著者
山下 匡将 宮本 雅央 村山 くみ 志水 幸
出版者
北海道医療大学看護福祉学部学会
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 (ISSN:13498967)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.29-34, 2007-03-31

【目的】主観的健康感と社会とのかかわりとの関連を詳細に検討した.【方法】新潟県粟島浦村および山形県酒田市飛島において実施した調査結果をメタ・アナリシス的に検討した.主観的健康感の回答内容から,対象者を「健康群」「非健康群」の2群に分け,Fisherの直接法を用いて各項目間との関連の有意性を検討した.さらに,有意差が確認された項目から,多変量ロジスティック回帰分析により独立性の高い変量を検出した.【結果】1)主観的健康感の分布に地域差がみられた.2)主観的健康感には,「職業の有無」「病院にかかるような病気の有無」「地域活動への参加機会の有無」「趣味の有無」の項目が関連していた.【結論】主観的健康感には「社会的な活動への参加」「役割の保持」「生きがい活動の実践」が関連していることが明らかとなった.島嶼地域高齢者の主観的健康感の維持および向上には,以上に配慮した介護予防実践の励行が求められる.
著者
西 基
出版者
北海道医療大学看護福祉学部学会
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 (ISSN:13498967)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.5-9, 2012-03-31

目的:わが国において2008年に麻疹の流行があったことから,特に患者数の多かった東京都・神奈川県・北海道を中心として,この麻疹の流行について疫学的に検討した.資料と方法:感染症発生動向調査と国勢調査の資料から,2008年の麻疹の各県における標準化罹患比(SIR)を算出した.結果:罹患数は11012例であったが,東京都,神奈川県,北海道の3都道県だけで全体の56.2%を占め,これら3都道県と千葉県・秋田県・福岡県のみが期待値より実数が多かった(SIR>100%).東京都と神奈川県では2月半ばにピークがあったが,北海道では4月後半にピークがあった.東京都では期待値と実数との差が最大だったのは20〜24歳においてであった.これに対し,神奈川県では10〜14歳,北海道では10〜19歳において,それぞれ期待値より多かった.考察:2008年の麻疹は,まず神奈川県で年明けから高学年の小学生と中学生を中心として流行が始まり,次いで東京都の大学生の間での流行となり,さらに春休みに東京方面から大学生が北海道に持ち込んで,中高生を中心に流行したものと考えられた.
著者
西 基
出版者
北海道医療大学看護福祉学部学会
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and social Services, Health Sciences University of Hokkaido (ISSN:13498967)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.3-7, 2014-03-31

看護学を学ぶ男子学生は,しばしば学生生活上の困難を経験することから,「政府統計の窓口」に公表されている資料を元に,最近数年間の大学・短期大学3年課程・看護師3年課程それぞれにおいて,入学者がストレートで卒業する割合などを,男女別に推定した.いずれにおいても,卒業者およびストレートで卒業した者における男子学生の割合は有意に少なく,卒業延期者や前年度卒業延期者においては,男子学生の割合は有意に多かった.男子学生のストレート卒業率は,大学で87.1%,短期大学3年課程では79.3%,看護師3年課程では77.7%で,いずれも女子学生より有意に低かった.男子学生に対しては,教員や職員の様々な支援が必要であると考えられた.
著者
小林 道 志渡 晃一
出版者
北海道医療大学看護福祉学部学会
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 (ISSN:13498967)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.9-14, 2014-03-31

目的:本研究は新規採用の陸上自衛官を対象として,朝食習慣とその関連要因について明らかにすることを目的とした.方法:2012年4月に北海道内で新規採用された陸上自衛官256名を対象として,2012年12月〜1月に自記式質問紙法による調査を行った.解析対象は男性234名とした.結果:朝食を欠食する習慣を持つ者の割合は39.6%であった.朝食を欠食する習慣を持つ者の特徴として,喫煙習慣がある,適正な睡眠時間の確保ができていない,過食をする,家族の支援が少ない,仕事と仕事以外の両立ができていない,CES-D得点が高い,SOC得点が低いことが示唆された.結論;新規採用の陸上自衛官の朝食習慣には,生活習慣や精神的健康が関連していることが明らかとなった.朝食習慣は他の生活習慣と比較して健康保持における重要な要因と考えられる.加えて,朝食習慣がある者は家族関係が良好であることが可能性として示唆された.
著者
笹木 弘美
出版者
北海道医療大学看護福祉学部学会
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and social Services, Health Sciences University of Hokkaido (ISSN:13498967)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.55-63, 2013-03-31

本研究は統合失調症を体験する人の思い描く生活とその広がりついて明らかにすることを目的として,デイケア通所している3名の統合失調症者に対して質的帰納的研究を行なった.分析の結果,7個のカテゴリーが抽出された.彼らの生活は発病前【病気なる前の生活】を体験しており,あたり前のような生活は発病前後に【あたり前の生活からあたり前ではない生活へ】【変わりゆく生活に苦しむ】を体験し,病状の安定によって【健康であるという実感】【自分の存在を認めてくれる他者の存在】【活動の場がある】に変わり,さらに自らの主体性を取り戻すことにつながり【新たな生活の思い】を可能にしていたと考えられる.本結果は,地域で暮らす統合失調症患者の生活の広がりを支えるための支援の在り方に寄与できると思われる.
著者
今西 良輔
出版者
北海道医療大学看護福祉学部学会
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and social Services, Health Sciences University of Hokkaido (ISSN:13498967)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.27-34, 2013-03-31

本研究は,発達障害児を家庭の中で育児する父親が,子どもに向き合う中でどのような経験を積み上げているのかを明らかにすることを目的とした.研究結果より『子どもへ関わりたいが上手くいかない良くわからない』『育児は母親頼りから,父親なりに協力していく』『障害はよくわからないが,ありのまま受ける』『仕事重視の生活に葛藤し,調整を図る』『父親自身の模索と変化』『仲間や信頼できる人との出会い」『子どもを社会に出したい』『子どもの将来が不安になる』の8つの体験が導かれた.父親は,育児姿勢の変化だけでなく,父親自身を柔軟的に変化させ成長していた.父親は,自ら子どもに関わろうと努力もしているが上手くいかない.家庭に関わる時間が乏しいため子どもに違和感を感じたとしても具体的かつ深刻な状態を直接目にすることが難しい.父親自身が発達障害について理解しやすい体験やきっかけを求めているのではないかと考えられた.