著者
吉田 康成 西 博史
出版者
四天王寺大学大学
雑誌
四天王寺大学大学紀要
巻号頁・発行日
no.64, pp.311-322, 2017-09-25

"本研究はワールドカップ2015 に出場した一流選手のジャンプサーブを3 次元動作分析することにより、強く打撃する一流選手のジャンプサーブの実態を明らかにすることで今後のコーチング資料を得ることを目的とした。被験者は、Anderson 選手(アメリカ)、Zaytsev 選手(イタリア)、Ishikawa 選手(日本)、Yanagida 選手(日本)であった。得られた知見は以下の通りである。1)本研究で得られた打球速度は、先行研究よりも速く、Anderson 選手が30.91m/s、Zaytsev 選手が35.38m/s、Ishikawa 選手が31.31m/s、Yanagida 選手が31.60m/s であった。2)ジャンプサーブの頭部中心を原点とした打撃の相対位置について、Ishikawa 選手とYanagida選手はスパイクに関する先行研究で報告された打撃位置と大差はなかったが、 Anderson 選手とZaytsev 選手は頭上付近で打撃していた。3 )Ishikawa 選手とYanagida 選手の打撃時における腰部速度は水平方向がそれぞれ0.70m/s と0.92m/s であった。跳躍の仕方は、跳躍前に沈み込み、踏み切り足で助走の水平方向の運動量を鉛直方向へ変換するという従来の指導書で述べられている前衛でスパイクするための助走方法であった。4)Anderson 選手とZaytsev 選手の打撃時の腰部速度は、水平方向がそれぞれ2.05m/s と1.87m/sであった。外国人選手のジャンプサーブは日本人選手と比較して跳躍前に大きく沈み込まず、腰部の水平速度を活かして打撃していた。
著者
坂田 達紀
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学大学紀要
巻号頁・発行日
no.64, pp.7-30, 2017-09-25

" 村上春樹の「青が消える(Losing Blue)」は、1992 年に海外の雑誌に発表され、2007 年からは(日本の)高等学校の国語教科書にも採録されている、文字数にして4200 文字の短編小説である。他の多くの村上作品と同様、表面的ないし表層的に読むのは易しいが、その内側ないし深層を理解するのはそれほど簡単ではない、つまり、結局何を言おうとしているのかが単純には捉えられない小説である。 本稿では、文体論の観点から、この小説の表現・文体の分析・考察を試みた。析出された文体的特徴は、次のとおりである。 ⑴ 異様な冒頭表現に異化効果およびサスペンス効果が認められる ⑵ 悪夢が説明抜きで叙述(描写)されている ⑶ 非現実を現実化する仕掛け(「炭取が廻る」仕掛け)が仕組まれている ⑷ 様々な意味(寓意)が読み取れるアレゴーリッシュな文体である ⑸ ユーモアの要素が見られる 「自分のことを生まれつきの長編小説作家だと思っている」村上春樹にとって、短編小説は長編小説のいわばプロトタイプ(原型・試作品)と考えられるので、上の特徴のうちのいくつかは、当然、長編小説にも見出されることが推測される。したがって、これらの特徴が、いわゆる「村上春樹らしさ」ないしは「本来の「村上春樹的」小説世界」を形づくる要素と考えられる、と結論づけた。 加えて、村上春樹が文体によって「見分けのつかない、無明の世界」を明かそうとしていること、そして、その文体が批評性を持っていることも指摘した。 本稿の分析・考察の結果は、現行の高等学校学習指導要領の「指導事項」に、「表現の特色に注意して読むこと」という文言や「書き手の意図をとらえたりすること」という文言が見られることに鑑みて、この小説を国語教材として用いる際にも役立つものと考えられる。"