- 著者
-
山川 正
田中 俊一
- 出版者
- 横浜市立大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
酸化LDLは血管平滑筋に対する分化、増殖、遊走促進作用を有し、動脈硬化の成因として非常に重要であるが、その機序は不明であった。そこで、酸化LDL刺激により発現する遺伝子をDNAチップを用いて網羅的に解析し、helix-loop-helix Id3(Id3)の発現亢進、サイクリン依存性キナーゼ抑制因子(CDKインヒビター)であるp21WAF/Cip1とp27Kip1発現の低下が認められた。酸化LDLによるId3発現亢進はId3promotor/luciferaseのchimera plasmidを用いた解析およびActinomycinDを用いた実験から、転写の亢進及びmRNAの安定化によるものであることが明らかとなった。更に、Id3発現亢進はp38MAPKの阻害剤SB203580およびp38MAPKのdominant negative mutant用いた検討により、p38MAPKを介していることが示唆された。次に、Id3 dominant negative mutantを強制発現させたところ、p21WAF/Cip1とp27Kip1発現の低下傾向が認められたが、その効果は部分的であり、他の機序が示唆された。以上のように酸化LDLは血管平滑筋増殖作用は細胞周期関連蛋白であるhelix-loop-helix Id3が関与していることが明らかとなった。しかし、まだ不明な点も多く残されており今後の検討が必要である。