著者
廣田 龍平
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本分科会では、日本の「妖怪」概念の再検討を出発点として、前近代的な民間伝承から最先端の科学技術までを事例として取り扱い、フィールドにおける「有形と無形のあいだ」のものと人々とが織りなす関係性にアプローチすることを試みる。これは調査者の世界とフィールドの世界の二分法を問い直す一つの試みである。
著者
廣田 龍平
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表は、日本の「妖怪」を人類学的に把握することを通じて、「無形と有形のあいだ」に現われるフィールドの諸対象を位置づける概念として提示するものである。事例として用いるのは、柳田國男が昭和初期に著した「妖怪名彙」に現われる妖怪、そしてネット怪談として知られる「くねくね」という妖怪の二つである。
著者
中野 惟文
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

本発表では、現代カンボジア社会の呪術的実践の場において、呪術師の言葉や行為だけでなく、その場を囲んで実践を見守っているクライエントや見物人同士のコミュニケーションにも注目しながら、呪術のリアリティがどのように形成されるのかを明らかにする。
著者
石田 智恵
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本報告は、アルゼンチン最後の軍事政権(1976-83)の弾圧によって生み出された「失踪者(行方不明者)」という存在の特殊性を論じる。生と死の間に突如挿入され延長される「失踪」という個人の欠如、その不確定性は、親族にとってどのような現実なのか、またその「失踪者」の「死」が確定されることは、家族にどのような変化をもたらすのかといった問いについて、失踪者家族会のメンバーへの聞き取りを基に考察する。
著者
大戸 朋子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表は、「腐女子」と呼ばれる男性同性愛を主題とするフィクションや想像などを嗜好する少女/女性たちの二次創作活動とメディア利用を対象として、メディアを含むモノとの連関の中で形成される腐女子のつながりとはどのようなものであるのかを明らかにするものである。調査からは、二次創作を行う腐女子のつながりが、個々人の「愛」という不可視のモノを中心に形成され、メディアを通して評価されていることが明らかとなった。
著者
中生 勝美
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

第二次世界大戦中に、アメリカの人類学者の90%が軍事・政治組織にかかわっていた。人類学者を、軍事的な活動の必要に応じて差配していたのはクラックホーンであった。アメリカの対日戦を理解するためには、日本語資料を駆使する必要がある。今回、4つの事例から日本との戦争を通じて、アメリカの人類学がどのように変容し、国家機関や軍事部門に如何にかかわっていったのかという観点から、アメリカの人類学史を描いてみる。
著者
濱野 千尋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

2016年の秋および2017年の夏の合計4か月間、ドイツにて行った動物性愛者たちへの調査から得られた事例を通して、人間と動物の恋愛とセックス、および動物性愛というセクシュアリティの文化的広がりについて考察する。異種間恋愛に見られる人間と動物の関係をダナ・ハラウェイの伴侶種概念を基盤に説明するとともに、動物性愛者のセックスが抑圧から脱する可能性を検討したい。
著者
河西 瑛里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.166-166, 2008

キリスト教到来以前のヨーロッパにおける信仰の復興運動、ネオペイガニズムを通して、伝統の創出について考える。本運動は、外部からは創られた伝統とされるが、当事者は過去との連続性を主張し、「本物」の信仰の復興をめざしている。その一方で、北米やオーストラリアの先住民族の文化を積極的に取り入れている。ここでは、とりわけドルイドの実践を取り上げ、彼らがなぜ「伝統」を復興させようとしているのか、考えてみたい。
著者
島田 将喜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

ヤンバルクイナは、やんばる地方のみに生息する無飛翔性鳥類である。琉球人の共存の歴史は長いが、民間伝承の中にクイナは明示的に登場しない。クイナは赤い嘴と足で忙しく地上を走り回り、道具を用いて大型のカタツムリを食べる。沖縄のキジムナーのもつ特徴は、クイナのもつ形態・行動的特徴と類似している。鳥と人間との境界的特徴が、現実世界と異世界の境界的存在としての妖怪のモチーフとなったとする仮説について検討する。
著者
西江 仁徳
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

野生チンパンジー研究の現場での実践について、「ある特殊な生業に従事しているエスニックグループ」として野生動物研究者をとらえ、その一員としての発表者自身の経験を内省的に記述することで、現場での異種混淆的な知の創出過程を捉え直す。
著者
李 セイ
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表では日本東京都北区王子市での調査中に出てきた「カワイイ妖狐」について語りの読み解きから、現代日本都市部における「大衆的な妖狐」の認識について試論を展開する。「カワイイ妖狐」の特徴を捉え、「民俗的キツネ」と「学術的キツネ」から受け継いだ連続性を検討する。また、同じく「妖狐」として扱われているが、おおむね同じ存在ではないと主張する。
著者
片岡 樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

愛媛県菊間町の秋例祭に登場する牛鬼は、当初は妖怪として想像されたが、のちに疫病よけの御利益を期待され、今日に至っているものである。牛鬼は神輿とは異なり正式には神としての扱いを受けないが、にもかかわらずいくつかの場面では神の類似行為を遂行する。なかば祀られた存在であり、神に限りなく近づいてはいるがなおかつ神にはなれていない存在としての牛鬼から、神とは、宗教とは何かについて考えたい。
著者
濱 夏
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

発表者は、レヴィ=ストロースによる神話研究を手がかりにしながら、現代日本でサブカルチャーとして消費される漫画などのコンテンツを、神話として研究する「立体としての神話」研究の枠組みを模索している。本発表では特にクルアーンと古事記についての先行研究を継承し発展させながら、CLAMPの漫画を取り上げて図像(モチーフ)と音(セリフなどの反復やリズム)の観点から事例分析を試みる。
著者
シンジルト
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

毎年夏至の日に、中国南西部の広西チワン自治区玉林市において開かれる犬肉祭は、しばしば動物(犬)の生きる権利(狗権)を優先すべきか、それとも人間の動物の肉を食する権利(人権)を優先すべきかをめぐる議論の絶好の材料として位置付けられてきた。そこで、犬や犬肉そして犬肉祭は、副次的なものあるいは一種の結果としてしか理解されてこなかった。本発表では、犬肉や犬肉祭を主役に位置付け、ほかならぬ犬という非人間との関係において、人間の本来あるべき姿をめぐる議論が、いかに、俎上に載せられているかを、民族誌的な情報をもとに考察していきたい。
著者
濱野 千尋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

本発表の目的は、ドイツにおける動物性愛者の任意団体「ZETA(Zoophiles Engagement fur Toleranz und Aufklarung/ Zoophiles Commitment for Tolerance and Awareness/ 寛容と啓発を促す動物性愛者委員会)」に属するメンバー8名へのインタビュー・データをもとに、人間と動物の関係、特に獣姦(Bestiality)および動物性愛(Zoophilia, Zoosexuality)を考察することである。
著者
山口 未花子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.260-260, 2008

カナダの狩猟採集民であるカスカの人々にとって、ヘラジカは最も重要な狩猟対象動物である。本発表ではヘラジカ皮の利用方法について明らかにすると共に、その実用性や経済的側面、文化的な価値について検討する。そしてヘラジカ狩猟活動系においてヘラジカと人間との関係を維持する精神的な戦略としてヘラジカ皮利用を位置づけると共に、他の動物の皮利用との比較を行いカスカ社会におけるヘラジカの重要性を明らかにしてゆく。
著者
福西 加代子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.158-158, 2009

日本国内に散在する自衛隊基地や在日米軍基地で毎年、航空ショーがおこなわれている。航空ショーでは、地上での戦闘機への試乗や、飛行展示などをメインとして、自衛隊や米軍の地域社会での活動の紹介や、軍用機の技術を幅広く展示している。本発表では、2008年に日本各地でおこなった、航空ショーでのフィールドワークをもとに報告し、航空ショーにおける軍事力展示の位置づけを示す。
著者
小川 絵美子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.187, 2009

タイの大学には「ラップ・ノーン」と呼ばれる学科別のイニシエーションが存在する。新年度の一定期間、新入生は上級生から過酷な試練を課され、それを乗り越えてはじめて新入生は上級生に「ノーン」つまり、後輩として認められるという学生たちによる伝統である。2008年6月にチェンマイ県の大学で実施した短期調査から、ラップ・ノーンの発生と存続の要因を蓋然性という観点から考察した。
著者
深田 淳太郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.90, 2010

トーライ人は貝殻貨幣タブを、モノの売買、婚資の支払など多様な用途で使う。だが、タブがロロイという形態になると、彼らはそれを使えなくなる。モノも買えず、婚資も支払えない。ロロイはただ持ち続けるだけの貨幣である。トーライ人は勤勉・倹約に努め、その使えない貨幣を大きくすることに力を尽くし、そして、それを使わないままに死んでいく。本発表ではこの使えない貨幣とトーライ人の一生涯の関係について考察する。
著者
松田 さおり
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.64, 2012

本報告は、日本のナイトクラブで働く女性の接客場面における感情労働を、<色で売る>および<いい人間関係>という銀座ホステスの現場概念から分析するものである。ジェンダーの差異と客-ホステス間の非対称性から一層の困難を抱えるホステスが、客を「叱りつける」という「自律的」な感情労働場面を詳細に検討することで、感情労働概念における「他律性」と「自律性」を再考することにつなげたい。