著者
長谷川 久弥 川暗 一輝 井上 壽茂 梅原 実 高瀬 真人
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.80-84, 2008-06-30 (Released:2011-06-07)
参考文献数
8

先天性中枢性肺胞低換気症候群 (オンディーヌの呪い, 以下CCHS) は睡眠時に低換気を呈する稀な疾患である。今回, 本邦におけるCCHSの実態把握のため, 全国アンケート調査を施行した。23施設から37例のCCHS症例の回答が得られた。主な結果は以下の通りである。症例背景: 男児18例, 女児19例, 在胎週数39.2±2.1, 出生体重2917±360g, 年齢4ヶ月-34歳。診断方法: 臨床症状37/37 (睡眠時低換気37/37, 覚醒時低換気9/37), 血液ガス分析25/37, 炭酸ガス換気応答14/37, 遺伝子解析 (PHOX2B) 13/37。合併症: Hirschsprung氏病13/37, 中枢神経合併症15/37, 他。転帰: 病院内死亡3/37, 入院中1/37, 在宅人工換気33/37 (死亡4/33, 施行中29/33), 治癒0/37。呼吸管理法: 気管切開21/37, 鼻マスク9/37, フェースマスク5/37, 横隔膜ペーシング1/37。今回の検討で本邦におけるCCHSの現状を把握することができた。CCHSの診断, 管理等は様々な方法が行われており, 統一されたものはなかった。今後, 症例の蓄積をすすめ, 適切な診断, 管理法を検討していく必要があるものと思われた。
著者
吉田 之範 井上 壽茂 亀田 誠 西川 嘉英 高松 勇 土居 悟
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.103-107, 2004-12-25 (Released:2011-01-25)
参考文献数
11

我々は低出生体重児であることが気管支喘息に与える影響について症例対照研究により検討した。当院小児科に通院中の8歳以上の喘息患者で出生体重1500g以上25009未満の低出生体重児15名を症例群とした。各症例に対し1) 当科初診時年齢, 2) 生年月日がほぼ合致し, 3) 8歳時に喘息で当科通院していた, 4) 出生体重25009以上の児を合致順に2名ずつ抽出し, この30名を対照群とした。両群を比較した結果, 初診時の喘息重症度に差はなかったが, 8歳時の喘息重症度は症例群で有意に高かった (p<0.01) 。また, 吸入ステロイド薬の使用頻度 (症例群8名/15名, 対照群4名/30名: p<0.01) においても症例群で有意に高かった。このことから低出生体重児であることが喘息重症化に直接関わっている可能性が示唆された。
著者
西間 三馨
出版者
Japanese Society of Pediatric Pulmonology
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.10-26, 1990

国療南福岡病院小児科における気管支喘息の年間登録患者数は, 1975年: 466人, 1988年: 2, 140人と4.6倍, 発作入院患者数は1975年: 121例, 1988年: 1, 005例の8.3倍となっているが, 死亡患者は年に1例の率で出ており, その多くは自宅死亡かDOA (death on arrival) である。これらのことは病態の解明などに伴って, 喘息の管理が飛躍的に向上したことを物語っている。<BR>しかしながら, 重症または難治型喘息児の予後は必ずしも良好なものではない。発症後20年の重症児の予後をみた我々のデータでは治癒: 40.9%, 死亡: 5.4%となっており, 死亡の73.3%は思春期児の急死であった。このように, とくに思春期の年齢層はpsycho-socio-economical handicapが加わった場合に極めてコントロールが困難となっている。<BR>一般的に喘息がコントロールしやすくなったことは確かではあるが, 重症難治型の喘息児には, 多種薬剤の長期使用の弊害, 日常生活の障害, 進学就職上の障害, 夜間救急体制の不備, 周辺社会の無理解など, 多くの問題があり, 社会的視野を持った真の意味でのtotal careの確立が強く望まれる。
著者
高松 勇
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.77-88, 1999-12-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
43
被引用文献数
1

の有効性に関しては「結核性髄膜炎や粟粒結核などの重症結核には高い有効性を認め, 肺結核は50%発病率が低くなる」というメタアナリシス結果が現在世界のBCG評価のコンセンサスとなっている。再接種の効果に関しては十分な根拠が無く世界の流れは否定的であり, 現状では初回接種の洩れ者対策として位置付けられる。安全性の評価では, 「最も安全性の高いワクチン」のひとつであると考えられるが, 一方で副反応調査の強化が必要である。わが国の現状では初回接種は中止できず, むしろ初回接種の充実が課題である。現在の課題は, 初回接種を充実しながら, 一方で副反応調査を強化して, 厳密にRisk-Benefitを評価できる体制を整備することが急務である。初回接種を充実強化すれば再接種廃止の時期が到来する。
著者
山本 剛 松本 一郎 満留 昭久 原田 達夫 小田嶋 博
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.16-22, 2003-06-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

急性間質性肺炎に対しクロロキンを投与し著効した7ヶ月女児例を報告する。発熱・咳噺・多呼吸にて発症し, 胸部X線写真上びまん性スリガラス様陰影を呈し急性1呼吸不全に進行した。3回に及ぶステロイドパルス療法およびステロイド内服による維持療法にて症状の増悪を繰り返したため, 海外においてその効果が報告されているクロロキン療法を行った。10mg/kg/性を分2で6ヶ月間内服投与した。ステロイド内服および酸素投与が中止可能なまでに改善し, 体重増加も認め著効を示した。クロロキンは不可逆性の網膜症の合併が問題となり現在本邦では販売されていない。しかし海外の小児報告例では上記使用法にて網膜症の合併は見られていない。急性問質性肺炎をはじめとする特発性問質性肺炎は予後不良な疾患で肺移植の適応を余儀なくされる場合もある。国内では小児の肺移植は未だ困難な状況であり, 有効な薬物治療としてクロロキン療法を確立すべきである。
著者
永井 仁美 下内 昭 高松 勇
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.130-136, 2009-01-31 (Released:2011-01-25)
参考文献数
4

小児結核患者数が減少しており, 小児結核対策は集団的・一律的対策よりも個別的・重点的対策に比重を移していくべきである。そこで, 大阪地区では「医療機関・保健所の合同症例検討会」を2003年度より連続4年間実施している。その年度に登録された小児結核患者症例を, 医療機関と保健所が一堂に会して検討することにより, その予防, 治療支援, 患者背景などに関して共通の理解を得, また共同していく基盤を確立し, 実際に小児結核患者の治療支援や発生予防に活かしてきた。4年間で参加者の人数は増加傾向にあり, 医師・保健師・看護師のみならず多職種の参加が見られてきた。全国的に見ると, 小児結核患者の発生は, 都市部に多く見られており, この検討会方式の対策は, 今後全国の都市部における結核対策への拡大が可能であり今後の行政施策に大きく貢献できる可能性がある。
著者
東川 昌紀 梅野 英輔 松本 一郎 小田嶋 博 西間 三馨
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.12-17, 1993

気管支喘息児11名に, single blind crossover法を用いて抗コリン薬であるipratropium bromide (以下I.B.) をスペーサーを用いて吸入させ, 非発作時の換気機能および高張食塩水吸入試験における効果を検討した。1) 非発作時の換気機能において, 末梢気道の指標とされるMMFやV<SUB>50</SUB>は低値を示した。2) I.B.吸入30分後には, FVCを除くパラメーターで気管支拡張作用を認めたが, MMFやV<SUB>50</SUB>においてより大きな改善が認められた。3) I.B.の前処置30分後には, 高張食塩水吸入試験の吸入閾値 (PD<SUB>20</SUB>.) は有意に低下した。以上の結果は, 抗コリン薬吸入による気管支拡張作用は末梢気道においても認められ, 喘息児の非発作時に認められる末梢気道の猿窄には, 迷走神経の持続的緊張状態が関与する可能性を示唆した。さらに, 非特異的気道過敏性の機序における迷走神経の関与が示唆された。
著者
高松 勇
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.115-130, 2002-12-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
53

結核予防法を含めた結核対策の包括的な見直しが提言され, 小児科領域では2003年度からBCG再接種の廃止, 学校健診の廃止が実施される。また, BCG接種は乳児への単回接種が基本となり, 原則とて生後6カ月までの直接接種法 (BCG接種前のツベルクリン反応を省略) が導入され, 1歳6カ月健診, 3歳児健診で接種状況と接種技術の評価が行われる予定である。まさに小児結核対策は転換点にある。改正の基本理念は, 従来から実施されてきた集団的一律的対応の効率が悪く, ハイリスク・デインジャー層を重視した個別的重点的な対応で効率的対策に転換することである。積極的疫学調査 (接触者健診) の充実, 強化, 感染小児に対する化学予防の徹底, 医療の質の向上, 有症状受診の呼びかけ, 小児結核サーベイランス体制の強化等が求められ, そのための対策の改善が課題である。
著者
加野 草平 西間 三馨
出版者
Japanese Society of Pediatric Pulmonology
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.73-77, 1990

全国の大学病院ならびに日本小児呼吸器疾患学会参加施設 (計265施設) に対し小児の在宅酸素療法 (HOT) に関するアンケート調査を行なった。HOT対象児は106例 (男63例, 女43例) で, 平均年齢は5.2歳, 67.9%が5歳以下の症例であった。対象疾患では, 呼吸器疾患が61例 (57.5%) と最も多く, 心血管系疾患35例 (33.0%), 多発奇形および神経筋疾患12例 (11.3%) であった。HOT開始時の動脈血液ガス所見では, 大気吸入下でPaO<SUB>2</SUB>48.5±15.0mmHg, PacO<SUB>2</SUB>46.3±12.5mmHg (n=59) であった。酸素供給源の種類は, 吸着型酸素濃縮器が68例 (64.2%) と最も多く, 膜型28例 (26.4%), 酸素ボンベ13例 (12.3%) であった。HOT施行例の転帰については, 死亡18例 (17.0%) で, 病状の改善によるHOT中止例が30例 (28.3%) 存在していた。小児のHOTの特徴として, 低年齢児, 小児特有の疾患を対象とすることが多く, また将来HOTを中止できる症例がかなり存在すること等があげられる。