著者
世良 至 殿垣内 正人 川井田 実
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.468, pp.57-66, 1993-06-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
9

本論文は25~28年観測された軟弱地盤上の高速道路盛土について長期沈下の実態を示すとともに, 将来沈下予測について, 考察を加えた.厚い海成粘土の一次圧密終期と二次圧密量について検討した. 一次圧密終期に収束がやや遅れるのは, 圧密過程で圧密係数が変化 (減少) するためと考えた. 二次圧密量は僅かで実務上はほとんど無視できるとしている. 将来沈下は長期観測による沈下速度で管理する手法が有効であるとし, 残留沈下を推定する手法の提案とその実用性を述べた.
著者
川崎 雅史 堀 秀行 佐佐木 綱
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.458, pp.121-127, 1993-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究は, 日本の伝統的な空間に現れる陰影の意匠性を把握するための一つの方法として, 谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に表現された陰影とその演出のしくみを景観論的に整理したものである. はじめに, 景観論的な視点を設定するために陰影の基本構成と基本類型の定義を行い,「陰翳礼讃」に表現された陰影の典型を抽出した. さらに, 抽出された陰影の構成要素ごとに美的な演出方法についての考察を行った.
著者
高橋 和雄 藤井 真
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.567, pp.33-52, 1997-06-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
14

雲仙普賢岳の火山災害では, 当初198年前の寛政の噴火当時に生じた眉山の崩壊を警戒した避難計画が策定された. 今回の災害では土石流および火砕流が頻発したため, これらの発生に備えた避難対策や博報伝達体制が導入された. しかし, 火山噴火災害の事例が少ないこともあって, 避難対策および博報伝達体制に数多くの課題が生じた. 本報告では, 雲仙普賢岳の火山災害における情報伝達体制および住民の避難対策を詳細に調査した結果をまとめる.
著者
Kusnowidjaja Megawati 東原 紘道
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.584, pp.11-18, 1998-01-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1

1995年に京都北部―淡路島西部断面に沿って, 一連の爆破実験がおこなわれた. 明石海峡大橋の基礎部での観測記録はS/N比が乏しいものであったが, 波形処理により, 爆破震源からのS波を求めることができた. そして, 到達時刻のフィッティングで地下のP波速度構造を求めた. 明石海峡大橋直下の地下構造はP波速度5.2-6.0km/sの4つの層から構成されていることがわかった. 本研究で明らかになった地下構造は, およそ30年前の爆破実験で求められた地下構造に較べ, 浅部をより詳細に記述するものとなった.
著者
中川 大 石橋 洋一 松中 亮治
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.506, pp.87-97, 1995-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
30

本論文は, 交通施設への投資額とその実質的な負担者構成を, 各施設間の比較が可能な形で正確に把握することを目的として, そのための方法と手順を示すとともに, 道路, 鉄道, 空港, 港湾についてその算出を行うものである. このようなデータは既存の統計資料では示されていないため各種統計資料間の整合を図るとともに, 多年度にわたる補助金や, 利子補給のよ, うな間接的な補助金も考慮に入れたモデルを作成し実質的な負担者構成を求めている.
著者
坊野 聡子 清水 康行 黒木 幹男 藤田 睦博 吉田 義一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.656, pp.61-72, 2000-08-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
13

本研究は土砂輸送を伴う沖積地河川の中流部にダムが建設された場合の土砂輸送環境の変化を検討したものである. 北海道の沙流川河口部から約20km地点に建設された二風谷ダムを例として, その貯水池を含む上下流約30km区間の出水時の連続土砂観測, 河床形状および河床材料の調査, および流れと流砂・河床変動の数値計算モデルなどを用いてダムを含む河川の土砂輸送環境の実態を定量的に明らかにした. この結果, ダム上流, 貯水池, ダム下流の河川における土砂の収支が質的・量的に明らかにされ, ダムおよび河川の長期的な維持管理対して極めて有効な知見を得ることが出来た.
著者
田中 邦煕 新谷 洋二 山田 清臣
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.639, pp.23-37, 2000-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
15

本研究は 城郭石垣の築 (平) 石を正面から見たときの形状寸法などを基準に行った分類と変遷についてとりまとめたものである. 多くの石垣を踏査するうちに, 積み石はその形状寸法や加工状態から古代型・掘出し石型および切出し石型の3タイプに大分され, これはさらに8タイプに細分されるのではないかと想定した. そこで, 全国約140箇所の石垣調査データのうち, 積み石の形状寸法に関する4種類の数値パラメータから得られる9種の統計量を8タイプに当てはめたところ, この4パラメータにより8タイプの石垣を定量的に表示できる可能性が示された. したがって現存石垣を4パラメータを用いて数量化して表示することにより, 石垣分類を行いまた, その構築年代を推定する一手法になりうると考えられる.
著者
近藤 真一 花岡 志郎 中井 裕司
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.658, pp.107-119, 2000-09-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

連続構造上路式吊床版橋では, 活荷重載荷に伴い吊床版に生じる水平力による橋脚の変形を抑えることで, 吊床版取付部の曲げモーメントや吊床版のたわみを低減させることができる. この目的で, 上床版端部を橋台と弾性結合する構造を考案したが, 本論文では, この弾性結合構造を有する連続構造上路式吊床版橋の構造特性について示すとともに, 端部ばね定数を簡略的に設定する手法を提案した. また, 構造特性を把握するために行った解析の妥当性を, 実橋における静的・動的載荷試験結果により確認した.
著者
知野 泰明 大熊 孝
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.440, pp.135-144, 1992-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
43

新潟平野の本格的な治水の変遷は, 近世中期の松ケ崎放水路の開削に始まり, 治水技術の近代化を待って, 大河津分水の完成をもって一応の完結をみた. その近代的治水技術の中心となったものは土工機械力, 近代的堰・水門及びポンプであった. これら近代技術の登場によって, 洪水時や平水時にかかわらず自由な流水のコントロールが可能となった. この新技術は明治後期の日本人技術者達の試行錯誤の上に成立つものであった.
著者
田邉 成 小宮山 茂樹 齋藤 修一 三島 徹也
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.732, pp.47-62, 2003-05-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
10

送電用鉄塔基礎の新しい基礎形式としての1本杭支持床板にいかり材で脚材を定着する方式において, 引抜き力が作用した際の破壊耐力について検討することが本論文の目的である. この定着方式には, 割裂応力による上端主鉄筋の降伏を伴う破壊と, コーン状のせん断破壊の2つの主要な破壊形式がある. そこで, これら2つの破壊形式について耐力算定式を検討した.
著者
樋口 輝久 馬場 俊介
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.758, pp.117-136, 2004-04-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
157

本論文は, わずか四半世紀の間に, 導入・発展・衰退の過程を辿ったわが国のバットレスダムの変遷を明らかにしようとするものである. 薄い遮水壁と控え壁 (バットレス) で構成されるバットレスダムは, 笹流ダムで初めてわが国に導入され, 物部長穂の耐震理論によって発展を遂げたが, 国際大ダム会議で凍害が報告された直後の三滝ダムが最後とされてきた. 本論文では, 希少性と形態上の特異性からわが国のダム史上における特徴の一つになっているバットレスダムについて, ダム技術史上における位置付けを明確に示すとともに, 大正~昭和初期にかけてこの形式が積極的に採択された理由, そして, その後すぐに採択されなくなった理由の双方を明らかにすることで, 近代日本におけるバットレスダムの技術史の構築を目指す.
著者
中澤 克成 横嶋 哲 石川 秀平 久末 信幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00116, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
46

レベルセット法とVOF法は気液二相流解析によく利用されるものの,両者を客観的に比べた例は希少である.前報(土木学会論文集 A2, 76(2), I 439, 2020)ではACLS法(レベルセット法)とCICSAM法(VOF法)の主に界面移流精度を比べた.本報ではTHINC/WLIC法(VOF法)を加え,複数の気液二相流問題を対象に,精度と計算負荷を比較した.一般にレベルセット法は質量保存に,VOF法は界面曲率評価に難があるものの,ACLS法は界面識別関数の変更,VOF法はS-CLSVOF法の導入によって問題点が大幅に改善された.界面ソルバー単独ではACLS法が他の2手法の数倍の計算負荷を伴うものの,気液二相流解析では流体ソルバーの負荷が卓越するので,トータルの計算負荷はほとんど変わらない.
著者
高橋 和雄 藤井 真
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.567, pp.1-17, 1997-06-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
11
被引用文献数
3

長期化・大規模化した雲仙普賢岳の火山災害における道路および鉄道の被害, 代替交通, 復旧対策および交通途絶の影響を明らかにした. 島原半島は地形的に道路が不足しており, 従来から大きな課題であったが, 災害時にその脆さのために孤立状態となり, 地域に大きなダメージを与えた. 本報告では, 道路・鉄道における応急・緊急対策, 恒久対策への取組みを詳しく報告する.
著者
佐藤 宏志 渡辺 仁 品部 耕二郎 小泉 淳
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.756, pp.21-31, 2004-03-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
11

ダクタイルセグメントは使用期間が最も長いものでは約37年あまりが経過したが, 二次覆工が行われない場合も多いため, その耐食性, 耐久性が問題になると考えられるが, その実態は従来ほとんど明らかにされていなかった. 本論文は, 供用中のダクタイルセグメントの腐食に関する継続的な調査結果を分析し, ダクタイルセグメントの耐久性を考察するものである. まず, セグメントの肉厚測定の方法およびその信頼性について述べ, 次に調査の内容およびその結果を述べる. この調査結果から, ダクタイルセグメントの主要肉厚は少なくとも24年間においてほとんど減少していないことがわかり, ダクタイルセグメントは現在のところ健全性を維持しており, 今後も長期間使用できると考えられる.
著者
阪本 浩 永井 康平 坂田 弘 江草 拓
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.373, pp.93-102, 1986-09-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
2

Tomari-ohashi bridge is located at the Naha coastal way connecting four wharves of Naha Harbor, Okinawa. The type of this bridge is three-span continuous steel decked box girder of 170-meter center span. Tomari-ohashi bridge stands fifth in Japan as regards the length of center span of this type. This paper describes leading characteristics of the planning, designing, construction and erection method of Tomari-ohashi bridge, and also a detailed explanation is given showing wind tunnel test results and suppressing methods of wind-induced vibration, which requires particular investigations.
著者
市原 松平 丹羽 新
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:00471798)
巻号頁・発行日
vol.1956, no.38, pp.43-48, 1956-10-31 (Released:2010-08-24)
参考文献数
5

岸壁に作用する地震時土圧の諸性質, 並びに地震時における壁体の運動を明らかにするために, 著者らは人工地震発生装置を築造し, 同時に地震時土圧測定に関する一連の測定器を完成した。以下これらの実験装置の概略について述べる。
著者
高橋 浩司 白川 龍生 長沼 芳樹 佐野 至徳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.22-00139, 2023 (Released:2023-09-20)
参考文献数
13

積雪寒冷地での道路管理においては,既往の防雪対策を適切に評価することが重要である.防雪設備周辺の吹きだまり等を計測するには,近年活用事例が増えているUAV-SfM測量が効率的だが,積雪環境特有の条件から点群作成の可否や精度低下などの問題点が指摘されていた.そこで本研究では,雪面の雪質や下向き短波放射(明るさの基準),積雪表面の反射率に着目し,使用するカメラのセンサーサイズや撮影高度を変化させ,点群作成の可否とその精度を検証した.その結果,積雪環境下においても,点群が欠けることなく無雪期同様に作成できることを確認した.また,推定値と実測値の比較により,相対誤差の平均値−4%,標準偏差2%が得られた.このことから,吹きだまりを対象とした場合,実用上は問題ないことを明らかにした.
著者
丸山 健司 稲荷 優太郎 長谷 俊彦 神田 智之 加藤 秀章
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00099, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
22

橋梁の維持管理の観点から,橋梁用積層ゴム支承には長期の供用期間を確保するための高い耐久性が要求される.一方で,供用中のゴム支承の点検ではゴムのオゾン劣化に起因すると考えられる亀裂の発生事例が報告されている.この様な経年変化による損傷を受けたゴム支承の性能や残存耐力を把握することは,ゴム支承の維持管理において重要である.本研究では超高減衰ゴム支承(HDR-S)を対象として,有限要素解析(FEA)によるひずみ分布や,剥離面を有するモデルの解析結果を元にオゾン劣化による亀裂の進展範囲について検討した.さらにオゾン劣化による亀裂を模擬した供試体の破断特性を評価し,ゴム支承形状や亀裂深さと破断特性の関連性について考察した.