著者
海野 敏 高橋 あゆみ 小山 久美
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.205-210, 2011-12-03

「バレエ情報総合データベース」の設計と試作を行った.このデータベースを設計するにあたり,実演情報を記述するための概念モデルとして,(興行-公演-演目)×(計画-遂行)モデルを提案した.このモデルは,FRBR とオブジェクト指向FRBR の規格を参考にして構築したものである.データベースは,実演情報だけでなく,ダンス作品と音楽作品の情報,人物と団体の情報,印刷資料と視聴覚資料の情報も入力できるように設計を行った.
著者
吉村 衛 木村 文則 前田 亮
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.261-268, 2011-12-03

現在,日本語の古文に対して汎用的に用いることができる形態素解析器は存在しない.それゆえ日本語の古文に対しては,文章を単語に分割することさえ困難である.単語分割が行えるようになると,古文テキストの解析に役立てることができる.本論文では,日本語の古文の文章を単語に分割する手法を手案する.本手法では,文字Nグラムの単語らしさを評価し,この単語らしさが高い文字Nグラムを単語として文の単語への分割を行う.今回は,「源氏物語」に対し本手法の評価実験を行い,評価・考察を行う.
著者
須永 哲矢 堤 智昭 高田 智和
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.381-388, 2011-12-03

言語研究資料としての電子化テキストを作成するという立場から,明治前期雑誌の異体漢字処理の在り方を検討した.現行の国内規格であるJIS X 0213 の文字集合および包摂規準が,近代の活字の電子化に対してはどの程度有効かを,明治初期の雑誌『明六雑誌』の異体漢字を例に検証した.JIS X 0213 文字集合によって『明六雑誌』の漢字の98%以上が表現できるが,言語資料として電子化テキストを使う場合には,2%近くが外字処理に回るのは望ましくない.そこで外字処理をさらに減らす方法として,包摂規準の拡張や別字での代用を提案し,それらを用いて処理した場合の効果も検証した.
著者
大内 英範 山田 太造 高橋 典幸 綱川 歩美 林 譲 保谷 徹 山家 浩樹 横山 伊徳
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.105-110, 2011-12-03

Hi-CAT Plus は,採訪マイクロフィルムをデジタル化した画像の検索・閲覧システムとして開発され,史料編纂所閲覧室内の端末でサービスをはじめた.本システムの仕組みや既存システムとの連携,上記用途にとどまらない今後の展望などについて述べる.
著者
河嶋 壽一
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.231-236, 2011-12-03

遺物の一つの古文書などは歴史や文化情報などが反映された貴重な資料であるが,それらの版画や版本を刷るために用いられた版木は永年の使用により,絵や文字などの彫られた形状が摩耗あるいは損傷していく.版木の形状の損傷状態は多様であるため,形状を復元する場合には,形状の損傷状態に対応して適切な復元方法を適用する必要がある.本研究では,彫られた絵や文字の損傷状態が異なる版木を対象物として,3次元デジタルデータによる,損傷状態に対応した版木の形状復元方法を提示し,形状復元を行うとともに復元版木の制作を試みた.
著者
清野 陽一
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.37-42, 2011-12-03

本研究では『延喜式』内の主計式に見える地方の国府と平安京との移動日数に関して,これまで文献史学で行われてきた研究成果を参考にしつつ,GIS を用いてあらためて今日的視点からシミュレーションを行うことによって,その具体的数字の意味するところを再度検証し,数値のもつ意味を考えた.その結果,文献史学では史料内からしか考察できない材料に対して,外部の客観的なデータをもってその検証作業を行うことができた.加えて,移動コスト分析において留意すべき点,更には現状の検討材料における問題点を整理し,今後どのようなデータが整備され,分析が行われれば研究が進展するかについての提言を行った.
著者
耒代 誠仁 中川 正樹 馬場 基 渡辺 晃宏
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.93-98, 2011-12-03

本稿では古代木簡解読を支援する画像処理および字体検索の高度化に関する我々の研究について述べる.画像処理の改善は,汚損・破損した古代木簡の可読性を高め,高精度な字体抽出を実現するために重要である.我々はカラーチャネルおよび周波数に関する分析結果を踏まえ,木目,腐食に有効な画像処理を実現した.また,木簡解読支援システムのユーザインタフェースを改良し,画像処理の実施に必要な操作を簡素化した.字体検索については,テンプレートを増やすと共に形状特徴抽出の改善を行い,検索精度の改善を実現した.
著者
石塚 晴通 池田 証寿 高田 智和 岡墻 裕剛 斎木 正直
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.339-346, 2011-12-03

漢字字体の各時代・各地域の標準と,その変遷を見る上では,漢字字体規範でデータベース(略称HNG)は有用な資料である。HNG は,初唐標準字体に至る中国南北朝・隋文献における標準字体の存在と中国周辺民族の漢字文献における標準字体を示し,また日本上代から近世初期に至る漢字文献における漢字字体を示す。HNGはそれ自体としては確固たる結論には結びつかないが,発展性のあるテーマの観点を示し得ることを,親鸞の著作と明恵の著作との対比を例として述べる。
著者
山本 真嗣 長谷川 恭子 仲田 晋 田中 覚
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.243-248, 2011-12-03

本研究は,祇園祭の山鉾の一つである船鉾を対象に3次元モデルの構築を行い,そのモデルの利用と可能性に関して検討を行う.船鉾は,普段は部材に分解されて船鉾収納蔵などに保存されており,毎年の祇園祭の際に組み立てられる.部材の組み合わせ方やその工程は一つの文化であり,それをデジタルアーカイブとして残すことには大きな意味がある.したがって,本3 次元モデルは,各部材ごとに内部まで精密にモデリングし,そのモデルを利用して,制作工程や内部構造をデジタル化することを目的とおいている.また,船鉾のような複雑な形状の文化財は,死角となる部分も多く,祇園祭の際でしか完成形の姿にならないため,各視野から観測できる3 次元モデルはとても有益と言える.
著者
川口 洋 上原 邦彦 日置 慎治
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.117-124, 2011-12-03

本稿では,「過去帳」分析システムを用いて,寺院「過去帳」に流産・死産児が記録され始めた時期と法規との関係について検討する.「過去帳」分析システムは,「過去帳」古文書画像データベース,「過去帳」分析プログラム,検索利用マニュアルから構成されている.本システムには,18 ヵ寺における約4 万人の被葬者が登録されており,51 項目の死亡指標を表示することができる.神奈川縣などでは,明治13(1880)年から流産・死産の届出を義務付け,戸長の作成する埋葬承認証のない死屍の埋葬を禁止した.これにともない,寺院「過去帳」に流産や死体分娩などが明記されるようになり,流産・死産児などに孩子系,嬰子系,泡兒系,胎子系,水子といった戒名の位号を付けて供養する習慣が普及していったとみられる.
著者
阪田 真己子 倉坂 幸佳
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.269-274, 2011-12-03

雅楽をはじめとする日本の伝統芸能では「間」をうまくとることが求められる.しかし,「間」は日本の伝統芸能や日常行動を特徴づける重要な存在でありながらも,その実態は捉え難いものである.そこで,本研究では,日本の伝統芸能の中で最古に成立したとされる雅楽の舞における「間」のとり方を,舞人と龍笛奏者の関係性から実証的に検討することを目的とする.
著者
小林 龍生
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.347-352, 2011-12-03

筆者は1995 年以来国際符号化文字集合の標準化活動に関わってきた.この過程で,文字集合として符号化する文字の異同を判断する粒度の基準が,言語文化や使用目的によって異なることに起因する合意形成の困難さと対峙し続けてきた.この問題解消の一助とするため,VS(Variation Selector)というメカニズムの提案および規格開発に主体的に関わってきた.本稿では,これらの経験を踏まえ,標準規格策定および実用システム開発に当たっては,利用者側が利用意図を明確に意識した上で,文字異同の判断基準を明確にすることの重要性について述べる.
著者
小野原 彩香
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.219-224, 2011-12-03

言語現象とは,ポイントデータであり,仮にポイント同士の情報に相関が見られたとしても,それは偶然による一致であるのか,何らかのコミュニケーションの成立による一致なのかを知ることは困難である.そこで,本研究では,ポイントデータ同士をつなぐエッジの情報を言語外現実[1]である交通状況のデータに求めるとともに,ネットワーク分析を用いて両者の定量的な関係性を探った.
著者
松村 冬子 小林 巌生 嘉村 哲郎 加藤 文彦 高橋 徹 上田 洋 大向 一輝 武田 英明
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.403-408, 2011-12-03

近年では,米国や英国をはじめとした世界各国で,標準化されたデータ形式であるLinked Open Data (LOD)に基づいたデータ公開が行われている.LOD はデータのオープン化,分野内でのデータの共有,そして分野を横断したデータの共有を促進するという特徴を持っている.この特徴を考慮して,国内の博物館データベースの統合を行うLODAC Museum プロジェクトにおいては博物館情報を,横浜LOD プロジェクトでは地域で行われるイベントや施設などの地域情報をLOD とし保有している.本稿では,博物館情報と地域情報という異なる分野のLOD を連携活用することにより構築した,横浜のアート情報を提供するYokohama Art Spot と呼ばれるWeb アプリケーションについて報告し,異なるLOD の連携活用によりもたらされる効果について議論した.