著者
生田 宏一 谷一 靖江 原 崇裕 今井 久美子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

IL-7は胸腺や骨髄のストローマ細胞や上皮細胞が産生するサイトカインであり、リンパ球の増殖・生存・分化・成熟に不可欠である。しかしながら、リンパ組織におけるIL-7産生細胞の分布と機能については不明の点が多い。我々は、この問題を明らかにするために、まずIL-7-GFPノックインマウスを作製した。IL-7-GFPマウスでは骨髄ストローマ細胞、胸腺上皮細胞、腸管上皮細胞とともに、リンパ節やパイエル板のT細胞領域ストローマ細胞やリンパ管内皮細胞でGFPが発現していた。さらに、DSSにて大腸炎を誘導すると大腸上皮細胞におけるGFPの発現が上昇した。したがって、IL-7-GFPマウスは生理的ならび病的状態におけるIL-7産生細胞を明らかにするために有用であることがわかった。次に、我々はIL-7-floxedマウスを作製した。このマウスをFoxN1-Creトランスジェニック(Tg)マウスと交配し、胸腺上皮細胞でのみIL-7を欠損したコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを得た。FoxN1-Cre IL-7flox/floxマウスでは胸腺の全細胞数とγδT細胞数が1/15に減少した。一方、腸管上皮細胞でのみIL-7を欠損したVillin-Cre(Vil-Cre) IL-7flox/floxマウスでは、小腸のαβIELにほとんど変化がなく、またγδIELも30%程度減少しているもののかなりの数が残っていた。これらの結果から、胸腺上皮細胞が産生するIL-7が胸腺細胞の増幅と生存に大きなはたらきをしていることが明らかとなった。さらに、小腸のγδ型上皮内リンパ球が著しく減少したことから、この細胞集団が胸腺に由来することが示唆された。次に、Albumin-Cre(Alb-Cre) Tgマウスと交配し、肝細胞でのみIL-7を欠損したcKOマウスを得た。このマウスでは成体肝臓のNKT細胞とT細胞が減少し、胎児肝臓におけるB細胞の分化が低下していた。この結果から、肝細胞が産生するIL-7が肝臓におけるNKT細胞の維持やB細胞の分化に一定のはたらきをしていることが明らかとなった。
著者
山本 淳司
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

SDに係る議論は、FDと同様に具体論の展開が求められるが、一般論としてのアドミニストレーター論が中心で、現場の職員が業務の改善を実感できる道筋を提示しきれていない。これらを解決するため、(1)定型的な実務を含む現場の職員業務を階層化した上で分析し、OJT (On-the-Job Training)への組入れを念頭に置き、業務改善の具体化を検討すること、(2)業務改善案をシミュレートし強い職員組織を提案すること、を研究の目的として設定し、この目的を遂行するために以下のような段階で進めた。1) 対象となる職員業務と職員層の特定…教学関係のマネージャークラスを主対象2) 業務の適切性を判断し業務を分析…業務プロセス等を整理3) 実務分析に基づく業務内容の見直し…業務内容が明示できるかを確認4) 業務に必要な資質や能力等の検討…予め提示の場合も検討(事務分掌規程等を参考)5) 実務に基づくSD分析のOJTへの組入れ…人事制度と連動している先行事例を参照6) 強い職員組織の提案を行うべく検討…フィージビリティを考慮研究を進めるに当たっては、代表者が関与している他の研究課題における意識調査等の一部も参考に、先行研究にも意識しながら進めた。比較検討においては、業務改善を前提として業務フロー等を確認すると、組織論的にみてプレイングマネージャーがミドルアップダウンの機能を果たすか否かに関わらず、職務説明書が予め明示され、求められた業務遂行能力等を持った職員が大学のミッションやコンプライアンスを意識し、意欲を持って業務を誠実に遂行していれば、業務はスムーズに行われていることが分かった。また、業務の対象を限定してフロー等を確認すると、業務改善に資することもあるが、大括りのjob間の重複業務等の調整には至らないため、業務全体の組換えを前提として業務に適合した組織を構築する方が望ましい等の課題が見えてきた。個々の職員を見た場合の背景として、我が国の労働慣行ともいえる無限定な業務へのスタンス等を求めることは必ずしもプラス効果を発揮していないことが考えられる。強い職員組織の提案は、その裏付けとして単純な想定しかできなかったが、今後、実務に直結した面談調査も踏まえて、更なる成果を挙げ人事制度と連動したプログラムの試行に繋げて行く計画である。
著者
野村 知二
出版者
京都大学
雑誌
京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (ISSN:13471562)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.71-80, 2003-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
水谷 正治 坂田 完三 清水 文一 木下 朋美 水谷 正治
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

調査研究には、Tocklai Tea Experimental Station(TTES)の母体であるインドTea Research Association(TRA)の全面的協力が得られることとなり、2年間の共同研究契約を締結し、調査研究を下記のように実施した。1)ダージリン高級紅茶“Second flash"の実態調査06年5月末、日本側から3名の研究者がアッサム地方トクライにあるTTBSとダージリンを訪ね実態調査を行った。インド側2人の研究者とともにダージリンの代表的茶園を順次訪ねて、虫害の状況と製茶状況を視察した。また、2カ所の茶園では“Second flash"製造時の各製造段階でのサンプルの採取を行った。ダージリンではヨコバイ(英名:jassid(green fly):Empoasca flavescens Fabr.)の他にアザミウマ(英名: thrips: Taeniothrips setiventris Bagnall)の食害が多かった。いずれの虫害がダージリン茶の香気形成に重要かを明らかにする必要がある。07年6月、日本側から3名の研究者がTTESを訪問し調査研究を行った。ヨコバイとアザミウマを実験室で飼育できるよう指導し人工飼育に成功した。人工飼育した虫を用いて実験室レベルでチャ葉に虫害を与え、それを材料にして香気分析を行なうようインド側研究者に指導した。2)虫害チャ葉から作られる“Second flash"特有香気生成機構の解明06年にダージリン茶園試料をGC-MS香気分析に供した結果、台湾の東方美人の場合と同様に、ダージリン紅茶でもhotrienolなどのモノテルペンアルコールの生成に虫害が密接に関与していることが示唆された。07年にTTESにて人工飼育したヨコバイおよびアザミウマを用いた加害試験を行った結果、“Second flash"紅茶特有の香気生成には虫害の関与が大きいことが明らかとなった。また、日本のやぶきた種茶園にて採集した農薬処理を行ったチャ葉と虫害を受けたチャ葉とで香気成分を比較し、diolの生成にはヨコバイ吸汁刺激が引き金になっていることが示唆された。3)新しい簡易紅茶製造法開発に向けた調査研究高品質な紅茶を簡便に製造するための新しい技術として、烏龍茶の製造技術を応用することをTTESの研究者に指導し、TTESにてパイロット機器を用いた製茶を行った。萎凋工程および撹拌工程の追加改良により、紅茶香気の改善が期待された。
著者
木下 昌巳
出版者
京都大学
雑誌
古代哲学研究室紀要 : hypothesis : the proceedings of the Department of Ancient Philosophy at Kyoto University (ISSN:0918161X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.20-35, 1998-12-06

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
今中 哲二
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2003-05

平成12-14年度科学研究費補助金(基盤研究(B)(2))研究成果報告書 課題番号:12572036 研究代表者:今中哲二(京都大学原子炉実験所 助手)
著者
佐藤 卓己 渡辺 靖 植村 和秀 柴内 康文 福間 良明 青木 貞茂 本田 毅彦 赤上 裕幸 長崎 励朗 白戸 健一郎 松永 智子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

情報化の先進諸国におけるメディア文化政策の展開を地域別(時系列的)、メディア別(地域横断的)に比較検討し、国民統合的な「文化政策」と情報拡散的な「メディア政策」を明確に区分する必要性を明らかにした。その上で、ソフト・パワーとしては両者を組み合わせた「メディア文化政策」の重要性が明らかになった。佐藤卓己・柴内康文・渡辺靖編『ソフトパワーとしてのメディア文化政策』を新曜社より2012年度中に上梓する。
著者
巽 靖昭 東 晋司 児玉 俊介 佐藤 崇 澤口 隆
出版者
京都大学
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
no.18, pp.11-23, 2012-12-01

The purpose of this paper is to measure the effect of second-year undergraduate microeconomics and macroeconomics exercise courses. Most economists agree that substantial mathematical ability is essential in studying economics. However, gaps among undergraduate students with various mathematical abilities have expanded as a result of increasing access to higher education and the diversity of university entrance exams in Japan. Consequently, most undergraduate students need higher levels of support and training. Through a combination of lectures and exercise courses, this article shows how we plan to increase the understanding of second-year undergraduate microeconomics and macroeconomics among students with various mathematical abilities. A multiple regression analysis for the students taking exercise courses indicates that past academic results of compulsory economics courses and attendance numbers and submission of assignments at exercise courses for microeconomics and macroeconomics are positively related to microeconomics and macroeconomics scores. The standardized regression coefficients of attendance numbers and submission of assignments at exercise courses for microeconomics are 0.340–0.363 and those of macroeconomics are 0.314–0.326. Thus, our exercise courses are evaluated as successful in increasing the understanding of microeconomics and macroeconomics.
著者
今中 哲二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

研究代表者の今中は、平成12年度に3回、平成13年度に2回、平成14年度に2回海外調査を実施し、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアにおいてチェルノブイリ原発事故の研究を行っている主要な研究所を訪問した。チェルノブイリ事故研究に従事している研究者との意見交換の結果、欧米や日本では紹介されていない興味深い研究が数多く行われていることが判明し、まとまった成果を出している研究者に対し、本調査研究のために特別論文の作成を依頼した。こうして作成された論文22編と今中の論文1編をまとめ、平成14年に京都大学原子炉実験所テクニカルレポートKURRI-KR-79として英文で出版した(306ページ、研究成果報告書にCDで添付)。このレポートはチェルノブイリ事故に関するユニークな論文集として評価されている。一方、各研究者との議論や最近の論文・資料を基に今中は、「運転員はなぜAZ5ボタンを押したか:チェルノブイリ原発事故の暴走プロセス」ならびに「水素爆発か核爆発か:チェルノブイリ原発4号炉爆発の正体」という論文を「技術と人間」誌に発表し、平成15年1月には、「ベラルーシ、ウクライナ、ロシアにおけるチェルノブイリ原発事故研究の現状調査報告」と題して、京都大学原子炉実験所学術講演会において本調査研究の概要を報告した。また、資料収集・整理作業としては、チェルノブイリ事故発生当事にソ連共産党中央委員会政治局に設置された「チェルノブイリ原発事故対策特別作業班会議」議事録の翻訳を行うとともに、チェルノブイリ事故が発生して以来の日本国内の新聞ニュースを整理した。なお、本調査研究にともなう成果は、逐次ホームページ(http://www-j.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/)に掲載した。
著者
中務 哲郎 高橋 宏幸
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

古代ギリシア・ローマ喜劇と狂言はまったく異なる文化伝統の中で生成発展したが、同時代に材をとり、滑稽な言葉・しぐさ・趣向を用いて笑いの劇を目指すという共通点をもつ。両ジャンルに共通して現れる仲裁人のモチーフ、仕方話の趣向等がいかなる社会制度から生まれたかを考察することにより、両ジャンルの特性を解明した。と同時に、芝居(企み、変装)の意義と効果、虚と実のすり替え、等を具体的な作品に即して分析することにより、喜劇的なるものの本質が両ジャンルに共通することも明らかにした。
著者
宮本 佳明
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

前年度に構築した大気・海洋結合モデルを実現象の再現実験に適用できるように改善を行った.ここで,当初構築する予定であった大気・波浪境界層(Wave Boundary Layer : WBL)・波浪・海洋の結合モデルは,前年度のロードアイランド大学滞在中に得た知見を基に,WBLモデルの構築,及び,波浪モデルの組み込みを取り止めた.その理由は,両モデルは計算負荷が大きい欠点を持ちながら,顕著な精度向上が見込まれないためである.つまり,現在までに得られている波浪・WBLの物理過程に関する理解では,長時間のコーディング作業をせずに,多少近似が強いながらも最新の観測結果を踏まえた手法を取った方が良いと判断した.そこで,大気-海洋間の結合が物理量のフラックスによって行われると考え,既存の大気モデルで良く用いられているバルク法を用いて以下のようにモデル化した.海面フラックス(モデル最下層における応力項に対する下端境界条件)は,WBL上端の風・海面上とその高度間の変数の勾配に比例するとして,2005年・2008年の観測・室内実験結果に関する先行研究(Donealn et al. 2004 ; Zhang et al. 2008)からその比例係数を決定した.ここで,WBL上端の高度はモデル変数から診断できないため,大気安定度に依存した対数分布を仮定して高度10mにおける風速を基に勾配を決定した.次に,海洋モデルに日本付近の海底地形データの導入し,過去に顕著な災害をもたらした台風の再現実験を行った.そして,海洋モデル及び最新の実測値を基にした海面フラックスの定式化を行うことによるインパクトを調べ,熱帯低気圧の数値モデル内での再現におけるそれらの重要性を示した.
著者
海老原 健 阿部 恵 日下部 徹 青谷 大介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

脂肪萎縮症においてレプチン治療が糖尿病、高脂血症、脂肪肝などの代謝異常を改善することをヒトにおいて明らかにしてきた。そこで本研究では、脂肪萎縮症以外にもより一般的な1型および2型糖尿病、高脂血症、脂肪肝において、レプチンが治療薬として有用であることを明らかにした。また、アミリンおよびGLP-1製剤が糖脂質代謝改善作用におけるレプチン抵抗性改善作用を発揮することを明らかにし、レプチン抵抗性状態における併用療法の有用性を示した。
著者
中串 孝志
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

火星気象の変動のタイムスケールは様々である。そのため連続的観測が不可欠である。しかし探査機に頼り切った現状では時間的・空間的連続性を確保するのは難しい。地上観測によるモニタリングは依然としてニーズがある。我々は2003年観測期(2002年10月18日から2004年6月31日まで)に観測された諸現象について、西はりま天文台火星共同観測および月惑星研究会に大量に寄せられた優秀な画像アーカイブに基づいて、主として形態学的見地からの現象事例観測報告を行ってきた。本年度は後半期4145個のデータから得られた成果を論文としてまとめ、発表した(Publications of Astronomical Society of Japan誌第57巻3号497頁)。また火星気象はダストなどエアロゾルの物理に支配される気象でもある。これまで手薄だった偏光度による観測をスタートさせ、実用化段階に入っている。2003年のデータ解析の予備的成果は飛騨天文台主催のワークショップにて発表された。現在は2005年の観測データの解析中である。また特にエアロゾルと気象を結びつける実験的研究に関する現状は壊滅的と言ってよい。火星地表面上の地質学的研究が進んでいる現状を鑑みて、これは危機的状況と言える。そこで我々は近い将来我が国の着陸探査機が行う探査に備えた基礎的研究を想定し、エアロゾルの実験的研究に関する研究グループを立ち上げた。さらに惑星観測専用の宇宙望遠鏡プロジェクトも東北大他と立ち上げ、惑星エアロゾルの多角的研究を積極的に推進している。
著者
嶺重 慎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

(1) ブラックホールのペア、バイナリーブラックホールへのガス降着流を、質量、連星系軌道の離心率、円盤面の傾き角を変えて計算し、放射特性を明らかにした。(2) バイナリーブラックホールモデルに基づきシミュレーションを実行して輝線プロファイルを計算し、観測の非対称なダブルピーク・プロファイルを再現した。(3) ブラックホール合体時に予想される超臨界降着流の大規模輻射磁気流体シミュレーションを実行し、クランピーアウトフローの証拠を見いだした。
著者
小野田 雄介 中嶋 聖徳 板東 玲青 小南 裕志
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

大きな森林では、隣り合う樹木のは完全に独立し、「樹冠の譲り合い」(Crown shyness)と呼ばれる隙間をもつ。「譲り合い」という優しい響きとは裏腹に、この樹冠の隙間は、強風時の樹冠の衝突によって形成されると考えられる。しかし、樹冠の隙間を研究した例は少なく、天然の森林で、樹種や樹木の形状にどう依存しているのかはわかっていなかった。そこで本研究では、以下の課題に取り組んだ。(1) 風によって、樹木がどのくらいたわむのか?(2) UAVを使用した樹冠の隙間を定量方法の確立、(3)樹冠の隙間が樹種や樹高、幹太さにどの程度依存するのか?
著者
三浦 励一
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2001-03-23

新制・論文博士
著者
吉本 道雅
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.27-68, 2007-03

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
橋本 千絵 宮部 貴子 徳山 奈帆子
出版者
京都大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2018-10-09

メスが寿命よりも数十年も早く繁殖を終えるという「閉経」は、これまでヒトとクジラ類でしか確認されたことのない非常に稀な進化しにくい形質で、ヒトでなぜ閉経が進化したかについては未だに解明されていない。ヒトに最も系統的に近いチンパンジー・ボノボにおいても、閉経の有無は未だに決着がついていない。本研究は、これまで長期継続調査を続けたウガンダ共和国カリンズ森林保護区の野生チンパンジーとコンゴ民主共和国ルオー科学保護区の野生ボノボを対象に、非侵襲的に収集する尿試料による性ホルモンの動態分析を行い、加齢による性生理の変化と閉経の有無について明らかにする。さらに、閉経の進化に関係する社会的・繁殖戦略的な要因、つまり、老齢メスの子どもの生存率や母親から子どもへのサポートによる孫世代の繁殖成功度の増加などについても調べ、大きな議論を呼んでいる「おばあさん仮設」の検証を行う。平成31年度においては、研究代表者の橋本がウガンダ共和国カリンズ森林保護区で野生チンパンジーを対象とした調査を行い、現地調査補助員によるホルモン試料収集と老齢メスの行動記録を行った。また、研究代表者の橋本と研究分担者の徳山がコンゴ民主共和国ルオー科学保護区で野生ボノボを対象とした調査を行い、現地調査補助員によるホルモン試料収集と老齢メスの行動記録を行った。さらに、分担者の宮部と研究協力者の毛利がホルモン試料の分析について実験を開始した。また、これまでに採取した尿試料についてのホルモン分析を行い、学術誌に投稿するための論文を準備・投稿を行い、学会で発表した。
著者
山田 聡
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、潰瘍性大腸炎(UC)の大腸炎症粘膜におけるEpstein-Barr virus (以下EBV)再活性化機序の解明を目指すものである。本研究において、① UCを模した薬剤誘発性腸炎モデルを利用したEBVのマウス感染実験、② 免疫抑制治療中のEBV感染マウスにおける腸炎再燃実験をそれぞれ行い、大腸炎症粘膜におけるEBV再活性化機序の解明を目指す。加えて、③ 炎症発癌におけるEBV再活性化機序の解明を目指す。本研究はマウスモデルからヒト検体を用いた包括的研究を予定している。本研究を発展させることにより、UC難治例への新たな治療ストラテジーの開発に貢献するものと期待される。