著者
齋藤 充生
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.269-288, 2008-08-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
53

医薬品の副作用は担当医の専門分野とは異なる臓器にも発生し得ること, 重篤な副作用の発生頻度は一般に低く, 臨床現場において遭遇する機会が少ない場合があり得ることなどから, 初期症状が見逃されることがある。厚生労働省では, 平成17年度から4年計画で「重篤副作用総合対策事業」を実施し, その一環として, 患者及び一般医療従事者を対象とした重篤副作用疾患別対応マニュアルの作成を進めている。本稿では, 重篤副作用対策マニュアルの作成目的, 作成状況について紹介するとともに, 公開されたマニュアルのうち, 抗生物質, 抗菌薬が原因医薬品として挙げられているものについて, 簡単に紹介する。平成20年6月末現在, 29の副作用マニュアルが公開され, そのうち, 抗生物質・抗菌薬が関与する薬剤として挙げられているのは16あった。抗生物質・抗菌薬は現代の医療に必須であるが, 抗生物質・抗菌薬の使用に当たっては, これらの標的臓器以外に発生する重篤副作用にも注意を払い, 初期症状を見逃さないことが重要である。
著者
三鴨 廣繁 玉舎 輝彦 田中 香お里 渡邉 邦友
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.35-40, 2006-02-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
6
被引用文献数
2

近年では,性行動の多様化により,クラミジア・トラコマティスの咽頭感染を認める症例が増加していると言われている。しかし,クラミジア・トラコマティスは,咽頭に感染しても無症状のことも多く,感染が拡大する要因のひとつになっていると考えられる。今回,一般女性およびcommercial sex workers (CSWs) の性行動の実態およびクラミジア感染症 (子宮頸管および咽頭) の現状について調査した。その結果,一般女性においてもオーラルセックスは,性行為において,ごく普通の行為として定着していることが明らかになった。子宮頸管にクラミジア感染が認められた女性は,CSWsでは33.3%,一般女性では7.9%であり,咽頭にクラミジア感染が認められた女性は,CSWsでは22.5%,一般女性では5.2%であった。また,これらに対して,クラリスロマイシン,レボフロキサシン,アジスロマイシンによる治療成績を検討したところ,子宮頸管感染ではクラリスロマイシン400mgの7, 10, 14日間投与,レボフロキサシン300mgの7, 10, 14日間投与,アジスロマイシン1000mg単回投与のいずれにおいても除菌率は100%であった。しかし,咽頭感染では,クラリスロマイシン,レボフロキシンの10, 14日投与では,除菌率は100%であったが, 7日間投与では,それぞれ, 83.9%, 86.2%であり,またアジスロマイシンの単回投与では85.0%であった。これらの成績より,クラミジア咽頭感染ではクラリスロマイシンや,レボフロキサシンなどのフルオロキノロン系抗菌薬を10日間以上投与する必要があると考えられた。クラミジア咽頭感染の臨床的意義については議論の多いところであるが,今後は,耳鼻咽喉科および内科の医師とも協力しながら,培養法等などを用いた詳細な検討が必要であると考える。
著者
山口 惠三 大野 章 石井 良和 舘田 一博 岩田 守弘 神田 誠 辻尾 芳子 木元 宏弥 方山 揚誠 西村 正治 秋沢 宏次 保嶋 実 葛西 猛 木村 正彦 松田 啓子 林 右 三木 誠 中野渡 進 富永 眞琴 賀来 満夫 金光 敬二 國島 広之 中川 卓夫 櫻井 雅紀 塩谷 譲司 豊嶋 俊光 岡田 淳 杉田 暁大 伊藤 辰美 米山 彰子 諏訪部 章 山端 久美子 熊坂 一成 貝森 光大 中村 敏彦 川村 千鶴子 小池 和彦 木南 英紀 山田 俊幸 小栗 豊子 伊東 紘一 渡邊 清明 小林 芳夫 大竹 皓子 内田 幹 戸塚 恭一 村上 正巳 四方田 幸恵 高橋 綾子 岡本 英行 犬塚 和久 山崎 堅一郎 権田 秀雄 山下 峻徳 山口 育男 岡田 基 五十里 博美 黒澤 直美 藤本 佳則 石郷 潮美 浅野 裕子 森 三樹雄 叶 一乃 永野 栄子 影山 二三男 釋 悦子 菅野 治重 相原 雅典 源馬 均 上村 桂一 前崎 繁文 橋北 義一 堀井 俊伸 宮島 栄治 吉村 平 平岡 稔 住友 みどり 和田 英夫 山根 伸夫 馬場 尚志 家入 蒼生夫 一山 智 藤田 信一 岡 三喜男 二木 芳人 岡部 英俊 立脇 憲一 茂龍 邦彦 草野 展周 三原 栄一郎 能勢 資子 吉田 治義 山下 政宣 桑原 正雄 藤上 良寛 伏脇 猛司 日野田 裕治 田中 伸明 清水 章 田窪 孝行 日下部 正 岡崎 俊朗 高橋 伯夫 平城 均 益田 順一 浅井 浩次 河原 邦光 田港 朝彦 根ケ山 清 佐野 麗子 杉浦 哲朗 松尾 収二 小松 方 村瀬 光春 湯月 洋介 池田 紀男 山根 誠久 仲宗根 勇 相馬 正幸 山本 剛 相澤 久道 本田 順一 木下 承晧 河野 誠司 岡山 昭彦 影岡 武士 本郷 俊治 青木 洋介 宮之原 弘晃 濱崎 直孝 平松 和史 小野 順子 平潟 洋一 河野 茂 岡田 薫
出版者
日本抗生物質学術協議会
雑誌
The Japanese journal of antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.428-451, 2006-12-25
参考文献数
17
被引用文献数
37
著者
福留 厚 松峯 敬夫
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.1999-2006, 1983-08-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
13

Cefoxitinsodium (マーキシン注射用, 以下CFXと略す) はStreptomyces lactamduransが産生するCephamycin Cの誘導体として, 最初に開発されたCephamycin系抗生物質である。CFXは, 特にグラム陰性桿菌のうち, Escherichia coli, Klebsiella, Proteusに対して, 優れた抗菌力を示し, 又多くの抗生物質に耐性の嫌気性菌Bacteroides fragilisに対しても極めて有効であると言われている1~4)。今回, 著者らは消化器外科領域での重症感染症に対して, CFXを使用し, その臨床効果, 起炎菌, 副作用に対する検討を行つたので報告する。
著者
福留 厚 松峯 敬夫
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.1999-2006, 1983

Cefoxitinsodium (マーキシン注射用, 以下CFXと略す) は<I>Streptomyces lactamdurans</I>が産生するCephamycin Cの誘導体として, 最初に開発されたCephamycin系抗生物質である。CFXは, 特にグラム陰性桿菌のうち, <I>Escherichia coli, Klebsiella, Proteus</I>に対して, 優れた抗菌力を示し, 又多くの抗生物質に耐性の嫌気性菌<I>Bacteroides fragilis</I>に対しても極めて有効であると言われている1~4)。<BR>今回, 著者らは消化器外科領域での重症感染症に対して, CFXを使用し, その臨床効果, 起炎菌, 副作用に対する検討を行つたので報告する。
著者
小松 信彦 長岡 弘司 福留 厚 李 材木 天野 洋 南雲 昇 雨宮 功治 加藤 桃代
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.549-557, 1975

我々は前報1~3) において, 担子菌多糖Schizophyllan (略称: SPG) が諸種の急性の実験的細菌感染症に対して非特異的に感染防御効果を発揮するばかりでなく, 慢性感染症であるマウスの実験的結核症にも治療効果を示し, SPGによる網内系細胞の賦活化が抗結核作用と深い関連性があること, および Ethambutol (EB)と併用したばあい, EBの抗菌作用が加わり, よりよい治療効果をあげ得ると推察される組織像がみられたことを報告した。また前報2) において, Streptomycin (SM)とRifampicin (RFP)の単独およびそれらとSPGとの併用療法の延命効果について報告したが, 今回はそれらの病理組織学的検索の結果について述べる。
著者
田中 輝和 田中 恭子 高原 二郎 藤岡 譲 田村 敬博 山ノ井 康弘 北条 聰子 高橋 敏也 三木 茂裕 中村 之信
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.790-797, 1994-06-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
13

MRSAとその複数菌感染症に対し, Arbekacin (ABK), Fosfomycin (FOM) 投与30分後に Ceftazidime (CAZ) を投与する時間差併用療法を設定し, 基礎的, 臨床的検討を行い以下の成績を得た。臨床分離のMRSA 1727及びPseudomonas aeruginosa KIに対し, 1/4~1/8MICのABK, FOM, CAZの同時及び時間差処理を行い, 殺菌効果を比較したところ, 時間差処理群により優れた相乗的殺菌効果が認められた。両菌による複数菌感染にマクロファージを用いた系では, 三薬剤の時間差併用により, マクロファージによる著しい殺菌効果の増強が認められた。MRSA感染症を呈した15症例に対する臨床的検討では, 有効率は80.0%であった。MRSAに対する除菌率は60.0%であった。ABK, FOM, CAZを用いた時間差併用療法は, MRSAを含む複数菌感染症に対し, 非常に有効な治療法であると考えられる。
著者
甲田 雅一 福原 淳子 竹内 美香 大川原 正文 松崎 廣子 遠井 初子 古畑 紀子 丸山 美樹 佐々木 希実 沢辺 悦子 池田 昭 鈴木 ツル 佐藤 仁美 高橋 一郎 木村 冨美子 野村 久子 小野 恵美
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.458-468, 1999

<I>Pseudomonas aeruginosa</I>に対する各種抗生物質の抗菌力は分離施設の使用抗生物質の種類や量により影響されることが多く, ある施設で有効とされる抗生物質が他の施設でも有効とは限らない。真に抗菌力に優れる抗生物質とはMICが低く, 薬剤耐性が進行し難い薬剤であり, そのような抗生物質こそ, どの施設からの分離菌に対しても有効と言えるであろう。著者らは薬剤耐性が進行し易い抗生物質ではMICの施設間差が大きいと考え, 6施設から分離した<I>P.aeruginosa</I>に対する各種抗生物質のMICとMICの施設間差を調査し, その結果をスコア化して, 総合的に抗菌力を評価する試みを行った。その結果, 真に<I>P.aeruginosa</I>に対する抗菌力に優れる抗生物質はimipenem, cefozopran, ceftazidime, cefsulodin, amikacinなどであると考えられた。本報告で提案した解析方法は, 入院患者の細菌感染症に対する優れた抗生物質の評価のための一方法になり得ると考える。
著者
岡本 美穂二 安冨 徹
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.634-637, 1975

消化管の手術においては, 消化管内に存在するグラム陽性およびグラム陰性の細菌による手術野の汚染は, 一般に避けることができないとされている。<BR>手術中に汚染された腹腔内の感染予防のために, 細菌に直接作用させることを目的として, 抗生物質を手術終了直前に腹腔内に注入する方法がある。腹腔内に投与された抗生物質は, 腹膜を介して血液中に移行するが, 腹膜の吸収能は, 横隔膜下腹膜, 大網, 消化管を包む腹膜が, 他の部位の腹膜よりも特にすぐれた透過性を有しており1), 抗生物質は腹腔内投与によつても速やかに血液中に移行し, 有効血中濃度が得られるとされている2)。したがつて, この方法は, 術後の全身性の感染症の予防にも効果が期待できるものと考えられる。<BR>我々は, 従来から腹部手術においては, 手術終了直前に抗生物質を腹腔内に注入することを原則としているが, 注入する抗生物質は副作用の少ないものを使用するように心掛けている。今回, 広範囲スペクトルをもつ殺菌性の抗生物質で, 毒性が低く, 特に腎毒性が少ないために術後の感染予防に広く用いられているSodium cephalothin (商品名ケプリン, 以下CETと略す) を, 腹腔内投与および全身投与に使用し, その併用療法における臨床効果を検討したので報告する。
著者
原田 喜男 花房 友行
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.188-194, 1975

薬剤の投与方法には, 静注や筋注あるいは経口などによる全身投与と限局した部位に対する局所投与とがある。抗生物質を腹腔内に投与する方法は, 腹膜炎治療における薬剤投与の1手段として古くから用いられてきた方法であり, 現在も各種の抗生物質が腹腔内に投与されている1)。また近年, 腹部手術時における細菌汚染に対して, 術中に抗生物質を腹腔内に投与し, 術後の腹腔内感染を予防する旨の報告もある1~3)。<BR>手術時における抗生物質腹腔内投与の利点は,(1) 汚染直後に,(2) 直接汚染部位に,(3) 高濃度に, 薬剤を作用させることができる点であり, 一方その副作用としては, 抗生物質の種類によつて,<BR>(1) 腹膜に対する刺激作用一腸管癒着による癒着性イレウスの発生など。<BR>(2) 腹腔内諸臓器に対する刺激作用一特に腸管運動の抑制をも含む。<BR>(3) 術創部の治癒遅延。<BR>(4) 血中移行による全身性の毒性一特に麻酔下における呼吸抑制をも含む。などのあることが指摘されている1, 4)。<BR>Sodium cephalothin (商品名, ケプリン, 以下CETと略す) は, 広範囲のスペクトルをもつ殺菌性の抗生物質で, 非常に毒性が少なく, 特に腎毒性の少ないことなどの利点によつて, 術後の全身投与の抗生物質として広く用いられているものである。<BR>一方, CETの腹腔内投与に関しては,米国での臨床報告があり, その安全性と有効性が確認されているが5~7), 我国でもCETの腹腔内投与を推奨する意見があるので1, 2, 8), 我々はCETの腹腔内投与の安全性について検討するため, ラットを用いて毒性試験をおこなった。
著者
小塚 良允 田村 博昭 清水 保 長谷川 美知子 田中 熟 日高 敏男 鳥浜 慶熈 杉山 陽一 石井 奏
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.684-686, 1975

近年における抗生物質の開発進歩には目覚しいものがあり, 各種感染症に対してあるいは汚染手術の術後感染予防に対して著明な効果を期待できるまでに至つている。しかし, その投与方法に関しては, 未だに慣用的な要素が多く, 今後の研究の余地が残されている。抗生物質の本来の効果を期待するには, 薬剤の濃度と起炎菌の感受性との関係を解明した上での正しい投与法をおこなう必要がある。<BR>産婦人科領域における術後感染症として最も重要なのは, 子宮頸癌-広汎子宮全摘除術における骨盤死腔炎である。私どもは, この種の手術にさいして, 子宮全摘除後の骨盤死腔内に, Sodium cophalothin (商品名, ケプリン, 以下CETと略す) の粉末29を散布し, 術後骨盤死腔炎の予防効果を挙げている。今回, CET2g骨盤死腔内投与後の血中濃度を測定し, 術後の抗生物質の投与方法について検討する機会を得たのでその成績を報告する。
著者
佐々木 眞敬 佐野 光一 角 明美 本山 径子 矢野 讓次 松本 一彦 山本 宏
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.2412-2421, 1989-11-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
10

Miporamicin (MPM) 並びにその微量成分, 分解物及び代謝物のマウス, ラットにおける急性毒性試験を行った。1. MPMの経口投与によるマウス, ラットにおけるLD50値は最高用量においても死亡が認められなかったことから, それぞれ2,500mg/kg及び2,000mg/kg以上と推定された路。投与経によるLD50値は静脈内く皮下く経口投与の順に高くなり, 性差は認められなかった。2. MPMを経口投与されたマウス, ラットの一般症状に異常は認められなかった。皮下投与では, 投与部位の腫脹, 皮下充出血, 脱毛, 痂皮形成等の炎症性反応が認められた。静脈内投与では, 投与直後に運動抑制及び呼吸抑制又は停止, 振戦, 痙攣等が観察された。3. MPM投与による死因は呼吸抑制, チアノーゼ, 更に, 呼吸停止の後, 心拍の停止がみられることから, 呼吸機能麻痺によると推定された。4. MPMの微量成分, 代謝物及び分解物の急性毒性試験ではMPMとほぼ等しい毒性発現を示した。
著者
福田 恵一 小林 芳夫 半田 俊之介 吉川 勉 内田 博 中村 芳郎
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1913-1918, 1989-09-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
7

Methicnlin耐性ブドウ球菌 (MRSA) による感染性心内膜炎と, これに伴う大動脈弁閉鎖不全症にCefmetazole (CMZ) とFosfomycin (FOM) の併用療法を行い根治し得た症例を経験した。被検出菌はin vitroにおいてもDisc法及び平板法によりCMZとFOMの相乗効果がみられた。MRSA感染症において感染性心内膜炎のような重症感染症に対してもCMZとFOMの併用が有用であつたとの報告はなく, 両者の併用が相乗効果を持つことが確認できた希有な症例と考えられ報告した。
著者
斎藤 篤
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.485-506, 1997-06-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
32

Cefcapene pivoxil (CFPN-PI, S-1108) は塩野義製薬研究所で創製されたエステル型の経口用セフェム系抗生物質である。主として外来で用いられる経口用抗生物質の重要な条件の一つとして, グラム陽性菌から陰性菌までの幅広い抗菌スペクトラムを有することが挙げられる。このような抗菌特性を有する化合物の創製を目標に, セフェム母核の7位および3位側鎖部分の化学修飾による合成, スクリーニングが行われ, その結果, 黄色ブドウ球菌, レンサ球菌などのグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して強い抗菌活性を有する化合物としてCefcapene (CFPN) が創製された(Fig.1)。しかし, CFPNは経口吸収されないことから, 種々のエステル化が試みられ, そのなかで吸収性が最も良好なCFPNのピバロイルオキシメチルエステルであるCFPN-PI (Fig.2) が選択された。本薬は腸管より吸収後腸管壁のエステラーゼにより脱エステル化され, CFPNとして循環血中に入り抗菌活性を示す。本薬の一般臨床試験は平成元年7月より内科, 泌尿器科, 皮膚科で行われ, さらに翌年5月より外科, 産婦人科, 眼科, 耳鼻咽喉科, 歯科口腔外科領域を加え, 主として外来の各種感染症を対象に検討された。また, 小児については成人での安全性が確認されたのち, 平成3年1月より一般臨床試験が開始された。さらに, 慢性気道感染症, 複雑性尿路感染症および浅在性化膿性疾患を対象とした用量設定試験ののち, 平成3年7月より慢性気道感染症, 細菌性肺炎, 複雑性尿路感染症および浅在性化膿性疾患を対象に二重盲検比較試験が実施され, 本剤の有用性が確認された。なお, 一般臨床試験および用量設定試験の成績は第40回日本化学療法学会総会において, 新薬シンポジウムとして発表された。以下に, その後に集積された成績を含め, CFPN-PIの概要について記述する。
著者
梅沢 浜夫
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.306-310, 1973-06-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
12

抗生物質が細菌感染症の治療に使用されるようになつて以来, 多種類の抗生物質に対して同時に耐性を示すいわゆる多剤耐性菌が次々に出現して来た。1965年に岡本および鈴木11が多剤耐性因子をもつた大腸菌がクロラムフェニコールをアセチル化することによつて不活化してしまうという耐性機構を明らかにして以来, 他の抗生物質に対する耐性機構についても研究が続けられて来ている2)。カナマイシンに対する耐性の機構については, 6-アミノ-6-デオキシグルコース部分のC-3'位に存在する水酸基が耐性菌の生産するリン酸化酵素によつてリン酸化を受け不活化されるという機構が主であることが明らかにされた8) 。リン酸基という容積の大きい, しかも電荷をもつた置換基がC-3'位に存在することによつて, カナマイシンの活性部位 (C-3'の水酸基自体もその中に含まれる可能性があるが) の機能が妨げられ, リボゾームへの結合の親和力が弱められるものと考えられた。この不活化の機構に対処するため, 梅沢らは, C-3'位に水酸基のない, 換言すれば不活化酵素の攻撃部位をもたない誘導体の開発を試み, 3'-デオキシカナマイシンを得4), さらに3', 4'-ダイデオキシカナマイシンB (DKB) を得た5)。また, KOCHおよびRHOADESは, Streptomyces tenebrariusの醸酵炉液から3'-デオキシカナマイシンB (tobramycin) を分離した6) 。これらは, いずれもカナマイシン耐性菌および緑膿菌等に有効であり4, 5, 7), この事実は, カナマイシンのC-3'位またはC-4'位の水酸基がカナマイシンの活性に何の役割も果していない不要な構造部分である可能性を示唆している。この推定を確かめるために, われわれはDKBの種々の生化学的活性をカナマイシンB (KMB) と比較してみた。その結果, DKBの抗菌スペクトラムはKMBのそれに類似している5) にもかかわらず, 生化学的諸効果には差異がみとめられたので報告する。
著者
小松 信彦 長岡 弘司 福留 厚 李 材木 天野 洋 南雲 昇 雨宮 功治 加藤 桃代
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.549-557, 1975-08-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
4

我々は前報1~3) において, 担子菌多糖Schizophyllan (略称: SPG) が諸種の急性の実験的細菌感染症に対して非特異的に感染防御効果を発揮するばかりでなく, 慢性感染症であるマウスの実験的結核症にも治療効果を示し, SPGによる網内系細胞の賦活化が抗結核作用と深い関連性があること, および Ethambutol (EB)と併用したばあい, EBの抗菌作用が加わり, よりよい治療効果をあげ得ると推察される組織像がみられたことを報告した。また前報2) において, Streptomycin (SM)とRifampicin (RFP)の単独およびそれらとSPGとの併用療法の延命効果について報告したが, 今回はそれらの病理組織学的検索の結果について述べる。
著者
北山 理恵子 林 敏雄 南新 三郎 渡辺 泰雄 成田 弘和
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.643-648, 1995-05-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
16

T-3761の血清蛋白結合に関する検討を行い, 以下の結果を得た。1. 各種動物およびヒト血清に対する結合率は16.9~27.7%であり, CiprofloxacinやOfloxacin よりもわずかに高値を示した。2. 薬剤濃度0.25~20μg/mlにおける, ヒト血清蛋白結合率は19.1~23.8%であった。3. ヒト血清蛋白結合率は, 血清蛋白濃度の減少に伴って低下した。4. T-3761 (2μg/ml) のヒト血清との結合率はpHの影響を受け, pH7.0, 7.4および8.0において, 各々12.4, 21.3および32.1%であった。5. ヒト血清蛋白との結合は可逆的であった。6. ウサギにT-3761 20mg/kgを経口投与した時のin vivo結合率は26.1~33.2%であり, in vitro結合率と類似していた。T-3761は富山化学工業 (株) 綜合研究所において開発されたニューキノロン系合成抗菌薬である。本剤はグラム陽性菌ならびにグラム陰性菌に対して広範囲な抗菌スペクトルを有し1), 経口吸収性が優れ, 血中濃度のピーク値が高く, 尿中に速やかに排泄されることを特徴としている2)。今回, T-3761の各種動物およびヒト血清に対する結合率, 血清蛋白結合に及ぼす薬剤濃度, 蛋白濃度ならびにpHの影響, 血清蛋白結合の可逆性を検討した。またウサギにおけるin vivo結合率についても検討したので, その成績を報告する。
著者
細田 禎三 増田 昌英 宮尾 益英
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.449-459, 1987

小児細菌感染症15例にCefuzonam (L-105, CZON) を投与し, 髄液移行及び臨床効果の検討を行つた結果, 以下の結果が得られた。<BR>1. 本剤の髄液中及び血清中濃度を髄膜炎のない1例で検討した結果, 50mg/kg静注後1時間の髄液中, 血清中濃度は, それぞれ0.10, 18.1μg/mlであり, 髄液中・血清中濃度比は0.55%であつた。<BR>2. 細菌感染症15例に対する本剤の臨床効果は, 肺炎9例, 気管支炎1例, 扁桃炎1例, 尿路感染症1例の計12例は著効, 敗血症性関節炎1例, 敗血症1例, 化膿性髄膜炎1例の計3例は有効を示し, 有効率100%であつた。<BR>細菌学的効果は<I>Haemophilus influenzae</I> 4株, <I>Escherichia coli</I>, <I>Staphylococcus aureus</I>, <I>Streptococcus pneumoniae</I>, <I>Streptococcus pyogenes</I> 各1株の計8株は, すべて消失した。<BR>副作用は2例で, 軟便, 発疹の各1例であつたが, 臨床検査値に異常を認めなかつた。以上から, CZONは小児細菌感染症に対し有効且つ安全な薬剤であると考えられた。
著者
柳沢 千恵 花木 秀明 大石 智洋 上原 一晃 山口 幸恵 松井 秀仁 砂川 慶介
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.11-16, 2005-02-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
19

26株のvancomycin (VCM) とβ-ラクタム薬が拮抗を示すMRSA (β-lactam antibioticinduced VCM-resistant MRSA: BIVR) を用いて, pazufloxacin (PZFX) と抗MRSA活性を示すVCM, teicoplanin (TEIC), arbekacin (ABK), minocycline (MINO), rifampicin (RFP), sulfamethoxazole/trimethoprim (ST) とのin vitro併用効果をcheckerboard法にて検討した。PZFXとVCMの併用では, 26株中13株 (50%), TEICでは25株 (96%), ABKでは17株 (65%), MINOでは12株 (46%), STでは14株 (54%) で相加および相乗作用が確認された。うち, 相乗作用はTEICで26株中1株 (4%), ABKとMINOで各4株 (15%) が認められた。拮抗作用はMINOでのみ3株 (12%) 認められ, その他はすべて不関であった。