著者
猪八重 涼子 深田 博己 樋口 匡貴 井邑 智哉
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.9, pp.247-263, 2009

本研究では, 裁判員裁判を想定した状況設定を行い, 質問紙実験によって, 裁判員を演じる実験参加者の判断に及ぼす被告人の身体的魅力の影響を検討した。独立変数は, 被告人の身体的魅力(高, 低), 被告人の性(女性, 男性), 実験参加者の性(女性, 男性)の参加者間変数であり, 従属変数の測定は事後測定計画であった。実験参加者は, 219名の大学生であり, 印刷された裁判資料を読んだ後, 質問紙に回答した。被告人の身体的魅力は, 裁判員の課す量刑を軽くすることが示された。そして, 被告人の身体的魅力の増加は, 情状酌量の余地の認知を高め, 犯行の性格への帰属を低めることによって, 裁判員の量刑判断を甘くし, 殺人罪適用を減少させることが実証された。本研究の結果は, 身体的魅力のステレオタイプが裁判員の判断に影響することを証明した。
著者
小島 奈々恵 大田 麻琴 高本 雪子
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.6, pp.71-85, 2006

大学生にとって,恋愛はとても関心の高い問題であり,恋愛における告白は恋愛関係を開始する上で重要なきっかけとなる.本研究では,恋愛における告白の成功・失敗の規定困について検討した.先行研究に習い,使用した規定因は,知り合ってから告白までの期間,告白時間,告白場所,告白方法,告白内容,告白時の相手の交際状況,交際行動であった.自分の恋愛感情に対する相手の気付きや,相手との年齢差をも新たに加えた.また,告白結果に最も影響を与えると考えられる告白者の魅力を個人特性として新たに加えた.知り合ってから3ヶ月末満に夜から深夜の時間帯に告白をしていること,二人で遊びや食事に行くなど二人きりになる交際行動を経ていること,告白時に交際の申し込みをはっきり伝えていることが,恋愛における告白の成功者のパターンであることが示された.Love is a high interest issue for university students, and confessing one's love is an important trigger to start a love relationship. The purpose of this study was to find the factors influencing success and failure of confessing one's love. As in the preceding study, factors used were the time needed until confession, the time of confession, the place, the method, the content, the kind of relationship the partner was involved in, and the kind of acts. Newly added were the partner's notice of the confessor's love and the age difference. Also, the confessor's attractiveness thought to give the most influence to the result of the confession was newly added as a personal trait. As a result, the confessor who was successful had confessed one's love within 3 months since the acquaintance with the partner between night and mid-night, had made time to be alone together by going out together or by going out for a meal together, and had made a proposal for a relationship at the time of confessing one's love.
著者
樋口 匡貴 磯部 真弓 戸塚 唯氏 深田 博己
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.1, pp.53-68, 2001

本研究は,恋愛関係における効果的な告白方策としての言語的方策を明らかにすることを第1の目的とし,そうした告白方策の効果に関する状況差を明らかにすることを第2の目的とした.大学生18O名に対し,19種類の告白の言語的方策を呈示し,それぞれの告白を受けることによって,相手との関係が進展する程度を尋ねた.また状況要因として,告白者に対する被告白者の好意(片思い,両思い)を操作した.因子分析の結果,恋愛の告白に使用する方策は,"単純型","懇願型","理屈型"の3種類に整理されることが明らかになった.さらに,2(性別)×2(状況)×3(言語的方策)の3要因の分散分析を行った結果,①両思い状況で告白した方が片思い状況でよりも関係が進展しやすい,②単純型の告白を用いた場合にもっとも関係が進展しやすい,③単純型告白方策の効果の優位性は,状況および性別を問わない,ということが明らかになった.これらの結果が,言語的方策の持つイメージの点から考察された.
著者
塚脇 涼太 新入 智哉 平川 真 深田 博己 樋口 匡貴
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.10, pp.321-327, 2010

本研究では, メガネの着用が対人印象に及ぼす影響を検討した。実験参加者は大学生24名であった。実験計画は, メガネ要因(黒のセルフレーム, 銀のメタルフレーム, サングラス, メガネ着用なし)を独立変数とする1要因4水準の実験参加者内計画であり, 男子学生の上半身を撮影したカラー写真(3タイプのいずれかのメガネを着用, もしくは着用なし)4枚について, 形容詞対による印象の評定を行った。黒のセルフレームのメガネは, 社会的望ましさを高めるが, サングラスは低めることが示された。また, サングラスは活動性を高め, 穏和性を低めることも示された。これらの結果から, メガネの着用が影響を及ぼす対人印象は, メガネのタイプによって異なる可能性が示唆された。
著者
澤 成都子 森永 康子
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.13, pp.45-59, 2014-03-31

就職面接は内定の成否に深く関わる重要な活動であるが,面接に自信のない大学生が多く,精神的健康に悪影響が及んでいるという問題がある。本研究ではなぜ面接を苦手とするのか,就職面接場面で求められている自己高揚呈示に着目して検討した。就職活動が身近な大学生を対象として2つの調査を行った結果,自己卑下呈示規範を内在化しているために面接の自己アピールに対して自己嫌悪といった否定的意識を抱くこと、並びに志望する企業が求める基準に自分が達していないと感じることによってもネガティブな影響が及ぼされることが明らかとなった。このことから,自己高揚呈示で生じる呈示する自己と自己概念の不一致ではなく、企業が求める人材像と自己概念の不ー致によって,大学生は面接を苦手に感じることが示唆された。また,内定を獲得している人は、面接の自己アピールに対して否定的意識を抱かず,精神的健康が高いことが示された。
著者
深田 博己 平川 真 塚脇 涼太
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.10, pp.27-36, 2010

本研究では、詐欺の一種である架空請求を虚偽説得として利用した。そして、虚偽説得メッセージ(架空請求ハガキ)を実験参加者に提示した後、説得者の意図に関する事後警告を提示し、その効果を測定した。事後警告情報には、説得意図(PI)、虚偽意図(DI)、情緒喚起意図(EI)の3タイプを使用した。実験計画は、事後警告要因(3種類の単一タイプと4種類の結合タイプの事後警告、および無事後警告)と実験参加者の性(男性、女性)の8×2の2要因実験参加者間計画であったが、実質的に2×2×2×2の4要因実験参加者計画であった。従属変数の測定には事後測定法を用いた。4要因分散分析の結果、①EIタイプの事後警告が有る場合には、PIタイプの事後警告は連絡行動意思を抑制すること、②PIタイプの事後警告は無いが、EIタイプの事後警告がある場合には、DIタイプの事後警告は振込行動意思を抑制することが分かった。また、共分散構造分析の結果、微弱ではあるが、DIタイプの事後警告は、メッセージ評価を低下させて、振込行動意思を抑制することが解明された。
著者
國田 祥子 中條 和光
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.9, pp.27-35, 2009
被引用文献数
1

携帯電話のディスプレイ上で読まれている, いわゆるケータイ小説の書式は, 改行が多く, センテンスが短めであるといった特徴があり, 一般的な小説の書式と大きく異なっている。このような書式の特徴は, 携帯電話のディスプレイで文章を読みやすくするために経験的に編み出されたと言われている。しかし, 実際にその書式が読み手に対してどのような効果を持っているのかは調べられていない。本研究では, 携帯電話のディスプレイと紙面において, ケータイ小説を模した書式(ケータイ書式)と一般的な書式(一般書式)で小説を呈示し, 読み時間測定, 読みやすさ評定, 文章の印象評定を行った。その結果, 携帯電話で読んだ場合はケータイ書式の方が読み時間が短く, 読みやすいと評定されたが, 紙面で読んだ場合は差が見られなかった。また印象評定の結果から, 携帯電話で読んだ場合はケータイ書式の方がやわらかく積極的で活発, もしくは明るく派手な印象を与えるのに対し, 紙面で読んだ場合はケータイ書式の方が消極的で静かで不活発で地味な印象を与えることが見いだされた。以上の結果から, ケータイ書式は携帯電話での文章呈示における工夫として有効であることが示された。
著者
渋川 瑠衣 松下 姫歌
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.10, pp.171-183, 2010

近年, 大学生の自己のあり方に関して, 多様化・質的な変化を指摘する知見が多く見られるようになった。本稿では, 特に近年の学生相談の文脈で指摘されている「悩めない」大学生に注目し, その心理的特徴や自己にまつわる課題について整理した。その中で, 現代大学生の自己の特徴として, 状況依存的で, 相手に合わせて意識的・無意識的に変化するあり方があることが示された。また, 従来の一貫性の保たれた自己としてのあり方ではなく, それぞれの自己側面の繋がりが失われ解離・断片化していく新たな自己のあり方が一般化している傾向があることが推測された。本研究では更に, 自己の変動性・多面性研究に関する実証的研究を整理し, その問題点と課題を指摘した。その上で, 学生相談などの臨床場面における大学生の自己に関する理解をすすめるためには, 意識されている側面と意識されない側面を含めた大学生の自己に関する主観的体験を重視する必要性があると考えられた。
著者
蔵永 瞳 片山 香 樋口 匡貴 深田 博己
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.8, pp.41-51, 2008

大学生を対象に, いじめ場面における傍観者の役割取得と共感が傍観者自身のいじめ関連行動に及ぼす影響について検討を行った。調査においては, 役割取得と共感の対象として, いじめ場面における加害者, 被害者, 観衆, 傍観者の4者を仮定した。243名を対象としたシナリオ法を用いた質問紙調査を行った結果, 役割取得は加害者, 被害者, 観衆, 傍観者の4者全てに対して生じていたのに比べて, 共感は加害者, 被害者, 傍観者の3者に対してのみ生じていた。さらに, 傍観者のいじめ関連行動には, 「はやしたて行動」, 「被害者援助行動」, 「傍観行動」の3種類があり, このうち「はやしたて行動」はいじめ場面においては生じないことが示された。これらの変数を用いて因果モデルを検討した結果, いじめ関連行動に対して影響を持つのは, 共感よりもむしろ役割取得であることが示された。また, 傍観者に対する役割取得は被害者援助行動を抑制, 傍観行動を促進し, それとは逆に被害者に対する役割取得は被害者援助行動を促進, 傍観行動を抑制することが明らかとなった。
著者
岡本 祐子 新田 啓
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.18, pp.55-66, 2019-03-31

本稿は第二著者である新田啓の卒業論文を加筆修正したものである。
著者
淡野 将太 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.7, pp.311-314, 2007
被引用文献数
1

The present study categorized nicknames of Japanese undergraduates and examined their feelings toward nicknames. Results categorized nicknames into 12 categories: "nickname related to one's name", "name with -chan" (e.g., Yuki-chan), "famous person", "name with -kun or -san" (e.g., Yuki-san), "appearance", "nickname related to one's nickname", "psychological attributes", "another reading on Kanji of one's name", "occupational role", "object", "hometown", and "unidentified". And results indicated that undergraduates felt "nickname related to one's name", "name with -chan", and "name with -kun or -san" happier than "famous person" and felt "name with -chan" happier than "appearance".
著者
松下 姫歌 橋村 裕治
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.8, pp.271-280, 2008

本研究では, 青年期における自己愛傾向は自我同一性の感覚に寄与する健康な側面をもちうるという仮説のもと, 大学生の自己愛傾向と自我同一性との関連を検討した。自己愛人格目録短縮版(NPI-S)の下位尺度の主成分分析によって抽出された「自己愛総合」と「注目-主張」の2成分の高低によって対象者を4群に分類し, 多次元自我同一性尺度(MEIS)の総合得点および下位尺度得点を比較したところ, 全体的な自己愛傾向の高い群は低い群よりも自我同一性達成感を強く持つという結果が示された。このことから, NPI-Sによって捉えられる一般青年の自己愛傾向の高まりは, 病理的な自己愛とは異なり自我同一性達成に寄与するものであると言える。また, 自分の感覚を軸に自己を捉える群の方が, 他者の視点を介して自己を捉えようとする群よりも, 自分の理想や願望を明確に意識していることが示された。
著者
山田 恭子 堀 匡 國田 祥子 中條 和光
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.9, pp.37-51, 2009

近年, 生きる力の育成の観点から, 自己調整学習(Zimmerman, 1986, 1989)に関心が集まっている。自己調整学習では, 学習方略をプランニングする過程が重要とされる。そこで, 本研究では, 達成動機と自己効力感が学習方略の使用とどのような関係にあるかを調べた。具体的には, 達成動機と自己効力感を測定し, それらの高低の組み合わせで学習者を4つの群に区分して, それぞれの群の学習方略使用を比較した。調査の結果, (1)自己充実的達成動機の高い学習者は, 低い学習者よりも, 抽象的学習方略(例: 授業中先生の話をよく聞く), 基礎的学習方略(例: 覚えたい内容に線を引く), 自己調整的学習方略(例: 自分で自分の成果をほめる)を使用すること, (2)競争的達成動機の高低のみでは, 学習方略の使用について説明が困難であること, (3)自己効力感が高い学習者は, 低い学習者よりも抽象的学習方略, 基礎的学習方略, 自己調整的学習方略を使用するのに対し, 自己効力感の低い学習者は不適応的学習方略(例: 一夜漬け)を使用することが示唆された。これらの結果を考慮することによって, 学習者の適性に応じた学習指導が可能になり, 自ら学ぶ力の向上に貢献できることを考察した。
著者
大石 郁美 岡本 祐子
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.10, pp.257-272, 2010

本研究では青年期における希望と挫折経験及びアイデンティティ, 目標との関連を検討することを目的とした。研究Iの質問紙調査の結果, 希望とアイデンティティは全ての側面, 目標とは確信度, 準備性, 満足度, 達成手段において関連がみられた。また, 過去の挫折経験の有無によって希望の高さに差がみられないことが示された。研究IIでは, 挫折経験と未来の捉え方に関して半構造化面接を行った。その結果, 挫折経験以前は「自己信頼感」を持ち, 未来に対しては『漠然とした見通し』『肯定的見通し』『具体的見通し』『短期的見通し』を持っている。しかし, 挫折経験以後は見通しを失い否定的感情に支配される『希望の喪失』を引き起こし, 「自己不信感」に陥ることが示された。また, その後「努力」をしていく中で他者の支えや課題達成によって自信が回復し, 希望も回復するという過程が見出された。最終的には, 「肯定的意味付け」あるいは「否定的意味付け」の段階に至ることが示され, このような挫折経験の意味付けに他者の支えが影響していることが示唆された。
著者
中岡 千幸 兒玉 憲一 高田 純
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.11, pp.215-224, 2011

本研究の目的は,援助要請不安,援助要請期待,悩みの程度および援助要請意図の関連を共分散構造分析を用いて,定量的・構造的に明らかにすることであった。悩みの存在が,援助要請不安および援助要請期待に影響を及ぼし,さらに,その2変数が援助要請意図に影響を及ぼすと仮定するモデルを構成し,共分散構造分析による解析を行った。その結果,援助要請不安と援助要請意図との間に直接の関連は見られず,悩みの存在が,援助要請意図に影響を及ぼしていること,悩みの存在が,援助要請期待を誘発し,援助要請意図に影響を及ぼしていること,援助要請不安は,援助要請期待を介して,援助要請意図に影響を及ぼしていることが示唆された。これらの結果から,援助要請期待を高める心理教育が,サービスギャップ克服のために有効であることが示された。
著者
宮谷 真人 中條 和光 白濱 愛実 迫 健介
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-10, 2005-03-28

改正道交法が施行(2004年11月1日)され,運転中の携帯電話の使用が罰則の対象となった.一方,手に持たなくても通話できるハンズフリー装置は,規制の対象からはずされている.本研究は,通話に手を用いないことが,運転時の通話の危険性を多少とも減少させるかどうかを検討した.大学生16名が実験に参加した.主課題は,画面のさまざまな位置に呈示される視覚刺激に対して6種類の反応の一つを行うことであった.副課題として,左手でヘッドフォンを耳にあてる,イヤフォンから聞こえてくる数字列を逆唱する(イヤフォン条件),ヘッドフォンを耳にあて聞こえてくる数字列を逆唱する(携帯条件),の3つがあり,各条件における反応時間および眼球運動を,副課題を行わない条件と比較した.その結果,イヤフォン条件と携帯条件で同程度の反応遅延が生じた.したがって,ハンズフリー装置を用いても,運転時の通話の危険性は全く減少しないことがわかった.また,反応時間と眼球運動の妨害効果の比較から,視線行動が影響を受けないからといって,運転パフォーマンスも影響を受けないとはいえないことが示された.
著者
中村 多見 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.3, pp.147-155, 2003

本研究では,「怒り経験(誰にどのようなことをされて,どのくらいの怒りを感じたか)」と「怒り対処方法(その怒りを誰に対して,どのように対処したか)」について,怒りを感じた対象(怒り対象)とその怒りを表出した対象(表出対象)が同じ場合の「一致群」と異なる場合の「不一致群」との比較検討を行った.調査対象は,大学生および大学院生180名であり,エピソード法を用いた質問紙調査を行った.その結果,一致群と不一致群のいずれの場合も,友人や恋人・配偶者などの身近な人物が怒り対象になりやすく,怒り対象への好意度は一致群の方が不一致群より高かった.また,不一致群が表出対象として多く挙げていたのは,怒り対象とは別の友人や恋人・配偶者であり,怒り対象よりも好意度が高いという特徴を有していた.このことから,大学生の怒り対象と表出対象の一致と不一致の規定因に,怒り対象もしくは表出対象への好意度があることが明らかになった.さらに,不一致群の方が一致群よりも言語的表出という怒り対処方法を多用していた.
著者
小早川 茄捺 石田 弓
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.19, pp.153-165, 2020-03-31

There are many advantages to conducting educational counseling in schools, where teachers are an effective support resource for junior high school students. However, junior high school students are often hesitant to share their issues with their teachers. This study examines how junior high school students' "teachers' images" are linked to "intent of consultation behavior" and "expected costs/benefits of consulting behavior." To examine "teachers' images," we used the "Nine-in-One Drawing Method (NOD)" that allows capturing multiple images at once. For analysis, we divided students into four groups based on the teachers' images indicated by the NOD. The result showed that students who have positive teachers' images were more likely to present consultation behavior. In contrast, students who have negative teachers' images feared that consultation would lead to disclosure of secrets and/or a poor evaluation. Therefore, positive images of teachers are considered important in promoting consultation behavior from students.
著者
大塚 泰正
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.8, pp.121-128, 2008

理論的作成方法による代表的なコーピング尺度として, C.S.CarverによるCOPE, Brief COPEを紹介した。COPE, Brief COPEは, Lazams & Fo1kman(1984 本明他訳 1991)の心理学的ストレスモデルと, Carver & Scheier(1981, 1998)による行動自己制御モデルに基づき, 作成された尺度である。COPEは15下位尺度60項目, Brief COPEは14下位尺度28項目で構成される。筆者らは, COPE, Brief COPEの日本語版を作成し, 信頼性・妥当性の検討を行った。その結果, まずまずの信頼性・妥当性を確認することができたものの, 一部α信頼性係数が低い下位尺度が認められるなど, 今後再検討が必要である点も認められた。
著者
森永 康子 船田 紗緒里 小川 葵 野中 りょう 矢吹 圭 董 星宇
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.18, pp.189-198, 2019-03-31

本論文は,2018年度に広島大学教育学部で開講された心理学課題演習において,第1著者の指導により第2著者から第6著者が実施した研究をもとに執筆したものである。研究の一部は第2著者から第5著者により中国四国心理学会第74回大会学部生研究発表会において報告された。また,本研究はJSPS科研費JP18K03007の助成を受けた。