著者
前田 陽一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.556-563, 2018-04-15 (Released:2018-04-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1

人工蜂コロニー(ABC)アルゴリズムは,蜜蜂の群れの採餌行動から着想を得た群知能アルゴリズムであり,実数値最適化を目的として開発された近似最適化手法である.ABCアルゴリズムは,最適化の対象となる問題の性質を問わず高い探索性能を持つことが検証されているが,いくつかの問題点が存在する.例として,個体の多様性を重視した探索を行うために,優良解に収束するまでに時間がかかりやすいという問題が存在する.近年,ABCアルゴリズムの改良手法に関する研究が盛んに行われており,他の進化的計算手法の考えを取り入れたハイブリッド手法が数多く提案されている.本研究では,実数値GAで用いられる交叉手法の1つである算術交叉をABCアルゴリズムの探索処理に組み込むことにより探索速度を向上させた改良手法である,算術交叉型ABCアルゴリズム(AC-ABC)と,遺伝的アルゴリズム(GA)の交叉,突然変異に用いられる確率的探索処理をABCアルゴリズムの変数選択部分に取り入れることにより,探索性能を高めた大域探索型ABCアルゴリズム(GS-ABC)を提案する.本手法の有効性を検証するため関数最適化シミュレーションを行ない,GS-ABCアルゴリズムは6種類のベンチマーク問題の全てで従来手法よりも高い性能を示すことが明らかとなった.
著者
島田 達朗 櫻井 彰人
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.611-618, 2017-08-15 (Released:2017-08-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1

オンラインコミュニティサイトには多くの質問が投稿されるが,その中には疑問等に対する答えを求めるのではなく質問の具体的な答えそのものよりも,自分の思いへの共感を求める質問がある.共感を求める質問に対して回答する人は,そうでない質問に対して回答する人より有意に少ない.そこで,共感を求める質問に対しても適切な回答を与えることができれば,ユーザのサイトに対する満足度が向上する.共感を求める質問に対して高い回答率を持つユーザー層に回答してもらえるよう,質問を振り分けることにより,共感を求める質問であっても回答される可能性を上げるという方法をとることとした.なお本論文では共感を求める質問とそうでない質問に対して機械学習を用いて分類を行った.
著者
花房 竜馬 荒木 健治
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.860-871, 2021-11-15 (Released:2021-11-15)
参考文献数
13

近年,精神疾患患者の増加に伴い,精神治療におけるカウンセリングの需要が急増している.しかし,精神治療への抵抗感や費用の高さから治療を受けられず,疾患の悪化により自ら命を絶つケースも少なくない.現時点では,心理療法士と同等の精神治療を代行できる対話システムは存在しない.本論文では,心理療法における問題の認識を自動的に行うために,相談者の発話から悩み文,心情文を自動抽出する手法を考案した.その手法を基に,ルールベースによる抽出システム,類似性による抽出システム,分類器による抽出システムを開発した.各抽出システムにより性能評価実験を行った結果,分類器による抽出システムがF値0.73と最も良い性能を示し,提案手法の有効性が示された.
著者
久木田 水生
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.133-138, 2019-10-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
36
著者
三谷 慶太 星野 孝総
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.845-859, 2021-11-15 (Released:2021-11-15)
参考文献数
30

脳活動を測定するために脳に関するデータを取得可能なMagnetic Resonance Imaging (MRI,核磁気共鳴画像法)などの計測機器が活用されている.これらの計測機器を活用して,学習に関する様々な研究が行われている.しかし,長期間の測定は参加者への負担も大きく,また短期間で複数回の連続計測は,身体的影響が指摘されている.その場合,オフラインで学習度合いを測ることで,参加者への身体的負担や精神的負担の軽減につながると考えられる.本稿では,人間の学習過程をMRI計測する場合を考え,事前の長期間の学習で,どのように学習が進んでいくのかを観測するパフォーマンス実験について結果を示す.それらのデータをもとにして,学習度合い予測モデルを提案する.これらのモデルから,生体計測を行うための適切なタイミングを学習度合いから議論し,モデルを検証する.
著者
山根 宏彰
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.202, 2015-12-15 (Released:2017-12-15)

病理学的な見地から脳の構造を解明しようという動きは古くから存在していたが,昨今では計算機科学の側面からのアプローチに注目が集まっている.このような背景から,米国では90年代のDecade of the Brainを皮切りにBRAIN Initiative,ヨーロッパではHuman Brain Project,我が国ではBrain/MINDS(革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト)が発足する等,脳機能の解明及び応用に多額の資金及び人的リソースが投入されている.「脳のエンコーディング」は,人間の知覚体験や精神活動を計測可能な脳活動に変換することであり,「脳のデコーディング」は,逆に計測された脳活動から,知覚体験や精神活動の再構築を行うことである.近年では,脳計測技術の進歩が著しい.様々な手法があるが,例えばfMRI(機能的核磁気共鳴画像法)は,脳内における数ミリスケールの直方体(ボクセル)で表現される部位の活性度合いを計測することが可能である.このような進歩に伴い,具体的な目覚ましい成果として,脳情報からの視覚像の再構成,思い浮かべている単語の予測,また夢の解読等が実現されている.ニューラルネットワークが再び脚光を浴びている現在において,視覚情報処理においては,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて画像認識を行う手法が普及している.音声認識でもCNNが高い性能を示している.言語処理ではword2vec等のニューラルネットワークを用いて単語ベクトル化を行う手法が提案され,広く用いられてきている.特に,これらの情報を統合した,複数の知覚の統合,マルチモーダル化が急速に進みつつあり,脳情報との統合が今後のトレンドになる可能性がある.ここで構築された柔軟な知識表現は,汎用的人工知能を構築する上で大きな課題であったシンボルグラウンディング問題の一つの解になるとも考えられる.つまり,「りんご」を字面のりんごだけではなく,画像的,触覚的,比喩的感覚を含めた情報までも同時に扱えるようになると期待できる.これにより,美しさ等の形容詞的,主観的で曖昧な感性的な問いに対しても,以前よりクリアな解が得られる可能性がある.
著者
木下 雄一朗 鈴木 圭佑 郷 健太郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.987-997, 2020

<p>本論文では,ペーパークラフトの一種であるシャドーボックスに着目し,ユーザの表現したい印象に適合したシャドーボックスの貼り重ね方を自動生成する感性ファブリケーション支援システムを実装した.このシステムは,デザイン生成ユニットによる複数の設計データの生成と,印象変化量評価モデルに基づく表現したい印象への適合度評価により実現した.システムの実装に先立ち,様々なシャドーボックスが鑑賞者に与える印象を調査する目的で,印象評価実験を行った.そして,この実験結果をニューラルネットワークに学習させることで,印象変化量評価モデルを構築した.デザイン生成ユニットは,進化的計算のアプローチで実現し,構築した印象変化量評価モデルを評価関数として用いた.最後に,実装したシステムの出力結果に基づいて作成されたシャドーボックスの印象評価実験により,このシステムの有効性を確認した.</p>
著者
岩満 優美 竹村 和久 松村 治 王 雨晗 延藤 麻子 小平 明子 轟 純一 轟 慶子
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.651-658, 2013-04-15 (Released:2013-06-05)
参考文献数
16
被引用文献数
3

精神医科学や臨床心理学においては,投映描画は個人の人格的理解と行動の全般的理解のために用いられている.特にコッホによって開発された樹木画(バウムテスト)は,医学的診断の補助や心理学的評価のために用いられることが多い.投映描画の解釈では客観性に乏しく,信頼性が低いため,われわれは,いくつかの画像解析技法の手法を統合した方法を用いて,精神障害患者の描画を解釈することを試みた.本研究で提案された方法は,下記のとおりである.(1)濃度ヒストグラム法(GLHM 法),(2) 空間濃度レベル依存法(SGLDM),(3)濃度レベル差分法(GLDM),(4)矩形行列を実行列または複素行列に分解する特異値分解,(5)画像の波形成分を分解するフーリエ解析,(6)画像解析をもとにした描画の臨床心理学的解釈である.これらの投映的樹木テストの画像解析諸技法は,精神障害の心理学的過程を解釈するために利用された.
著者
黒須 亮成 清水 博貴 橋本 智己
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.501-506, 2017-02-15 (Released:2017-02-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2

本稿では,人間とロボットの間で自然なコミュニケーションの実現を目指し,コミュニケーションエージェントの感情モデルを提案する.提案モデルは,「怒り」,「嫌悪」,「恐れ」,「悲しみ」,「幸福」,「驚き」の6感情を持ち,ファジィ認知マップで構成されている.6感情を相互に結合することで,幸福だが悲しい,悲しくて恐ろしい,恐ろしくて嫌悪するといった複数の感情を同時に表現することができる.提案モデルは,時間的に変化する重みと時間遅れの要素を組み込んでいて,情動と気分,サーカディアンリズムを表現する.感覚遮断を模して1週間放置した実験では,周期的に過去の感情が励起する反応が観察された.
著者
鈴木 秀和 西 仁司 瀧 晃司
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.653-662, 2009-10-15 (Released:2010-01-12)
参考文献数
21
被引用文献数
1

近年,AIBOやParo等に代表される動物型ロボットが話題を集めており,その愛らしい仕草によるエンターテインメント効果のみならず,ロボットセラピーにおけるヒーリング効果が注目を集めている.ヒーリング効果への影響を考えた場合,ロボットが動物らしく行動することが重要であるが,実環境では複雑な動的干渉の影響を受けるため,歩行等の複雑な行動を動物らしく実行することは難しい.そこで本報告では,人が「動物らしい」と感じる4脚歩行ロボットのための歩容生成を目標に,AIBOを用いた地面での動物的な歩容の生成を試みる.脚式ロボットの歩容生成が多次元時系列空間における軌跡の最適化問題であることに着目し,複合特徴領域から成る最適歩容領域への到達方法として,特徴群を1つずつ最適化して辿る手法を提案する.具体的には,動物の歩容に基づいた基本形状とGAによる中間軌道の最適化により,効率よく推進力を発生できる単脚軌道の生成を4脚歩容生成の導入として行う.生成された単脚軌道の連携のために動物学における歩容分類を適用し,人間が動物らしいと感じる感性を取り入れるためにデューティ比と周期を変えたアンケートを実施した.さらに,アンケート結果より得た動物的な歩容に対し,GAを用いた地面での適応学習を行うことにより,人が動物らしいと感じる歩容形態を維持したまま効率よく前進できる歩容の実現を試みる.
著者
石岡 卓也 米田 貴雄 吉井 伸一郎 古川 正志
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.680-688, 2007-12-15 (Released:2008-03-17)
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究は,実社会の情報伝播の一部分を成すブログ上の情報伝播に着目し,その特性として特に重要であると考えられる情報伝播規模がどのように分布するか,またその分布を決定付ける要因が何であるかを明らかにすることを目的とする.そのため,実ネットワークで観測したブログ上における情報伝播の規模分布の結果と,その数理モデルによる結果を比較し,適切なモデルを得る.情報伝播の規模は,トラックバックの連鎖によって情報が幾つのエントリへ伝播したかを採用した.数理モデルとしては複雑ネットワーク上のパーコレーションを適用した.結果として,ブログ上の情報伝播規模は,スケールフリーネットワーク上のパーコレーションと類似することが分かった.
著者
寺口 敏生 田中 成典 西江 将男
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.411-427, 2011-08-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
31

近年,情報関連技術の普及と発展に伴い,カーナビゲーションを代表とする地理空間情報サービスが普及している.しかし,地理空間情報サービスの基盤となる地図情報の整備は人手による現地踏査に依存しているため,新店舗の開店などの実空間の情報変化に地図情報が追従できていない問題がある.そこで,著者らは,Web上の新店舗の開店情報を対象として,自然言語から店舗名,住所や業種などの店舗情報を自動収集するテキストマイニングの研究を行ってきた.しかし,新規開店に関連するキーワードだけを用いてマイニングを行った場合,業種別の単語出現傾向の違いや,単語の連接関係によって生じるノイズなどの自然言語の曖昧性に起因する課題に加え,情報自体の正誤を評価できないという課題に直面した.そこで,本研究では,キーワードによるマイニングに加え,マーケティング分析の指標に基づいて,店舗の業種と出店位置の地理的特性との関係を活用することで,これらの課題を克服することを目指す.実験から,地理的特性を考慮した情報を評価することによって,新店舗に関する開店情報を高精度に取得できることを実証した.
著者
鳥塚 裕喜 萩原 将文
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.956-963, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本論文では,効果素材を付加した対話型漫画生成支援システムを提案する.提案システムでは,ストーリー性のある短いテキストとその話題に関連する画像を入力として,対話形式で漫画を生成する.一度漫画を生成した後に,ユーザーは満足のいかないコマを選択し,そのコマだけを再生成することができる対話型のシステムとなっている.また,選択したコマの中でも特に背景だけ,キャラクターだけ,吹き出しだけ,描き文字・漫符だけなどのように,より細かい単位での再生成も可能となっている.これにより,ユーザーの満足度が高い漫画を,素早く生成することができる.さらに,描き文字・漫符と効果線などの効果素材の利用も導入されている.このようにして,より漫画らしい表現が可能となり,文書に比べてより効果的な情報伝達手段となっている.評価実験により,対話型の再生成による効果,および描き文字・漫符,効果線の導入の有用性が確認されている.
著者
田村 謙次 鳥居 隆司 武藤 敦子 中村 剛士 加藤 昇平 伊藤 英則
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.791-799, 2008-10-15 (Released:2009-01-05)
参考文献数
18

遺伝的アルゴリズムには早い世代で多様性が損なわれてしまう初期収束や個体間に有効な遺伝子列であるスキーマを効率的に広めるために適用する問題の特性に合わせた交叉や突然変異と呼ばれる遺伝的操作が行われる必要があるという問題点がある.また,進化論の一つにウイルス進化論がある.ウイルス進化型遺伝的アルゴリズム(Virus Evolutionary Genetic Algorithm : VE-GA)は適用問題の解候補となる宿主と,部分解となるウイルスを遺伝子列として持つ二つの個体群から成り,それらの相互作用による共進化により,大域的探索と局所的探索行い,スキーマを個体間に高速に広めることができる.宿主はより高い適応度を得るための解探索を行い,ウイルスは宿主の適応度を上げるための部分解の探索を行う.また,一般的なGAにおいて,交叉は重要な役割を持ち,さまざまな手法が提案されている.各手法における解探索能力はそれぞれ異なり,適用する問題の性質や遺伝子のコーディング,個体数,進化の状況にあわせた適切な手法を選択することが重要であり,GAの施行中に適切な交叉方法を選択する手法が報告されている.したがって,個体の遺伝子列を部分的に変化させるという点において交叉と類似している感染は,交叉同様に重要であると考えられ,宿主に感染する際に,世代途中で適切な感染手法を選択することにより,効率的な探索を行うことが期待できる.本論文では,感染手法による個体進化の相違を比較,進化の状況により適応的に感染手法を切り替える一手法である適応的感染手法を提案し,数値シミュレーションによる従来手法との比較を行ったことを報告する.
著者
乙武 北斗 高丸 圭一 内田 ゆず 木村 泰知
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.700-705, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
10

議会会議録には議会におけるすべての発言が記録されている.議会会議録の発言内容に基づき,議会における議員の取り組みや政治的態度を明らかにする研究が進められている.従来の研究ではTF-IDFなどの単語ベースの方法が用いられており,複数単語のフレーズや文脈を考慮する表現力に欠けていた.本論文では,会議録中の各発言の発言者を推定するBERTベースの分類器とSHAPを用いて算出されるトークン単位の分類貢献度を利用し,発言文から文節単位で政治的関心を含む特徴的な表現を抽出する手法,およびその結果の分析について述べる.文節単位で係り受け関係も考慮することで,抽出された表現の文脈を提示できる.分析の結果,本手法はTF-IDFと比較して発言者の政治的関心が見受けられる特徴的な表現を多く抽出できることを確認した.また,TF-IDFでは抽出が困難な,発言者の独特の言葉遣いを抽出できることを確認した.
著者
鈴木 公啓 野村 竜也
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.706-711, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
23

本研究は,職種毎の対人コミュニケーション場面におけるジェンダーロボット選好について明らかにすることを目的としておこなった.また,ジェンダー選好において,性役割平等志向性が関連しているかについても検討をおこなった.成人男女1000名を対象に検討をおこなった.その結果,人間,アンドロイド型ロボット,そして機械型ロボットのいずれにおいても,そしてどの職種であっても,コミュニケーション相手として性別がどちらでもかまわないとする者が多いことが示された.ロボットを日常生活に導入する際には必ずしも性別を付与しないで良いことが示唆される.また,ロボットの側を特定のジェンダーに設定してもそれはステレオタイプの再生産とならない可能性が考えられた.
著者
目良 和也 青山 正人 大道 博文 黒澤 義明 竹澤 寿幸
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.944-955, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
17

CGアバターによる遠隔コミュニケーションにおいてユーザの気持ちを的確に伝えるには,言語情報だけでなく,口調,表情,動作などのノンバーバル情報も重要である.CGアバターに基本感情を付与する研究はこれまでも行われているが,皮肉や照れ隠しのような本心を隠そうとしている表情を表現するための手法は確立されていない.そこで本論文では,顔部位の変化の随意不随意性に注目し,本心感情を不随意な顔部位の変化,演技感情を随意に動かせる顔部位の変化によって表現することで,外面と内面の感情を選択的に表現する手法を提案する.本論文ではツンデレ表情を想定し,本心感情を喜び,演技感情を平静あるいは怒りとした事例を用いて説明する.提案手法に基づいて作成した表情アニメーションについて印象評定を行った結果,不随意的な喜び顔部位である“頬の紅潮”が表出していることが「喜びを隠蔽しようとしている」という印象を強くしていた.一方,頬の紅潮の代わりに目や口など随意的な喜び顔部位を用いたところ,逆に「喜んでいるふりをしている」という印象を強くしていた.このことより,本心感情を不随意な顔部位の変化によって表出することで,内面の感情を選択的に表現できることが確認できた.
著者
新福 一貴 笹嶋 宗彦
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.655-667, 2023-05-15 (Released:2023-05-15)
参考文献数
20

顧客満足度とは企業が提供するサービスや商品に対する顧客の満足度を表す指標であり,顧客満足度を向上させることは企業にとって最も重要な課題の1つである.しかし,最も投資対効果の高い顧客満足度向上方法を発見することは容易ではない.なぜなら,サービスや商品は,それ自体の品質や価格だけではなく,提供のされ方や提供される店の雰囲気,利用した時に得られる満足感など,多くの軸から評価されるものであり,どの評価軸における課題を解決することが顧客満足度向上につながるのかを見極めることは,一般に困難である.評価軸には,「この企業に対する満足度」のような企業に対する総合的な満足度を問う質問項目に対する回答である総合満足度と,総合満足度を判断する根拠となる,個々の質問項目への回答である個別項目満足度が含まれる.これらから課題の選択を支援するための可視化手法については従来から研究が行われており,総合満足度とそれに対する個別項目の重要度を相関関係より算出し,可視化するCS(Customer Satisfaction)ポートフォリオ分析やIPA(Importance-Performance Analysis)と呼ばれる方法がある.しかし,既存研究は,判断の際に重要である,競合企業との関係性についての可視化が不十分である.そこで本論文では,カフェ,ドラッグストア,保険販売業,など自社企業が所属する業種に含まれる,複数企業を対象に行った個別項目と総合満足度のアンケートを入力として,自社企業に対する顧客満足度が,業種の中でどのような位置にあるかを可視化するツールCSIMGを提案する.CSIMGは,従来研究が可視化してきた,自社サービスや商品の総合満足度と個別項目の関係だけではなく,各個別項目の評価値が,同業種の他社と合わせてどの程度ばらついているか,言い換えれば,改善の余地があるか否かを可視化することで,経営者が,どの項目に優先して投資すべきか判断することを支援する.4つの業界アンケートを対象に,CSIMGの出力と,人間の経営アドバイスの専門家である中小企業診断士の判断とを比較した結果,アンケート回答者である一般消費者が,サービスや商品を自分で複数社利用し比較できるような業種については,CSIMGが,人間の専門家と近い評価結果を出力できる可能性があることを示すことができた.