著者
樋口 貴俊
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究では、熟練した野球打者の投球視認能力を空間的な正確さと時間的な正確さに分けて分析することを目的として、以下の2つの実験を行った。まず、実験1では、空間的な投球視認能力の解明を目的として、大学野球選手9名を対象とし、ボールが投じられてから一定時間後に透明な状態から不透明な状態へと変化する視界遮へいメガネを打者に装着させた状態でピッチングマシンから投じられたボールを見送った後に、バットでボールの通過位置を示す課題を行わせた。実際にボールを打つ際と同程度の視覚情報のみを打者に与えるために、投球がホームプレートに到達した時点で遮蔽メガネが不透明状態になるように設定した。バットとボールの位置を2台の高速度カメラで記録した画像から計測した結果、バット長軸方向よりもバット短軸方向のボールとバットの距離の方が有意に大きかった。このことから、投球の高さを認識する能力が打者のパフォーマンスの優劣に大きく影響する可能性が示唆された。次に、実験2では、時間的な投球視認能力の解明を目的として、大学野球選手12名に、捕手方向から撮影した投球映像を呈示し、画面上に引いた線とボールが重なる瞬間にボタンを押す課題を3つの異なる球速の映像で合計90試行行わせた。毎試行直後にボタンを押した時間と正解時間との差を呈示し、次試行での修正ができるようにした。各条件の最初の10試行は各被験者が試行錯誤を行うと仮定し、分析対象外とした。いずれの条件においてもボタン押しのタイミングは実際のボール到達よりも早く、ボール速度が遅い条件の方が時間的誤差も大きかった(高速球条件 : -9.1ms, 中速球条件 : -9.91ms, 低速球条件 : -13.2ms)。投球視認できる時間の長い条件において時間的誤差が大きかったことから、投球視認時間が長くても時間的な正確さは改善されない可能性が示唆された。

言及状況

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こんな研究ありました:野球打者の投球視認能力の解析(樋口 貴俊) http://t.co/n15gIv8IpF

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