著者
中島 裕夫 斎藤 直 本行 忠志 梁 治子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

半径60Kmのゾーン内(立ち入り規制汚染地域)にある低汚染地区(ベラルーシ共和国、ゴメリ地区バブチン村)および高汚染地区(同、マサニ村)で棲息する動物体内ならびに植物内に事故後19年を経た現在にどれくらいの^<137>Csが残存しているか、現地調査を行った。採集した試料は、ネズミ、モグラ、カエル、バッタ、トンボ、甲虫類、葉、樹木、小果実および土壌で、それぞれの汚染地区で各種につき3個体以上の採集を試みた。そして、井戸型ゲルマニウム半導体検出器にて、^<137>Csのβ壊変により生成する^<137m>Baのγ線スペクトルの崩壊数を3000秒間(放射能の低いものについては更に適宜最高643000秒まで)測定し、試料のグラム当りのBq(ベクレル)算出を行った。その結果、依然として低汚染地区に比して高汚染地区の試料の方が2〜20倍高い^<137>Cs含量を示し、20年近く経た今日でも低汚染と高汚染地区間での汚染の平均化は起こっていない事がわかった。また、前回1997年の我々の測定値と比較すると、同種間において約8年の間に有意な^<137>Cs含量の減少が確認された。バッタ、カエル、マウス、モグラの1997年に対する2005年の^<137>Cs残存率は低汚染地区でそれぞれ、2.20、0.99、1.23、2.70%で、高汚染地区での同バッタ、カエルも2.07、1.95%とほぼ同じ残存率であった。不撹乱土壌における^<137>Csの浄化半減期が24年とされているが、本調査から動物体内のクリアランス半減期が1.511年と算出され、実際は24年より短い可能性が示唆された。新しく開発した、H2AXヒストン蛋白のリン酸化部位(γH2AX)を蛍光抗体で検出する二本鎖DNA切断端検出法を高汚染地区のマウス固定臓器で試みた。しかしながら、今回の試料処理工程の条件下ではDNA障害量の差異をフォーカスシグナルの発現量で検出することはできなかった。

言及状況

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RT @takehiko_jp :「生物の体内核種動態と遺伝子損傷」<137>Csの浄化半減期が24年、本調査から動物体内のクリアランス半減期が1.511年と算出され、実際は24年より短い可能性が示唆されhttp://kaken.nii.ac.jp/en/p/16406019

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