著者
三好 真琴 宇佐美 眞 藤原 麻有 青山 倫子 前重 伯壮 高橋 路子 濵田 康弘
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.915-921, 2013 (Released:2013-08-23)
参考文献数
23
被引用文献数
1

近年、腸内フローラは肥満やメタボリックシンドロームに関与する環境因子として注目されている。腸内フローラは、未消化食物成分を代謝し、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸などを宿主に供給しており、その機序の一つとして腸内分泌細胞のI細胞やL細胞上の栄養受容体が関与している。脂肪酸レセプターは、短鎖脂肪酸がGPR41、GPR43、中鎖、長鎖脂肪酸がFFAR1、GPR120と近年同定された。特に腸内フローラの代謝物である短鎖脂肪酸はレセプターやトランスポーターMCT-1を介して多様な機能を発揮し脂質代謝へも効果を及ぼすと考えられている。さらに、短鎖脂肪酸の代謝仮説に基づいて腸内フローラと脂質濃度の関連を解析した我々の結果を交えて、腸内細菌と脂質代謝について概説する。腸内フローラと多価不飽和脂肪酸の関連が新たに得られ、更なる検討が必要であろう。
著者
名德 倫明
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.717-724, 2014 (Released:2014-05-15)
参考文献数
19
被引用文献数
4

輸液を管理する上で、混合する注射剤や使用する医療用具を考慮する必要がある。注射剤は、多剤を配合することにより外観変化や力価低下等の配合変化を起こすことがある。また、接触時間の短い側管からの投与においても配合変化を起こす組合せがある。薬剤だけでなく医療用具においても、その材質により薬剤の吸着・収着、可塑剤(DEHP)の溶出、輸液フィルターの影響等、多くの問題があり、それらを解決していかねばならない。本稿では、これらの問題に焦点をあて、その原因と解決策を概説する。
著者
田中 茂穂
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.1013-1019, 2009 (Released:2009-10-20)
参考文献数
27
被引用文献数
7 1

総エネルギー消費量は、基礎代謝量と食事誘発性体熱産生、身体活動によるエネルギー消費量に分けられる。基礎代謝量は、標準的な日本人において約6割を占めるが、体格・身体組成からある程度推定できる。ただし、ハリス・ベネディクトの式では、若い年代をはじめ、成人全体において、過大評価する傾向がみられる。一方、身体活動、特に運動以外の身体活動によるエネルギー消費量 (NEAT) には、同じ体格でも大きな個人差がみられる。総エネルギー消費量を推定するための方法としては二重標識水 (DLW) 法がベストの方法とされているが、現実的には、それぞれの方法の特徴をふまえた上で、加速度計法あるいは生活活動記録などを用いることとなる。
著者
名徳 倫明
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.787-792, 2009 (Released:2009-06-11)
参考文献数
9

薬剤師は、その職能を活かし医薬品を適正に使用していく上で積極的に関与しなければならない。そのためには、処方意図を把握した上で、薬学的見地に基づいて医師や他の医療従事者と検討する必要がある。輸液療法では、輸液の基礎を把握し、それぞれ患者の病態や検査値等の変化を確認し、処方チェックを行い、また提案していく必要がある。また、患者に何らかの変化や異常があった場合、薬剤による副作用かどうかの可能性も考慮しなければならない。本稿は、輸液の基本とナトリウム(Na)管理、また血清Naに異常を起こす薬剤に焦点をあて、薬剤師に必要なポイントを述べる。
著者
若林 秀隆 栢下 淳
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.871-876, 2014 (Released:2014-06-23)
参考文献数
9

【目的】摂食嚥下障害スクリーニング質問紙票であるEAT-10の日本語版を作成し、信頼性・妥当性を検証する。【対象及び方法】EAT-10英語版の順翻訳、逆翻訳、英語原版と逆翻訳の整合性の検討を行い、EAT-10日本語版を作成した。次に摂食嚥下障害もしくは摂食嚥下障害疑いの要介護高齢者393人を対象にEAT-10日本語版を実施した。信頼性を内的整合性であるクロンバッハのα係数で、妥当性を臨床的重症度分類とスペアマンの順位相関係数でそれぞれ検討した。【結果】EAT-10日本語版を実施できたのは237人(60%)であった。クロンバッハのα係数は0.946であった。EAT-10を実施できない場合、摂食嚥下障害と誤嚥を有意に多く認めた。EAT-10と臨床的重症度分類に有意な負の相関(r=-0.530、p<0.001)を認めた。EAT-10で3点以上の場合、誤嚥の感度0.758、特異度0.749であった。【結論】EAT-10日本語版の信頼性・妥当性が検証された。EAT-10日本語版は、摂食嚥下障害スクリーニングに有用な質問紙票である。
著者
丸山 道生
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.761-767, 2009 (Released:2009-06-11)
参考文献数
26
被引用文献数
1

経腸栄養剤には推定平均必要量以上のNaが含まれてはいるが、一般的にその含有量は少ない。経腸栄養管理下では、Naの摂取量が少ないことに加え、以下の危険因子が作用し、経腸栄養管理患者の低Na血症を顕在化させる。(1)高齢者、脳血管障害などの患者因子 (腎機能低下や抗利尿ホルモン、アルドステロンなどのホルモンバランス異常などを引き起こし易い)、(2)症状・疾患因子(下痢嘔吐や心不全、肝硬変など)、(3)薬剤因子(利尿剤、抗てんかん薬、NSAIDs、降圧剤など)、などである。最近の食品扱いの栄養剤はNaが強化されている。Na含有量の範囲は50-240mg/100kcalで、栄養剤により4―5倍違うので、投与には注意を要する。経腸栄養時の低Na血症の基本的な対処法は食塩の補給だが、スポット尿のNa値の測定によりその病態を把握し、よりふさわしい治療を心がける必要がある。
著者
井上 善文 桂 利幸 國場 幸史 藤牧 巳央 梶原 賢太
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.863-870, 2014 (Released:2014-06-23)
参考文献数
13
被引用文献数
6

【目的】脂肪乳剤をTPN(Total Parenteral Nutrition)製剤投与ラインに側管投与する方法における脂肪粒子の安定性について検証する。【対象および方法】TPN製剤(ビタミンおよび微量元素製剤添加)に脂肪乳剤を混合して100mL/ 時で投与する場合と、脂肪乳剤をTPN製剤投与ライン(100mL/時で投与)に側管投与(100mL、50mL、33mL、25mL、20mL、17mL/時で送液)する場合において、輸液の外観観察、平均粒子径、5μmよりも大きい粗大粒子の体積の測定を行った。【結果】混合液では平均脂肪粒子径に変化はなかったが、粗大粒子体積は投与後2時間より増加し、USP(UnitedStates Pharmacopia)基準の「5μmよりも大きい粒子の体積が全脂肪の0.05%未満」を超えた。側管投与では外観にも変化はなく、平均粒子径、粗大粒子の体積にも変化はなく、基準値未満であった。【結論】脂肪乳剤をTPN製剤投与ラインの側管から投与する方法は、平均脂肪粒子径の増大および脂肪粒子の粗大化は認められず、USP基準を満たしており、安全に投与できると考えられた。
著者
若林 秀隆
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.1045-1050, 2013 (Released:2013-10-25)
参考文献数
25
被引用文献数
4

高齢者では軽度の侵襲や短期間の安静臥床でも廃用症候群を認めやすい。高齢者の廃用症候群の約9割が低栄養であり、廃用症候群は安静臥床と低栄養の両者による病態といえる。廃用症候群では二次性サルコペニアを認めることが多く、サルコペニアの原因の適切な評価と対応が重要である。高齢者の廃用症候群では低栄養、低アルブミン血症、悪液質を認める場合に機能予後が悪い。そのため、早期離床や機能訓練だけを行うのではなく、リハビリテーション栄養管理を行うことが重要である。侵襲の異化期の場合、関節可動域訓練や呼吸訓練だけでなく、座位、立位、歩行訓練を実施する。侵襲の同化期では筋力増強訓練や持久力増強訓練を行う。飢餓の場合、筋力増強訓練や持久力増強訓練は禁忌であるが、安静臥床も除脂肪体重がより減少するため不適切である。悪液質の場合、抗炎症作用のあるエイコサペンタエン酸や運動療法が有用な可能性がある。

10 0 0 0 OA 吸収不良症候群

著者
福田 能啓
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.5-17, 2012 (Released:2012-03-13)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

栄養サポートチームが全国的に活動し、栄養不良症例のQOL向上に役立っている。栄養素は食品として摂取され、消化の過程を経た後に吸収され。吸収された栄養素はおもに肝臓で合成、代謝され「栄養」としての役割を果たしている。本稿では、NSTで知っておきたい消化と吸収の概略を述べたい。.
著者
深柄 和彦
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.909-913, 2013 (Released:2013-08-23)
参考文献数
9
被引用文献数
2

NST活動の広がりとともにわが国でも脂肪乳剤の利用が増えつつある。しかし、脂肪粒子の代謝スピードの問題、脂肪乳剤存在下での病原体増殖の問題、ω6系脂肪酸を主成分とする大豆油由来であるがゆえの炎症反応増悪の危険性、がある。したがって、1) 適正な投与スピード・量を守る、2) 輸液ラインの24時間以内の交換、3) 高度な炎症反応が生じている急性期での投与を控える、ことに注意をはらう必要がある。
著者
佐々木 雅也
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.637-642, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
18
被引用文献数
4

経腸栄養剤の種類が多様化し、疾患や病態に応じた使い分けが可能となっている。クローン病の経腸栄養療法、あるいは短腸症候群や膵外分泌不全などの吸収不良症候群における成分栄養剤・消化態栄養剤の使用は病態別経腸栄養法として有用性が確立されており、経腸栄養法が適応となる代表的な疾患である。近年、経腸栄養剤の種類が多様化し、病院で特別食を提供するのと同じように、病態別経腸栄養剤を選択することが可能となった。しかし、医薬品の病態別経腸栄養剤は肝不全用のヘパンED®配合内用剤とアミノレバン®EN配合散の2剤に過ぎず、それ以外は全て食品扱いの経腸栄養剤である。これらは、糖尿病、腎不全、呼吸不全など種々の病態に適した組成となっている。また近年、免疫調整栄養素を強化したimmunonutritionも注目されている。しかし、なかには組成上の特徴だけで病態別経腸栄養剤に位置づけられ、十分なエビデンスがない栄養剤も少なくない。病態別経腸栄養剤の使用においては、個々の症例において確かな有用性を評価して用いるべきである。
著者
千貫 祐子 高橋 仁 森田 栄伸
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.615-618, 2013 (Released:2013-04-24)
参考文献数
9
被引用文献数
1

セツキシマブはEGFRを標的とするヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗体で、本邦では大腸癌の治療薬として用いられている。近年、米国において、セツキシマブによるアナフィラキシーの原因がgalactose-α-1, 3-galactose (以下、α-galと略) に対する抗糖鎖抗体であることが報告され、これらの糖鎖がウシやブタやヒツジなどの哺乳類に豊富に存在するため、これらを摂取した時にもアナフィラキシーを生じることが報告された。筆者らの施設で経験した牛肉アレルギー患者についてセツキシマブ特異的IgEを測定したところ、いずれも高値を示し、牛肉特異的IgE値と相関関係が認められた。このことから、セツキシマブ投与前に牛肉特異的IgEを測定することによって、α-galが原因となるセツキシマブのアナフィラキシーを未然に防ぐことが出来る可能性がある。
著者
飯田 武 小川 丈彦 沖田 由美 中嶋 直美 藏田 明日香 杉野 香代子 勝原 優子 矢木田 早苗 黒川 典枝
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.1071-1077, 2012 (Released:2012-08-28)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【目的】経皮内視鏡的胃瘻造設術Percutaneous endoscopic gastrostomy (以下PEGと略) を行った症例の長期予後について検討した。【方法】2000年から2009年までに当院でPEGを行った227例を対象に追跡調査を行った。【結果】追跡できたのは215例で平均追跡期間は559.2±521.2日。PEG後30日における生存率は95%、1年生存率は64.4%、5年生存率は25.1%であった。PEG前に誤嚥が経験されていた群はそれ以外の群に比し生存率が有意に低かった。PEG施行時におけるアルブミン (Alb) 値が3.0g/dL以上の群はそれ未満の群より、また小野寺の予後推定指数 (PNI) 35以上の群はそれ未満の群より生存率が有意に高く、その傾向は特にPEG施行後早期において顕著であった。【結論】胃瘻造設前の誤嚥経験の有無は重要な予後予測因子である。またAlb値やPNIは造設後早期の予後予測の指標として有用である。
著者
田渕 裕子 大石 雅子 辻本 貴江 小西 祐子 畑 伸顕 清水 健太郎 曹 英樹 和佐 勝史 福澤 正洋
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.1119-1123, 2011 (Released:2011-08-25)
参考文献数
7

【目的】経腸栄養剤のpHの変化に対する反応を観察し、1%重曹水を用いた経腸栄養チューブ閉塞に対する効果について検討した。【方法】経腸栄養剤2種 (エンシュア・リキッド®、ラコール®) に酸 (0.1N HCl)、アルカリ (1%重曹水、0.1N NaOH) を添加し、pHの変化に対する経腸栄養剤の凝固の程度を観察した。また、臨床的にも1%重曹水の経腸栄養チューブの閉塞防止効果を検討した。【結果】2試料とも酸に接触すると凝固し、アルカリを加えると凝固物はpH上昇に伴い溶解した。アルカリを加えた場合は外観に変化はなかった。また、経腸栄養チューブ閉塞を繰り返す臨床例に対し、1%重曹水をチューブの洗浄に予防的に用いたところ閉塞を起こすことなく投与続行可能であり、チューブ閉塞症例に対しても開通し投与が再開できた。【結論】1%重曹水は経腸栄養チューブ閉塞防止に有用な手段と考えられる。
著者
藤牧 巳央 林 直樹 國場 幸史
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.1251-1256, 2010 (Released:2010-12-10)
参考文献数
12

L-イソロイシンの、栄養剤投与後の血糖値およびヘモグロビンA1c (HbA1c) の上昇に対する抑制効果を検討した。100kcalあたり0.5gおよび1.0gのイソロイシンを添加した栄養液は、健常 (SD) ラットの経口単回投与において、イソロシン無添加のコントロール栄養液に比較し投与後の血糖上昇を用量依存的に抑制した。さらに、イソロイシンを100kcalあたり0.5g配合したイソロシン栄養剤を6週間、糖尿病 (ZDF) ラットに与えると、HbA1cの上昇がイソロシン無添加のコントロール栄養剤に比較し明らかに抑制された。これは、臨床での栄養剤中にL-イソロイシンを配合することで血糖値の上昇を抑制し、またその長期間投与においてはHbA1cの上昇を抑制する可能性を示している。
著者
野口 敬康 高橋 良樹 下山 克 奥田 真珠美 福田 能啓
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.1193-1199, 2014 (Released:2014-10-20)
参考文献数
26

【目的】炎症性腸疾患に対するアスペルギルス・オリゼーNK菌発酵穀物胚芽(A. oryzae NK菌麹)の防御効果を評価するため、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)惹起大腸炎の病状と大腸粘膜サイトカインに及ぼす影響を検討した。【方法】雌性 Balb/cマウスを4群(各群 n = 6)に分け、精製飼料、2%又は5% A. oryzae NK菌麹含有精製飼料を与えた。14日後、正常群を除く3群には3%(w/v)DSS飲料水を与え大腸炎を惹起し、6日後に大腸組織の病理学的所見と大腸粘膜サイトカイン濃度を調べた。【成績】A. oryzae NK菌麹の前投与は、DSS大腸炎マウスの体重減少、肛門出血、大腸長の短縮、大腸障害などを抑制した。大腸粘膜の IL-6、TNF-α、IL-1βの過剰産生を有意に抑制し、IFN-γ/IL-10比の低下を正常マウスのそれに近づけた。【結論】マウスの DSS惹起大腸炎に対してA. oryzae NK菌麹は有益な防御効果を示した。
著者
池永 昌之
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.623-628, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
17

がん悪液症候群に伴う食欲不振・倦怠感緩和は、終末期がん患者に出現する頻度が非常に高く、その症状マネジメントは緩和ケアにおける重要な課題とみなされている。コルチコステロイドはこのような症状の緩和に対して、広く使用されている。これまでの報告においては、信頼性、妥当性が証明された倦怠感の評価ツールを利用した検討はほとんどなく、多くのものがQOLの評価ツールの一部や他の身体症状を評価している。また、観察期間は比較的短いものが多く、患者の全身状態や生命予後を考慮したうえでの評価も乏しく、副作用に関する検討も少ない。今後の課題としては、信頼性、妥当性の証明された評価ツールを使用したコルチコステロイドの評価が必要であろう。また、生命予後や全身状態を考慮した効果判定、副作用の経時的な評価も重要な検討課題になるであろう。そして、その上での臨床的に利用可能なコルチコステロイドの投与指針(ガイドライン)を作成し、それを再度、注意深く評価していく必要があると考えられる。
著者
寺島 秀夫 只野 惣介 大河内 信弘
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.1027-1043, 2009 (Released:2009-10-20)
参考文献数
67
被引用文献数
21

侵襲が加わった生体のエネルギー需要は、侵襲反応として供給される内因性エネルギー供給と栄養療法として投与する外因性エネルギー供給の相互作用によって充足される。現在、内因性エネルギー供給を測定することができないため、外因性に投与する至適エネルギー量が算定できない状況にある。故に、栄養療法の立案に際してその基軸となるべき至適エネルギー投与量が決定できないために、最適化された栄養療法を実践することが困難となっている。従来の栄養療法は、侵襲下においても生体のエネルギー消費量を外因性にすべて供給するとした基本概念を採用してきたが、このエネルギー投与法は必然的に過剰エネルギー投与として作用して有害事象が発生するため、蛋白代謝の改善が得られないばかりか、栄養療法自体が有害、逆効果になり兼ねない問題を内在していた。こうした状況を踏まえ、侵襲下の代謝動態に基づくエネルギー投与法の考え方を提言して論証を行った。