著者
寺尾 和一 吉田 光宏 相見 有理 石田 衛 濱﨑 一 水谷 尚史 中西 浩隆 中林 規容
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.426-431, 2023 (Released:2023-09-25)
参考文献数
11

生来健康な34歳男性.発熱にて精査中,頭痛を主訴に左脳出血を発症し,精査加療目的に入院した.血液培養からLactobacillus rhamnosusが同定され,心臓超音波検査にて大動脈弁に疣贅を指摘されたため,感染性心内膜炎と診断された.本患者は1日推奨量の10倍以上のヨーグルト摂取を行っており,これが侵入門戸と推定された.抗生物質による加療を開始していたにもかかわらず,右脳出血を続発した.血腫内に脳動脈瘤が認められ,保存加療中に脳動脈瘤が経時的に増大したため,感染性動脈瘤と診断し,開頭脳動脈瘤切除術を施行した.発症から33日後に大動脈弁置換術が施行され,その後リハビリテーション目的に転院した.ヨーグルト製品の過剰摂取によるLactobacillus菌血症は,少ないながらも報告があり,本症例のように感染性心内膜炎を発症し,細菌性脳動脈瘤の形成,破裂に至る可能性も考慮すべきである.
著者
佐伯 覚 蜂須 賀明子 伊藤 英明 加藤 徳明 越智 光宏 松嶋 康之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10668, (Released:2019-08-08)
参考文献数
36
被引用文献数
1

要旨:若年脳卒中患者の社会参加,特に復職は重要なリハビリテーションの目標であり,ノーマライゼイションの理念を具現化するものである.国際生活機能分類の普及に伴い,社会参加の重要性が再認識されている.また,政府が主導している「働き方改革」に関連した「治療と就労の両立支援」施策の一つとして,脳卒中の就労支援が進められている.しかし,脳卒中患者の高齢化・重度化,非正規雇用労働などの労働態様の変化は脳卒中患者の復職に多大な影響を与えており,若年脳卒中患者の復職率は過去20 年間,40%に留まっている.脳卒中患者の復職は医療だけでなく福祉分野とも関連し,職業リハビリテーションとの連携,さらには,復職予定先の企業等との調整など様々なレベルでの対応が必要であり,医療福祉連携を超える高次の連携が必要となる.
著者
仲野 達 山浦 弦平 横山 睦美 田中 章景 小山 主夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.47-49, 2015 (Released:2015-01-23)
参考文献数
10

要旨:症例は39 歳男性.サーフィン後に他人の自転車を乗っていこうとする異常行動のあとに意識障害が進行したため救急搬送された.MRI では両側小脳,両側視床に新規脳梗塞を認め,MR angiography(MRA)では頭蓋外から頭蓋内への移行部に両側で椎骨動脈解離を認めた.MRA で経時的に観察を行い,両側で同様な解離腔の信号変化を呈したことから両側同時に解離が生じたものと判断した.保存的治療で意識状態は改善したが,見当識障害,記銘力障害が残存した.外的要因で椎骨動脈解離が生じることは知られているが,サーフィンも例外ではない.また,両側椎骨動脈解離を認める症例は少なく,発症機序を考察する上でも貴重な症例と考えた.
著者
岡村 智教
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.920-924, 2008 (Released:2009-01-13)
参考文献数
8

Evidence based medicine (EBM) was proposed by Guyatt in the early 1990s. Sackett and colleagues have established basic concept of EBM. They defined that EBM was the conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence in making clinical decisions for each patient. Recently, although many clinicians recognized epidemiology as an importance tool for EBM, there were some misunderstandings in the decision-making process to use evidence level. Some clinicians believe EBM must need randomized-controlled trials (RCT). However, RCT is not always best available evidence. RCT is not suitable to examine harmful exposures, such as smoking, due to ethical problems. Furthermore, to clarify very week association, such as dietary habit and stroke, RCT requires too huge sample size to perform practically. When we are looking for second best evidence, the consistency is a main target. For example, cohort studies anywhere on the globe showed the positive relationship between smoking and cerebral infarction. Although EBM is substantially made to resolve a one-on-one clinical relationship (one therapy and one outcome), clinical questions usually consist of more complex matters with many-to-many, many-to-one, one-to-many associations. We should combine the best available external evidence with our clinical expertise, and neither alone may work enough.
著者
豊田 章宏
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.226-235, 2011-03-25 (Released:2011-04-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2 4

【背景】脳卒中発症には気温が最も影響する.発症時期については冬に多く夏に少ないとされるが一定しておらず,その理由として気象の影響の複雑さに加えて,観察期間の短さや対象数の少なさなど研究方法自体も指摘されている.【方法】全国労災病院において2002年度から2008年度に入院加療された全脳卒中症例46,031例を対象とし,脳卒中病型別に月別発症数を比較した.また気象区分から4つの地域に分けて検討した.【結果】脳出血は男女とも夏少なく冬に多発したが,北日本と西日本では最少月にひと月の差があった.くも膜下出血は女性に多く,夏少なく秋から冬に多発した.脳梗塞全体では明確な季節性は認めなかったが,ラクナおよびアテローム血栓性梗塞では夏に急増し1月に再増加という2峰性がみられ,心原性脳塞栓では冬場のみ多発した.【結論】地球環境の変化に伴い,生活環境や職場環境にも十分配慮した脳卒中予防対策が必要となる.
著者
清水 大輝 雄山 博文 若林 健一 伊藤 真史 杉田 竜太郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.546-550, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
20

脳空気塞栓症は,医療行為や外傷,あるいは潜水などによって生じるが,内因性疾患が原因で生じることは稀である.今回,胸部疾患および腹部疾患にそれぞれ続発した脳空気塞栓症を経験したので報告する.症例1は78歳男性.非結核性抗酸菌症と肺気腫を基礎に有し,反復性気胸を呈していた.突然の左半身麻痺・意識障害にて発症し,画像検査にて,両前頭葉に微小な空気像と両側大脳半球に多発性脳梗塞,および右肺に気管支肺炎と気胸を認めた.臨床経過と検査所見から,慢性肺疾患を基礎に気胸に起因する脳空気塞栓症と診断した.症例2は92歳男性.嘔吐後意識障害にて発症し,画像検査では,左大脳半球に空気像と両側半球に多発性脳梗塞,および小腸イレウス・腸管気腫症・門脈ガスを認め,非閉塞性腸管虚血症に起因する脳空気塞栓症と診断した.脳空気塞栓症の中には,稀ではあるが内因性疾患が原因の場合があることに留意し,全身の複雑な病態把握に努める必要がある.
著者
古賀 政利 井上 学 園田 和隆 田中 寛大 塩澤 真之 岡田 敬史 池之内 初 福田 哲也 佐藤 徹 猪原 匡史 板橋 亮 工藤 與亮 山上 宏 豊田 一則
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10776, (Released:2020-03-30)
参考文献数
46
被引用文献数
3 1

要旨:脳梗塞の診断にはCT もしくはMRI による画像評価が必須である.再開通療法の可能性があれば速やかに最低限必要な画像評価で再灌流療法の適応を決定することが重要である.2018 年に改訂された米国のガイドラインでは,来院から20 分以内に画像診断を行うことが推奨されたが,わが国のガイドラインには画像診断までの時間の推奨はない.わが国では普及率が高いMRI で急性期脳梗塞を評価している施設が多い.機械的血栓回収療法の適応判定には脳実質の評価に引き続き速やかな頭頸部血管評価が必要である.米国では発症6 時間超の脳梗塞に対してCT もしくはMRI を使用した脳虚血コア体積や灌流異常の評価による機械的血栓回収療法の適応を推奨しているが,わが国では灌流画像評価や迅速解析に対応した自動画像解析ソフトウェアが普及していない.急性期脳梗塞に対する適切な再灌流療法を行うための,わが国の医療環境にあわせた画像診断指針が必要であろう.
著者
水谷 敦史 中山 禎司 森 弘樹 澤下 光二 加藤 俊哉 小澤 享史
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.124-128, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
8
被引用文献数
2

脳空気塞栓症は比較的稀な病態であり,特に空気の流入経路が静脈逆行性である例は特に稀である.今回我々は画像所見・剖検所見から静脈逆行性の脳空気塞栓症と診断しえた症例を経験したので報告する.症例は80 歳代の男性で意識障害を主訴に救急搬送された.来院時から重度の意識障害,瞳孔不同が認められた.頭部CT にて右側頭葉・後頭葉および両側前頭頭頂葉の傍矢状洞部の脳実質内,横静脈洞・上矢状静脈洞に極めて多量の異所性ガス像が認められ,脳ヘルニアを呈していた.生命予後,機能予後の観点から積極的治療は断念して保存的に治療したが短時間で死亡した.病理解剖所見では,出血性壊死の範囲が静脈灌流域に一致しており,脳静脈内腔に多量の気泡が認められたことから静脈逆行性の脳空気塞栓症と診断した.空気の流入経路としては慢性肺疾患・気管支肺炎に伴い縦隔気腫を来し,ここから上大静脈に空気が流入して静脈内を逆流したと考えられた.
著者
北川 一夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.144-146, 2014 (Released:2014-03-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

要旨:脳卒中の危険因子としての脂質異常症の関与は脳卒中の病型により異なり,高LDL コレステロール血症は脳梗塞,低LDL コレステロール血症は脳出血の発症リスクを高めることが疫学的な検討から明らかにされている.一方,スタチンによる脂質低下療法は,過去の臨床試験のメタ解析で,脳卒中とくに脳梗塞発症・再発予防効果が示され,その効果はLDL コレステロール低下程度と関連することが示唆されている.またスタチン投与により,LDL コレステロールを低下させても脳出血リスクを高めることはないことが,メタ解析から示されている.またスタチンは脂質低下作用以外に高感度CRP 濃度低下作用をはじめとする抗炎症作用を有し,血管炎症抑制を介して血栓症予防効果が想定されている.脳梗塞再発予防において,抗血栓療法,降圧療法とならんでスタチンによる脂質低下療法が有効な内科的治療手段と考えられる.
著者
松谷 雅生 出口 誠 佐藤 章 田畑 均 喜多村 孝幸 就労支援リハビリテーションプログラム実務委員会
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.11031, (Released:2022-07-11)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【背景および目的】急性期病院退院時に“復職意志”を表明した脳卒中患者に,回復期リハビリテーション(リハ)病院の特徴である十分なリハ期間と豊富なリハプログラムを生かした就労支援リハプログラムを行い,その効果を検証した.【方法】職場復帰に必要な4条件,①家庭生活自立機能,②通勤に必要な運動歩行機能,③一般事務作業機能,④発病前の業務を以前と変わらず遂行する脳の機能,をリハにより強化しつつ,勤務先との連携を取り復職を支援した.【結果】対象81例中,評価対象者61例の復職率は,全症例で85.2%,当院入院時mRS別では,mRS2:92.3%,mRS3:77.8%,mRS4:80.8%であった.【結論】脳卒中発症時点のmRS3–4患者の復職率は50%以下の報告が多い中で,本報告復職率は高い.治療後mRS 3–4患者でも,復職意欲があれば復職が可能であり,今後の脳卒中治療体系の中での回復期リハの重要性を示した.
著者
上村 岳士 伊原 郁夫 福間 淳 川合 省三 杉本 圭司 黒田 雅人 金子 彰
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10476, (Released:2016-11-22)
参考文献数
16

くも膜下出血の術後7 日目にたこつぼ型心筋障害を発症し,その後1 年以上左室収縮障害が遷延した症例を経験した.症例は67 歳の女性で前交通動脈瘤の破裂によるくも膜下出血を発症し,同日動脈瘤クリッピング術を施行した.術後7 日目に突然胸部不快感を訴え,急性心不全状態となった.心電図検査,経胸壁超音波検査,冠動脈造影の結果たこつぼ型心筋障害と診断した.心筋逸脱酵素が高値を示し過換気負荷試験が陽性のため,冠攣縮が原因の急性心筋梗塞を合併したと考えた.くも膜下出血は順調に回復したが,たこつぼ型心筋障害は左室壁運動・心機能障害は改善なく,1 年後も同様の所見が継続した.たこつぼ型心筋障害にもかかわらず,左室壁運動・心機能障害が1 年以上継続した理由として冠攣縮による急性心筋梗塞が合併したためと考えた.
著者
久野 智之 打田 佑人 宇佐美 寿彦 小林 晋 高田 幸児 大村 真弘 松川 則之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.244-247, 2020 (Released:2020-07-25)
参考文献数
12

要旨:症例は21歳の男性である.8カ月前から男性型脱毛症に対してフィナステリドとミノキシジルを服用していた.ウエイトトレーニング中に突然,頭痛と視野異常を自覚した.視野検査では,左上四分盲を認め,画像検査では,右後頭葉に出血性脳梗塞を認めた.右後大脳動脈の塞栓症と考えられたが,塞栓源は明らかではなく,フィナステリドとミノキシジルの関与が疑われた.若年性脳梗塞を発症した場合,非認可薬を含めた服薬歴を詳細に問診する必要がある.
著者
篠原 幸人 峰松 一夫 天野 隆弘 大橋 靖雄 mRS信頼性研究グループ
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.6-13, 2007-01-25 (Released:2008-11-14)
参考文献数
17
被引用文献数
6 8 2

脳卒中の概括予後評価尺度として頻用されているmodified Rankin Scale (mRS) の本邦の医療環境下における信頼性を検討した. mRSのグレード判定において参考にすべき点を明示した判定基準書と, それに対応した問診票とをまず, 作成した. 次に9名の神経内科医が問診票に従って脳卒中 (今回は46名の脳梗塞) 患者を診察している様子をビデオに収録した. そのビデオを約8週間の間隔を空けて2回, 評価者 (医師10名, 看護師6名, 理学療法士4名) に呈示し, 判定基準書に従ってmRSを評価させた. その結果, 評価者間一致性の級内相関係数は, 医師0.947, コメディカル0.963と共に良好であった. また, 8週間の間を置いた場合の評価者内再現性は各々0.865, 0.871と良好であった. 以上の結果より, 著者らが作成した判定基準書および問診票を用いたmRS判定は, 評価の質の確保が可能であり, 本邦の医療環境下における臨床研究などに十分使用できるものであることが示された.
著者
柴田 憲一 山下 泰治 長野 祐久 由村 健夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.179-184, 2009-11-25 (Released:2010-03-29)
参考文献数
15

症例は40歳,男性で,頭痛,嘔吐を主訴に救急搬送された.性転換術による精巣摘出の既往があり,来院1カ月前から女性化目的に経口避妊薬を内服していた.来院時の神経学的所見では,軽度の意識障害のみで局所徴候はなかった.血液検査では凝固系の亢進があり,頭部CTでは直静脈洞,上矢状静脈洞,左横静脈洞に高吸収域を認めた.MRVでは左横静脈洞の信号消失と右横静脈洞の信号低下があり,脳静脈洞血栓症と診断した.抗凝固療法を開始し,経過中に出血性梗塞を来したものの,再開通を得た.静脈血栓症の原因として経口避妊薬は知られているが,今回はさらにアンドロゲン低下による線維素溶解能の低下が素地にあったものと考えられた.
著者
望月 廣 山之内 博 東儀 英夫 朝長 正徳
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.382-387, 1980-12-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

1017剖検例を用いて脳底部動脈のvariationを検討し, 下記の結果を得た.1) 前大脳動脈に左右差を示すvariationは57例 (5.6%), 左優位型38例 (3.7%), 右優位型19例 (1.9%) であった.1側の中大脳動脈から前交通動脈までが痕跡で血流に関与していないものは57例 (5.6%), 左12例 (1.2%), 右45例 (4.5%), と高頻度にみられた.2) 前交通動脈のvariationは従来の本邦での報告に比して少なく, 欧米の報告に近似していた.3) 後大脳動脈のvariationは胎児型307側 (15.1%), 移行型214側 (10.5%) であった.両側胎児型を77例 (7.6%) と高頻度に認めた.4) 椎骨動脈に左右差をみるvariationは282例 (27.7%) で, 左優位型 (187例, 18.4%) が右優位型 (64例, 6.3%) に比し有意に多かった.椎骨動脈の低形成7例 (0.7%, 左3例, 右4例) と, 椎骨動脈が後下小脳動脈を分枝した後に痕跡となり脳底動脈の血流に関与しないnonunion14例 (1.4%, 左6例, 右18例) の頻度をあきらかにした.
著者
吉村 元 山上 宏 藤堂 謙一 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.501-505, 2011 (Released:2011-09-27)
参考文献数
20

:症例は生来健康な22歳男性.性交後に右後頭部痛と顔面を含む左半身感覚障害,左上同名性四分盲を生じ,頭部MRIで右後頭葉と右視床に脳梗塞巣,頭部MRAにて右後大脳動脈にpearl & string signを認めた.性交を契機とした後大脳動脈解離による脳梗塞と診断し,抗血小板薬による保存的加療を行った.経過は良好で,クモ膜下出血の合併や脳梗塞再発は認めず,MRA上右後大脳動脈の壁不整所見も経時的に改善した.脳動脈解離は若年性脳梗塞の原因として重要であるが,性交が誘因となることもあり,頭痛や神経症状発症時の状況を詳しく病歴聴取することが大切である.また,性行為に伴って生じる頭痛は一般に経過良好なprimary headache associated with sexual activityとして知られているが,本症例のような脳動脈解離を鑑別する必要がある.
著者
柴田 靖 遠藤 聖
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.150-153, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
7

症例は69歳の男性で,刑務所服役中に自室で意識障害で発見された.全失語,右片麻痺を認め,CT/MRIでは左中大脳動脈領域脳梗塞であった.保存的加療により意識障害,片麻痺はやや改善したが,失語は残存した.服役中であり,家族へは連絡せず,常に刑務官により拘束され,放射線検査以外はリハビリも個室内で行った.保険加入はなく,全額自費,刑務所負担であり,治療内容は病院に任されたが,転院は刑務所の都合で決められた.刑事収容施設および被収容者等の処遇に関する法律には受刑者も適切な医療を受ける権利があるとされるが,入院などは刑務所所長の権限とされている.本症例の医療倫理を考察すると,患者本人に意識障害,失語があるため,自己決定権が行使できず,利益,無害,正義も入院中は病院任せで,転院では倫理は守られていなかった.受刑者では発症前の本人の希望,living willの確認記録,受刑者に対する倫理的対応の診療ガイドライン整備が必要であろう.
著者
江島 泰志 稲石 佳子 金子 陽一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10992, (Released:2022-05-18)
参考文献数
20

【目的】覚醒剤乱用後に発症した脳血管障害の2例を経験したので,文献的考察を加え報告する.【症例1】36歳男性.数年来の覚醒剤常用者.覚醒剤を加熱吸引後,しばらくして突然右上下肢脱力が出現した.来院時は昏睡状態で,頭部CTで左大脳半球に巨大出血を認めた.来院3時間後には心呼吸停止状態となり,入院69日目に死亡した.【症例2】57歳男性.20代から覚醒剤を常用.覚醒剤静注後から倦怠感と体動困難を訴え始めた.2日後,意識障害と発熱(38.7°C)で入院.尿トライエージ検査は,アンフェタミン陽性だった.頭部MRIでは,小脳と脳幹に多発性梗塞を認めた.敗血症および菌塊塞栓による脳梗塞と診断され,抗菌薬治療を行った.しかし,全身状態は徐々に悪化し,入院10日目に死亡した.【結論】年齢が若く,高血圧や糖尿病等の基礎疾患のない脳血管障害症例では,覚醒剤乱用が原因となった可能性を考慮する必要がある.
著者
縄手 祥平 壺井 祥史 成清 道久 大橋 聡 長崎 弘和 神林 智作 村山 雄一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.551-555, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
15

【目的】脳空気塞栓症は潜水病としてダイバーに多く報告される病態である.今回我々は,筋力トレーニング後に脳空気塞栓症を発症した症例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.ジムでの筋力トレーニング後,自宅で突然の意識障害を認め,当院へ救急搬送となった.意識レベルは JCS 300,GCS E1V1M1,強直性の痙攣重積状態であった.頭部CTで右前頭葉に散在する低吸収域を認め,空気塞栓症と診断した.痙攣重積状態であったため,高圧酸素療法は施行せず,抗痙攣薬とエダラボンの投与を行った.意識レベルは徐々に改善し,発語が認められ,指示動作に応じられるようになったが,重度の左片麻痺が残存した.発症53日目に modified Rankin Scale 3で回復期リハビリテーション病院へ転院した.【結論】既往歴に間質性肺炎を指摘されていたため,筋力トレーニング中の胸腔内圧上昇により肺胞が破裂したことが空気塞栓症の原因と考えられた.筋力トレーニングに伴う空気塞栓症は脳卒中の一因として認識しておくべきであると思われた.
著者
縄手 祥平 壺井 祥史 成清 道久 大橋 聡 長崎 弘和 神林 智作 村山 雄一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10886, (Released:2021-07-07)
参考文献数
15

【目的】脳空気塞栓症は潜水病としてダイバーに多く報告される病態である.今回我々は,筋力トレーニング後に脳空気塞栓症を発症した症例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.ジムでの筋力トレーニング後,自宅で突然の意識障害を認め,当院へ救急搬送となった.意識レベルは JCS 300,GCS E1V1M1,強直性の痙攣重積状態であった.頭部CTで右前頭葉に散在する低吸収域を認め,空気塞栓症と診断した.痙攣重積状態であったため,高圧酸素療法は施行せず,抗痙攣薬とエダラボンの投与を行った.意識レベルは徐々に改善し,発語が認められ,指示動作に応じられるようになったが,重度の左片麻痺が残存した.発症53日目に modified Rankin Scale 3で回復期リハビリテーション病院へ転院した.【結論】既往歴に間質性肺炎を指摘されていたため,筋力トレーニング中の胸腔内圧上昇により肺胞が破裂したことが空気塞栓症の原因と考えられた.筋力トレーニングに伴う空気塞栓症は脳卒中の一因として認識しておくべきであると思われた.