著者
大浪 洋二 佐々木 誠 菊池 元宏
出版者
日本家畜臨床学会
雑誌
東北家畜臨床研究会誌 (ISSN:09167579)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-6, 1997-07-15 (Released:2009-04-22)
参考文献数
23

Prostaglandin F2α-analogue(PGF2-A)の0.8~2.4mgを妊娠2~8か月の29例の牛に処置した結果、妊娠4か月までの16例全例が流産したが、妊娠5か月では6例中5例が流産し、妊娠6~8か月では流産しなかった。一方、Dexamethasone(Dx)、30mgを妊娠3~9か月の8例の牛に処置した場合は、妊娠4か月までの2例は流産しなかったが、妊娠5か月では3例のうち2例が流産した。しかし、妊娠6か月の1例は流産せず、妊娠8~9か月では2例とも流産、または早産した。胎盤停滞の発生は妊娠4か月までは認められなかったが、妊娠5か月以降では全例胎盤が停滞した。その発生状況には、PGF2α-AおよびDx処置牛のあいだに差はなかった。両薬処置後の血中Progesterone値(P値)の消長は、PGF2α-A処置流産牛では、処置日の平均は5.7ng/mlであったが、流産前後にはいずれも0.9ng/ml以下に下降した。また、非流産牛のPGF20-A処置日のP値は平均6.1ng/mlで、処置後の経過日数とともに急減したが、0.9ng/ml以下に下降したものはなかった。一方、Dx処置牛では、流産牛の処置日のP値は平均6.8ng/m1で、処置後3日以降は1.Ong/ml以下となった。非流産牛のDx処置日のP値は9.2ng/mlで、その後一時的に低下するものの、いずれも1.7ng/m1以下にはならなかった。以上の結果から、牛の妊娠4か月までの流産誘起にはPGF2α-Aが極めて有効であるが、妊娠6か月以降ではDxが有効であった。
著者
河原 智 小笠原 俊実 福村 俊美 小笠原 成郎
出版者
日本家畜臨床学会
雑誌
東北家畜臨床研究会誌 (ISSN:09167579)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.33-35, 1991-08-20 (Released:2009-04-22)
参考文献数
8

若齢牛における唾液腺嚢腫に遭遇し、外科的摘出を行ったところ良好な経過を示した。症例は元気、食欲は良好であったが、2週間前より左の顎が徐々に腫大してきたとの稟告のもとに来院。血液所見ならびに穿刺所見より唾液腺嚢腫と診断し、摘出手術を実施した。摘出嚢腫を病理組織学的に検索したところ下顎腺由来と確認され、また嚢包内膜は小葉間導管の上皮に類似していた。その後、本症例は良好な発育を遂げ、手術の6カ月後に売却された。
著者
三宅 陽一
出版者
日本家畜臨床学会
雑誌
東北家畜臨床研究会誌 (ISSN:09167579)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.84-97, 1992-11-25 (Released:2009-04-22)
参考文献数
45

先天的な染色体異常である染色体数あるいは構造上の異常の多くは、人や実験動物に限らず、家畜の性的異常や繁殖障害、または先天異常や奇形の直接的な原因となって現われやすいことが報告されている。また、最近の分子遺伝学的解析方法によって家畜の遺伝性疾患の原因が遺伝子レベルで明らかにされつつある。これまで牛では1/29を始めとする染色体転座、性染色体キメラ、モザイク、常染色体または性染色体のトリソミー、XY性腺発育不全症などがフリーマーチン、生殖器の異常や低受胎、または奇形のもので知られている。馬では性染色体のモザイクやモノソミー、トリソミー、XY性転換症候群などが間性や生殖器奇形、不受胎の雌で報告されている。豚では性染色体転座や、性染色体異常または性染色体のモザイク、モノソミー、トリソミーが間性、産子数の減少した雄豚などで認められているほか、常染色体の逆位の例が、ある特定の家系内で発生していることが認められている。このように家畜では多種類の染色体異常が性的異常や繁殖障害のものに数多く認められているので、染色体検査やDNA診断は臨床診断の一助となりえるものと思われる。
著者
坂本 公一 高橋 忠雄 吉田 欣也 車田 頼義 角田 元成
出版者
日本家畜臨床学会
雑誌
東北家畜臨床研究会誌 (ISSN:09167579)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.36-40, 1991-08-20 (Released:2009-04-22)
参考文献数
8

臨床症状から第四胃食滞と診断された10例の子牛について、臨床的観察を行うとともに、診断および治療について観察した。その結果、発症子牛は何れも黒毛和種の哺乳子牛で、発症日令は18~158日、平均48日であった。初診時の症状は、何れも水様便であったが、下痢症に対する治療法に反応せず次第に衰弱し、哺乳欲の低下、腹囲の膨大、第四胃部の拍水音および排便量の著しい減少が認められた。No.1からNo.3の3頭には、第6病日以後も内科的対症療法を継続したが、平均19日の経過でいずれも死亡した。No.4、No.5の2頭には第6病日以後、第四胃切開術を実施し、No.6からNo.10の5頭には第四胃内容の攪拌を目的とした腹部のマッサージを実施した結果、いずれも処置の翌日、多量の便または正常便の排出と供に一般症状の改善がみられ治癒した。死亡したNo.1とNo.2の幽門部には潰瘍がみられ、その隆起によって幽門部が狭窄しており、No.3の幽門は毛球によって閉塞していた。また手術を実施したNo.4とNo.5の第四胃内には未消化の植物線維が堆積していた。以上のことから子牛の臨床症状として、腹囲膨病、第四胃拍水音および排便量の著しい減少などがみられた場合は、第四胃マッサージあるいは、第四胃切開術は第胃食滞の治療に効果のあることが認められた。
著者
畠山 直一郎 伊豆 肇 高橋 修二 与斎 和博 鈴木 敏規
出版者
日本家畜臨床学会
雑誌
東北家畜臨床研究会誌 (ISSN:09167579)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.7-9, 1997-07-15 (Released:2009-04-22)
参考文献数
8

サルファ剤を過剰投与された子牛の腎臓にサルファ剤結晶を認めた。このようなことから、下痢などによる脱水や乏尿を呈する子牛の症例に対して、サルファ剤を投与する場合には投与量を遵守するとともに脱水を改善した後に投与すべきと考えられた。
著者
大浪 洋二 佐々木 誠 菊池 元宏
出版者
日本家畜臨床学会
雑誌
東北家畜臨床研究会誌 (ISSN:09167579)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-6, 1997

Prostaglandin F2α-analogue(PGF2-A)の0.8~2.4mgを妊娠2~8か月の29例の牛に処置した結果、妊娠4か月までの16例全例が流産したが、妊娠5か月では6例中5例が流産し、妊娠6~8か月では流産しなかった。一方、Dexamethasone(Dx)、30mgを妊娠3~9か月の8例の牛に処置した場合は、妊娠4か月までの2例は流産しなかったが、妊娠5か月では3例のうち2例が流産した。しかし、妊娠6か月の1例は流産せず、妊娠8~9か月では2例とも流産、または早産した。胎盤停滞の発生は妊娠4か月までは認められなかったが、妊娠5か月以降では全例胎盤が停滞した。その発生状況には、PGF2α-AおよびDx処置牛のあいだに差はなかった。両薬処置後の血中Progesterone値(P値)の消長は、PGF2α-A処置流産牛では、処置日の平均は5.7ng/mlであったが、流産前後にはいずれも0.9ng/ml以下に下降した。また、非流産牛のPGF20-A処置日のP値は平均6.1ng/mlで、処置後の経過日数とともに急減したが、0.9ng/ml以下に下降したものはなかった。一方、Dx処置牛では、流産牛の処置日のP値は平均6.8ng/m1で、処置後3日以降は1.Ong/ml以下となった。非流産牛のDx処置日のP値は9.2ng/mlで、その後一時的に低下するものの、いずれも1.7ng/m1以下にはならなかった。以上の結果から、牛の妊娠4か月までの流産誘起にはPGF2α-Aが極めて有効であるが、妊娠6か月以降ではDxが有効であった。