想定してきたといえよう.たとえば死のタブー化を主張する議論では,生を規範とする社会から死が否定的なものとして締め出されていることが問題とされる.またアノミーを前提とした議論では,社会の正常な秩序が欠如する際に自殺は発生するとされる.しかしネット自殺では,こうした近代的な図式に回収されない自殺の現象が確認された.すなわち事件では集団形成と矛盾せず,それゆえ社会の否定的要素とならない死が観察されたのである.そうした自殺を発生させることで,事件は自殺の前提となる配置を変えたあらたな社会の形成について示唆している.本論は,ネット自殺事件をとおしてそうした現代社会の特徴を探る試みである.