著者
鈴木 基伸 Motonobu SUZUKI
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.017-039, 2018-07-31

本稿では、日本語の難易形式「〜やすい」「〜にくい」が、目的格名詞句を、ガ格をとる場合と、ヲ格をとる場合とで、どのような意味の違いが生じるのかについて考察を行う。コーパスから、同じ動詞句でありながら、ガ格とヲ格が使用されている例を抽出し、それらの意味について比較・検討を行ったところ次のようなことがわかった。まず、「〜やすい」においては、ヲ格を使用した場合、ガ格が使用された場合に比べ、「意志の希薄化」が見られる。「〜にくい」においては、ガ格が使用された場合、ヲ格が使用された場合と比べ、動詞によって表される行為の遂行に対して焦点が当てられるようになり、意志性がより強く読み取れるようになる。この結論の他、「〜やすい」「〜にくい」においてヲ格からガ格へ、ガ格からヲ格への交替をブロックする要因についても明らかにした。前者については動作の「非意志性」が、後者については「評価性」「主題化可能性」がそれぞれの格交替をブロックする要因である。
著者
鈴木 基伸 Motonobu SUZUKI
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.15, pp.95-118, 2014

動作遂行・実現の困難さを表す「にくい」と「づらい」は、機能的に重複している部分が多く、両者の使い分けがどのようにされているのかが明らかであるとは言い難い。そこで本研究では、「にくい」と「づらい」のどちらを入れても成立するような例文を作成し、それらを用いて「にくい」「づらい」の使用に関するアンケート調査を大手前大学の学生に対して行った。アンケート結果の分析を通し、①外的要因によって動作実現の不可能性が高い場合「にくい」が選択されやすい、②不可能性が低くなるに従い「にくい」が選択される割合が減る、③内的要因(「身体的痛み」「心理的抵抗感(±恥ずかしさ)」)によって困難となっている場合「づらい」が選択されやすい、④「づらい」選択の割合は「にくい」ほど顕著ではない、⑤心理的抵抗感の程度の大きさに応じて「づらい」がより選択されやすくなる、⑥相手に対する「申し訳なさ」が困難の要因となっている場合「づらい」が選択されやすい、⑦「身体的痛み」の場合外的要因による「けが」であるほうが「づらい」がより選択されやすくなる、ということが明らかになった。