著者
狩俣 繁久
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

3年間で白保方言の臨地調査と波照間方言・白保方言の比較研究を行った。日本語の影響は、予想以上に大きく、回答を得られない単語が近接する方言間の言語年代学的な数値を出すには無視できない数であった。そこで、さまざまな音環境にあらわれる母音、子音がどのように音韻変化したかを詳細に比較した。両方言で類似するものの多くは、分岐する以前の祖方言の形式を保存するだけでなく、変化の要因などを共通に有したまま分岐し、別々に平行的に変化したものがあることがわかった。波照間、白保方言に特徴的にみられる語末のN音挿入も分岐した後に平行的に変化したものである。母音の音位転換と子音の音位転換があることを指摘したが、音位転換は分岐後の収斂変化であることがわかった。形容詞の代表形を収集し、波照間方言と白保方言を比較した。その結果、波照間白保祖方言の形容詞語尾は-haNであったが、両方言ともに、周辺方言、とくに石垣島中心市街地方言の影響で一部の形容詞の語尾に-saNと-sahaNを有する語があることがわかった。saN形容詞は借用語形であり、sahaN形容詞は、saN形容詞のsa連用形をhaN形容詞の語幹として取り込んだものである。語尾にsahaNをもつ形容詞の発生は両方言で平行的に変化したものである。形容詞語尾の違いが八重山方言、宮古方言の下位区分の重要な指標になりうることもわかった。文法現象は、名詞の語彙に比べて借用されにくく影響も小さい。文法現象が体系的であることを反映して、借用された形容詞語彙は、その判別が名詞に比べて容易であることもわかった。

言及状況

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こんな研究ありました:琉球八重山方言の比較歴史方言学に関する基礎的研究(狩俣 繁久) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/17520303

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