著者
大河内 信夫 名取 一好
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究代表者大河内信夫は、2000年度学校要覧に示された農業に関する学科の教育課程表を分析した。その結果、1990年度調査に比較して、以下の点から「多様化」がキーワードになることを明らかにした。(1)学科名称が1990年度調査よりも多様になり、「農業科」の占める割合が低下していた。教育内容ではなく、自営者養成=農業科という観念を名称変更によって払拭しようとしているように見えた。(2)普通科目と専門(職業)科目とのそれぞれの合計単位の比率を比べると、普通科目の単位数が専門(職業)科目の単位数を上回る学校が圧倒的に多くなった。(3)選択科目では普通科目と専門(職業)科目との組み合わせの割合が多くなり、学科内でのコース制をとる傾向にあった。(4)専門(職業)科目間の選択を設けている学校は、1990年度調査結果(調査回答校中46.5%)に比べて大幅に増加し、2000年度調査結果は回答校中65.1%であった。(5)「農業に関するその他の科目」に該当する科目名称は、90科目と非常に多く、そのうち69科目は1校でしか開講されていなかった。最も多く開講されている科目でも7校に過ぎなかった。前年度行った「総合実習」に関する調査について、研究分担者名取一好とともにデータ整理、分析を行った。その結果、総合実習の目的について、上位の3つは「農業の実践的技法(技術)を学ぶ」「農業体験を重ねる」「座学の知識を確かめる」となっていた。「農業を受け継ぐきっかけを用意する」「農業を主体的に継承する意志をつくる」といった項目は下位であった。多くの学校(91.5%)が総合実習に時間外実習を含めていた。総合実習に農家での実習を含めていない学校は36.4%あった。農家での実習を実施している学校においても、生徒全員に課している括弧うは全体の15.0%であった。「講義」科目と総合実習との関係では、「講義」科目の実習は「講義との関係で必要」と回答する学校が最も多く、「総合実習があるので各科目での実習は不要」とする学校は皆無であった。一方、「総合実習は農場維持のために必要」とした学校は11.9%であった。農業教育の目的は、農業政策上の制約に由来して農家子弟の教育となってきたため農業後継者の要請として機能しなかった。総合実習もこの枠組みから抜け出せなかったと推察された。

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