著者
大河内 二郎
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

目的:1.痴呆、歩行障害、食事、排泄機能障害等のADLデータを用いて、65歳以上の高齢者がどのようなプロセスを経て機能障害や死に至るかをマルコフモデルにより明らかにする。2.機能低下のリスクファクターを明らかにする。3.マルコフモデルの予測精度を明らかにし、性や年齢毎の介護サービス量の予測モデルを作成する。方法:(対象)愛媛県大三島町の全高齢者のうち文書にて同意が得られた65歳以上の高齢者を対象に年1回ADLをTypology of the Aged with illustrationを用いて評価した。これまでの9年のデータの蓄積に加え本研究費を用いて高齢者に対して、疾病や生活習慣等のアンケートを行なった。さらにTAI指標の再現性の調査を行なった。(分析方法)1.高齢者を自立・軽度障害・重度障害・死亡の4状態に区分し、状態間の推移確率を計算した。2.疾病データを用いて、多項ロジスティック回帰モデルにより、軽度ADL低下、重度ADL低下それぞれの関連因子を明らかにした。3.TAIの信頼性について評価者間の再現性、繰り返し再現性について検討した。結果高齢になるほど虚弱・要介護・死亡のいずれの状態になる確率が高いが、男性は女性に比べて死亡する確率が高く、女性は軽度障害・重度障害となる確率が高かった。得られた推移確率をマルコフモデルのパラメータとすると、3年目までは適合度は高いが4年目以後は適合度が低かった。これは加齢とともに、推移確率が変化するためであると考えられた。リスクファクターの検討では男女共通して慢性関節疾患が軽度障害の関連因子、脳血管障害が重度障害の関連因子であった。さらに男性では慢性肺疾患、悪性腫瘍、女性では糖尿病が機能低下の関連因子であった。TAIの繰り返し再現性は良好であった。結論本研究では男女における機能低下の推移確率およびリスクファクターの検討を行った。さらに調査に用いた評価尺度の信頼性を明らかにした。

言及状況

はてなブックマーク (1 users, 1 posts)

収集済み URL リスト