著者
芳之内 雄二
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities, the University of Kitakyushu (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.74, pp.47-61, 2008

ソ連崩壊後独立した新興独立国家では、それまで公用語、教育言語として優位な立場を占めていたロシア語に代って民族共和国の言語が国家言語と規定され、ロシア語の社会的地位が低下している一般的な傾向がある。そうしたなかで、ロシアの歴史要素や文化要素が大きなウクライナでは、家庭内での使用言語や図書出版、読書、マスコミの分野で依然としてロシア語の優位性が維持されている。
著者
八百 啓介
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities, the University of Kitakyushu (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.74, pp.37-46, 2008

本稿は近世の菓子料理書における飴の製法から外来技術の影響を探るとともに、近世小倉藩における飴の生産についての近年の研究成果を踏まえて、北九州地域の飴について考察するものである。すなわち、江戸時代においては糯米・麦芽を原料とする麦芽飴に空気を混入した堅飴と砂糖を原料とする砂糖飴の二種の外来系の飴が存在したのである。三官飴は、中世以来の膠飴(地黄煎)をもとに、近世初期に西日本各地に来航した唐人によってもたらされた気泡を入れるための牽白技術によるものと考えられるが、小倉の「三官飴」は、本来の三官飴とは別種の粘度の低い引飴の一種であったと思われる。
著者
富田 広樹
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities, the University of Kitakyushu (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.89, pp.23-33, 2019

ミゲル・デ・ウナムーノの小説『アベル・サンチェス』は作者自身によっても陰鬱極まりない作品として評されている。一見なんの救いもないこの作品において、嫉妬に苦しむカインとしての役割を負わされている登場人物ホアキン・モネグロの固有名にあらためて注意を払うことで、結末における一場面を希望あるものと解釈することが可能になる。
著者
田部井 世志子
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities, the University of Kitakyushu (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.72, pp.43-64, 2006

「個人は愛し合えない。」D・H・ロレンスはアポカリプスの中でこのような現代における個人の愛の不毛性の問題を世に投げかけてこの世を去った。われわれは彼のこの言葉をどう受け止めればいいのだろうか。おそらく人類が始まって以来、常に振り子のように揺れてきた人間存在の在り方──個人重視か集団重視か──についての議論を加えつつ、とりわけ個人主義が標榜される今日にあって、今一度真摯にロレンスの問題提起に耳を傾け、問題解決の一助──宇宙的大自然との一体化のうちに個人どうしの愛の可能性を見る──を彼の『アポカリプス』の中に探る。
著者
前田 譲治
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities, the University of Kitakyushu (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.73, pp.41-52, 2007

日米が各々制作した2種のゴジラのcharacterizationの比較と、日米の映画題名の方向性の比較と、アメリカ映画の素材の検討を行った。これらの作業を通して、アメリカ人は荒唐無稽な映画内容を、現実との連続性を有した、現実と近しい世界と眺める傾向が強いのに対して、日本人は、映画内容を現実と完全に乖離した別世界と認識する傾向が強いことを明確化した。次に、現実の日本人とアメリカ人の行動形態に注目した。まず、日本人とは異なり、アメリカ人は映画内容に対して、それが現実であるかの如き反応を示す点を明らかにした。次いで、日本人が決して現実とは認識できない荒唐無稽な噂を、アメリカ人は現実として受容する点に注目した。以上の在り方を論拠として、アメリカ人が現実として受容可能な領域は、日本人よりも格段に広く、日米間では現実認識のあり方に多大な差異が存在すると結論付けた。
著者
堀尾 香代子
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities, the University of Kitakyushu (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.88, pp.94-82, 2018

上代語における終助詞「や」は、文末において終止形や已然形に下接し、詠嘆的な疑問表現や反語表現を形成するが、『万葉集』にはこのような形式をとらず、非活用語に下接する助詞「や」が若干例観察される。本稿では、このような非活用語に下接する文末助詞「や」の文法的特徴や意味的特性を『万葉集』を資料として考察するものである。