著者
中屋 宗雄 森田 一郎 奥野 秀次 武田 広誠 堀内 正敏
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.22-28, 2002-01-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

目的: ライフル射撃音による急性音響性難聴の聴力像と治療効果に対する臨床的検討を行った.対象と方法: ライフル射撃音による急性音響性難聴と診断され入院加療を行った53例, 74耳とした. 治療方法別 (ステロイド大量漸減療法群23耳とステロイド大量漸減療法+PGE1群51耳) と受傷から治療開始までの期間別 (受傷から治療開始まで7日以内の群42耳と8日以降の群32耳) に対する治療効果と聴力改善 (dB) についてretrospectiveに検討した. また, 各周波数別に治療前後の聴力改善 (dB) を比較検討した.結果: 全症例の治癒率19%, 回復率66%であった. ステロイド大量漸減療法群では治癒率17%, 回復率78%, ステロイド大量漸減療法+PGE1群では治癒率24%, 回復率63%であり, 両者の群で治療効果に有意差を認めなかった. 受傷から7日以内に治療を開始した群では治癒率21%, 回復率78%, 受傷から8日目以降に治療を開始した群では治癒率16%, 回復率50%であり, 受傷から7日以内に治療を開始した群の方が有意に治療効果は高かった. 入院時の聴力像はさまざまな型を示したが, 2kHz以上の周波数において聴力障害を認める高音障害群が50耳と多く, 中でも高音急墜型が20耳と最も多かった. また, 治療前後における各周波数別の聴力改善 (dB) において, 500Hz, 1kHzの聴力改善 (dB) は8kHzの聴力改善 (dB) よりも有意に大きかった.結論: 今回の検討で, 受傷後早期に治療を行った症例の治療効果が高かったことが示された. また, 高音部より中音部での聴力障害は回復しやすいと考えられた.
著者
赤澤 吉弘 明石 愛美 阿久津 征利 三上 公志 深澤 雅彦 春日井 滋 坂本 三樹 肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.224-228, 2015-03-20 (Released:2015-04-17)
参考文献数
15
被引用文献数
2

若年型喉頭乳頭腫は多発性, 再発性で難治なことがあり, 取扱いの難しい疾患である. 今回, 喉頭乳頭腫により気道狭窄を来し, 緊急気道確保を要した症例を経験した. 症例は2歳4カ月の男児で, 1歳頃から嗄声, 1歳6カ月頃から陥没呼吸を認めていた. 前医で重度喘鳴を認め, 喉頭乳頭腫による気道狭窄が疑われ, 救急搬送された. 手術室で気管切開待機のもと, 麻酔科による気管内挿管が行われた. 喉頭は腫瘍で充満し, 声門は観察できなかった. 後日, 全麻下にマイクロデブリッダーを用いて腫瘍を除去した. 病理は乳頭腫で, HPV11 が検出された. 初回手術から早期に再発傾向を示し, 半年間に4回の手術を施行したが腫瘍の制御には至っていない.
著者
向井 將
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.260-270, 1989-01-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
31
被引用文献数
8 14

Historically, the concern of wind instrumentalists has been diaphragm control and embouchure.Laryngeal movement during " blow " has been overlooked or neglected by wind musicians. It has been said that musical tone has to be produced by the resonances of the player's air column by opening his larynx during blow.In the present study, fiberscopic observations of the larynx during blow revealed that musical tones were played with adducted vocal cords. Narrowed glottis appeared to control the airflow of the blow. Persons who could not make musical tone blew with open glottis. Vibrato was also made by rhythmic open and narrowing movements of the glottis. The authors concluded that the larynx regulates the airflow of the " blow ". The authors postulated that the embouchure might be important as the receptor of the airflow rather than controlling the movement for "blow".
著者
宮之原 郁代
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.30-35, 2020-01-20 (Released:2020-02-05)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

アレルギー性鼻炎は, 鼻腔への抗原暴露と炎症性メディエーターの放出によって引き起こされるアレルギー性炎症である. このようなアレルギー性炎症に対して, 強力な抗炎症作用を持つ局所剤である鼻噴霧用ステロイド薬は, 理想的な製剤といえる. 2008年以降に1日1回投与の鼻噴霧用ステロイド薬が登場し, アレルギー性鼻炎治療における強力なツールになった. 鼻噴霧用ステロイド薬は, 現在のアレルギー性鼻炎治療薬の中では最も効果の強い薬剤であり, 多くの国際的なガイドラインで, 鼻噴霧用ステロイド薬の単独投与をまず選択すべき治療 (ファーストライン) として位置づけている. 一方, 本邦には鼻アレルギー診療ガイドラインがあり, その2016年版から, 軽症患者にも選択でき, さらに花粉症の初期療法薬としての位置づけが示されるようになった. 2015年米国オバマ大統領によって Precision Medicine Initiative が発表され, precision medicine の概念が注目されるようになった. precision medicine は, 当初がん治療の分野に導入され, その後さまざまな領域へ広がりを見せ, アレルギー性鼻炎においては, 2017年にその実施に向けての提案が示された. その中で鼻噴霧用ステロイド薬は第1段階から考慮する治療薬と位置づけられている. 一方, 最近でも, 鼻噴霧用ステロイド薬は, 抗ヒスタミン薬のおよそ4分の1の患者に処方されているに過ぎず, また, 点鼻薬は, 内服薬に比較しアドヒアランスが不良であることが知られている. この薬剤導入やアドヒアランスの障壁の要因のひとつとして, 鼻噴霧用ステロイド薬のにおいや味, 液だれなど感覚的な特性に嗜好性があることが関連している.
著者
青木 光広
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1194-1200, 2016-09-20 (Released:2016-10-07)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

急性めまいに対するプライマリーケアとして大切なことは患者の訴える症状の鎮静化とともに, 危険な原因が潜んでいないかを鑑別することである. そのためには専門的な知識に基づく理論的な診療が鍵となる. まず, 症状が強い場合は補液, 制吐剤, 抗不安薬で症状の鎮静化を行う. 急性めまい例では詳細な病歴を聴取することは困難なことが多いが, 少なくとも心血管疾患や中枢疾患の既往は聴取する. 名前を言ってもらうことに加えて, パ行 (口唇音), ガ行 (口蓋音), タ行 (舌音) の発音による構音障害やバレー徴候による上肢麻痺の有無をみる. 聴覚の左右差, 顔面温痛覚の左右差, ホルネル徴候, カーテン徴候の有無など平易な診察で脳幹障害のスクリーニングが可能である. 麻痺がなければ, 鼻指鼻試験や回内回外試験で小脳上部障害を観察する. 起立可能な場合, Lateropulsion は脳幹・小脳障害を示唆する所見となる. 開眼が可能なら, 注視眼振検査, 異常眼球運動, 自発眼振の有無を検査する. 垂直方向への注視障害や眼振は高位中枢障害を疑う所見となる. また, 最も発症頻度が高いとされる良性発作性頭位めまい症 (Benign Paroxysmal Positional Vertigo: BPPV) の鑑別診断として, Dix-Hallpike 法は必須である. 検査陽性時の診断率が高いことから, BPPV を疑う病歴がなくても可能な範囲で行うべきである. しかし, ルーチンに診察しても, 前下小脳動脈領域の限定的な梗塞のように末梢性めまいとの鑑別が極めて難しい場合もある. そのため, 中枢性が完全に否定できない場合は脳幹・小脳症状の発現がないか経過観察していくことが重要である. 急性めまいに対するプライマリーケアとして, ルーチンワークを確実に行うことで危険なめまいをスクリーニングすることは可能である. また, 中枢性を疑う所見を認めた場合は必要に応じて速やかに他科あるいは他病院へ紹介できる対応が必要である.
著者
小林 正佳 今西 義宜 石川 雅子 西田 幸平 足立 光朗 大石 真綾 中村 哲 坂井 田寛 間島 雄一
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.986-995, 2005-10-20 (Released:2010-12-22)
参考文献数
35
被引用文献数
9 9

嗅覚障害の治療としてステロイド薬の点鼻療法が一般的に行われているが, 治療が長期にわたる症例も多くその副作用が懸念される. ステロイド薬点鼻療法長期連用に関してその安全性を有用性と比較して検討した報告はない. そこで今回は当科嗅覚味覚外来で同療法を施行した患者を対象にこの比較検討を施行した.0.1%リン酸ベタメタゾンナトリウム液 (リンデロン液®) の点鼻療法を施行した62例中42例 (68%) に点鼻開始後1~2カ月で血清ACTHまたはコルチゾール値の低下が出現したが, 異常な理学的所見や自覚的症状は認められなかった. 点鼻療法を中止した8例は全例1カ月後にそれらの値が正常範囲内に回復した. 一方, 同療法を継続した34例中4例で開始後2~5カ月で自覚的な顔面腫脹感, 顔面の濃毛化というステロイド薬のminor side effectが出現したが, 中止後1カ月ですべての症状が消失した. 同療法のみを3カ月以上継続した23例の治療効果は, 自覚的嗅覚障害度, 基準嗅力検査上ともに統計学的に有意な改善がみられ, 日本鼻科学会嗅覚検査検討委員会制定の嗅覚改善評価法でも78%例で何らかの改善判定が得られた.ステロイド薬点鼻療法の長期連用は軽度で可逆的な副作用を生じ得る. 一方, 嗅覚障害の治療効果は高い. よって同療法は有用な嗅覚障害の治療法であり, 臨床的必要性に応じて十分な注意の下に長期連用することは可能と考えられる.
著者
中山 健夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.93-100, 2010 (Released:2011-02-19)
参考文献数
45

根拠に基づく医療 (EBM) は, 臨床的エビデンスと, 医療者の専門性と, 患者の価値観の統合により, より良い医療の提供を目指すものである. 「エビデンスをつくる」臨床研究は, 想定されるクエスチョンよって, 適切な疫学的研究デザインは異なる. 「ランダム化比較試験によるエビデンスが無ければEBMは実践できない」「ランダム化比較試験を行わないと臨床研究として認められない」という考えは誤解であり, それぞれの目的に沿った臨床研究の手法を採ること, 「現時点で利用可能な最良のエビデンス」を意思決定に慎重に用いることがEBMの基本である. 診療ガイドラインは, 「特定の臨床状況のもとで, 臨床家と患者の意思決定を支援する目的で, 系統的に作成された文書」と定義される. 診療ガイドラインは, エビデンスを現場に伝える役割を担い, エビデンス・診療ギャップの改善に役立つとともに, 患者と医療者のshared decision makingを進める基点となることが期待される.
著者
今野 良
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.73-84, 2012 (Released:2012-04-01)
参考文献数
76
被引用文献数
1

子宮頸癌は発癌原因が主にHPV感染であることが明らかにされていた. 50年以上前から行われてきた子宮頸癌検診による二次予防に加えて, HPVワクチン開発・臨床応用によって一次予防も可能になり, 疾患の征圧を視野に入れた予防活動が世界的に繰り広げられている. 一方, 分子疫学の発展により, 子宮頸癌以外の性器肛門癌や頭頸部癌の多くにもHPVが関連していることが認められ, 予防・検診・治療に新しい展開がみられる. 本稿では, 前半にHPVの生物学, 子宮頸癌およびHPV関連疾患の概説を行い, 後半には頭頸部癌とHPVの関わりを解説する.
著者
中川 隆之
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.10, pp.1285-1292, 2019-10-20 (Released:2019-11-06)
参考文献数
52

難聴は, 世界保健機関の報告では人類の克服すべき健康上の課題の上位にランクされており, 近年, 認知症を加速する重要な因子としても注目され, 難聴, 特に感音難聴に対する社会的関心は高まっている. 現在, 感音難聴に対する薬物療法は, 極めて限られており, 新規治療法の開発に対する期待が高まっている. この流れは, 感音難聴に対する創薬研究にも認められ, アカデミア発のベンチャー企業の活発な活動や製薬業界の積極的な取り組みも始まっている. 本稿では, 急速に進展しつつある感音難聴治療薬開発の国内外の現況をまとめ, われわれが行っているインスリン様細胞増殖因子1を用いた急性感音難聴治療研究の進捗状況を概説する. また, 内耳再生医療開発の観点から, 世界的な感音難聴創薬研究, 特に臨床治験の現況について紹介し, 今後の内耳有毛細胞再生による感音難聴治療に向けた研究の展開について考察する.
著者
谷内 一彦 櫻井 映子 岡村 信行 倉増 敦朗
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.99-103, 2009 (Released:2010-06-03)
参考文献数
6
被引用文献数
1

アレルギー疾患に対して抗ヒスタミン薬 (ヒスタミンH1受容体拮抗薬) は即効性のある標準的な治療法である. 日本では抗アレルギー薬として分類されている薬に強力なH1拮抗作用を持つものが多く, 注意を要する. 第一世代抗ヒスタミン薬はイタリアの薬理学者Daniel Bovetにより1930-40年代に最初に開発され, 多くの中枢神経系作用薬 (抗精神病薬や抗うつ薬など) の原型になった. 1957年にBovetはその薬理学的業績によりノーベル医学生理学賞を受賞している. さらにヒスタミン研究領域ではH2受容体アンタゴニスト (胃・十二指腸潰瘍治療薬) を開発したJames Blackがその30年後 (1988年) にノーベル医学生理学賞を受賞している.初期に開発された抗ヒスタミン薬は強力な中枢抑制作用があるために, 1980年代から非鎮静性抗ヒスタミン薬の開発が開始されてきた. 花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患にも中枢移行性の少ない第二世代抗ヒスタミン薬が推奨されているが, 日本では特に欧米と比較して第一世代鎮静性抗ヒスタミン薬やステロイド含有鎮静性抗ヒスタミン薬が使用されることが多く, 欧米人から大変奇異に見られている. ちなみに日本では現在でも成人で20-40%, 小児で80-95%が第一世代鎮静性抗ヒスタミン薬を医師により処方されている. さらに日本ではOTC薬として花粉症薬やかぜ薬に多くの抗ヒスタミン薬が含まれており, しかもテレビや新聞などマスコミでの宣伝が自由で, 一般の方にその危険性を知らせないために事故などに関係することも知られている. 医師や薬剤師は鎮静性抗ヒスタミン薬の危険性を十分に患者などに啓蒙する必要性があり, また処方する場合にはその鎮静作用の有無を十分に検討してから薬剤を選択することが重要である. できるかぎり中枢神経抑制作用が少ない非鎮静性抗ヒスタミン薬を第一選択薬とすべきである. なぜならその効果は第二世代抗ヒスタミン薬の間ではほぼ同じであるからである. 本総説ではヒスタミンの薬理学について最新の考え方を紹介する.
著者
前田 陽平 端山 昌樹 猪原 秀典
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.124, no.6, pp.840-848, 2021-06-20 (Released:2021-07-01)
参考文献数
17

眼窩病変に対する手術は境界領域であり, 眼科 (眼形成外科), 耳鼻咽喉科, 脳神経外科, 形成外科などがかかわる. アプローチもさまざまなものがあるが, 内視鏡は外切開が不要, 内側・後方の操作に強いなどの強みがある. 適応疾患も数多い. それぞれについて概説する. 眼窩病変は非典型的なケースも多く, それぞれの疾患においても個々の症例に対応することが求められる. 手術テクニックもさることながら, まずは手術適応, アプローチについて広く原則を知っておくことで個々の症例にも対応できるようになる.
著者
中山 哲夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.6, pp.605-611, 2012 (Released:2012-09-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1

感染症対策にワクチンの果たしてきた役割は大きく, ワクチンで予防できる疾患はワクチンで予防する基本的な方針で欧米は積極的にワクチン政策をすすめてきた. 一方, わが国では種痘禍, ジフテリア・百日咳・破傷風 (DPT) の事故, 麻疹・風疹・ムンプス (MMR) スキャンダルと予防接種に関する訴訟が続き積極的な予防接種政策を執ることができなかった. ワクチンメーカーも新規ワクチン開発や外国からの導入もなく空白の十数年が経過し, その間欧米においては1990年代にはインフルエンザ桿菌ワクチン (Hib), 結合型肺炎球菌ワクチン (PCV) が開発され日本発の無細胞型百日咳ワクチン (DTaP) をベ-スに多価ワクチンの開発と積極的に予防接種政策を推し進めてきた. ワクチンの品目, 制度の違いからワクチンで予防できる疾患 (vaccine preventable diseases: VPD) の流行が制圧できずワクチンギャップとして問題視されてきた. 最近になって2008年にはインフルエンザ桿菌ワクチン (Hib), そして2010年春から小児用の結合型肺炎球菌ワクチンが使用できる様になった. わが国の予防接種政策が立ち遅れた原因は何か, そしてこれからの予防接種対策について考えてみたい.
著者
後藤 隆史 東野 哲也 中西 悠 松田 圭二 我那覇 章 鈴木 幹男
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.1214-1219, 2013-11-20 (Released:2014-01-16)
参考文献数
10

外耳道外骨腫は, 古くより潜漁夫やサーファー, 特により寒冷な地域でより長い冷水刺激に暴露された者ほど発症率が高く骨増殖も大きいとされている. 今回われわれは, 15年間にわたりサウナに通い, サウナに入った直後の冷水浴を習慣としていた3症例5耳の外骨腫に対して手術を行った. サウナ習慣者の冷水刺激に対する暴露時間は, 職業的に潜水する人やマリンスポーツをする人に比べればはるかに短いと考えられるが, 極端な高温・冷水刺激の反復が外骨腫の発生にかかわった可能性が示唆された.