著者
宮本 匠
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度当初は、前年度より継続していたアメリカ合衆国デラウェア大学災害研究所での研究を行い、筆者が実施した新潟県中越地震や阪神淡路大震災の被災者への復興曲線を用いたインタビュー結果について、同研究所の研究者らとその分析について議論を行った。議論の中では、被災者の心理的な回復の様子をその描かれた曲線の形状に即して吟味すると、1、短期間で回復していくもの、2、長期間で回復していくもの、3、一度回復したのちに再び大きく心理的に落ち込んでしまう「2番底」を経験するもの、4、曲線の一部分あるいは全体が複数の線によって重ね描きされ心理的な不安定さを表現するもの、5、曲線が底部で停滞したまま心理的な回復がなされていないことを強調するもの、等の特徴によって類型化できることが分かった。このように類型化できる一方で、ひとつひとつの曲線、つまりひとりひとりの復興が、決して普遍的な復興モデルに回収されることのない単一性(singularity)をもっていることを強調しておくことが、復興支援にとって重要であることも強調した。また、被災者の心理的な回復場面、曲線でいえば、被災者の心理的な変化を表す曲線が下降から上昇へと転じる屈折部分で起こっている現象を理論的に明らかにするために、筆者の中越地震被災地でのアクションリサーチを記録したエスノグラフィーを柳田國男の遠野物語拾遺における説話についての社会学的考察を援用して考察し、論文にまとめた。これらの一連の被災者の心理的な回復がどのようなに現象し、どのように支えることが可能なのかについての論考は、甚大な被害を及ぼした東日本大震災からの復興や今後予期されている首都直下地震や東南海地震のような巨大災害からの復興への備えとして実践的な意義をもつと考えられる。

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こんな研究ありました:中山間地域の災害復興過程における被災者支援のあり方についての研究(宮本 匠) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/09J07210
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