著者
野村 貴郎 Kiro NOMURA
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター年報 (ISSN:2432258X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-11, 2019-03-25

助動詞「です」の使用状況を,18 歳~24 歳の377 名に対するアンケートをもとに考察した。その結果,(1)動詞に接続する「です」の用法で,よく普及しているのは「~ませんでした」の形だけであるが,「~でしょう」の形に定着の傾向が見られること。それに対して「~です」や「~たです」の形は認められておらず,その他の形は,まだ“ゆれ”ていること。 (2) 形容詞に接続する「です」の用法は比較的よく普及しており,「~です」「~ですか」「~たです」の形は,ほぼ完全に定着していること。しかし,その他の形は,なお“ゆれ”ていること。 (3) 格助詞(準体助詞も含む)「の」「ん」に接続する「です」の用法は,少なくともこの調査からは徐々に衰退しつつあることなどがわかった。 また,1999 年のデータを用いて,この18 年間の使用率の変化も考察し,(4)形容詞に接続する「です」「~たです」の用法が,ほぼ定着していること。(5)動詞に接続する「~でしょう」の用法や,用言に接続する 「~ないです」の用法が,しだいに定着してきていることなどを確認した。
著者
山本 欣司 Kinji Yamamoto
雑誌
学校教育センター年報 (ISSN:2432258X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.39-47, 2018-02-23

別役実の短編小説「愛のサーカス」は、かつて中学校1 年生向け国語教科書に掲載されていた、ユニークな内容の教材である(『新しい国語1』、『新編新しい国語1』東京書籍、平成二年度~十二年度)。十年以上のブランクを経て、平成二十六年度より高等学校向けの国語教科書に掲載されることとなった(『探求現代文B』桐原書店、高校3 年生配当)。なぜこのように配当学年が大きく変わったのか。それは「細部の発見」によって、小説の解釈が大きく変化したためだというのが本稿の主張である。これまで見すごされてきた「細部」(根拠)に着目することで、中心人物の一人である少年の人物像の理解が深まると同時に、それと連動する形で変化したラストシーンの論理的な説明が複雑であるため、配当学年が大きく変化したのではないかと主張した。
著者
山本 欣司 Kinji YAMAMOTO
雑誌
学校教育センター年報 (ISSN:2432258X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.13-21, 2019-03-25

小学校国語教材「おてがみ」(アーノルド・ローベル)は、一般に理解されているように、手紙をもらったことが一度もなくて落ち込んでいたがまくんが、かえるくんから手紙をもらい、元気を取り戻す物語ではない。注目すべきは、がまくんを驚かそうと思ったかえるくんが、足が極端に遅いかたつむりに手紙の配達を依頼するというドジを踏んだことである。これにより、以降の展開はかえるくんの目論見通りにならず、がまくんの喜びも幾分か減じたはずなのである。ところが、その失策がかえって思いもかけない豊饒な結果をもたらすところに、この物語のユニークな特質がある。他者の孤独を癒やすための実践的な知恵が、さりげない形で盛り込まれているところに、「おてがみ」という物語の素晴らしさがある。
著者
古岡 俊之 Toshiyuki FURUOKA
雑誌
学校教育センター年報 (ISSN:2432258X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.45-59, 2017-03-01

西宮市立小学校の「学校要覧」平成20 年度版に掲載されている「校歌」を利用して,西宮市の公立小学校の校歌にうたわれている山と川について,特に地理的分布について検討した。この結果,山については六甲山,甲山のように地域を代表するような周囲から高く突き出した,目立った山が取り上げられ,取り上げられている山の数は少ない。これに対して,川は身近な自然として取り上げられる傾向にあり,したがって小学校に近接した川がうたわれる。武庫川はその好例である。環境教育の視点から教材化を期待している。脈々とうたい継がれてきた校歌は,児童に校区周辺の自然環境への関心や意識を高めているものと思われる。校歌詞の中から,山・川のみに限らず,児童の身の回りの環境にわたり,自然的・人文的環境の言葉を広く求めて,人々の生活とその地域の自然・風土とが深くかかわりあっていることを環境教育に生かしていきたいと考える。