著者
河相 安彦 矢崎 貴啓 松丸 悠一 先崎 孝三郎 浅井 秀明 今道 康夫 伊藤 允人 杉村 華織 竹尾 藍 朱 一慶 伊澤 武志 大野 洋介 山本 史朗 小平 真倫亜 宗 邦雄 島 由樹 林 幸男 桑原 克久 小林 喜平
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.572-581, 2007-07-10
被引用文献数
3 7

目的: 本研究の目的は総義歯学の授業で講義型学習 (以下LBL) と問題解決型学習 (以下PBL) 双方を経験した学生の自己学習および臨床推理能力に関する教育効果と授業・教員に対する評価の両教育形式間での比較検討である.<BR>方法: 総義歯学の授業を平成15年度入学の学生に, 平成17年度3年次前期にLBL, 平成18年度4年次前期にPBLにて行った. PBLは5回にわたり, 毎回1症例についてグループディスカッションを行い, グループによるまとめを2回, 個人レポートを2回および全体発表を1回という予定で進行した. 全体発表終了後, 教育効果および授業・教員に関する27項目のアンケートを行った.因子分析により質問項目の類型を行い, 各質問項目についてLBLおよびPBLの比較を行った (Paired-t).<BR>結果: 因子分析より質問項目は4因子に類型された. LBLとPBLとの間で「学習態度」について7項目中4項目, 「臨床推理能力」について全項目, 「授業内容」について7項目中5項目, 「教員評価・そのほか」について6項目中2項目, 合計27項目中18項目 (66.6%) でPBLが有意に高い値を示した.<BR>結論: PBLはLBLに比べ自己学習および臨床推理能力の教育効果の向上に極めて有効で, 授業に関する評価も有意に高かった. 一方, 同様の授業を受けることに学生は後向きで, 消極性解消法の検討が必要であると示唆された.
著者
小林 義典 松本 敏彦 石上 惠一 平井 敏博
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-23, 1996-02-01
参考文献数
139
被引用文献数
60 9

咬合と全身の機能との関係について,過去5年間に本学会学術大会および本誌で報告された内容のうち,特に咬合間題が聴能力,重心動揺,眼振図,聴性脳幹反応,咀咽系の機能,自律神経系の機能,情動,睡眠に及ぼす影響,ならびに咬合接触が身体運動機能に及ぼす影響を分析したデータを考察し,解説を加えた.その結果,咬合問題は,中耳伝音系機能,平衡感覚,聴性脳幹反応,自律神経系の機能,情動,睡眠に影響を及ぼし,また咬合機能は,身体運動機能に密接に関連することが検証された.
著者
松下 恭之 佐々木 健一 郡 英寛 江崎 大輔 春田 明日香 古谷野 潔
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-9, 2008-01-10
参考文献数
41
被引用文献数
7 1

オッセオインテグレーションインプラントは, 表面性状の改善や埋入システムの確立により, 5年程度の中期経過では100%に近い生存率も報告されている. しかし一方で長期の使用に伴い, 破折などの機械的偶発症と支持骨の吸収などの生物学的偶発症が増加することが報告されている. この原因は多様だが, インプラントに付与した咬合から生じたオーバーロードが偶発症の主な因子のひとつとして上げられている。<br>インプラントの咬合において, オーバーロードを引き起こすと考えられるリスクファクターについて疫学研究と基礎的研究のレビューを通して, 現状を整理した.<br>天然歯とインプラントが混在する場合の咬合については, 当初被圧変位量の差を考慮すべきとされたが, 現在これを積極的に肯定する研究は少なく, むしろ被圧変位量の分だけ低くした咬合を付与した場合に, 顎関節や隣在歯などへの影響を危惧する報告も散見される. 現状では, 天然歯と同様の接触を与えても臨床的な問題は少ないと考えられる.<br>側方ガイドや咬合力の側方成分, カンチレバー, 広すぎる咬合面幅によるオフセットローディングなどの非軸方向荷重については, 曲げモーメントとして作用するため, 軸方向荷重よりもその影響は強いと思われる. しかしながら生物学的に影響ありとした疫学データは見られない.<br>天然歯とインプラントの連結については, メタ解析の結果により骨吸収へのリスクが示唆されている.
著者
原田 美紀 猪子 芳美 清水 公夫 森田 修己
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.733-740, 2004-10-10
被引用文献数
5 5

目的: 本研究は, 閉塞型睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) 患者に下顎前方位型口腔内装置 (PMA) を用い, 切歯点の移動と口腔咽頭腔前後径が直接関係するという仮説を検証し, PMAの治療効果を示す睡眠時の動脈血酸素飽和度を検討することである.<BR>方法: OSAS患者19名にPMAを適用し, PMA装着前と装着時における側方頭部X線規格写真撮影と動脈血酸素飽和度測定を行い, 側方頭部X線規格写真より, 口腔咽頭腔前後径 (PNS-AS, SPAS, MAS, IAS) と切歯点の移動量を計測し, 動脈血酸素飽和度より動脈血酸素飽和度低下指数 (ODI) 4%値および晦中飽和酸素濃度90%未満低下時間比 (CT<SUB>90</SUB>) を算出した.分析は, 切歯点移動量と咽頭腔前後径変化量についてはSpearmanの順位相関を, PMA装着前と装着時のODI4%値, CT<SUB>90</SUB>, 咽頭腔前後径についてはWilcoxonの符号付順位検定を用いて検討した.<BR>結果: 切歯点の前方移動量と口腔咽頭腔前後径のIAS部増加量との間に相関が認められた (r=0.61, p=0.01).PMA装着時のODI4%値とCT<SUB>90</SUB>は有意に減少し (p<0.01), 咽頭腔前後径のSPAS, MAS, IASは, 有意に増加した (P<0.01).<BR>結論: OSAS患者に対するPMA装着による下顎前方移動は, 口腔咽頭腔前後径を拡大させ, 動脈血酸素飽和度の改善に寄与することが示された.
著者
飯島 裕之 山縣 健佑 北川 昇 張 仁彦
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.61-70, 1997-02-01
参考文献数
23
被引用文献数
8

Oral movement trajectories in a denture wearer were studied to evaluate masticatory capability by monitoring orofacial movements during mastication of a color-developing chewing gum. The subject was an edentulous patient who had 4 dental implants of the mandible to anchor a mandibular overdenture.<BR>To monitor the orofacial movements, a cordless light-emitting target that was recorded as a shining point with a clear outline when illuminated by a cold spot light was developed. An image processor enabled the recording and autotracking of multiple reference points.<BR>The subject chewed a new color-developing chewing gum that, on mastication, indicates the patient's masticatory capability using the intensity of red.<BR>During 250 strokes of chewing, the subject's face markers were recorded on a video tape by two high-speed TV camaras from two different perspectives, i. e., frontal and lateral. At the end of every 50 strokes, the color of the chewing gum was assessed by a Chroma Meter (CR-300, Minolta Co.), with respect to the degree of redness or a* value. Thus, the same chewing gum was continuously chewed for a total of 250 strokes, with the a* value measured at the end of every 50 strokes in 5 stages.<BR>Then, the video tape recordings of the start of the first stage (1F) and the end of each stage (1L-5L) were reproduced on a high-speed video and fed into an image processor (Image Data, ID-8000). The movements of each marker were automatically tracked by the Image Data, after which the resulting data of the 3-dimensional coordinates were fed into a computer.<BR>The trajectory of each monitored point during the 4 sec of each stage was computed by a 3-D analyzer (Movias 3D) with reference to the following parameters: the total length from start to finish of the trajectory (TL); the distance between the start and finish of the trajectory (SL); the ratio of the TL to the SL (T/S); the volume of the rectangular solid encompassing the entire trajectory (the cubical range); and the mean of the 3-dimensional angles that were created by differences in the direction of the preceding and following trajectories at each measured time (TH).<BR>Our results revealed that the time needed for one chewing cycle reduced gradually from 1F to 5L. Similarly, the TL of the incisal point (IP) and the THs of both the IP and the modiolus (Mo) also gradually reduced. These findings indicated that as mastication proceeds, the range of mouth movement becomes narrower and all the trajectories become smoother.
著者
吉田 展也 竹内 操 菊池 利也 嶋倉 道郎
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.266-275, 1996-04-01
参考文献数
43
被引用文献数
11

チタンは軽くて生体親和性や耐腐食性に優れているため,従来の歯科用金属に代わるものとして補綴領域でも注目され,鋳造冠や金属床の分野においても実用化されつつある.このチタンの性質の1つとして,表面の酸化被膜を介して高分子材料と強固に接着するということもあげられる.この性質をうまく硬質レジン前装冠に応用すれば,従来の機械的維持装置をレジン前装部から除き,審美性を高めることも可能である.今回はそのための基礎的実験として,接着と密接に関係するといわれている濡れに着目し,種々の処理を行ったチタン表面に対する金属接着性プライマーおよび蒸留水の接触角を測定することにより,濡れを良くする表面処理方法を検討した.
著者
星合 和基 金澤 毅 平沼 謙二 太田 功 福井 壽男 森 博史 長谷川 明
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.494-500, 1995-06-01
参考文献数
21
被引用文献数
9 2

この研究は色調の安定性を改善した常温重合レジンについて検討したもので,レジン中の触媒にバルビツール酸誘導体と4級アンモニウム塩を用いたものである.このレジンの色調,物性,適合度について現在市販されている各種の常温重合レジンと比較検討したものである.その結果をみると,1.色調は安定し,変色はみられない,2.機械的強さはほぼ同程度である,3.適合性は優れていることが示されたので,臨床上有用な新しい常温重合レジンといえよう.
著者
杉木 進 山縣 健佑 樋口 貴大 杉山 一朗 北川 昇
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.257-270, 2001-04-10
参考文献数
21
被引用文献数
6 1

目的: 本研究の目的は, 被験音 [サ], [シ] を義歯装着時と無歯顎時にそれぞれ発音させ, 静的パラトグラフィーを利用して, 舌と口蓋ならびに歯槽部, あるいは舌と上顎義歯との接触パターンを比較することである.<BR>方法: 被験者は, 無歯顎者10名 (男性3名, 女性7名). 口蓋ならびに上顎歯槽部を覆う黒色ビニール製の人工口蓋板に白色アルジネートの粉末を散布し, 被験者の口腔内に装着した. 被験音の発音後に, 人工口蓋板の舌接触部位は湿って白色から黒色へと変化して判別できた. 新たに開発した画像解析システムを使用して, 各被験者の同一被験音5回のパラトグラムを平均化した. 各被験者のパラトグラムを平均化したパターンを標準歯列模式図上に変換した. 同一音を累積したパラトグラムについて接触面積と左右の接触部位間の最短距離を比較した.<BR>結果: 無歯顎時 (E) と義歯装着時 (D) のパターンを比較すると, [サ], [シ] 発音ともに接触面積は, EのほうがDより広く, また, 左右の接触部位間の最短距離も, EのほうがDより有意 (Student t-test, p<0.05) に短かった.<BR>結論: パラトグラムのパターンは, Dに比較してEでは口蓋前方部への舌接触範囲が広く, 口蓋ヒダ部での呼気流路を示す "せばめ" が狭まる傾向がみられた.
著者
羽田 詩子 山村 理 川内 大輔 藤井 輝久
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.16-25, 2006-01-10
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

目印: 歯科臨床において審美性と機能の調和が求められ, オールセラミッククラウンによる歯冠修復が普及している. 修復物の製作において, 天然歯の形態と色調の再現が重要である. しかし, 透明性が高いコーピング材料では, 支台歯の色調がコーピングの色調に影響を与える. そこで, 3種類のオールセラミック材料, Empress, Empress2 (IVOCLAR VIVADENT), Procera AllCeram (Nobel Biocare) について, 支台歯の色調がコーピングの色調に与える影響を評価した.<BR>方法: 上顎左側中切歯にEmpress (TC1), Empress2 (100), Procera AllCeram (ホワイティシュ) のコーピングを厚さ0.5mmに製作した. 支台歯はIPS Empress System (IVOCLAR VIVADENT) のダイマテリアル6種 (ST1, ST2, ST3, ST5, ST8, ST9), 金銀パラジウム合金, 金合金, 実験的黒体を用いて製作した. 各支台歯に3種類のコーピングを装着し, 歯冠頬側中央部を高速分光光度計を用いて測色し, L*a*b*表色系にて比較検討した.<BR>結果: 彩度の高いほうから, Procera, Empress2, Empress, 明度の高いほうからEmpress2, Procera, Empressの順であった. Dryの条件 (支台歯とコーピングを乾燥し装着した条件) あるいはWetの条件 (支台歯とコーピングの間に水を介在させ装着した条件) 下で測色した場合を比較すると, コーピングの色調は, 特に彩度に影響を及ぼした. Wetの条件で測定したST1を除く全ての条件について, 支台歯色との色差はEmpress2, Procera, Empressの順に小さくなることがわかった.<BR>結論: 二支台歯の色調を反映する順序はEmpress, Procera, Empress2であった. 臨床および技工操作においてはWetな条件で色調を観察および測定することが望まれる.
著者
椿本 貴昭 岩崎 正一郎 瑞森 崇弘 中村 隆志 高島 史男
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.494-503, 2001-08-10
参考文献数
34
被引用文献数
1 2

目的: 咀嚼の側性を客観的かつ定量的に評価する方法として, 左右側を指定しない自由咀嚼運動の左右側ストローク数より非対称性指数 (Asymmetry Index, 以下AI) を算出する方法を用い, 方法の妥当性, さらには食品による変化, 日間変動について検討することである.<BR>方法: 被験者として健常有歯顎者10名を選択し, チューイング・ガム, カマボコ, グミ・ゼリー, タクアン, スルメ, ピーナッツ, ジャイアント・コーンの計7種類を被験食品に用いた. 被験者に左右側を指定しない20秒間の自由咀嚼運動を行わせ, 左右側のストローク数を視覚的に数え, AIを算出した. 記録は各種食品1日1回, 1週間ごとに計3回行った.<BR>結果:(1) 左右側ストローク数からAIを算出することにより, 咀嚼の側性を定量的に表現できた.(2) 咀嚼の側性を捉える目安として, 3日間のAIの中央値, 範囲から, 各被験者を片側咀嚼型 (U型), 両側咀嚼型 (0型), 不定側咀嚼型 (V型) の3型に分類できた.(3) 軟性食品では0型が, 硬性食品ではU型が多い傾向があったが, 軟性食品内あるいは硬性食品内での性状による差は認められなかった.<BR>結論: 本実験で用いた咀嚼の側性の評価方法は客観的かつ定量的方法であり, 咀嚼の側性は各被験者において特徴的で, 食品の硬性により影響を受ける可能性が示唆された.
著者
齋藤 隆哉 小出 馨 浅沼 直樹 西巻 仁 植木 誠
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.195-202, 2002-04-10
参考文献数
32
被引用文献数
1

目的: 咬合採得および咬合調整を行う際の基準となる筋肉位に対して, 表情筋の緊張が及ぼす影響を明らかにすることを目的として, 表情筋により口角を後方へ強く牽引したときの下顎の偏位を測定した.<BR>方法: 顎口腔系に機能異常を認めない被験者13名に座位で自然頭位をとらせ, アンテリアジグを装着し, 上下歯列の接触による影響を排除して実験を行った. 筋肉位で閉口した状態から口角を後方へ強く牽引したとき, その後さらにタッピングを行ったときの下顎の偏位を継続的に光学系非接触方式の三次元6自由度下顎運動測定装置であるナソヘキサグラフ®に改良を加えて測定し, 比較した.<BR>結果: 筋肉位と比較して口角牽引時には, 切歯点で後方へ平均0.18mm, 左側顆頭点で平均0.00mm, 右側顆頭点で後方へ平均0.04mmの偏位が認められ, 前後方向に大きなばらつきがみられた.筋肉位と比較して口角牽引状態でのタッピング時には, 切歯点で後方へ平均0.50mm, 左側顆頭点で後方へ平均0.25mm, 右側顆頭点で後方へ0.36mmの偏位が認められた.<BR>結論: 表情筋を緊張させることにより口角を後方へ強く牽引すると, 筋肉位に対して下顎は偏位を示し, 前後方向に大きなばらつきがみられた. 口角牽引状態でタッピングを行うと, 下顎は筋肉位より著明に後方へ偏位することが明らかとなった.
著者
平井 敏博 越野 寿
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.353-362, 2006-07-10
参考文献数
26
被引用文献数
2 6

歯科補綴学は生命科学や健康科学をベースとする実学であり, 人々の健康・福祉の向上に貢献する役割を担っている. そして, その臨床の特徴は, 齲蝕や咬合・咀嚼障害などの疾患や障害に対しての「予防」と「治療」の面と, 歯などの喪失により損なわれた形態的・機能的障害の改善や回復を目指す「リハビリテーション」の面を併せ持っていることである. 歯科補綴学研究は, 健康科学, 生命科学の視点からの種々の研究によって, 必ずや補綴歯科治療の健康・福祉への重要性を明確に証明するであろう. 三叉神経が関与する咬合・咀嚼と高次脳機能や生体情報伝達系との関係など, 脳研究の進展が期待されるところである. また, 人口動態からみても, 本学会の学術研究活動は, まさに21世紀に求められる主要な医療のための活動の一つであるといえる.<BR>補綴歯科臨床の観点からは, 診察法, 検査法を含む診断学の充実が望まれる. 診断には, 補綴治療後の機能回復の程度を予測することも含まれる. このためには, 咀嚼機能評価法とともに, 顎口腔系を構成する各器官・組織の評価法の確立が待たれるところである.<BR>社団法人としての本学会の公益・社会活動も重要である. 専門医のみならず歯科医師全体の診療能力の向上による良質な医療の提供を図るとともに, 補綴歯科臨床の意義に関する活発な啓発活動を実践し, 「健康科学としての歯科補綴学」を広く国民に認識させるための方策を考え, 実行すべきである.
著者
山本 さつき 井上 宏
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.282-291, 2003-04-10
参考文献数
25
被引用文献数
5 2

目的: 咬合障害とストレス反応の関連を明らかにするために咬合障害を与えたラットの前頭皮質ドーパミン放出量を測定した. 咬合障害を付与した状態での摂食時ドーパミン放出量の増加は不安を含めた精神医学的なストレス反応に関与しているという仮説を検証するために, 抗不安作用のあるベンゾジアゼピン系薬物ジアゼパムの影響を調べた.<BR>方法: 前頭皮質中のドーパミン放出量の測定はマイクロダイアリシス法を用いて行った. 各実験において対照群と咬合障害群の2群に分け, おのおのをn=6とした. ドーパミン放出量の測定は摂食180分後まで行った. 実験1固形飼料を摂食させ, ドーパミン放出量の経時的変化を測定した. 実験2摂食前にジアゼパムを投与し, その後のドーパミン放出量の経時的変化を測定した. 実験3摂食前に生理食塩水を投与し, その後のドーパミン放出量の経時的変化を測定した.<BR>結果: 実験1咬合障害群は摂食後ドーパミン放出量に有意な増加を認めた.実験2咬合障害群と対照群でドーパミン放出量に有意差は認められなかった. 実験3咬合障害群は摂食後, ドーパミン放出量に有意な増加を認めた.<BR>結論: 咬合障害を付与したラットの摂食時前頭皮質ドーパミン放出は増大し, その反応はジアゼパムにより抑制されることが統計学的に証明された. 本研究により, 咬合障害は不安を含めた精神医学的ストレスを惹起することが明らかにされた.
著者
内山 洋
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.381-396, 2001-06-10
参考文献数
66
被引用文献数
11 2

最近の社会環境の変化によって人々の生活のなかで手技を必要とする機会が激減していることから, 産業界はかなり以前から物造りの現場に危機感をもち, 熟練工の技能をコンピュータ制御の機械に移植してCAD/CAM技術を幅広く発展させてきた. そこで, 同様に手技によって支えられている歯科医療の将来に危機感を抱き, 産業界の進歩したCAD/CAM技術を導入し, 歯科医療の平均的な質的向上を図ることを目指して1973年より北海道大学で歯冠補綴物のクラウンの機械加工について研究開発を行ってきた.<BR>この研究の特徴的なことは, 機械加工の原点として歯の形状を感覚的なイメージではなく, 三次元の数値データとして認識することであった. したがって, その形状データを得るための計測方法の研究と, クラウンを作製するための歯冠形態を, ワックスで形作るように設計できるCADの開発が主体で, CAMは既存のNC加工機の技術を応用した. 国とメーカーの援助でレーザ計測機と, 支台歯に合わせて歯冠形状を設計できるCAD, および専用のNC加工機が完成し, これまで手作業で行われていたクラウンの作製を機械作業のみで高精度で行うことが可能となった.<BR>この研究の結果, メーカーによって歯科用のCAD/CAM装置が市販され, 実用化への道が開けた.
著者
岡林 昌彦 清水 公夫 森田 修己
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.179-188, 2001-02-10
参考文献数
17
被引用文献数
9 3

目的: 本研究の目的はカスタムメイドのラミネートマウスガードの設計, 製作にかかわる基準を提言することにある.<BR>方法: 9種類のシート材を用いて, 厚さ, 吸水性, 定荷重下における変形ならびに成形後のマウスガードの各部の厚さを評価した.<BR>結果: 1. 各製品ともにシート材は均一な厚さであった. 2. 吸水率は, D20 (Erkodur2.00mm) が最大で, F4 (Erkoflex4.00mm) が最小であり, Es (Essix) とPr (Pro-form) は同程度であった. 3. 定荷重による変形率は浸漬によってErkodurは増加し, Erkoflexは減少したが, EsとPrでは浸漬による影響は認められなかった. 4. 成形後の厚さは, すべての材料, 積層成形, 組合せ成形において減少し, Erkodur, Erkoflex, ErkoflexとErkodur, ならびにErkoflex間の組合せ成形では, 咬合面部が10~20%であり, 他の部位は30~46%であった. 一方, Es, Prでは口蓋側歯面正中部は2~4%であり, 他の部位は26~54%の範囲で減少した.<BR>結論: 本論文は, マウスガードシート材の吸水性, 浸漬による硬さへの影響ならびに成形後のマウスガード各部の厚さを定量的に明らかにし, カスタムメイドのラミネートマウスガードの設計, 製作に関する有用な示唆を与えている.
著者
二川 浩樹
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.171-179, 2006-04-10
被引用文献数
1

この10年間, 歯科補綴学に関連した領域の研究分野も細分化・専門化し, 関連領域の学会も非常に多くなってきています.それに伴い, 関連分野の学会誌も多数作られ, 和文誌に加え英文誌も刊行され始めています.(社) 日本補綴歯科学会ではProsthodontic Research & Practice (PRP) が刊行され, 2006年より年4回の発行が行われます.他学会や学会誌なども含めて省みた場合, 学会での多くの発表がそのまま埋もれたままになっているという問題点があります.また, この一方で, 論文を厳しく査読することでそのレベル・クオリティを高めようとする学会誌は多くあります.しかし, 学会発表を一人前の原著論文に育てることに手を差しのべてくれる学会誌はほとんどないことに気づきました.編集委員会では, PRPの編集に際し, 投稿された論文をいかにしてより良い英語の原著論文に育てていくかを中心に査読を行うことで意見の一致がみられていますので, 投稿された先生方に, 海外投稿では得られないメリットを感じていただけるものと考えています.われわれは第114回学術大会 (新潟) や地方支部会においてPRPのスキルアップセミナーを開催してきました.本総説は, セミナーの後半部分の内容をまとめたもので, 実験を立案した際の文献検索と参考文献の見つけ方, 用語集・文例集の作成の仕方 (イントロ-考察まで), Web辞書の紹介などPRPへの投稿に向けての英語原著論文の準備の仕方をできるだけ具体的に紹介しています.
著者
川本 善和 檜山 礼秀 根本 美佳 島 弘光 河原 一茂 島田 和基 吉成 勝海 浅野 澄明 桟 淑行 五十嵐 孝義 齋藤 仁弘 西山 實
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.632-641, 2001-10-10
被引用文献数
15 3

目的: 本研究の目的は, 高フィラー型硬質レジン修復物の補修時に追加築盛を行う際の表面処理条件が曲げ接着強さに及ぼす影響を明らかにすることである.<BR>方法: 高フィラー型硬質レジンとしてエステニア (エナメル質用レジンEE, 象牙質用レジンED) を用い, 製造者指示に従い重合した被着体 (2×2×12.5mm) に, 処理なし (NT), シラン処理 (S), ボンディング処理 (B), シラン処理とボンディング処理を併用 (SB) の条件で表面処理を行った後に, 直接法 (D) ではクリアフィルAP-Xおよび間接法 (I) ではEEによる追加築盛を行って重合し, 曲げ接着試験用試験体 (2×2×25mm) を作製した. 作製した試験体は, 37℃で24時間水中保管後に3点曲げ試験を行い, 曲げ接着強さとした.<BR>結果: 被着体EEおよびEDの両者で, 直接法はD-S≒D-SB>D-B>D-NTの順に, SとSB間を除き有意 (one-way ANOVA, P<0.05) に大きな値を示し, 間接法はI-SB>I-S>IB>I-NTの順に有意に大きな値を示した. また, 破断面のSEM観察では, D-NTおよび1-NT以外のすべての処理条件で, 被着体および追加築盛体での凝集破壊が認められた.<BR>結論: 直接法および間接法の両者で, SBとSが最も効果的で, 次いでBが有効であった.
著者
五味渕 泰造 小出 馨 旗手 敏
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.339-347, 2000-04-10
被引用文献数
12 1

The form of occlusion in denture wearers is an important factor for masticatory function in subjects with a denture. The masticatory performance was statistically compared between subjects by applying bilateral balanced lingualized occlusion (L.O.) and full balanced occlusion (F. B. O.) to study the effects on masticatory function. The subjects were 6 cases with an edentulous jaw (4 males and 2 females). Experimental foods were boiled fish-paste, peanut, and carrot. The trial was repeated 3 times for each of the 3 foods, with chewing at 10, 20, and 30 times respectively. One unit was determined as a 10 mesh screen. The results were as follows:<BR>1. For boiled fish-paste (soft or elastic food), F. B. O. showed a significantly higher masticatory performance at all chewing frequencies compared to L. O.<BR>2. For peanut (hard or crushable food), there was no significant difference in masticatory performance at all chewing frequencies and the form of occlusion.<BR>3. For carrot (hard or cut food), L. O. showed a significantly higher masticatory performance at 10 and 20 times chewing frequencies compared to F. B. O.<BR>It was suggested that L.O. is effective in masticating hard or cut food, and is the form of occlusion having a high cutting potential compared to F. B. O.
著者
浜田 泰三 二川 浩樹
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.561-581, 2001-10-10
被引用文献数
16 2

顎口腔が全身の一部として, 全身とのかかわりがあるにもかかわらず, 体の一部分として取り扱われてきた傾向があるが, 高齢社会のなかで寝たきり患者などから否応なしに口腔が全身の健康と深い関係がある実態をみせつけられた. 欧米ではすでに100年以上も前から義歯の汚れを微生物学的視点からとらえていたが, わが国では20年くらいの歴史しかない. 本稿ではまず (1) デンチャープラークの微生物について解説した. 次いで (2) デンチャープラークの病原性について口腔への影響と全身への影響について言及した. さらに (3) オーラルヘルスケアの具体的方法として機械的な清掃法, 義歯洗浄剤さらには抗真菌剤や銀系無機抗菌剤の応用を紹介した.<BR>オーラルヘルスケアにあたり, いかに口腔内の汚染レベルを把握するかはとても重要であり, 現在応用できるカリエスリスク検査と歯肉溝滲出液検査について解説し, 特にカンジダ検査について詳しく述べた. 局所ならびに全身状態の把握や高齢者に対して特に配慮すべき事柄についても言及した.