著者
永田 浩一 田尻 久雄 光島 徹 歌野 健一 高林 健 渡辺 直輝 赤羽 麻奈 加藤 貴司 平山 眞章
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.435-444, 2013 (Released:2013-05-21)
参考文献数
33

【目的】大腸3D-CTを用いて日本人とアメリカ人の大腸の長さを比較した.【対象】50歳以上の日本人とアメリカ人650名ずつ,合計1,300名を対象とした.【結果】全対象における全大腸の長さの平均は日本人とアメリカ人でそれぞれ154.7cm,158.2cm,(p値:0.003,効果量:0.17),S状結腸と直腸を合計した長さの平均はそれぞれ63.3cm,62.5cm,(p値:0.23,効果量:0.07)であった.世代別では,50歳代で全大腸の長さの平均は日本人とアメリカ人でそれぞれ153.2cm,155.6cm,60歳代で155.2cm,159.3cm,70歳代で161.8cm,165.2cmで,日米ともに世代が上がるにつれて有意に長くなった.【結論】日本人とアメリカ人の大腸の長さの差に実質的効果はみられずほぼ同等である.一方,日米ともに世代が上がるにつれて全大腸の長さは長くなる.
著者
草野 央 池原 久朝 鈴木 翔 江崎 充 後藤田 卓志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.48-56, 2018 (Released:2018-01-22)
参考文献数
16

消化器内視鏡治療のめざましい発展とともに,安定した治療を施せるような鎮静が求められている.しかし,内視鏡時の鎮静に対する承認が取得できている薬剤はほとんどなく,ミダゾラムやフル二トラゼパムが保険適応外で使用されているのが現状であり,安全かつ確実な鎮静方法の確立が急務となっている.この状況を受けて2013年には日本消化器内視鏡学会より“内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン”が作成され,鎮静が必要と考えられる局面においてどのような鎮静方法が良いのか,指針が示されている.近年では,鎮静薬として,短時間作用型のプロポフォールや呼吸抑制がないプレセデックスが注目を浴びており,消化器内視鏡治療領域においても使用頻度が増している.しかし,その適応や使用方法を誤ると偶発症のリスクが高まるのも事実である.薬剤の特徴,使用方法,モニタリング方法等,今まで以上に事前の学習とトレーニングが必須の時代となっている.
著者
後藤田 卓志 赤松 拓司 阿部 清一郎 島谷 昌明 中井 陽介 八田 和久 細江 直樹 三浦 義正 宮原 良二 山口 太輔 吉田 直久 川口 洋佑 福田 眞作 磯本 一 入澤 篤志 岩男 泰 浦岡 俊夫 横田 美幸 中山 健夫 藤本 一眞 井上 晴洋
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.1635-1681, 2020 (Released:2020-09-23)
参考文献数
225
被引用文献数
1

消化器内視鏡分野における鎮静のニーズがさらに高まり日常診療において重要度の高い医療行為となっている.この度,日本消化器内視鏡学会は日本麻酔科学会の協力のもと「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版)」の作成にあたり,安全に検査・治療を遂行するためには何が問われているかを実地診療における疑問や問題として取り上げた.そのうえで,20項目のクリニカルクエスチョンを決定した.作成にあたっては「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に従い,推奨の強さとエビデンスの質(強さ)を示した.現在日常的に行われている消化器内視鏡診療(以下,内視鏡)における鎮静の臨床的疑問と問題に関して現時点でのステートメントを示すことができた.なお,この領域における本邦からのメタアナリシスなど質の高い報告は少なく,専門家のコンセンサスを重視せざるを得ない部分も多かった.また,鎮静に主に使用されているベンゾジアゼピン系の薬剤は保険適用外であるのが現状で,費用負担に関する不利益の検討ができなかった.また,診療ガイドライン作成にあたって受益者である患者・市民の視点を反映することが今後の課題である.なお,ガイドラインは現時点でのエビデンスの質(強さ)に基づいた標準的な指針であり,医療の現場で患者と医療者による意思決定を支援するものである.よって,個々の患者の希望,年齢,合併症,社会的状況,施設の事情や医師の裁量権によって柔軟に対応する必要がある.
著者
河村 攻 澤田 武 原 威史 兒玉 達樹 真田 治人 島崎 正晃 麦倉 光哉 西田 泰之 大原 裕康 松下 和彦
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.1019-1022, 2002-06-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
9

症例は45歳の男性で,肛門からアルコール濃度35%の焼酎を注入したところ下.血を生じ,当院へ入院した.大腸鏡検査では,肛門からS状結腸下部まで連続性に潰瘍,びらん,発赤,浮腫が見られた.病変部と健常粘膜との境界は明瞭であった.組織像では表層にちかづくほど粘膜の著しい壊死,脱落が見られ,腺管構造の破壊,血管の破綻による出血,滲出が見られた.アルコール注腸による直腸結腸炎は極めてまれであり貴重な症例である.
著者
水重 知子 和唐 正樹 稲葉 知己 水川 翔 高嶋 志保 泉川 孝一 石川 茂直 田岡 伸朗 三好 正嗣 河合 公三
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.3340-3346, 2014 (Released:2014-09-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1

胃石の治療としてコカコーラ等の炭酸飲料水による溶解療法の有用性が報告されているが機序は明らかでない.われわれは,炭酸飲料の溶解作用の主体は,二酸化炭素の気泡による物理的作用と考え,柿胃石の2症例に炭酸水による溶解療法を行い有効であったので報告する.症例1は91歳,女性.上部消化管内視鏡検査で5cm大の胃石と胃潰瘍を認めた.症例2は79歳,女性.上部消化管内視鏡検査で4cm大の胃石と胃潰瘍を認めた.2症例とも内視鏡的に破砕困難であった胃石が,1日量2,000mlの炭酸水による3日間の溶解療法後,容易に破砕が可能となった.
著者
吉村 大輔 吉村 理江 水谷 孝弘
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.469-477, 2023 (Released:2023-05-22)
参考文献数
27

Helicobacter pylori(Hp)の感染率の低下を反映し従来稀とされたHp未感染胃癌の増加が報告されている.自験例の解析ではHp未感染胃癌は(1)噴門部(食道胃接合部)腺癌,(2)胃底腺領域とくにU,M領域に好発する胃型形質の低異型度腺癌,(3)胃角前庭部の胃底腺と幽門腺境界領域に好発する印環細胞癌,(4)幽門腺領域に好発ししばしば腸型形質を呈する分化型腺癌,に分類可能であった.噴門部腺癌の多くが進行癌であったのに対して,その他の領域は大部分がESDによる治療が可能であった早期癌で,その進行が緩徐である可能性も示唆された.Hp未感染胃においては部位,腺領域ごとの癌の好発部位と形態および組織型の特徴をふまえた観察が効率的と考える.
著者
塚田 健一郎 宮林 千春 古川 浩一 寺尾 ゆみ子 窪川 芳樹 綱島 勝正 青柳 豊
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.1215-1220, 2006-06-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
19
被引用文献数
2

内視鏡検査後に一過性全健忘をきたした3例を報告する.いずれも女性で,逆行性健忘と順向件健忘を呈した.意識障害はなく年余に渡る長期記憶も障害されていなかったが,現在の自分の状況を理解できなかった.家族は状況の理解に苦しみ不審の念に駆られ,また施行医も当惑した.原因として,内視鏡検査を受ける不安・緊急などのストレスが挙げられる.極めて稀な合併症と思われるが,知っておくべき重要な合併症と考えられる.
著者
山下 行博 渋江 正 田中 啓三 橋本 修治
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.3092-3098_1, 1988-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
27

鹿児島県において1982年1月から1987年12月の6年間に経験された胃アニサキス症678例について臨床的検討を加えた. 月別発生頻度は2~5月と9~10月に多くみられ,摂取魚類はサバが約73%で圧倒的に多く,ついでイワシ,アジなどであった.年齢性別は30歳代男子に多く,主症状は激しい上腹部痛でほとんどの症例にみられた.摂取より発症までの時間は6~8時間が最も多く12時間までに83.4%が発症していた.アニサキス幼虫の穿入部位は約半数が胃体部から胃角部の大彎側で,複数穿入例も約10%にみられた.内視鏡下に摘出された虫体のうち同定された158例は,アニサキス1型幼虫のみであった.これらの事実のうち,発生のピークが3月と9月であることは鹿児島県に特徴的であった.
著者
加藤 元嗣 上堂 文也 掃本 誠治 家子 正裕 樋口 和秀 村上 和成 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.1547-1558, 2017 (Released:2017-07-20)
参考文献数
39
被引用文献数
10

日本消化器内視鏡学会は,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発に配慮した“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”を報告した.その後新しい経口抗凝固薬が用いられるようになり,実臨床ではそれらの対応についての基準が求められていた.そこで,抗凝固薬の新たな知見を加えて,抗凝固薬に関する追補版を作成した.しかし,各ステートメントに関してはエビデンスレベルは不十分なものが多く,今後は臨床現場での追補ガイドラインの検証が必要となる.
著者
葛西 豊高 川辺 晃一 村松 誠司 宮原 庸介 福田 裕昭 江藤 宏幸 中原 守康 今井 崇紀 田中 健丈 新井 基展
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.1554-1560, 2019 (Released:2019-08-20)
参考文献数
16

64歳,男性.食欲不振・下痢により,9カ月間で23kgの体重減少を認めた.高血圧症に対して,オルメサルタン内服歴が10年間あった.上下部内視鏡検査では原因となる疾患を認めず,小腸カプセル内視鏡検査で,十二指腸・小腸の絨毛萎縮を認めた.十二指腸粘膜生検ではアミロイド沈着,異型リンパ球は認めず,便培養・便虫卵検査が陰性であることから,セリアック病を疑った.オルメサルタン内服中であることから,セリアック病と同様の臨床像を呈するオルメサルタン関連スプルー様腸疾患を疑い,オルメサルタンを中止とした.その後,食欲不振・下痢・体重減少は改善し,4カ月後の小腸カプセル内視鏡検査で,十二指腸・小腸の絨毛萎縮の改善を認めた.慢性下痢の原因として,オルメサルタン内服中の場合には,オルメサルタン関連スプルー様腸疾患を念頭におくべきである.小腸カプセル内視鏡検査は小腸絨毛の萎縮評価に有用であった.
著者
梅野 淳嗣 松本 主之 中村 昌太郎 飯田 三雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1233-1242, 2010 (Released:2011-11-07)
参考文献数
74
被引用文献数
6

Collagenous colitisの診断と治療について概説した.本症は慢性の水様性下痢と大腸粘膜直下の膠原線維帯の肥厚を特徴とし,中年以降の女性に好発する.原因として遺伝的要因,薬剤(プロトンポンプ阻害薬,非ステロイド性消炎鎮痛薬,アスピリン,チクロピジンなど),自己免疫疾患,腸管感染症,一酸化窒素などが示唆されている.本症の内視鏡所見は,正常あるいは毛細血管の増生などの非特異的所見にとどまることが多いが,mucosal tearsと呼ばれる幅の狭い縦走潰瘍がみられることもある.本症の診断基準は臨床症状および病理組織学的所見よりなり,薬剤が関与する場合にはその薬剤の中止のみで改善することもある.治療薬として,アミノサリチル酸製剤,ステロイド,免疫抑制剤などの有効性が報告されている.
著者
小原 勝敏 春間 賢 入澤 篤志 貝瀬 満 後藤田 卓志 杉山 政則 田辺 聡 堀内 朗 藤田 直孝 尾崎 眞 吉田 雅博 松井 敏幸 一瀬 雅夫 上西 紀夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.3822-3847, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
83
被引用文献数
4

近年,内視鏡診療における鎮静の需要が増加傾向にあるが,内視鏡時の鎮静に対する保険適用の承認を取得している薬剤はなく,主にベンゾジアゼピン系の薬剤が適応外で使用されている現状であり,安全な鎮静を支援する体制作りが求められているところである.この度,日本消化器内視鏡学会は日本麻酔科学会の協力の下“内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン”を作成した.本ガイドラインは鎮静が必要な状況下で適切な使用法を推奨したものであり,クリニカルクエスチョン11項目に対してステートメントは14項目あり,そのうちエビデンスレベルIが5項目で,エビデンスレベルIIが3項目あったが,ほとんどが国外のデータに準拠したものであり,推奨度は定まっていない.また,本ガイドラインは,内視鏡診療時の鎮静を強く勧めるものではなく,消化器内視鏡診療上,鎮静が必要と考えられる局面においてはどのような鎮静の方法が良いかの指針を示したものである.実際の診療において鎮静を実施するかの最終決定は,必要性に関する十分なインフォームド・コンセントの下,患者の意思を尊重して行うことが前提であり,医師側の誘導に基づくものであってはならない.
著者
糸井 隆夫 祖父尼 淳 土屋 貴愛
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.1205-1217, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
25

胆膵内視鏡関連手技はERCPやEUSに大別され,今日では胆膵疾患診療に共に欠かせないものとなっており,診療レベルの均一化という点でその教育は極めて重要である.欧米を中心に胆膵内視鏡関連手技の教育はAdvanced endoscopic trainees program(AETP)が以前より用いられ,その評価方法として最近The EUS and ERCP Skills Assessment Tool(TEESAT)なるものも提唱されている.一方,本邦では未だ評価法はもとより,教育方法に関しても確立したものはない.こうした現状の中で近年,教育アシストツールとして,関連手技に関する成書,ビデオが数多く出版され,ライブセミナー,バーチャルシミュレーター,ドライ・ウエットモデルや実際の生体動物モデルによるハンズオンなどが盛んに行われている.本邦においては,これらを上手に利用して,自施設の症例で上級医のもとで胆膵内視鏡関連手技の研鑽を積むことが重要である.
著者
堀田 潔 渡部 公彦 森 あろか 高塚 正樹 林 健博 松山 宗樹 仲川 浩一郎 薮嶒 恒夫 藤原 靖弘 荒川 哲男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.2202-2207, 2013 (Released:2013-08-28)
参考文献数
22

症例は68歳,男性.数週間前より腹部膨満感を自覚しており,外来での上部内視鏡検査で胃石を認めた.当院入院後,コーラによる溶解療法に引き続いて,内視鏡的にスネアで砕石,除去し得た.胃石の治療としてはコーラ溶解療法,内視鏡的治療が知られているが,それぞれの単独治療でのデメリットを補う意味でも,併用療法が単独治療より有用かつ安全であると思われる.
著者
藤本 一眞 藤城 光弘 加藤 元嗣 樋口 和秀 岩切 龍一 坂本 長逸 内山 真一郎 柏木 厚典 小川 久雄 村上 和成 峯 徹哉 芳野 純治 木下 芳一 一瀬 雅夫 松井 敏幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.2075-2102, 2012 (Released:2012-07-26)
参考文献数
66
被引用文献数
7

日本消化器内視鏡学会は,日本循環器学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本血栓止血学会,日本糖尿病学会と合同で“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”を作成した.従来の日本消化器内視鏡学会のガイドラインは,血栓症発症リスクを考慮せずに,抗血栓薬の休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視したものであった.今回は抗血栓薬を持続することによる消化管出血だけでなく,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮してガイドラインを作成した.各ステートメントに関してはエビデンスレベルが低く推奨度が低いもの,エビデンスレベルと推奨度が食い違うものがあるのが現状である.
著者
天野 祐二 結城 崇史 石村 典久 藤代 浩史
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.3189-3203, 2012 (Released:2012-10-22)
参考文献数
37

食道胃接合部の内視鏡診療は対象疾患の増加により,近年,その重要性が高まりつつある.しかしながら,本邦及び欧米の間には,食道胃接合線の内視鏡診断において診断基準の乖離を認めるという大きな問題が存在する.食道胃接合部観察の基本は,胃内の空気を抜き,大きく吸気させて食道下部を十分に伸展させることであり,本邦ではこの手技により食道胃接合線として食道柵状血管の下端を探ることになるが,欧米では逆に可能な限り食道の空気を抜き,胃のヒダ上端を診断するのが一般的であるためである.現在,食道胃接合部において最も重要と考えられているのは,Barrett食道およびBarrett腺癌の内視鏡診断である.本邦では画像強調内視鏡を用いた診断が主流になりつつあるが,それらの内視鏡分類は臨床応用を考えた場合に未だ不十分なものも多い.今後は,正確な食道胃接合線の診断を基軸とし,同部位の特性がよく理解された画像強調内視鏡による精緻な内視鏡診断・分類が早急に必要とされる.
著者
藤原 省三 佐藤 博 野口 琢矢 長門 仁 尾崎 任昭 菊池 隆一 野口 剛 内田 雄三
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.146-150, 2002-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
13

症例は69歳,男性.脳梗塞後遺症のため胃瘻が造設されていた.出血性胃潰瘍のため緊急入院.H2受容体拮抗剤により一時は軽快したが,2カ月後,潰瘍は一再発した.その後3カ月間の治療にて潰瘍は瘢痕化しなかったため,オメプラゾール坐剤を調製し投与した.投与中の24時間胃内pHモニタリングでは酸分泌抑制効果はほぼ完全であり,潰瘍は速やかに瘢痕化した.嚥下困難な患者の難治性胃潰瘍に対し,オメプラゾール坐剤の投与は極めて有効な治療法であると考えられた.
著者
新田 敏勝 川崎 浩資 芥川 寛 江頭 由太郎 石橋 孝嗣
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.3034-3039, 2011 (Released:2011-11-07)
参考文献数
14

症例は76歳,女性.突然の心窩部痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診された.上部消化管内視鏡検査所見では,胃穹窿部から索状物が認められ,幽門洞へ引き込まれていた.また腹部造影CT検査では,十二指腸球部に占有する5cm大の腫瘤陰影を認めた.まず,術前に用手圧迫を併用し内視鏡下に整復を行い,胃穹窿部から発生したGISTと診断し,小切開による胃部分切除術を施行した.病理組織学的にもKIT(+)CD34(+)でGISTであった.ball valve syndromeをきたした症例に対し,内視鏡下に嵌頓を解除し,適切な加療を行えた1例を経験したので報告する.