著者
伊敷 吾郎
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、この世界に存在する四つの力(重力・電磁気力・強い力・弱い力)を記述できるようた理論(統一理論)を構成することにある。超弦理論は統一理論の候補として期待されているが、その構成は非常に困難であることが分かっている。そこで、AdS/CFT対応という関係が注目されている。この関係は、超弦理論が超対称性を持ったゲージ理論によって記述される、という予想である。この対応が正しければ、ゲージ理論を用いて超弦理論を理解することができる。本研究ではこれまで、この対応を示すために、N=4SYM理論というゲージ理論をある行列模型のラージN極限として定式化した。この行列模型による記述を用いることで、強結合領域(相互作用が非常に強いような領域)においても物理量を計算することができると期待される。原理的には、このような領域での計算結果を、超弦理論側の計算結果と比較することで、AdS/CFT対応の成否を確かめることができるのである。私は、強結合領域の解析に向けて、この方法の有効性をいくつかの側面からチェックした。まずウィルソンループや場の相関関数などの期待値が、行列模型から正しく計算されることを示した。また、有限温度領域で、弱結合極限で知られていたSYMの相転移を行列模型を用いて再導出することができた。今後、この行列模型によるゲージ理論の定式化を用いて、様々な物理量を計算することを計画している。例えば、超弦理論で見られるブラックホールの相転移が、ゲージ理論側の計算で確認されるかどうかを確かめたい。

言及状況

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こんな研究ありました:調和展開によるAdS/CFT対応及びその拡張についての研究(伊敷 吾郎) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/07J01099

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