著者
西館 有沙
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.125-130, 2016-03-30

保育者の職務中のマスク着用は,感染症対策という面からみれば必要な対応であるが,子どもの健全な心身の発達を促す保育を行う際の影響の有無にも,留意する必要がある。そこで本研究では,保育者のマスク着用状況やマスク着用に関する認識を明らかにするため,保育者に対する質問紙調査を実施した。質問紙は107部を回収し,そこから看護師や障害児施設に勤務する保育士の回答を除いた90部を分析対象とした。保育者は自身が風邪等をひいている時(94%)や病気が流行している期間(70%)にはマスクを着用すべきであると考えており,そのような時にはマスクを着用していた。一方,6割を超える保育者がマスクの着用によって困った経験があるとした。その理由としては,声が届きにくいことや保育者の表情が子どもに伝わりにくいことが多く挙がった。また,保育者はこれらによって保育に支障が生じると考える傾向にあった。
著者
久保田 真功
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.49-61, 2011

本研究の目的は,暴走族マンガの分析をもとに,マンガに見られる暴走族の下位文化を明らかにし,青少年が暴走族マンガに惹かれる理由について検討することにある。分析を行った結果,①主要登場人物は,アイディンティティ獲得のツールとしてバイクを消費していること,②暴走族内には確固たる上下関係と,構成員が従うべき掟が存在すること,③主要登場人物の多くは暴走族引退後に社会復帰を果たしているとともに,現役の暴走族に教育的な働きかけをしていること,などが明らかとなった。これらの結果を踏まえ,マンガに見られる暴走族が,ドリフト理論で知られる Matzaの主張する非行少年像に類似していることを指摘した。そして,青少年は,暴走族の姿に Matzaが言うところの「隠れた価値」(subterranean values)を見出すことによって,登場人物の姿に共感し,暴走族マンガを好んで読んでいるものと考察した。
著者
村上 宣寛
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.119-128, 2017-03-15

急性高山病の主症状は頭痛か睡眠障害である。急性高山病が重篤化すると高所脳浮腫や高所肺水腫になる。急性高山病の場合は症状の進展を確認してよいが,高所脳浮腫や高所肺水腫の場合はただちに下山する。急性高山病を避けるには,標高2,500~2,800メーターへの移動に二日以上かけるとよい。急性高山病の予防・治療薬としてアセタゾラミドやデキサメタゾンがある。比較的安全な代替薬では非ステロイド系消炎剤がある。イチョウ,ビートの根,鉄サプリの効果は確認されていない。高所での激しい運動は急性高山病のリスク要因ではなく,高所での運動は,高所順応とは関係しない。極端な高所では体重の減少がさけられない。炭水化物が有利というエビデンスはなく,炭水化物60%程度のバランス・ダイエットでよい。筋肉の消耗を防ぐために,ロイシンのサプリが有利である。
著者
上山 輝 山田 奈都美
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.177-187, 2009

本論は,デジタルコンテンツの分析方法を探るための研究の基礎を構成するものである。コンテンツの質的評価を想定した場合,定性的な特徴をどのようにとらえるかについては,ユーザまたは鑑賞者それぞれの個人差が大きく,主観的な見方を総合しただけでは捉えにくい。従ってユーザがコンテンツと接する状況を網羅するような質的評価を目指す前に,まず特定の定性的な特徴に限定してコンテンツの質に影響する諸要因を考える必要があると考える。ただし,映画,音楽,演劇などは,それぞれのジャンルによって定性的な特徴が複合的に出現する(コメディ映画の感動シーンを総合的な評価から分離できるか,など)。これらの複雑さに取り組む前段階として,本論では定性的な特徴を「笑い」に限定し,落語,漫才,コントなどの「笑芸」のうち,「コント」に焦点をあてて,一組のユニットの作品群を題材として,笑いとの関係について考察するものである。
著者
田上 善夫
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.169-194, 2010-11

本論では,風の祭祀にかんして,まず現在の実態を明らかにする。とくに風の祭祀の分布密度の高い,信越地方とその周辺を例として,特色のある民間行事をとりあげる。こうした風の祭祀について,とくに以下の3点から分析を加える。まず共通点の多い,信州とくに諏訪周辺の風の祭祀からの分析である。次に記紀に始まる古文献にみられる風の祭祀からの分析である。さらに風の三郎とかかわりの深い,全国に進出した諏訪信仰からの分析である。最後にこれらの分析に基づいて,風の祭祀にみられる風の観念について,検討を試みる。
著者
上山 輝 山田 奈都美
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.177-187, 2009-03

本論は,デジタルコンテンツの分析方法を探るための研究の基礎を構成するものである。コンテンツの質的評価を想定した場合,定性的な特徴をどのようにとらえるかについては,ユーザまたは鑑賞者それぞれの個人差が大きく,主観的な見方を総合しただけでは捉えにくい。従ってユーザがコンテンツと接する状況を網羅するような質的評価を目指す前に,まず特定の定性的な特徴に限定してコンテンツの質に影響する諸要因を考える必要があると考える。ただし,映画,音楽,演劇などは,それぞれのジャンルによって定性的な特徴が複合的に出現する(コメディ映画の感動シーンを総合的な評価から分離できるか,など)。これらの複雑さに取り組む前段階として,本論では定性的な特徴を「笑い」に限定し,落語,漫才,コントなどの「笑芸」のうち,「コント」に焦点をあてて,一組のユニットの作品群を題材として,笑いとの関係について考察するものである。
著者
野田 秀孝 後藤 康文
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.117-127, 2013

我が国のソーシャルワークは,1990年代の社会福祉基礎構造改革から,大きな転換期を迎えている。従来の,社会福祉の各法による属性や課題に個別的に対応する方法から,地域を基盤とする総合的かつ包括的な方法への転換であるといえる。従来の各法における社会福祉の実践では,入所施設における処遇を中心に社会福祉実践が行われており,地域を基盤とした社会福祉実践は重要視されてこなかった。制度的には,介護保険制度における地域包括支援センターなどにおける相談支援・支援事業や障害者自立支援制度における障害者の地域移行事業,相談支援事業などであり,児童,高齢者,障害者領域での虐待防止などで,市町村を核とし,より小さな単位である地域において,地域住民を巻き込んだ形での支援体制の強化・充実が重要視されている。本稿では障害福祉分野の施策である援費制度,障害者自立支援法,障害者総合支援法といった各法制度の成立背景や法のねらいに焦点をあて,制度的ソーシャルワークの機能や課題について述べ,コミュニティ・ソーシャルワークについて考察する。
著者
平川 毅彦
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.43-51, 2006-12

大規模化・複雑化した現代社会において、何らかの理由により生じた生活困難・生活課題を側面から支援し、個人の発達・成長を最大限まで促そうとする現代的試み。それが最も限定された意味での社会福祉である。この社会福祉という支援活動を展開するために、日常生活から引き離された「全制的施設」(“Total Institution”, Goffman,1961)ではなく、「ふつうの生活」が展開される場所としての地域社会はいかにして可能か。そして、特定少数の人々だけではなく、すべての住民にとって暮らしやすい地域社会とはどのようなものか。それが今日の「福祉のまちづくり」に求められている課題である。ところで、日本社会における「福祉のまちづくり」の源流は、高度成長期の仙台市にあるとされている。施設のみで完結する生活に不満を持つ身体障害者と学生ボランティア、そして彼らを支援するソーシャルワーカーによる最初の一滴から始まり、専門家と住民参加を旨とする当時の島野仙台市政(1958年~1984年)と結びつくことで拡がりを持ち、その活動成果はマスコミにより全国に紹介された。また、こうした活動成果が評価され1973 (昭和48)年7月には厚生省(当時)による身体障害者福祉モデル都市指定による整備が行われ、さらに同年9月には「福祉のまちづくり、車いす市民交流集会」が開催、全国から車いす利用者が仙台を訪れ、そこでの経験は日本全国へと広まり定着した。本研究では、この仙台市における「福祉のまちづくり」に関して、残された資料等をもとに、主にその源流部分を再構成する。そして、こうした作業を通じて、「福祉」と人間の成長・発達を巡って解決されなければならない課題がどのようなものであるのか明らかにしていきたい。
著者
西田谷 洋
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.59-66, 2017-03-31

As part of the Haruki Murakami studies, I take up Makoto Shinkai,s anime with deep Haruki novel and relation, arrange the Shinkai style, analyze correspondence with each anime and the Haruki's novel, and consider Makoto Shinkai’s novel, the relation of anime, and the locus of anime.
著者
西田谷 洋
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.175-182, 2016-10-25

I consider the relationship between constructions and story interpretations on the subject of arbitrary selected Haruki Murakami’s short stories and sudden fiction. These narrators run the course of irreversible things, so they can’t return the situation before these conversions. Then, they tell loss of them as nostalgia. Haruki’s stories often has the constructions that the situation was changed by a turning point. However, is it obvious that it’s a turning point?
著者
西館 有沙
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.125-130, 2016

保育者の職務中のマスク着用は,感染症対策という面からみれば必要な対応であるが,子どもの健全な心身の発達を促す保育を行う際の影響の有無にも,留意する必要がある。そこで本研究では,保育者のマスク着用状況やマスク着用に関する認識を明らかにするため,保育者に対する質問紙調査を実施した。質問紙は107部を回収し,そこから看護師や障害児施設に勤務する保育士の回答を除いた90部を分析対象とした。保育者は自身が風邪等をひいている時(94%)や病気が流行している期間(70%)にはマスクを着用すべきであると考えており,そのような時にはマスクを着用していた。一方,6割を超える保育者がマスクの着用によって困った経験があるとした。その理由としては,声が届きにくいことや保育者の表情が子どもに伝わりにくいことが多く挙がった。また,保育者はこれらによって保育に支障が生じると考える傾向にあった。
著者
山田 斗志希 上山 輝
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.93-103, 2020

本来,ビデオゲーム(以下「ゲーム」)とは,コンピュータを応用したインタラクティブな遊びを探求・追求するデジタルコンテンツである。このため,悪役は必要ないはずであるが,現在ではゲームのストーリーに悪役が登場する状況は当然になっている。この状況に至った通説として考えられるのは,主にハードウェアの発展の影響を加味した議論であるが,悪役といった定性的な要素と強く関連するのは,むしろソフトウェアの発展ではないだろうか。そこで本稿では,対戦相手の変容とストーリーの定着過程に注目してゲームの歴史を構築し,それに基づいて,対戦相手が悪役へと至るプロセスと開発者たちのクリエイティビティとの関係について考察を行った。
著者
山田 斗志希 上山 輝
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.285-295, 2019

本稿は,5つのコンテンツ形態(映画・アニメーション・ゲーム・小説・漫画)における物語に登場する250体の悪役の発言の分析を行った結果をまとめたものである。悪役の発言はすべてテキストデータとして扱い,分析は,テキストマイニングを使った「共起ネットワーク分析」と「クラスター分析」を行った。その結果,発言によって分類されたクラスターと個々のクラスターの悪役の特徴とに関連性が見られた。また物語の作り手がどのように悪役を作っているのかについて分析結果をもとに考察した。
著者
田上 善夫
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.169-194, 2010

本論では,風の祭祀にかんして,まず現在の実態を明らかにする。とくに風の祭祀の分布密度の高い,信越地方とその周辺を例として,特色のある民間行事をとりあげる。こうした風の祭祀について,とくに以下の3点から分析を加える。まず共通点の多い,信州とくに諏訪周辺の風の祭祀からの分析である。次に記紀に始まる古文献にみられる風の祭祀からの分析である。さらに風の三郎とかかわりの深い,全国に進出した諏訪信仰からの分析である。最後にこれらの分析に基づいて,風の祭祀にみられる風の観念について,検討を試みる。
著者
根岸 秀行
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.221-234, 2016-03-30

The black market in Gifu city was constructed in 1946 by the miserable repatriates who were led by able but too characteristic leader. Growing up their apparel transaction, they became confident. Then after expelling their leader who forced them to the disgusted housing business, they started pursuing their apparel business and turned to business persons. Through this process, they were reintegrated to their mother country.
著者
佐藤 みゆき 野澤(竹澤) 愛美 伊藤 美和 水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.25-35, 2021-10-22

発達障害者(知的障害者を含む)の運転免許教習における合理的配慮を含めた個別支援のあり方を検討するため,個に応じた支援を受けて免許取得につながった 3 事例を後方視的に分析した。その結果,視覚的な理解の促し,個室の利用や個別送迎,職員の声かけ,通所方法の変更,スケジュールの調整などの相談に応じるといった,多岐に渡る個に応じた支援の有効性が明らかになった。また教習所に求められる支援の視点として,多職種連携・地域連携とチーム支援,連携の共通言語としての教習に特化したアセスメントの重要性が示唆された。運転免許取得は,単に車を運転するため,働くためのみならず,免許そのものがもたらす本人のアイデンティティ獲得とそのプロセスによる成功体験,また様々な社会参加につながり,QOL の向上という点からも大きな意味がある。発達障害者の特性やニーズに応じた自動車学校での個別支援のさらなる検討が求められる。
著者
林 衛
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.119-131, 2013-03-15

東日本大震災・原発震災は,市民社会における科学や科学者のあり方を見直す機会となった。日本の市民社会には原発震災の未然防止はできなかったが,震災後に発揮された「超専門力」「市民科学リテラシー」によって,政府や御用学者からの偏った情報提供を批判的に受け止めるのに成功した面もあった。理科離れは「文系人間」の科学リテラシー不足の問題としてしばしば語られるが,より重要なのは「理系人間」が異分野への知的好奇心を磨きつつ自らのリテラシーの再点検・向上に努め,自由に科学を論じられる社会的な雰囲気づくりに貢献することだろう。
著者
岸本 忠之
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.15-25, 2018-10-25

本稿の目的は,明治後期の『黒表紙教科書』から終戦直後の『算数』までを対象として,算数教科書における小数の乗法の取り扱いに関する歴史的変遷を分析することである。そのため,小数と分数の位置づけ,純小数と帯小数の乗法の位置づけ,具体的場面と乗法の意味の観点から分析を行った結果以下のようなことが明らかとなった。黒表紙教科書では,分数よりも小数が先行していたが,分数との結びつきも既に見られるようになった。緑表紙教科書では,小数は分数の特別な場合であるとし,分数が先行していたが,水色表紙教科書では,小数が先行するようになった。当初黒表紙教科書では,純小数の乗法が中心課題とされていたが,緑表紙教科書以降では次第に帯小数の乗法から導入するようになった。ただし緑表紙教科書では,「4km,0.1km,0.8km,2.5km」の順序であったが,水色表紙教科書では,「4m,2.5m,0.1m,0.4m,2.3m」の順序に変わり,帯小数の乗法が純小数の乗法よりも先になった。意味づけについては,具体的場面を導入課題とした緑表紙教科書からと考えられているが,実際は,黒表紙教科書の第3期で意味づけについて注意が払われている。