著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.11, pp.11-16, 2021-03-31

【要約】 育児を行う統合失調症患者について、祖父母の育児への関わりの現状について探索的に 検討した。孫育てを担う祖父母の現況や先行研究を概観したとき、統合失調症患者の妊娠・ 出産の困難は明白で、どれだけ母親にリカバリーや自己実現という視点を加味しても、本 人の疾病管理、祖父母等の家族の負担など、現実に後押しするに足る理論的背景を見出すことは難しい感があった。とはいえ、本研究のインタビュー調査によって祖父母から聞か れた言葉は統合失調症患者ゆえのものもあるが、一般的に、孫育てをする祖父母が遭遇す る困難や喜びと符合する部分も大い減とフォーマル、インフォーマルサポート体制の構築 などを考えることは、統合失調症の有無に関わらず、少子化のわが国にあって、子育て・ 育児の社会化やシームレスな支援の構築という近年の課題を具現化する契機とすべきと思 われた。
著者
木下 一雄
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.8, pp.49-61, 2018-03

多くの精神障害者は働きたいという希望とその力を持っている。しかし、地域社会の精神障害者に対する理解不足や適切な支援がなされていないこと、関係機関や企業等のネットワークと連携が不足していることが、精神障害者の就労を困難にしていると考えられる。 精神障害者の就労促進のためには、精神障害者が今まで暮らしていた地域で、自分らしく当たり前に生活していくことが出来る地域社会環境を構築することが必要であり、そのような環境を実現するための知見の一助とすべく、K市障がい者就業・生活支援センター職員に対する聞き取り調査を行った。 調査対象のK市は、病院と就労支援センターが共同して支援体制を構築する活動を進めている先進地域である。今後、周辺地域の過疎化が進んでいくとともに必要になる広範な地域を支援していくための有効な方策についての手がかりにつながって行く知見を得ることができると考え、調査対象地域とした。 精神障害者の社会復帰を困難にしている現状を明確にし、精神障害者を取り巻いている課題や問題点とどのような支援をしていくことが求められているかについて検討した。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.10, pp.11-27, 2020-03

【要約】世界的にメンタルヘルスの促進の重要性が議論される時勢であるが、本稿ではわが国のメンタルヘルスの主要課題の1つである自殺とその周辺課題について、先行研究や政府公刊の白書等、意識調査の結果を中心に考察を試みるとともに、自殺対策についての提言を述べた。わが国では1998年に自殺者が急増して以降自殺者が3万人を超える状態が続いた。2010年以降は9年連続の減少となっており、2018年は20,840人で前年に比べ481人(2.3%)減少したものの以前深刻な状況にある。特に、自殺総合対策大綱では、重点施策のひとつとして、「子ども・若者の自殺対策の更なる推進」が掲げられているが、先行研究を概観すれば、若年層は自殺念慮が最も高い世代であり、社会に絶望を感じながら、自己有用感が低いまま、これまでの人生で遭遇したいじめなどのつらい経験を抱えながら、レッテル貼りを警戒して専門職に相談することをあえてせず、家族や友人などの身近な"知った仲"によるサポートでギリギリ暮らしている実情が示唆された。
著者
吉中 季子
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.3-15, 2014-03-31

1942年に公表されたイギリスのヘヴァリッジ報告は、日本や各国の福祉国家形成に大きく影響を与えたといわれている。ヘヴァリッジ報告のなかの女性の位置づけを当時の歴史的背景とともにみたところ、国民の分類に「主婦」という独立したカテゴリーがあったことや、それに伴う社会保障上の証として「主婦保険証券」の提案があったこと、無業の既婚女性にきわめて優遇された制度の提案であったことがわかる。その背景には、当時のイギリスの主婦たちの家事労働は非常に重労働で、主婦たちの意識のなかに、家事労働に対する「職業観」が強いといったことがある。ヘヴァリッジ報告でも「家事労働」を高く評価して制度設計の計画をしていた。このようなヘヴァリッジ報告は、日本の社会保障制度の萌芽期においても強く影響を受け、ヘヴァリッジ報告を青写真に設計していたことが明らかになった。
著者
大坂 祐二
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.10, pp.29-40, 2020-03-31

【要約】 高等学校における職業に関する教科「福祉」では児童家庭福祉分野を含む「福祉の各分野について体系的・系統的に」(学習指導要領、2018年告示)学ぶ一方、福祉系高校の課程を修め受験資格が与えられる介護福祉士の養成課程や国家試験には、同分野はほぼ含まれない。国家試験対策なども考慮すると、福祉系高校では児童家庭福祉分野の扱いは相対的には低くならざるをえないだろう。しかし、教科「福祉」はその創設時、専門的な職業人の養成としてだけではなく、国民的教養としての福祉教育を進路指導、職業指導につなげてゆくものとしても構想された。その趣旨を継承しようとするとき、児童家庭福祉分野は高校生にとって、福祉を身近なものとして考える契機になりうるのではないか。そのためには、指導上の工夫や家庭科などとの連携も必要になるだろう。
著者
矢口 明 深田 綠 瀬戸口 裕二 柴野 武志
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.6, pp.121-133, 2017-03

知的障がい者の就労について、北海道及び北海道教育委員会が進めている障が いのある人の就労支援の充実に向けた取組の状況を概観することに加えて、北海道内 の特別支援学校在籍者の約8割を占めている知的障がい特別支援学校の現状や就労支 援の取組について整理した。北海道において障がいある人の就労に大きな役割を果た してきた職親会の設立の経緯やなよろ地方職親会の障がい者雇用の状況やジョブコー チ養成研修の成果をまとめた。以上のことを踏まえて、知的障がい者の就労支援やキ ャリア教育の在り方について考察する。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.6, pp.81-94, 2017-03-31

本研究では統合失調症患者が子育てや家庭教育を行う上で抱えている課題を明らかにす べく、当事者ならびに支援者(看護師、保健師、ソーシャルワーカー等)へのインタビュー調 査を実施した。子育ての課題について、「 病 気 と 子 育て」のカテゴリーでは、「 通 院 し なが らの子育てに苦労している」「 入 院 へ の 不 安 」「 他 の人がどのようにしているのか知りたい」 などの不安が語られる一方で、「 以 前より体調はよくなった」「 子 ど も が 成 長 したのを見て 自信がついた」などの本人のリカバリーにつながっていると思われる小カテゴリーも抽出 された。また、「 子 育てと他者との関係」では、子どもがいろいろ手伝ってくれる」「 看 護 師 や 保健師、精神保健福祉士が相談に乗ってくれている」などの小カテゴリーを抽出し、 子どもが「支援をする側」になっている現状や、専門職が重要な相談相手である一方で、 地域のなかでは支援者を得られずに子育てを行っていることも示唆された。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.11, pp.11-16, 2021-03-31

【要約】 育児を行う統合失調症患者について、祖父母の育児への関わりの現状について探索的に 検討した。孫育てを担う祖父母の現況や先行研究を概観したとき、統合失調症患者の妊娠・ 出産の困難は明白で、どれだけ母親にリカバリーや自己実現という視点を加味しても、本 人の疾病管理、祖父母等の家族の負担など、現実に後押しするに足る理論的背景を見出すことは難しい感があった。とはいえ、本研究のインタビュー調査によって祖父母から聞か れた言葉は統合失調症患者ゆえのものもあるが、一般的に、孫育てをする祖父母が遭遇す る困難や喜びと符合する部分も大い減とフォーマル、インフォーマルサポート体制の構築 などを考えることは、統合失調症の有無に関わらず、少子化のわが国にあって、子育て・ 育児の社会化やシームレスな支援の構築という近年の課題を具現化する契機とすべきと思 われた。
著者
松浦 智和
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.10, pp.11-27, 2020-03-31

【要約】世界的にメンタルヘルスの促進の重要性が議論される時勢であるが、本稿ではわが国のメンタルヘルスの主要課題の1つである自殺とその周辺課題について、先行研究や政府公刊の白書等、意識調査の結果を中心に考察を試みるとともに、自殺対策についての提言を述べた。わが国では1998年に自殺者が急増して以降自殺者が3万人を超える状態が続いた。2010年以降は9年連続の減少となっており、2018年は20,840人で前年に比べ481人(2.3%)減少したものの以前深刻な状況にある。特に、自殺総合対策大綱では、重点施策のひとつとして、「子ども・若者の自殺対策の更なる推進」が掲げられているが、先行研究を概観すれば、若年層は自殺念慮が最も高い世代であり、社会に絶望を感じながら、自己有用感が低いまま、これまでの人生で遭遇したいじめなどのつらい経験を抱えながら、レッテル貼りを警戒して専門職に相談することをあえてせず、家族や友人などの身近な“知った仲”によるサポートでギリギリ暮らしている実情が示唆された。
著者
小林 宏
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.57-75, 2014-03-31

本研究では、中学生時に不登校状態であった生徒が多く進学すると思われる公立通信制高校の実態と課題を明らかにするため、全国70校の公立(都道府県立)通信制高校に郵送法によるアンケート調査を行った。 その結果39校から回答を得た(有効回答率55.7%)。新入生のうち40.3%が中学校時に不登校経験があり、若年生徒の入学率が高いことがわかった。また、「自学自習」をスローガンとする公立通信制高校の学習システムに入学する生徒が適さないとする回答が39校中38校(97.4%)から得られ、抜本的な学習システムの改革が必用であることが分かった。
著者
小銭 寿子
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
no.2, pp.57-68, 2013-08-31

2012年7月に実施したA精神科病院「行動制限最小化委員会」研修において、医療従事者の方々に伝えた「拘束・抑制と精神科医療における人権」について、統計的資料から精神科医療の現状、精神科病院の実態、身体拘束・抑制の実態を明らかにし、身体拘束に伴うリスク、薬物療法に伴うリスク、精神科医療の特徴を整理する。 精神科医療における人権について、IPW(専門職連携実践)時代の精神科医療とその支援について考察し、身体拘束に関する先行研究についてもふれる。
著者
忍 正人 小山 歩美
出版者
名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科
雑誌
名寄市立大学社会福祉学科研究紀要 (ISSN:21869669)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.9-23, 2016-03-31

災害時には地域にすでに存在している問題が顕在化され、災害発生前の段階としては地域の多様な問題を地域住民が主体となり相互の助け合いによって解決していくためのネットワーク構築が必要とされている。しかしながら、ネットワークの構築やまちづくりが防災に与える影響についての論文が多くある中、その促進要因として圏域の設定の有効性は明らかにされていない。そこで、本論では、防災の重要性、防災意識の高まり、さらに、災害弱者の視点から述べ、地域をいくつかの圏域に分けて支援していく手法として、現在展開されている日常生活圏域について明らかにし、中学校区での日常生活圏域の限界からより細分化された小学校区の活用について、制度面や実際の地域の取り組み等からその有用性について明らかにした。