著者
吉澤 卓哉
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.627, pp.1-30, 2014-12

大成火災破綻(2001年)の原因は,ある再保険プールを介した海外再保険取引にあると言われている。この海外再保険取引は永年に亘るものであるが,大成火災が原告となった米国税務訴訟の判決(1995年)で当時の当該海外再保険取引の実態を窺うことができる。他方,破綻時の取引実態は,大成火災役員や当該再保険プールのマネジング・エージェントの関係者に対する損害賠償請求訴訟や仲裁の資料から窺うことができる。本稿は,両取引実態を分析したうえで比較することによって,米国税務訴訟判決時点において,既に大成火災破綻へと繋がる取引実態となっていたこと,したがって当該時点で破綻への途から外れることができた可能性があることを明らかにするものである。
著者
深見 泰孝
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.613, pp.613_129-613_148, 2011-06-30 (Released:2013-04-17)
参考文献数
46

明治期に我が国では,仏教系生命保険会社と呼ばれる生命保険会社が設立される。この会社は,教団や僧侶が直接,間接的に関与したことが特徴である。保険思想が十分に普及していなかったとされる当時,多くの門信徒を抱える教団を活用した保険募集は,募集を優位にすすめる方策と考えられた。ところが,多くの会社が明治期に破綻や合併,支配権異動などで仏教系生命保険会社としての営業活動を終えている。そこで,本稿では,これまで明らかにされていなかった仏教系生命保険会社の支援形態の差異に注目し,この違いが経営に与えた影響,破綻要因に与えた影響を分析し,また,仏教系生命保険会社が保険業史上に果たした役割について検討した。
著者
浜崎 学
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.619, pp.619_241-619_259, 2012-12-31 (Released:2014-05-08)
参考文献数
15

東京電力福島第一原子力発電所(沸騰水型軽水炉,BWR)の事故は,東日本大震災による巨大津波という共通原因によって,最終的な熱の逃がし場(ヒートシンク)と安全設備を支える電源系が広範に機能を喪失したこと(クリフエッジ効果)が直接の原因であった。加圧水型軽水炉(PWR)プラントは,蒸気発生器(SG)によって主蒸気系を原子炉冷却系から隔離しているため,同様の津波に襲われて電源を喪失したとしても,放射性物質を含まない蒸気を大気放出することで最終ヒートシンクを確保でき,自然循環によって原子炉を冷却できるという優れた耐性を有する。更に,今回の事故の教訓を反映し,電気設備等の水密化,非常用発電機の高台設置等の津波対策を進めており,格納容器による深層防護の強化も計画している。今後も,世界最高水準に安全性を高めたPWR技術によって低炭素エネルギー源の確保に貢献していく所存である。
著者
渡橋 健
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.605, pp.605_161-605_179, 2009-06-30 (Released:2011-10-15)
参考文献数
6

近年の保険金殺人について,刑事裁判例に基づき,(1)保険金額,(2)加害者と被害者の関係,(3)保険契約加入から犯行までの期間等の観点から分析を行い,その結果(法人契約と個人契約の相違・保険加入期間と犯意形成の関係等)についてモラル・リスク対策への活用策を提言する。
著者
鴻上 喜芳
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.615, pp.615_89-615_108, 2011-12-31 (Released:2013-03-22)
参考文献数
17

米国の医療事故訴訟にかかるコストは1970年代以降ほぼ一貫して上昇し,かつこの間に三度保険危機があったために,医師・病院が医療事故賠償責任保険にアクセスし難くなり,防衛的な医療となったり患者の受診機会が阻害されたりする問題となっている。これに対し,州・連邦は不法行為制度改革を中心とする取組みを行ってきたが,近年は法改正を伴わない新たな取組みも出現してきている。これらの効果もあり,2005年からは医療事故訴訟コスト,医療事故賠償責任保険引受成績とも落着きを見せている。一方,保険危機により,保険マーケットには大きな変化が生じている。株式会社形態保険者がシェアを減らし,代わってRRGが躍進してきた。また,引受約款はオカレンスからクレームズメイドに移行してきている。米国の状況を参考にし,日本の保険者においては,医師賠償責任保険の安定的な保険運営,医師賠償責任保険へのロングテール導入,ならびに医師と患者の良好な関係を維持する新たな無過失補償保険の開発の検討が期待される。
著者
宮地 朋果
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.614, pp.614_41-614_57, 2011-09-30 (Released:2013-03-22)
参考文献数
31

保険契約における公平性に関しては,保険数理や統計的なデータのような客観的判断とともに,国民性や価値観などの主観的判断も加わる。本稿は,これらの要素がいかに組み合わさり,公平性という価値判断が生成されるか理論的に考察することを目的とした。危険選択は,保険会社や保険数理の枠組みにおける判断と,一般消費者の認識との乖離が特に顕著となるおそれがある。したがって,保険数理的公平性と社会的公平性もしくは公共性をいかに図るかという視点が必要となる。逆選択の不利な影響を防ぐための危険選択や,適正なリスク細分化が求められるが,社会・経済制度も含む様ざまな環境変化により,その根拠となるべき価値判断の基準も変わる。近年その速度が高まるなか,社会環境の変化に事後的に対応せざるを得ないという保険の限界を鑑み,危険選択をはじめとする保険実務の在り方を,実務・研究の枠組みを超えて,広く検討することが期待される。
著者
早川 淑人
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.616, pp.616_165-616_184, 2012-03-31 (Released:2013-08-02)
参考文献数
9

PTA団体では安全補償制度として各種保険を採用しているが,社会環境の変化と活動の多様化から,活動の実態から乖離した補償内容になりつつある。特に,法律と保険約款における「学校管理下」の解釈の相違,授業補助や少子化による他社会教育団体と連携するPTA活動では,保険金・給付金支払いの可否が問題になることがある。本稿では,PTA活動の現状を調査分析し,『新・教育基本法』の観点から必要とされる補償内容が実際に商品化されるまでの安全補償制度上の諸問題を考察し,(1)団体活動上は,活動方法が社会の流れとともに変化する点,(2)補償上は,保険商品が作られた当時とは社会背景が異なっている点,(3)安全補償制度上は,学事歴と保険始期が一致しないなどの運営上の問題点があると指摘した。これらは子どもの成長過程に応じた教育課程単位でのPTA専用商品の開発や,社団法人日本PTA全国協議会などの全国組織を契約者にすることで一定の解決が図られると思われる。
著者
吉澤 卓哉
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.627, pp.627_1-627_30, 2014-12-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
18

大成火災破綻(2001年)の原因は,ある再保険プールを介した海外再保険取引にあると言われている。この海外再保険取引は永年に亘るものであるが,大成火災が原告となった米国税務訴訟の判決(1995年)で当時の当該海外再保険取引の実態を窺うことができる。他方,破綻時の取引実態は,大成火災役員や当該再保険プールのマネジング・エージェントの関係者に対する損害賠償請求訴訟や仲裁の資料から窺うことができる。本稿は,両取引実態を分析したうえで比較することによって,米国税務訴訟判決時点において,既に大成火災破綻へと繋がる取引実態となっていたこと,したがって当該時点で破綻への途から外れることができた可能性があることを明らかにするものである。
著者
福田 弥夫 井口 富夫 佐野 誠 松下 泰
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.630, pp.630_331-630_438, 2015-09-30 (Released:2016-07-27)
参考文献数
16
著者
野崎 洋之
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.633, pp.633_33-633_60, 2016-06-30 (Released:2017-05-13)
参考文献数
43

保険には一定の経済波及効果が期待され,特に損害保険分野における財物保険は,その補償が,毀損した財物の復旧を目的にしていることから,大きな経済波及効果を生む可能性がある。本研究では,損害保険の経済波及効果に関する実証研究として「地震保険」,殊に「東日本大震災で支払われた地震保険金」に着目し,その保険金の使途等に関する調査を実施した。その結果,地震保険金の6割近くが建築修繕費に充てられており,地域間産業連関表(2005)を用いて地震保険金の経済波及効果の推計を行ったところ,東日本大震災で支払われた地震保険金は3兆円を超える経済波及効果を有し,災害復興に大きく貢献していることが明らかになった。一方で,本研究が地震保険の価値を相対的に評価できていないことを認識した上で,保険金の使途に関する知見が十分に蓄積されていない現状を踏まえ,更なる実証研究の実施と比較研究の必要性を今後の課題として纏めた。
著者
江澤 雅彦
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.610, pp.610_1-610_16, 2010-09-30 (Released:2013-04-17)
参考文献数
11

米国の住宅バブルを前提としたサブプライムローン・ビジネスにおいて,住宅ローン債権の証券化は,そのリスクを国境,業態を越えて拡散させ,またハイ・レバッレッジ経営はその拡散スピードを増加させた。そしてバブルの崩壊=住宅価格の下落により,AIGは,証券化商品の価値下落,CDS取引にもとづく保証金の請求急増という状況の中,準国有化に追い込まれた。またそうした米国発金融危機は,わが国の生保事業にも資産運用環境の悪化をもたらし,さらに商品販売においては特に変額年金保険の分野で問題を生じさせた。
著者
菊池 直人
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.626, pp.626_127-626_144, 2014-09-30 (Released:2015-08-13)
参考文献数
26

日本では,未成年者を被保険者とする死亡保険契約について,保険法上特段の規定はなく,道徳危険については,保険者の自主規制や金融庁の監督によって対応がなされている。すなわち,保険金額の相当性および適切な引受・支払基準の構築,その遵守など,運用上の問題に収束したといえる。一方,諸外国に目を向けると,未成年者を被保険者とする死亡保険契約については,立法上制限を設ける例が多数みられる。多くの場合,意思能力の有無を判断材料とし,保険契約を禁止したり,保険金額を制限したりしている。これは,被保険者の同意とは,当該保険について了承する意思表示であるとともに,道徳危険を伴う保険についての自己決定であるとして,未成年者といえども代理による同意を実質的に認めない。我が国の未成年者の生命保険契約は,過去の事例からも道徳危険性は少ないとされてもいるが,意思能力の有無に基づく保険契約上の規制が必要であると思われる。
著者
大谷 孝一
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.621, pp.621_201-621_209, 2013-06-30 (Released:2014-09-17)
著者
早川 淑人
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.620, pp.620_241-620_260, 2013-03-31 (Released:2014-09-17)
参考文献数
1

PTA団体傷害保険,学校契約団体傷害保険,PTA管理者賠償責任保険などで構成される現在のPTA 安全補償制度を,アンケート結果から分析するとともに,補償ニーズを中心とした制度運営上の諸問題を考察したものである。現在のPTA安全補償制度において,補償ニーズと補償内容の最大の相違点は,(独)日本スポーツ振興センター法と保険約款での「学校管理下」の解釈の相違である。また教育基本法では,各種の社会教育団体や町内会との連携活動,学校教育施設や社会教育施設の相互活用を推進している。しかし保険での補償は,PTA活動内容や活動方法によっては補償対象外になるなど,補償内容は社会の変化や補償ニーズに対応しきれていない。これらは従前の学校内を中心としたPTA活動ではなく,社会教育団体として地域と一体化したPTA活動に視点を移すこと,日本全体のPTA組織メリットを生かした保険商品開発が行われることで一定の解決が図られると思われる。
著者
長谷川 仁彦
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.616, pp.616_145-616_164, 2012-03-31 (Released:2013-08-02)
参考文献数
11

保険法・保険約款で免責とされる「自殺」は,被保険者が故意に自己の生命を断ち死亡の結果を生ぜしめる行為であり,死亡者の自由な意思決定に基づきその者の身体動作により死亡の結果を来たすべきときを指すとされる。一方,精神病その他の精神障碍中または心身喪失中の行為による自殺は「自由な意思決定能力」を欠いたものであり免責事由には該当しないとするのが通説・判例である。近時,自殺者のうち概ね1/3に当たる約1万人が精神疾患を原因によるものとされ,それらを原因とする自殺が全て意思決定能力を喪失ないし減弱したうえでの自殺とはいえない。しかし,精神疾患の一つであるうつ病によって行為選択能力が相当制限されたうえでの自殺は「自由な意思決定」を欠いていることになるので,免責となる「自殺」にはあたらないと考えられる。
著者
佐々木 修
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.618, pp.618_149-618_168, 2012-09-30 (Released:2014-05-08)
参考文献数
21

コンプライアンスは,損害保険業界において,非常に重要な経営課題となっている。このため,相当の経営資源を投入し,創意工夫をしながら真摯に取り組み,今日では様々な活動を通じ,質の高い対応が行われている。また,コンプライアンスについては,継続的な取組みが重要であり,業界および各社における取組みを発展的に持続させ,業界全体として高いレベルのコンプライアンス態勢を維持していく必要がある。今後さらに必要となる業界のコンプライアンスへの取組みおよび課題としては,多様化したビジネスモデルや最新の法制度を踏まえた活動等の強化,共通化・標準化の推進,保険に関する教育の充実,新たな課題への対応が挙げられる。
著者
永松 裕幹
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.633, pp.633_127-633_147, 2016-06-30 (Released:2017-05-13)
参考文献数
19

危険ドラッグの氾濫や向精神薬の乱用が社会問題になっている。これらの薬物を服用した状態で車の運転をした場合には,事故発生の危険性が高く,社会的非難も大きい。自動車保険約款の人身傷害条項や車両条項中の薬物免責条項には,これらの薬物は明記されていないが,被保険者がこれらの薬物を服用した状態で運転して事故が発生した場合,保険者は免責とすることができるのであろうか。約款文言や道路交通法の規定との平仄から,これらの薬物を服用した状態で運転したときに発生した事故につき,同条項は適用できないと考える。もっとも,危険ドラッグのうち,所持や使用が違法である指定薬物については,約款を改訂することで,免責の対象とすることができる。このように解しても,被保険者が危険ドラッグや向精神薬を服用した状態で運転して事故が発生した場合には,別途重過失免責の規定を適用する余地がある。この点,危険ドラッグについては,重過失免責が比較的容易に認められる可能性が高い一方,向精神薬については,重過失免責が認められる場合は,相当程度限定される可能性がある。
著者
若土 正史
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.628, pp.628_117-628_137, 2015-03-31 (Released:2015-10-30)
参考文献数
25

欧州における地中海・バルト海・北海を結ぶ海運交通では,14世紀後半から既に海上保険制度が普及し,海上リスク対策の一手段として海運関係者に広く利用されていた。1498年ポルトガルはインド航路を開設し,同国の基幹航路となった。本稿はポルトガルと日本の交易に関して,隣国スペインのブルゴスに残る当時の契約史料と同航路の海難事故事例を分析し,この航路における海上保険の活用状況に関し一次史料と先行研究の二次資料とを使って検証したものである。その結果,「『大数の法則』に見合う引受件数の確保」と「一定水準で安定した損害率」という要件が十分にカバーされなかったため,ポルトガルはインド航路では海上保険は積極的に利用していなかった,という結論を得た。
著者
山田 高弘
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.606, pp.606_191-606_209, 2009-09-30 (Released:2011-11-26)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

保険制度は善意の保険契約者を前提として成立している。そのため,不正請求者を放置することは,単に保険会社が保険金を取られることだけでは済まず,保険制度自体を崩壊させかねないものである。現在,損害保険業界は一連の不払問題等の影響によって,厳しい状況におかれている。しかし,社会情勢がどうであれ,不正請求事案に厳正に対処していくことは保険会社に課せられた責務である。むしろ,このような状況であるからこそ,保険金詐欺防止への取組みが大切でありその対策が重要となるのである。本稿では,わが国の保険金詐欺の実態を偽装自動車盗難による不正請求を中心に分析し,今後業界が取り組むべき不正請求対策について論じる。
著者
深見 泰孝
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.602, pp.602_1-602_30, 2008-09-30 (Released:2010-10-15)
参考文献数
39

明治20年代に,各宗仏教団体を中心とするか又は宗教団体を背景とする生命保険会社が続々と設立されたことは,わが国の生命保険業史上における特徴の一つに挙げられている。わが国で仏教教団が生命保険事業へ進出した理由を解明するには,個別の仏教系生命保険会社の内部史料を用いて分析することが必要となる。本稿では,真宗信徒生命に関与した本願寺の『定期集会筆記』という議会議事速記録を用いて,真宗信徒生命の設立理由を検討した。その結果,キリスト教に対する危機感を幕末・維新期から醸成していた本願寺教団が,外国人の内地雑居を目前に控え,キリスト教対策の慈善事業費を調達することを目的として設立された会社であることを明らかにした。そして,その中心には,赤松連城や島地黙雷といった留学経験のある役僧がいたことが明らかとなった。