著者
川戸 佳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

成獣ラットの脳の海馬において、女性ホルモンや男性ホルモンのみならず、コルチコステロン(ストレスステロイド)も独自に合成されることを発見した。質量分析で測定した女性・男性ホルモンは、海馬の方が血中の濃度よりかなり高かったので、海馬の女性ホルモンと男性ホルモンの方が、神経シナプスに及ぼす影響は大きいことが推測できた。海馬コルチコステロンは副腎の影響を排除するため副腎摘出ラットで測定した。海馬の神経シナプスをこれら性ステロイドやコルチコステロンがモジュレ-ションする様子を神経スパイン可視化解析と電気生理で解析した。1-10 nMの女性ホルモンや男性ホルモンは、双方ともに2時間で急性的にスパインを増加させることを見出した。この現象がシナプスに存在する受容体ERαやARを介して、MAPK, PKA, PKCなどの蛋白キナーゼ系を駆動して起こること、を発見した。コルチコステロンは1時間程度でシナプスの長期増強を抑制するが、1nMの女性ホルモンがこの抑制を無くして正常状態に戻す力を持つことを発見した。シナプスに存在する受容体GRやERαを介してMAPKなどが働いていることがわかった。以上の結果を総合すると、脳海馬において女性ホルモン・男性ホルモンやストレスステロイドが合成され、これらがERαやGRなどの受容体を介して蛋白キナーゼ系を駆動し急性的に神経シナプス可塑性を制御することがわかった。

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