著者
田野中 恭子
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.23-32, 2019 (Released:2019-04-26)
参考文献数
34
被引用文献数
2

目的:精神疾患の親をもつ子どもの困難を示し年代別の特徴を明らかにする.方法:子どもの頃に精神疾患を患う親がいた10名の成人に対し半構造化面接を実施し,質的記述的研究によりカテゴリーを抽出した.結果:子どもの困難は全年代を通して【わけのわからぬまま親の症状をみるしかない生活】や【親の言動に振り回される精神的不安定さ】,【心許せる友達や安心できる場所のない苦しさ】,【我慢だけ強いられ周囲からも支援を受けられない苦しさ】があり,特に学童期から思春期にかけては【世話をされない苦しい生活】があり,青年期以降は【青年期以降に発達への支障を自覚する生きづらさ】が明らかになった.考察:子どもは精神面だけでなく生活面を含む困難を家庭内外にもっていた.支援として子どもの疾患理解を支援,生活支援,子どもとの関係づくりと気持ちの支え,青年期以降も支援,精神疾患に関する啓発活動が必要である.
著者
蔵満 美奈 木村 宣哉 藤田 直人 河原田 まり子
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.20-28, 2014 (Released:2016-02-09)
参考文献数
34
被引用文献数
2

目的:健康寿命と地域保健活動およびその他の要因との関連について明らかにすることである.方法:北海道の179市町村を対象とする2次資料を用いた生態学的研究を実施した.男女の各市町村の健康寿命を算出し,健康寿命と関連する要因を検討した.調査項目は,人口動態,社会経済的要因,保健医療環境,保健活動,保健師活動の5つのカテゴリーで設定した.男女別に,健康寿命と関連要因の相関分析を行い,最後に重回帰分析を行った.結果:市町村全体と人口1.2万未満で男女共に保健師数が健康寿命を説明する要因となった.男性では悪性新生物死亡率とがん検診受診率が健康寿命と関連があった.女性においても,全ての人口区分で保健師活動が説明要因となった.考察:男性では悪性新生物の早期発見・治療が健康寿命の延伸に関連する可能性が示唆された.女性では保健師活動が健康寿命の延伸に関連していることが示唆された.
著者
吉岡 京子 黒田 眞理子 蔭山 正子
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.28-36, 2017 (Released:2017-06-02)
参考文献数
24
被引用文献数
1

目的:近隣住民等からの苦情・相談(近隣苦情・相談)で保健師が困難ケースと認識した精神障害者と,それを契機に医療につながった者の特徴を解明する.方法:全国53自治体の精神保健担当保健師261人に無記名自記式郵送調査を行い(有効回答率39.6%),ロジスティック回帰分析を行った.結果:医療につながった者は156人(59.8%)で,医療につながったことに有意な関連が見られたのは,属性では男性であること,家族要因では精神科医療機関受診時に親族の協力が得られたこと,精神科要因では不潔な身なりと自傷のおそれがあることであった.結論:精神障害者のセルフケア能力の低下への着目は,早期受診の一助になると考えられる.
著者
山本 航平 佐伯 和子 平野 美千代
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.29-36, 2016

目的:未成年大学生の飲酒の実態及び飲酒と友人関係ならびに性格特性との関連を明らかにすることを目的とする.<br>方法:A県の3大学の大学1年生から4年生1,122名を対象に,無記名自記式質問紙による集合調査を行った.飲酒の実態は記述統計,関連はχ<sup>2</sup>検定を用いた.<br>結果:有効回答998名(有効回答率89.0%)のうち未成年大学生395名のみを分析対象とした.飲酒する人は234名(59.2%)であり,中高生で純アルコール20g換算以上飲酒したことがある人は87名(22.0%)であった.飲酒は人間関係を深めると回答した人は312名(79.3%),飲酒は20歳になってからと回答した人は209名(54.2%)であった.飲酒の有無は,個人属性では学部,部活・サークル,飲酒に関する体質の自覚,性格特性では外向性と有意な関連があり,友人関係とは有意な関連はなかった.<br>結論:未成年大学生の飲酒と友人関係に有意な関連はなく,性格特性では外向性のみ有意な関連があった.未成年大学生の外向性に重点を置き,飲酒対策を行う必要がある.
著者
吉田 奈月 蔭山 正子
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.81-90, 2020 (Released:2020-08-30)
参考文献数
15

目的:統合失調症の当事者が親に暴力を振るった経験を記述することを目的とした.方法:親に暴力を振るった経験のある男性8名,女性1名に,親に暴力を振るった背景,暴力を振るった後の思いなどについて個別インタビューを行い,質的記述的に分析した.結果:親に暴力を振るった当事者は,《辛さが蓄積》《親に反発》《発散できない辛さ》《鬱憤を親にぶつけるか葛藤》《親への暴力の発露》《快感は一転して後悔》《辛さが霧散》《状況の捉え直し》《親との関係を改善》という経験をしていた.考察:支援者は,暴力が起きる前に,健康的にエネルギーを発散できるように支援することや,親子間の関係調整を行うことで暴力の発生を予防し得ると考えられた.また,暴力の発露は,リカバリーのきっかけになる可能性を秘めていることを視野に入れて関わることが望まれる.
著者
羽尾 和紗 蔭山 正子
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.126-134, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
23
被引用文献数
2

【目的】精神疾患を患う親をもつ子の生活体験,親の病気への気づきと対処,および,子ども時代に必要であったと思う支援を記述することを目的とした.【方法】20–50代の子6名にグループインタビューを行い,逐語録を質的記述的に分析した.【結果】研究協力者の精神疾患を患う親は,全て母親であった.子ども時代には《家で落ち着けない》《睡眠に支障が出る》《経済的に困窮する》《学業や交友関係に支障が出る》《家事を手伝う》《親に情緒的ケアをする》《親に医療的ケアをする》などの生活体験をしていた.病気への気づきと対処として《他の家との比較で気づく》《親が病気だと知るが状況は変わらない》《親が病気と知り重荷になる》などのカテゴリー,子ども時代に必要であったと思う支援として《病気の説明》《積極的な介入》というカテゴリーが生成された.【考察】子の生活体験は,親の精神疾患の影響を受けており,支援することで改善する可能性があると考えられた.
著者
水田 明子 岡田 栄作 尾島 俊之
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.136-143, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
40
被引用文献数
1

目的:中学生のいじめの加害経験と,クラスの結束,いじめの被害経験,時間的展望,家族構成,経済状況との関連を明らかにする.方法:2012年12月から2013年1月に,公立中学校8校の生徒(N=2,968人)に調査を行った.いじめの加害と被害経験の有無は2値変数にした.生徒同士の繋がりを4項目4段階評価で尋ね,クラスの平均値を算出し「クラスの結束」と定義した.いじめの加害経験を目的変数,クラスの結束,いじめの被害経験,時間的展望,家族構成,経済的余裕を説明変数とした単変量ロジスティック回帰分析を行った.結果:クラスの結束が高いといじめの加害経験のオッズ比が低かった(男:OR=0.44,95%CI=0.29–0.67;女:OR=0.59,95%CI=0.37–0.95).いじめの加害経験は被害経験と正の関連,現在の充実感と過去受容は負の関連があった.考察:クラスの結束はいじめの加害経験と関連した.いじめ防止対策にはクラスレベルでの信頼の構築が重要であり,現在の充実感,過去受容への働きかけも有用である.
著者
呉 珠響 斉藤 恵美子
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.2-10, 2015

目的:日本の都市部で生活するフィリピン女性の食習慣の文化変容について明らかにすることを目的とした.<br/>方法:エスノグラフィの手法を用い,6名のフィリピン女性に半構成的面接を実施した.<br/>結果:収集したデータから141の構成単位を抽出し,29個のサブカテゴリから【フィリピンスタイルを続ける】【おやつとしてミリエンダをとる】【調理法を和風に変える】【日本の味にアレンジする】【和食を手軽に取り入れる】【食事に野菜を取り入れるようになる】【健康のために和食にするようになる】【日本スタイルを当たり前に受け入れる】の8カテゴリに分類した.<br/>考察:日本に定住しているフィリピン女性を対象とした保健指導などの機会には,文化変容についてもアセスメントし,健康に関わる自国の習慣の維持または変化や,日本社会の習慣や文化の受容の過程に着目することの必要性が示唆された.
著者
飯島 清美子 山口 忍 渡辺 尚子 綾部 明江
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.144-153, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
27

目的:本研究は,市町村保健師が精神保健分野の個別対応で抱える困難を表す内容を明らかにし,実践への示唆を得る事を目的とする.方法:市町村に勤務する保健師を対象に,半構造化面接法を用いてデータ収集を行い,質的記述的に分析した.結果:8名の市町村保健師の協力が得られ,市町村保健師が精神保健分野の個別対応で抱える困難は,476のコード,45の小カテゴリー,11の中カテゴリー,4つの大カテゴリーが抽出された.市町村保健師は【当事者・家族への対応の難しさ】を感じ,社会資源の少なさや支援拒否,支援効果のわかりづらさから【当事者がもつ生活しづらさの改善の難しさ】があり,【市町村という立場での連携・組織体制構築の不足】や【支援の際に起こる保健師の感情コントロールの難しさ】でも困難を感じていた.考察:市町村保健師自身は,精神保健分野の対応技術の獲得,否定的感情のコントロール,当事者理解を進めていく必要がある.
著者
大塚 敏子 巽 あさみ
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.219-229, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目的:発達上“気になる子ども”をもつ保護者への保育士の支援経験を明らかにする.方法:“気になる子ども”の保護者への支援経験がある保育士12名に対し半構造化面接を行った.研究方法は質的帰納的研究方法を用いた.結果:“気になる子ども”を持つ保護者への保育士の支援の実態として【核心を伝える下準備としての基本的な関係づくり】,【方法や時期を見極めた上での核心の伝達】,【保護者の気持ちに配慮した専門的支援活用のための支援】,【情報共有や助言による保育士自身の安心感】,【期待した反応が得られない保護者への強い困難感】の5つのコアカテゴリが抽出された.考察:保育士は,保育実践の場を持ち,日々保護者とも接点があるという強みを活かして保護者との関係を深めながら子どもの発達への気づきの促しや専門的支援の勧奨を行っていた.一方,拒否的反応や困り感のない保護者に対しては強い困難感を抱いていることが明らかとなった.
著者
大西 恵理 後閑 容子 石原 多佳子
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.37-46, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
18

目的:中壮年期を対象にソーシャルキャピタルの構成要素と地域共生意識との関連を明らかにし,地域における中壮年期からの社会参加を促進するための資料を得ることを目的とする.方法:A県Y市に住所を有する日本人40歳代,50歳代のうち1,020名を対象に郵送による無記名自記式質問紙調査を行った.結果:有効回答295名を解析対象者とした.ソーシャルキャピタルは【信頼】と【つき合い・交流】間のみ関連が認められた.地域共生意識に影響を与えているソーシャルキャピタルの項目は『一般的な信頼』『近隣でのつき合い』〈職場の同僚とのつき合いの頻度〉(F(3.260)=51.77 p<0.01)であった.結論:中壮年期世代のソーシャルキャピタルの「構成要素」は【信頼】,【つき合い・交流】間にのみ関連があり,【社会参加】との関連は認められなかった.地域共生意識と近隣や職場の同僚とのつき合いに関連が認められたことから,中壮年期世代が従来から活動している身近な場所において社会参加への支援を行うことは,地域における中壮年期からの社会参加活動支援に対し有効である.
著者
鈴木 良美 森山 ますみ 五味 麻美 持田 恵理
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.72-79, 2018 (Released:2018-08-27)
参考文献数
24

目的:本研究の目的は,発達障害を有する外国人小児への保健師による早期発見と支援や,その活動上の困難を,親の国籍による違いも踏まえて明らかにすることである.方法:外国人人口の多い上位100市区町村保健センター241ヵ所へ,無記名自記式質問紙を郵送した.結果:48ヵ所から回答を得た.健診での外国語版質問紙や公的通訳の活用は,外国人人口の多い本調査の対象自治体でも6割程度であった.発達障害を有する外国人小児への保健師活動の困難は,言葉や文化の違いを背景に,情報収集や判断という支援の初期段階からすでに生じていた.また南米よりもアジア系外国人が多い自治体の方が,保健師が活動上の困難を感じる割合が高い項目が多かった.考察:今後,発達障害を有する外国人小児の早期発見と切れ目ない支援のためには,さらなる言語的支援体制の整備や,保健師と外国人双方の理解の促進とそのための情報源の体系化などが求められる.
著者
山本 航平 佐伯 和子 平野 美千代
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.29-36, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
24

目的:未成年大学生の飲酒の実態及び飲酒と友人関係ならびに性格特性との関連を明らかにすることを目的とする.方法:A県の3大学の大学1年生から4年生1,122名を対象に,無記名自記式質問紙による集合調査を行った.飲酒の実態は記述統計,関連はχ2検定を用いた.結果:有効回答998名(有効回答率89.0%)のうち未成年大学生395名のみを分析対象とした.飲酒する人は234名(59.2%)であり,中高生で純アルコール20g換算以上飲酒したことがある人は87名(22.0%)であった.飲酒は人間関係を深めると回答した人は312名(79.3%),飲酒は20歳になってからと回答した人は209名(54.2%)であった.飲酒の有無は,個人属性では学部,部活・サークル,飲酒に関する体質の自覚,性格特性では外向性と有意な関連があり,友人関係とは有意な関連はなかった.結論:未成年大学生の飲酒と友人関係に有意な関連はなく,性格特性では外向性のみ有意な関連があった.未成年大学生の外向性に重点を置き,飲酒対策を行う必要がある.
著者
後藤 拓
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.90-98, 2022 (Released:2022-08-31)
参考文献数
35

目的:妊娠期・育児期の父親の関与についてのアセスメント項目を明らかにすること.方法:1980年から2020年までに公表された和文献4件,海外文献16件,計20件の文献をレビューマトリックス方式で分析した.結果:20件の文献から,妊娠期9件,育児期12件の2つの時期の尺度が確認された.妊娠期の尺度からはアセスメント項目として【パートナー】,【育児】,【胎児】などの9カテゴリが抽出された.育児期の尺度からは【家庭】,【父親自身】,【パートナー】などの9カテゴリが抽出された.考察:妊娠期・育児期の父親の関与についてのアセスメント項目は,子どもの世話だけでなく,家事やパートナーとの関係も含んだ複数のカテゴリから構成された.また,宗教上の考え方などを含めて,使用されている国の文化を反映している項目もあった.