著者
松元 美里 古賀 夕貴 樋口 汰樹 松本 英顕 西牟田 昂 龍田 典子 上野 大介
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.319-322, 2020-09-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
5
被引用文献数
5 2

近年,残香性を高めることを目的としたマイクロカプセル化香料の使用が一般化している.本研究ではハウスダストから甘いにおいを感じることに着目し,におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)を利用した“におい物質”の検索を試みた.分析の結果,ハウスダストと柔軟剤から共通したにおい物質が検出され,香料がマイクロカプセル化されたことでハウスダストに比較的長期間残留する可能性が示された.
著者
大井 雄介 鈴木 大地
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.117-126, 2023-03-25 (Released:2023-03-15)
参考文献数
51

脊椎動物の嗅覚系は,いつ,どのように進化したのだろうか.脊椎動物に最も近縁な無脊椎動物であるホヤやナメクジウオには明確な嗅覚器が認められないため,脊椎動物の嗅覚系は脊椎動物の系統で独自に発達したと考えられる.ヤツメウナギとヌタウナギからなる円口類は,脊椎動物において初期に分岐した系統の生き残りであり,脊椎動物の初期進化を理解するうえで重要な動物群である.嗅覚受容体や嗅細胞,嗅覚回路の比較を通して,円口類と他の脊椎動物の嗅覚系の共通点と相違点が明らかとなり,ここから嗅覚系の起源と多様化が見えてくる.
著者
大野 敦子
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.344-350, 2014-09-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
5
被引用文献数
3

紅茶の特徴は香り・味・水色の3つの要素から成る.その多彩な特徴の捉え方や伝え方は人によって様々であり,特に香りや味を言葉で表現し,多くの人に伝えることは非常に難しい.よって,紅茶の複雑であいまいな特徴を,製品開発や品質検査においても的確に評価するために,紅茶の特徴を明確に表す評価用語を作成した.また,日本の消費者に紅茶の特徴をわかりやすく伝えるためのツールとして有用である.我々は,紅茶の香り・味・水色の特徴について,より多くの人と共有し,伝達するためのコミュニケーションツールとしての紅茶キャラクターホイールを作成し,その効果を示した.また,紅茶キャラクターホイールに基づいて紅茶の特徴を可視化した.
著者
後藤 奈美
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.390-396, 2013-11-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
4
被引用文献数
2

ワインには非常に多くの種類がある.多彩なワインの特徴を消費者に伝えたり,専門家が品質を評価したりするには,様々な評価用語が使用される.有名なワインのアロマホイールは,ワインの香りを認識し,表現するための標準的な用語を提供することを目的としている.一方,品質評価用語では,その原因を示す用語が多いことが特徴と言える.ワインの香りは,原料ブドウ,発酵,貯蔵・熟成など,種々の要因の影響を受ける.ワインの香りにはまだ解明されていない点が多くあるが,これまでに明らかにされている成分についても紹介する.
著者
瓜田 純久 杉本 元信 三木 一正
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.99-104, 2006 (Released:2006-10-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

現代の医療では非侵襲的に多くの情報を得ることが求められている.採血さえも不要な呼気試験は,検査方法を工夫すると,多くの消化管情報を得ることができるが,その中心は水素・メタンガスの測定である.空腹時の呼気中水素は消化管発酵反応の指標と考えられているが,その再現性は低く,解釈は難しい.そこで,試験食を負荷して呼気中水素・メタンガスの経時的な変化から病態を評価する方法が一般的である.非吸収型の炭水化物,食物繊維などは小腸で吸収されず,大部分が大腸へ到達し,腸内細菌の発酵反応で分解される.この際発生する水素・メタンガスの時間,量からガス発生部位を推定し,消化管通過時間,細菌の異常増殖を診断することができる.発酵生成物が腹部症状を惹起する場合もあり,消化管での発酵の程度を把握することは重要である.今回,臨床現場における水素・メタンガス測定の実際を述べる.
著者
砂田 香矢乃 橋本 和仁 宮内 雅浩
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.174-183, 2013-05-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
13

紫外光しか吸収しない酸化チタンをベースに,その表面に銅イオンや鉄イオンからなるアモルファス状のクラスター助触媒を担持することで,室内光下でも十分な光触媒活性を発揮する新規な可視光応答型光触媒材料を創製した.それらの材料は,可視光下で空気浄化や抗菌・抗ウイルス,セルフクリーニングなど多機能な性能を示した.抗菌・抗ウイルス効果を中心に病院や空港で製品に近い材料で実証試験を行うなど,光触媒製品のマーケット拡大をめざした取組みについても紹介する.
著者
宮崎 雅雄
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.25-33, 2016-01-25 (Released:2020-09-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

多くの動物は,生活環境に自分のにおいを残して縄張りを主張する.一方,自分以外の動物に残されたにおいを嗅ぎつけた動物は,におい主の種や性,年齢,個体情報を識別する.これはにおい主の情報が自身の生存や種の存続に必要不可欠だからである.例えばにおい主が敵のものであれば忌避することで自身の生存につながり,同種の異性で繁殖適期の個体であると分かれば,近隣を探すことで子孫を残すためのパートナーが見つかり,種が存続する.また動物個体から分泌されるある種の化学物質は,同種の仲間に特定の行動を誘起したり内分泌系を変化させる生理活性を有し,フェロモンと称される.においやフェロモンは自分が不在の時も生活空間に残すことが可能で自己の情報を相手に伝える媒体として利用できる.このように動物の嗅覚は,種間,異種間コミュニケーションにとても重要である.本稿では,哺乳動物のにおい,フェロモンの受容機構から筆者らが研究しているネコの嗅覚コミュニケーションについて紹介する.
著者
石脇 智広
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.368-374, 2007-09-25 (Released:2008-09-19)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

コーヒーは石油に次ぐ貿易量を誇る国際商品である.そして日本の輸入量は年間40万tを越えており,今や世界第3位の輸入国となっている.コーヒーの品質を管理するために生産国,消費国でさまざまな品質検査が行われているが,官能評価はその中でも最も重要なものとして位置づけられている.本稿ではコーヒーの基礎的な知識を述べた上で,官能評価について,目的,手法をまとめた.また,業界全体の動向として,コーヒーインストラクター検定についてその概要を述べた.
著者
鈴木 隆
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.346-356, 2013-11-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
15

においを表す語彙の少なさについてはよく知られている.しかし,香料開発の現場を始めとして,かおりやにおいの分類や表現にさまざまなことばが使われているのも事実である.本稿ではそうしたことばが使われる場面や目的を,同定,記憶,描写,評価に分けて考察し,分類用語を含めた言語表現の具体的な機能について考察する.また,共感覚表現やオノマトペが多用される意義や,評価において特徴的に見られる,ネガティブ要素の探索という行為が,においのことばを生成するのみならず,嗅覚感度に影響を与える可能性を検討する.
著者
鄭 雅誠 森 恵莉
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.178-182, 2022-05-25 (Released:2022-05-26)
参考文献数
30

本邦の嗅覚診療で現在保険適応となっている嗅覚検査は基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査の2つである.静脈性嗅覚検査は1960年に提唱され,世界でも最古の部類に属する長く続けられている嗅覚検査であり,静脈ににおい物質を注入する,日本独自の検査方法である.これに対してにおい物質を嗅がせる嗅覚検査は,長らく各施設ごとに独自の形式が取られており,1956年に統一された聴力検査法と比較して,嗅覚検査の統一は遅れていた.嗅覚検査の統一基準を作るべく,1971年に研究班が設置され,日本人になじみのある「基準臭」が1973年に発表された.1978年には今日臨床で使用されている基準嗅力検査が制定され,以降40年以上にわたって静脈性嗅覚検査とともに,嗅覚の保険適応検査として使われ続けている.その後,基準嗅力検査の問題点である室内空気の汚染の改善や検査の定量化を目的に噴射式基準嗅力検査が1996年に発表されたが,検査装置製造中止のため現在は入手困難である.また,海外では検査手順簡略化や室内空気汚染対策としてマイクロカプセル技術を用いた嗅覚検査UPSITが1984年に発表され,本邦でも同技術を使用したスティック型嗅覚同定検査が2006年に発表された.スティック型嗅覚同定検査はマイクロカプセルに内包されたにおい物質をスティック状に加工し,パラフィン紙にその都度塗布して検査を行うが,その煩雑性と不定性,冷蔵保存の必要があったことから,2008年には紙を擦るだけのカード型嗅覚同定検査が発表された.このような嗅覚検査を組み合わせて臨床では嗅覚診療を行うが,嗅覚検査結果と患者本人の自覚的な嗅覚症状が乖離することも多く,嗅覚専門外来では自覚症状の評価のためにVAS : visual analogue scaleや日常のにおいアンケートも併用されることが多い.近年では好酸球性副鼻腔炎やCOVID-19の増加から,嗅覚診療の注目度や重要性も上がってきている.
著者
高橋 和良
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.100-107, 2014-03-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
12

香辛料は海の冒険者たちの夢を駆り立て,スパイス戦争を引き起こし,結果的には世界の歴史に大きな影響を及ぼしたのである.なぜ香辛料にはそのような影響力があったのかマズローの欲求段階説を用いて説明する.香辛料は薬や化粧品や食品として使用されたが,薬や化粧品に対する欲求は安全欲求と自我欲求である.これに対して,食べ物に対する欲求は生理的欲求である.この生理的欲求が世界の歴史に大きな影響を及ぼした原因であると考えられるのである.そこで,香辛料の歴史を使用方法の視点で見直すこととする.
著者
戸川 明彦
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.3-9, 2021-01-25 (Released:2021-11-14)

芳香消臭脱臭剤の変化に与える影響は,大きく「住環境の変化」と,「生活価値の変化」に分けられる.この2つの要素が,時代と共に変化することで,それに伴うように芳香消臭脱臭剤は進化してきている.具体的には,「住環境の変化」では顕在化された悪臭が住空間からなくなったことからの影響,「生活価値の変化」では共働きにより,主婦のライフスタイルが変化したことによる影響があげられる.今後の新たな住環境の変化と生活価値の変化に対応した芳香消臭剤の変化についても予測する.
著者
村木 毅
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.10-17, 2021-01-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
3

近年の香りニーズの高まりから,家庭で使用されている芳香消臭剤は使用される目的や方法も様々になり,また市場拡大に伴い使用者も増加傾向にある.そのため,製品の利用を楽しむ一方,安全性についても確保されることが求められている.芳香消臭剤の製造,使用等により発生するリスクを未然に防ぐために,過去に報告された事故原因を明らかにし,特に頻度の高い事故や重篤度の高い事故に対する方策を検討することが重要である.本稿では芳香消臭脱臭剤協議会が策定した「家庭用芳香・消臭・脱臭・防臭剤安全確保マニュアル作成の手引き(新版)」1)についての解説を行う.
著者
長谷川 登志夫
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.133-140, 2013-03-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

お香は,日本の伝統的な香りの文化である.白檀などの様々な香気素材がお香の香りのもととして使われている.これらの素材は,他には代え難い特徴的な香気を有している.これらの素材の香気についての多くの研究によって多数の構成成分が報告されている.しかし,それらの香気特性はほとんど解明されていない.次のような新規のアプローチによって,それらの香気特性について検討した.(1)香気素材の抽出方法の違いによる香気の違いを利用した解析.(2)素材の香気成分をいくつかの香気の特徴の異なる成分群にわけて解析.(3)素材の香気の経時変化の解析.
著者
駒井 三千夫 井上 貴詞 長田 和実
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.408-416, 2006 (Released:2007-09-06)
参考文献数
31
被引用文献数
2 2

三叉神経は,顔面の主要な感覚神経である.本稿では,この神経を介した刺激性物質の感覚受容について述べる.三叉神経受容といえばトウガラシなどの辛味成分のカプサイシン,冷線維刺激性のメントール,炭酸飲料の炭酸ガスなどがイメージされるが,ここでは3人の筆者がそれぞれ得意とする「三叉神経による溶存炭酸ガスの受容・伝達機構」(見出2 : 駒井),「香辛料・ハーブ類などに含まれる刺激物質の受容に関わるTRP(transient receptor potential)チャネル」(見出3 : 井上),「化学感覚と体性感覚の相互作用」(見出4 : 長田)について順に概説した.すなわち,(1)炭酸飲料中の炭酸ガスがどのようなしくみで受容されてシュワシュワ・チクチク感を感じるのかを解説し,(2)食品にさまざまな風味を付与する香辛料,ハーブ類の外因性化学物質による体性感覚発現への関与が示唆される受容機構のうち,最近解明されてきたTRPスーパーファミリーに属する4種の受容体を活性化する物質群を紹介し,(3)最後に,三叉神経刺激物質と味覚・嗅覚への影響が我々の生活で最も関心がもたれているので,味覚・嗅覚の神経伝達と三叉神経刺激の関連性について解説した.
著者
達 晃一
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.9-15, 2019-01-25 (Released:2021-11-03)
参考文献数
14

健康志向の高まりを受けて,近年では空気質への関心も高くなってきている.住宅屋内で発生する揮発性有機化合物(以下VOCと呼ぶ)は,建材や材料などの対策が進み,対策前と比較して大幅に改善されている.自動車においても,住宅同様に,内装材や,車室内に使用されている材料の対策が進み,車室内VOC濃度は低減している.しかし,車室内環境は,住宅環境よりも容積が小さく,温度も高くなるため空気質環境としては厳しい環境となっている.そこで,空気質の指標となっている総揮発性有機化合物(以下TVOCと呼ぶ)と“におい”に着目して車室内空気質に対する評価法の考察を行った.
著者
小山 玲音 出村 幹英 野間 誠司 林 信行 原口 智和 宮本 英揮 笹川 智史 龍田 典子 上野 大介
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.226-232, 2021-07-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
28
被引用文献数
3

気生藻類の一種であるスミレモTrentepohlia aurea (Linnaeus) Martiusは,スミレのような“におい”があることが知られている.スミレモのにおいの有無や強弱には生育地域や場所による多様性の存在が示唆されるが,これまでは定性的な観察が中心であった.本研究ではスミレモのにおい物質を同定することで,スミレモのにおいに関する基礎的な知見を提供することを目的とした.におい物質の同定には,におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)を含む“におい分析システム”を活用した.分析の結果,“良い香り”として特徴的なにおい物質であるα-テルピネンと2-ペンチルフランを同定した(2-メチル-6-ヘプテン-1-オールとβ-イオノンは仮同定).将来的にスミレモ類縁種のにおい物質をデータベース化することで,におい物質を利用した化学分類学の発展に貢献できると期待される.
著者
池ヶ谷 篤 油上 保 柴本 薫 楠原 正俊
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.380-388, 2017-09-25 (Released:2021-07-09)
参考文献数
55

静岡がんセンターは,患者の視点を重視することを基本理念として設立された,高度がん専門医療機関である.がん患者は,患部の壊死や代謝異常により特有の病臭が発生し,大きなストレスを感じている.我々は,日本人の生活に深く根ざした緑茶を蒸留し,その香りを活用して患者のストレスを低減させ,QOLを向上させる取り組みを実施した.この取り組みに適した蒸留液の原料としては.二番茶の茎茶が最適であった.開発した緑茶蒸留液は,心を安らげる香りを有しているだけでなく,トリメチルアミンやジメチルスルフィド等のがんの病臭を低減させる効果を有していた.
著者
関根 嘉香 木村 桂大 梅澤 和夫
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.410-417, 2017-11-25 (Released:2021-07-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1 3

近年の機器分析法の発展に伴い,ヒト体表面から発せられる微量な生体ガス(皮膚ガス)の種類や放散量が明らかになり,ヒトの身体的・生理的状態,種々の疾病の有無,生活環境や生活行為との関連に注目が集まっている.皮膚ガスは,体表面から放散される揮発性の有機・無機化合物の総称であり,代謝生成物や外来因子,皮膚表面における生物的・化学的反応生成物などから構成される混合ガスである.本稿では,皮膚ガスの種類や放散経路に関する基礎的な知見,および筆者らが開発した簡便な皮膚ガス測定法の概要,およびいくつかの臨床応用例を紹介し,皮膚ガス測定が健康・医用面において極めて有望な研究視座を与えることを述べる.
著者
高橋 淳
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.127-132, 2015-03-25 (Released:2019-02-20)
参考文献数
18

主要茶産地の中で北に位置する埼玉県の茶は狭山茶と呼ばれ,経済的な北限とされている.埼玉県は茶樹にとって寒さが厳しいため,耐寒性を有した品種育成を行っている.最近,桜葉のような香気(桜葉様香気)を有している「おくはるか」を育成した.この桜葉様香気は,茶に携わる者だけでなく,消費者も感じることができる香気である.この他に,モクセイ様の甘い香気を有した「ゆめわかば」や品種特有のふくよかな香気がある「ふくみどり」,すっきりとした爽やかな香気が特徴である「むさしかおり」など香気に特徴ある品種がある.