著者
前田 康二 上浦 洋一 金崎 順一 長岡 伸一 篠塚 雄三 萓沼 洋輔
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

平成11〜13年度にかけて実施された本特定領域研究(B)は、次世代素子実現のための材料制御に新たな道を開くため、半導体における電子励起原子移動現象について、得られた知見をもとにして制御性と効率の良い新しい原子・分子操作技術を開発することを目標に、8つの研究班が対象とする物質と問題意識を共有しながら、現象の全容と個々のメカニズムを明らかにすることを目的とした共同研究である。具体的には、Si、C、GaAsなどの物質を対象とし、電子励起法としてレーザー光、放射光、電子線、イオン照射、電流注入、荷電制御といった様々な方法を用い、いかにすれば高い制御性(選択性)をもって、効率の良いナノプロセスが可能となるかを明らかにしようとした。本年度は研究取りまとめとして、班長会議を2回、研究会を1回開催し、NewsLetterを1回発行した。領域全体としては、高効率化と選択性の向上に関して次のような一般的指針を示した。すなわち、効率の高い物質系は、電子励起状態が軌道縮退していることによって潜在的不安定性を持つ半導体中の多くの欠陥中心、短時間で変位を起こしえる水素など軽元素、構造的に柔軟性を有する欠陥・表面、また物質的に多様な軌道混成をとりえる炭素物質、であること。また効率を上げるためには、高密度励起による長寿命2正孔状態の生成や不安定化駆動力の増大、協調励起による反応促進、パラレルプロセスの採用、等を図ることが有効であること。さらに、本来有するサイト選択性を保持するためには、励起電子(正孔)のバンド拡散の抑制などが必要であること、などを明らかにした。
著者
有賀 寛芳 有賀 早苗
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2, 6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番月のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。
著者
早川 由紀夫 古田 貴久 小山 真人
出版者
群馬大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

当初は、CDなどのメディアで配布して学校内LANで使う火山教材を作成しようとしたが、回線やマシンスペックの性能向上が予想したより早く、インターネット上にコンテンツを置いて学校や家庭からユーザーにアクセスしてもらっても私たちの目的を十分達成することができるようになった。そのため予定を変更して、ユーザーにとって使いやすく、私たちにとって配布と更新が容易なポータルサイト「火山の教室」を作成した。http://vulcania.jp/school/ポータルサイトには、「子どものページ」への入り口と「先生のページ」への入り口がある。「子どものページ」は、「ニュース」「火山の学習」「火山がいっぱい」「電子掲示板」「リンク」からなる。「先生のページ」は、「ニュース」「授業素材」「研究レポート」「電子掲示板」「リンク」からなる。児童生徒と教諭はそれぞれのページを利用する。ただし他方のページを開くことを禁じてはいない。教諭は、授業で使う教材をここから選び出す。インターネットに接続して使っても良いし、手元に保存しておいてオフラインで使っても良い。児童生徒は、調べ学習などに利用する。作成したコンテンツのおもなものは、次のとおりである。・ウェブ紙芝居(おはなし編):「マグマのしんちゃん(鳥海山)」、「赤い岩のかけら(浅間山)」・ウェブ紙芝居(立体地形編):浅間山、阿蘇カルデラ、富士山・弁当パックで立体模型:各地の火山と震源分布・地震波シミュレーション:地震波形、縦波と横波、地震観測シミュレーション・生きている火山:噴火動画とライブカメラ・フィールド火山学:火山と噴火の体系的写真解説・見学案内:浅間山、草津白根山、富士山、伊豆大島
著者
岩崎 信 長谷川 晃 最上 忠雄 藤原 充啓 三石 大
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

本研究では,東北大学工学部量子科学館加速器を大型実験装置の例として,高度にITを活用した高校生向きの科学実践型課外授業を開発し,SSH高校生に最適なプログラムのモデル:ブレンディングモデルを開発実践した.大型実験装置現場での授業:実地授業を中心として,導入学習としての事前eラーニング遠隔授業,締めくくりの学習としての事後遠隔リアルタイム授業の3部構成を開発し実践で検証した.授業の目標は、体験目標:加速器の運転、ビーム照射、物質の変化体験.向上目標:学んだ(学ぶ)知識の総合的運用,『エネルギー』と『物質』(原子・イオン)の2つのキー概念で理解.先端的な装置の研究や実用の活用について体験的に理解.達成目標:用いるイオン加速器のシステムとしての構造や構成を理解し加速器を運転することで身体的に獲得する.17年度は埼玉県SSH2年生〜20人、18年度は山口県SSH3年生2人加えて実施された。事前,実地は東北大学のオープンキャンパスを含む夏休み時期に独立に,事後は合同で11月下旬にJGN2を利用して実施した.生徒達の高い加速器概念獲得状況の確認と、アンケート調査等により良好な評価を得た。キーは,生徒たちにとって難解な加速器を"分かる"状態に導くことと、同時にある種"分からない"状態も作り,好奇心,探索心を誘起させ,努力する気持ちを惹起させること.つまり、既習知識の活用の場面と新知識獲得への挑戦的文脈を実践的に用意した.大型装置は存在感があるが,それを生徒達が理解し,運転し,使い,関連する多様な生起現象を思考する身体的実験環境は,科学的論理的思考の基礎となる対象の科学的認識モデル形成を自然に促進する.大学の大型実験装置,教員,院生,それらの活動や思考や説明との接触は,"異文化"との濃厚な接触であり,将来の創造性,独創性発揮(直観や洞察)によい影響を与えると確信する.
著者
吉田 学
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

多くの生物の受精時において、精子は卵へ走化性運動を示す。この現象は、卵を中心とした濃度勾配を形成している誘引物質を関知する精子上のセンサー分子が運動を制御していると考えられるが、分子機構に関してはまだごく一部しか解っていない。研究代表者の吉田らは、原索動物カタユウレイボヤの精子活性化・誘引物質が新奇の硫酸化ステロイドであることを明らかにし、SAAFと命名した。しかし我々の研究も含め、精子が誘引物質を認識するセンサーメカニズムについてはまだほとんど何も解っていない。そこで、これまでの知見及び構築した実験手法を用いて、受精時に見られる精子走化性現象において、精子がどのように空間勾配を形成する誘引物質を感知し、運動機能を変化させているかを解明することを目的とする。実験材料としては、既に誘引物質が我々の手で同定され、さらにゲノム解読も既に終了している原索動物カタユウレイボヤを用いる。今年度は特に精子誘引物質SAAFをセンサーする分子である精子上のSAAF受容体の同定に取り組んだ。まず候補分子として見つかっている370kDaタンパク質(P370)の精製法の改善行い、多量に精製することに成功した。そして、p370の同定をMALDI TOF-MSによって同定を行ったところ、細胞膜型カルシウムポンプであるPMCAであることを明らかにし、カタユウレイボヤPMCA(CiPMCA)を同定した。また、CiPMCA遺伝子はゲノム上1つで哺乳類と相同性が高く、少なくとも2つのsplicing variantがあった。このうち精子で高発現しているvariantを同定した。
著者
二階堂 善弘 吾妻 重二 千田 大介 山下 一夫 志賀 市子 濱島 敦俊
出版者
関西大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

浙江・江蘇一帯の道教や民間信仰における廟・祭神・儀礼の実態について調査を行った。またこれらが華南一帯や、日本などにも影響を及ぼしている状況についても調査した。特に、日本の禅宗文化に与えた影響に注意して検討を行った。
著者
吉川 裕之 八杉 利治 高塚 直能 前田 平生
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

子宮頸がん患者と健常者対照を比較する症例対照研究が進行中であるが、今回は、子宮頸がん患者と子宮頸部異形成(CIN1/2)者におけるHLA遺伝子多型の比較を行い、子宮頸がんにおけるHLA遺伝子多型のリスクを明らかにすることを目的とした。本研究は国内9施設における多施設共同研究である。目標数は子宮頸がん症例400例、対照400例で平成21年12月までの登録を予定している。平成20年2月時点で子宮頸がん患者登録数は80名である。現段階では、健常人の対照との比較ができる段階ではないので、過去のコホート研究で、同一9施設で採取したCIN I/II(前癌病変)患者454名を対照として解析を行った。1) HLAクラスIIアレルの地域差保有率の地域差を認めたのは DRB1*0301、DRB1*0405、DRB1*0803、DQB1*03、DQB1*0401、DQB*0601、DQB*0602であった。2) 子宮頸癌患者(Case)とCIN I/II患者(Control)でのHLAクラスIIアレルの差CaseとControl群間で差が認められたのはDRB1*1302、DQB1*0604であった。さらに、子宮頸がんに対するHLA遺伝子多型のリスクを明らかにするため、通常のロジスティック回帰分析と地域でマッチさせた条件付ロジスティック分析によりオッズ比を求めた。子宮頸がんリスクを上げるHLAタイプとしてDRB1*0701とマージナルではあるがDQB1*0202が、またリスクを下げるタイプとしてDQB1*0604とマージナルなものとしでDRB1*1302の関与が示唆された。これらの中で、CIN I/II の CIN IIIへの進展を阻止するものとして有意であったDRB1*1302は、今回の症例対照研究でも子宮頸がん患者に有意に少ないことが判明した。
著者
佐藤 毅彦 前田 健悟 今井 一雅 戎崎 俊一 川井 和彦 坪田 幸政
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

平成17年度に引き続き、星座カメラi-CANを米国ニューメキシコ州(アパッチポイント天文台)、スペイン・カナリー諸島(ブラッドフォード望遠鏡施設)、米国ハワイ州(国立天文台すばる望遠鏡)に設置した。これにより、海外6サイト、国内1サイトのネットワークが完成した。特にスペイン・サイトの設置は、日本の早朝に夜空の観察を可能とし、学校の授業での利用に対する制限を大幅に緩和した。また、ハワイ・サイトは、子どもたちが帰宅した後、自宅から星空を見るのに便利である。授業後の感想に大変多い「家へ帰ったら、早速見てみたい」という希望を叶えるものとなった。授業実践も、熊本市立龍田小学校、同清水小学校、同松尾西小学校、天草市立本町小学校、北海道教育大学附属小・中学校、石狩市立石狩小学校などにおいて、多数行った。また、科学技術館におけるサイエンス・ライブショー「ユニバース」での定期的な活用、熊本市博物館における特別講演会「ワンダー・プラネタリウム:南天の星空を見上げて」など、社会教育への展開も精力的に行った。これらを通じて、子どもたちの反応をアンケートにもとづき評価し、「興味・関心・意欲」といった情意面、「知識・理解」といった認知面の両方において有効な天体学習ツールに成長し得たことを確認できた。今後は授業での活用を継続するとともに、科学館・博物館における有効利用、さらに宇宙航空研究開発機構などで推進されている宇宙開発の啓蒙の一端を担うツールとしての発展が期待される。
著者
西條 辰義 西村 直子 広田 真一 樽井 礼 七條 達弘 草川 孝夫 瀋 俊毅
出版者
高知工科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

市場班では,実験により市場が理論どおり機能しないことを明らかにしている.たとえば,排出権取引において,投資の不確実性,投資のタイムラグがあると,効率性は達成できない.また,コメ市場においても,制度設計の失敗により,取引量が減少してしまうことを確認している.さらには,ノイズ・トレイダーによるバブル発生のメカニズムも明らかにしている.一方で,市場を公共財として捉え,そのような公共財が効率的に供給できる新たな仕組みのデザインに成功している.
著者
吉川 裕之 岩坂 剛 八重樫 伸生 関谷 宗英 藤井 多久磨 金澤 浩二 神田 忠仁 星合 昊 平井 康夫 永田 知里
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

CINの癌への進展に関与する因子を解明するため、CINI/II症例のコホート研究を行っている。CIN IIIへの進展例が急増しており、平成16年度中の解析が期待できる。登録数は900例に達し、平成16年6月30日に登録を終了した。今回、厳しく適格規準を設定し、509例において中間解析を行った。進展しやすい因子は、単変量解析では、年齢(30歳代),CIN grade(I), HLA DR1302,sexual partners(多)、HPV16/18/33/52/58感染が有意な因子として抽出された。有意にならなかったがその傾向のあるものとしてCMV IgG陽性,Chlamydia IgG陽性があった。観察を続けることで有意になる可能性がある。HPVはHPV16/18/33/52/58では有意に進展に関連があった。多変量解析ではCIN grade(p<0.05), sexual partners(p<0.05), DR1302(p<0.05), HPV16/18/33/52/58(p<0.05)だけが有意な因子として残った。DR1302が進展に対してprotectiveに働くことをコホート研究で立証したのは、本研究が初めてである。消退しにくい(継続しやすい)因子は、単変量解析では、年齢(>30歳),CIN grade(I),HPV16/18/33/52/58,CMV IgG(陽性),Chlamydia IgG(陽性),smoking(喫煙),marital status(既婚),sexual partner number(>4)が有意なものとして抽出され、多変量解析では年齢(p<0.01)、HPV16/18/33/52/58(p<0.01)、sexual partners(p<0.01)、CIN grade(p=0.06marginal)が残った。
著者
高畑 雅一 冨永 佳也 神崎 亮平 青木 清 宗岡 洋二郎 水波 誠 山口 恒夫 堀田 凱樹 横張 文男 鈴木 良次 桑澤 清明 勝木 元也
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1998

平成10〜13年度に実施した特定領域研究(A)「微小脳システムの適応的設計」の研究成果を、2つの研究項目についてそれぞれの班長および領域代表が中心となって詳細に吟味し、領域としての到達点と今後の展望を取りまとめて、研究成果報告書を作成し関係者に配付した。到達点として特に着目される業績としては、感覚連合中枢であるキノコ体のモジュール構造の発見やキノコ体のシグナル伝達機構の解明、また、湿度温度受容を含む機械感覚統合に関する多くの新しい知見などがあげられる。研究報告書には、計画および公募研究課題で公表された主要論文の別刷を添付し、最終的は400頁を越える分量となった。また、平成14年10月に文部科学省にて実施された最終ヒアリングにおいて、領域代表と研究項目代表者が出席して、領域研究の成果が、<わが国における節足動物微小脳による行動制御機構の研究を、従来の個々のモダリティーの感覚情報処理、個々の種特異的行動のパターン形成機構、具体的行動から単離され一般化された神経回路網の学習・記憶機構などの研究から、個体レベルの行動の多様性および複雑性と密接に関連づける研究という方向に向けて、大きく舵を切ったものと意義づけられる>という結論を報告し、審査員と質疑応答を行った結果、<期待どおり研究が進展した>との評価Aを受けた。また、審査報告に述べられた<今後もさらに個体レベルの行動の多様性や複雑性の解明へと取り組んでいただきたい>とのコメントを受け、次年度からの新しい微小脳プロジェクト申請のための打合せ会議を開催し、「微小脳システムの適応的設計」での成果をさらに発展させる目的で平成15年度特定領域研究「コミュニケーションのニューロン機構」(領域代表横張文男福岡大学教授)を申請した。
著者
月村 辰雄 中川 久定 葛西 康徳 川中子 義勝 中川 純男 佐々木 あや乃 多賀 茂 羽田 正 月村 辰雄 松浦 純
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

本研究は,古典の受容に関してもっとも重要なファクターであると考えられる古典教育について,現代,世界の各地域でどのように意義づけられ,どのように教えられ,かつそれぞれの文明圏にどのような効果を及ぼしているのかを,内外の研究者を招いて共同討義によって明らかにし,その上でさらに考察を深めようとしたものである。本年度は4名の研究者を講演に招いた。その結果,近代の古典学の源流の一つともいえるベルリン大学における古典教育の具体像,近現代を通じて200年以上も古典研究のエリート層育成に力があったフランスのコンクール・ジェネラルというシステム,が明らかとなった。また,ホメロス以来の光輝ある古典の伝統と現代ギリシア語による一般大衆教育との鋭い対立という問題を抱えるギリシアの実情報告は,古典教育の持つマイナス面に対する意識を新たにさせた。(これは今後の検討課題である。)以上のより詳細な内容は,特定領域研究「古典学の再構築」研究成果報告書第7分冊,B03調整班報告書において発表される。
著者
松野 健治
出版者
東京理科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

外部形態が左右相称な動物においても、その内臓器官が左右非対称性を示す場合がある。脊椎動物の左右軸の成立機構に関しては、すでに多くの知見が得られている。しかし、旧口動物の左右非対称性形成機構については、ほとんど理解されていない。本研究では、遺伝学的解析手段が駆使できるショウジョウバエの消化管の左右非対称性に着目し、左右性に関与する遺伝子を網羅的に同定することを目的としている。平成16年度までの研究によって、およそ80%の頻度で、中腸と後腸が同調した逆位を示すMyo31DF^<souther>突然変異を同定している。Myo31DF^<souther>の責任遺伝子は、非定型ミオシンIをコードするMyo31DFであった。Myo31DFホモ接合体では、成虫の内臓においても、左右非対称性の逆転が観察されることから、Myo31DFは、成虫の左右非対称性の形成にも必要であることが示唆された。正常な左右非対称形成には、Myo31DFの後腸上皮細胞での発現が必要であり、Myo31DFは、後腸上皮細胞のアクチン皮層に局在した。また、後腸上皮細胞のアクチン細胞骨格の正確な形成を阻害すると、後腸と中腸が逆位を示すことから、Myo31DFは、後腸上皮細胞で、アクチン細胞骨格依存的に機能していると考えられた。ショウジョウバエ・ゲノムプロジェクトにより、ショウジョウバエには、3つのMyosinIが存在することが知られている。その中で、Myo31DFと相同性の高いMyo61Fは、Myo31DFと拮抗的に消化管の左右性を制御していることが示唆された。後腸の収束的伸長における上皮細胞の移動が、後腸の左右非対称性形成に関与していることが示唆されたことから、これら2つのミオシンが、収束的伸長の際の細胞再編成に、左右非対称な偏りを与えているのもと考えられた。
著者
酒井 邦嘉
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

左前頭葉の一部「文法中枢」に脳腫瘍がある患者で純粋な文法障害が生じることを実証しました。左前頭葉に脳腫瘍を持つ患者に文法判断テストを実施し、その腫瘍部位を磁気共鳴映像法(MRI)で調べたところ、左前頭葉の一部である「文法中枢」に腫瘍がある患者では、左前頭葉の他の部位に腫瘍がある患者より誤答率が高くなりました。臨床的には失語症と診断されていないにもかかわらず、今回のように顕著な文法障害(「失文法」)が特定されたのは初めてのことです。
著者
佐々木 司 赤堀 正成
出版者
(財)労働科学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

本研究は,昨今のVDT機器の小型化,軽量化,記憶蓉量の増大,高速ネットワーク化などによって、ここ5年間で増大した在宅IT労働の労働実態とそれが労働者の疲労に及ぼす影響を明らかにする目的とした。調査対象者は、2名の子どもを持つ核家族の主婦で、長子の年齢の上限が8歳であることなどの条件でスクリーニングをした15名の在宅IT労働者(平均年齢±標準偏差;34.6±3.9歳)であった。調査は、30日間にわたる生活時間調査,疲労感調査および身体活動量の測定から構成された。生活時間調査票は,労働者がIT機器に精通していることを鑑みて,表計算ソフトを用いて電子ファイル形式で作成された.具体的な調査項目は,睡眠,食事・飲酒,移動,IT労働,IT機器を用いない労働,家事,育児,入浴など全13項目であった。調査対象者には,30日間,これらの項目の有無を1マス15分の精度で,できるだけ項目の行為を行った時刻にチェックすること,もしそれができない場合は1日3度にわけて行うことを説明した.加えて起床時の疲労感および就寝時の疲労感を日本産業衛生学会産業疲労研究会撰の「自覚症しらべ」を用いて調べた.30日間の調査期間から平日延べ300日,休日(土日,祝日の意)延べ150日のデータを分析した.結果は、労働時間と疲労感の関係では、1日の労働時間が0.4時、6.8時間において疲労度の増加が示された。しかし8時間以上の労働時間は,労働時間0時間の疲労度と似ていた.そこで労働時刻分布を求めた結果、平日も休日も労働時間分布が似ており,両日とも最も労働を行っていた時刻が21時.23時,また平日では午前から夕方にかけて,休日で午後から夕方,そして深夜においても労働の挿入が示されていることが明らかになった。さらに労働の終了時刻が深夜になるにつれ、疲労感が増大することが明らかになった。
著者
梅澤 明弘 秦 順一
出版者
国立成育医療センター(研究所)
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

TERT、E6、E7、およびBmiを遺伝子導入することにより寿命を延長したヒト骨髄間葉系幹細胞を用いてin vitroとin vivoにおいて心筋に分化するかどうかを検討する。ヒト骨髄間葉系細胞を限外希釈法でサブクローニングをして得られた細胞に、レトロウィルスを用いてTERT、E6、E7、およびBmiを遺伝子導入した。得られたヒト寿命延長骨髄間葉系幹細胞をGFPで標識し、マウス胎児心筋細胞と共培養することで心筋へ分化させ、さらに免疫組織化学を用いて抗心筋トロポニン抗体で評価した。また、免疫不全マウスの心筋にヒト寿命延長骨髄間葉系幹細胞を注射し、心筋への分化を免疫組織化学により評価した。in vitroでGFP陽性細胞は2日後に筋管細胞様に延長し、7日後には拍動する細胞を認めた。免疫組織化学では抗心筋トロポニン抗体陽性であった。また、in vivoにおいても抗心筋トロポニン抗体と抗β2ミクログロブリン抗体陽性の移植細胞が認められた。以上のことより、寿命延長したヒト骨髄間葉系幹細胞は心筋に分化し得ると結論づけられる。心筋細胞がin vitroで大量に確保できるという状況が現れれば、それらの細胞を用いた細胞移植という方法論で、末期重症心不全の治療に用いることが可能であろう。In vivoにおいて、胎児心筋細胞を用いて心臓への移植の可能性が証明されて以来、遺伝子を導入した細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、無処置の骨髄細胞などがドナー細胞として用いられてきた。また、胎児性幹細胞を用いた実験も報告されているが、倫理的な問題を含んでいる。
著者
大塚 秀高
出版者
埼玉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

江戸時代に、佐伯藩第八代藩主毛利高標が城中に創設した文庫にたくわえられた漢籍の一大コレクション、いわゆる佐伯文庫本は、そのほぼ半数が高標の孫の高翰の代に幕府に献上され、江戸城中の紅葉山文庫、ならびに昌平坂学問所・江戸医学館に分蔵された。この献上本は、明治維新以後いくたの変遷をへたが、今も独立法人国立公文書館附設の内閣文庫と宮内庁書陵部に、九割以上が遺されている。ところが、佐伯藩に残された非献上書の行方については、これまでよくわかっていなかった。非献上本は、幕末まで手厚く保存されていたようだが、維新後散逸する。きっかけは、文部省が、各府県から旧藩襲蔵書の目録を提出させ、そこから「聚珍書目一覧表」を作ろうとしたこと、にあった。明治四年のことである。各府県はきそって旧藩の蔵書を集めて目録化し、文部省に提出した。誕生したばかりの後の国会図書館、当時の書籍館は、自らの和漢書不足をこのリストから採選することによって補おうと考え、さっそくそれを実行に移した。この結果、国会図書館には今なお3種の存疑本を含む24種の佐伯文庫本が遺されている。このおり大分県に留め置かれた佐伯文庫本もあったが、洋書5種をのぞき、それらは戦災で焼失した。また、書籍館による採選の後、県下ならびに毛利家に留め置かれた佐伯文庫本の多くは、売却処分に附されたらしい。そして、その多くを購入したのが方功恵であって、方功恵に購入された佐伯文庫本は、再度海を渡り、多くは中国に戻ることになった。現在中国国家図書館・北京大学図書館などに蔵されているものがそれである。今回報告書の第一分冊として作成した「佐伯文庫旧蔵畳現存書目録(漢籍之部)」は、佐伯文庫本の、現所蔵機関をも明らかにしたユニオンカタログであり、第二分冊として作成した「方功恵碧琳瑯館旧蔵書総合目録(第二稿)」は、方功恵旧蔵書のユニオンカタログである。
著者
篠田 謙一
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

今年度は昨年解析を行った中世集団墓地に隣接する由比ヶ浜南遺跡に埋葬された人骨のDNA分析を進めた。昨年分析を進めた集団墓地が複数個体の一括埋葬であったのに対し、由比ヶ浜南遺跡は、単体埋葬された人骨を分析の対象とした。昨年同様24体の人骨を対象に、DNAの抽出とミトコンドリアDNAの解析を行った。その結果、今年度は19個体の解析が可能だった。こちらは全部で27の変異箇所が検出され、16のタイプに分類された。こちらも同一配列を持ち、母系の血縁関係が予想されるものは2個体づつ3組で、特に特定の配列に集中すると言うことはなかった。双方の遺跡を通して見ても、D-loopの塩基配列が一致したものは2個体ずつ6組のみで、双方の遺跡に共通するのは1組だけであった。従って、特定の血縁集団の墓地ではないという昨年度の結果を追認するかたちになった。ハプログループ頻度を日本の他の集団と比較したところ、中世鎌倉のハプログループの頻度分布は、基本的には現代日本人に似ていることがわかった。しかしながら縄文人とは異なっており、一部の形態学者が言う中世鎌倉と縄文の共通性を示唆することはなかった。むしろ、現代の日本人に通じる遺伝子構成をしていたことが証明された。しかしながら中世鎌倉人骨の中には、日本人には非常に珍しいハプログループを持つ個体も存在しており、彼らは海外から渡来してきた人であった可能性もある。そうであれば中世鎌倉の国際性を示すものだと考えられるが、結論を確かめるためには、更に解析個体数を増やして、日本にはあまり多くないハプログループが更に出現するかを確かめる必要がある。今後の課題としたい。
著者
山田 隆 藤江 誠
出版者
広島大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

・クロロウイルスCVK2感染初期遺伝子の同定と発現解析ウイルス感染後、5-10minの間にウイルス初期遺伝子が発現する。最初期に発現する遺伝子計23個を同定し、その発現パターンと特異的プロモータ構造を解析した。初期遺伝子には、TFIIB,mRNA capping enzyme,helicase,transcription factors等転写に関係する因子、aa-tRNA synthetases,ribosomal proteins等翻訳関係因子、その他各種代謝系に関係する酵素がコードされていた。これら各々の感染における役割の確定が興味深い問題である。クロロウイルス感染初期転写の特徴は、感染後40minでそのパターンが大きく切り替わる事である。すなわち当初poly(A)付加されるmRNAは感染後40min以降は全くpoly(A)を失う。転写開始、終結が40min以降は極めてルーズになり、readthroughが頻繁に起こる。感染後、早期に生成される宿主細胞表面ヒアルロン酸、キチンは、宿主細胞を一時的に外環境より保護する意義があると思われる(論文発表)。・クロロウイルスCVK2のコードする新奇細胞壁分解リアーゼの解析ウイルスが宿主細胞壁を特異的に分解するには複数の酵素活性が必要であり、これまでに3種の多糖加水分解酵素遺伝子をウイルスゲノム上に同定してある。さらに未知ORFが宿主溶解活性があることを見いだしvAL-1と命名した。GST-融合タンパク質として大腸菌で生成したvAL-1を用いて、宿主細胞壁を分解し生成オリゴ糖をMALDI-TOFF-MASSスペクトロメトリーで解析した。その結果、この酵素はC2位に側鎖を持つグルクロン酸のβ結合を脱離反応で切断するリアーゼ活性を有することが判明した。既知のリアーゼとは諸性質を異にし酵素学的にも興味深い酵素である(論文発表)。また、切断基質となる糖鎖構造もまたユニークであり、このウイルスの宿主特異性を考える上で重要な情報となる。
著者
森内 浩幸
出版者
長崎大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

(1)CCR5の発現が朝低く夜に高くなる概日リズムを示すことを、リアルタイムRT-PCRを用いてmRNAのレベルで、そして定量的フローサイトメトリーを用いて細胞表面発現のレベルで示した。この機序として、概日リズムの影響を受ける転写因子であるDBPが関与する可能性を、(1)DBPが末梢血リンパ球においても発現し、細胞核抽出液を用いたゲル・シフト実験で朝に低く夜に高い発現パターンを示すこと、(2)CCR5プモーター領城にDBPが結合することをゲル・シフト実験で示したこと、(3)DBPがCCR5プロモーターの活性を亢進させることをトランスフェクション実験によって示したこと、そして(4)CCR5プロモーター上のDBP結合部位の変異導入によってこのような活性化作用が消失することによって示した。(2)EBウイルスの急性感染(伝染性単核症)に際してリンパ球が活性化されしかもTh1に強くシフトされることから、Th1のマーカーともされるCCR5の発現とこれを用いて細胞に侵入するR5-HIV-1の感染効率を調べたところ、(1)伝染性単核症急性期においでCCR5の発現が高まり回復期にはコントロールのレベルに戻ること、そして(2)急性期と回復期にそれぞれ採取保存していたリンパ球を用いてR5-HIV-1の感染実験を行ったところ、急性期のリンパ球は特に細胞に刺激をさらに加えることなくとも感染を効果的にサポートすることを明らかにした。(3)漢方薬としても用いられる紫根の主成分シコニンがCCR5の発現をプロモーターのレベルで抑制することを示した。(4)胎児・新生児および妊婦の血清に大量に含まれるα-フェトプロテインがCCR5の発現を抑制することを示した。