著者
塩野 寛 清水 惠子 松原 和夫 浅利 優 安積 順一 清水 惠子 塩野 寛
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

除草剤として世界的に広く使用されているパラコート(PQ)は、急性毒性として肺及び肝腎障害を生じ、慢性毒性(環境毒性として)では中枢神経障害を生じることがしられている。マウスを用いた実験から得られた生存曲線より、各種抗酸化剤及びACE阻害薬は、PQ毒性を抑制し生存率の向上が認められた。一方、PQによる中枢神経障害を抑制したドパミン作動薬やドパミントランスポーター阻害薬は、肺障害にはむしろ促進的に作用した。ACE阻害薬は、抗酸化作用があることが知られている。ACE阻害薬によるPQ毒性軽減には、酸化的ストレス抑制が関与していると考えられる。そこで、この機構を解明するために、PQ投与後2日及び4日後の肺組織ホモジネートについて、SDS-PAGEを行った。Cleaved caspase-3及びnitrotyrosine抗体によって、ウエスタンブロットを行い、抗体で染色された蛋白量はアクチンを指標として半定量化した。PQによって、nitrotyrosine抗体に反応する蛋白質が著明に増加し、PQ肺毒性に一酸化窒素による酸化的ストレスの関与が示唆された。このnitrotyrosine抗体に反応する蛋白質を免疫沈降法を用いて精製したところ、Mn-SODと考えられた。Mn-SODは、活性中心tyrosine残基を有し、ニトロ化されると活性を消失することが知られている。従って、PQによる酸化ストレスはさらに増大されることが示唆された。一方、アポトーシスの指標であるCleavedcaspase-3は、PQによって、わずかに検出された。この変化はPQ投与後2日後から著明に観察された。Captoprilによって、これらの蛋白質の出現が著明に減少した。従って、ACE阻害薬はPQによる酸化障害を防御し、PQ中毒時の治療薬として期待できる可能性が示唆された。

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14年前には抗酸化作用のある一部の薬物が効くかもねという報告は出ているものの検索の範囲で実使用症例が無いという状態なのだが「KAKEN — 研究課題をさがす | 急性パラコート中毒による肺線維化の機構とその進展阻止治療薬の探索的研究 (KAKENHI-PROJECT-15590571)」 https://t.co/gRK407vQ9v

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