著者
松嶋 祐子
出版者
専修大学人文科学研究所
雑誌
専修大学人文科学研究所月報 = Senshu University Institute of Humanities Monthly Bulletin (ISSN:03878694)
巻号頁・発行日
vol.306, pp.25-39, 2020-07-31

本稿では、犯罪・非行領域の心理臨床の特性について述べた。まとめると、①対象者にとっては半ば強制的な開始であり、低い動機付けであることが多いこと、②職員は様々な側面で二重役割(ダブル・ロール)であること、③時間的制約が厳格であること、④客観的事実が重視される場であること、である。④については、情報収集が主軸となる場でありながらも、臨床家としては主観的事実と客観的事実を丁寧に分けて、主観的事実についても掘り下げていくことが必要であることを事例も交えて紹介した。時間的制約の厳しい中、主観的事実を的確に捉えるには、面接者は複数の問いを立てられることが重要である。そして、犯罪・非行臨床の本質ともいえる対象者の動機づけに係る課題については、有意義なアプローチの一つとして動機づけ面接を紹介した。