著者
山下 穣
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

間隔12.5μmの並行平板セルを作成し、その間にある超流動ヘリウム3のNMR信号を観測した。従来、このような間隔のセルの実験においては平行度のよいサンプルを作る事が困難であったが、我々は試料の材質、その加工方法を工夫することで平行度の良い試料容器を作ることに成功した。この結果、超流動ヘリウム3A相においてその秩序変数の方向を均一にそろえることに成功し、その回転変化を精密に測定することに成功した。回転下においてある回転数(〜1rad/s)以上ではNMR信号が変形し、静止下における信号の位置とは異なる周波数位置にNMRの共鳴信号が観測されることが分かった。この信号は並行平板間の秩序変数が回転による常流動速度場と超流動速度場の差により変形したことによるスピン波の信号であると考えられるが、その信号の周波数位置と秩序変数との関係はよくわかっていない。今回の実験では平行度の良いサンプルを用意できたことでこの新しい信号を精密に観測することができたので、数値計算との比較によってその理解が深まると考えている。また、2rad/s以上の回転数においては並行平板間に渦が入り、それが中心で集まっている事がわかった。また、こうしたNMR信号の回転変化は超流動転移温度を通過するときの回転数、磁場の大きさ、およびそれらが平行であるか、反平行であるかによって変化することが分かった。特に、回転(1rad/s以上)と磁場(27mT)の両方をかけた状態で超流動転移温度を通過した後の回転変化においては、常流動速度場による秩序変数の変形が観測できなかった。これは超流動転移温度における条件によって生成される渦が異なりその臨界速度の違いを反映している可能性がある。並行平板という境界条件においては渦量子が通常の1の渦とは別に1/2の渦の存在が予言されており、こうした特異な渦の生成を示唆している可能性がある。

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回転超流動ヘリウム3の量子流体(量子渦)の研究 https://t.co/xYJNZJGu8Z ふむふむ

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