著者
二森 優希 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.21-27, 2016-12

本研究では,反抗期の経験が,青年期の心理的発達にどのような影響をもたらすのかを明らかにするため,反抗期の出現時期として多く想定されている思春期を終えており,さらに当時の記憶が鮮明に残っていると考えられる大学生を対象に,親子関係,同調性,心理的自立,見捨てられ不安得点が第二反抗期の有無とどのように異なるのかを検討することを目的とする。また,その際,反抗期の有無と過剰適応の高低を組み合わせることによって,よい子ゆえに過度に自己を抑制せざるを得なかったと思われる者にも焦点を当てていく。なお,反抗期に関しては多くの定義があるが,本研究では反抗心あったが行動には移さなかった場合も「反抗期経験なし」として扱い,「思春期段階のもので,親に対して反抗的な態度をとる時期(石川,2013)」と定義し,質問紙にも記載した。
著者
水内 豊和 成田 泉
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.10, pp.91-95, 2015-12

広汎性発達障害者のもつ他者心情理解の弱さ等に起因する対人トラブルについて,その事案への事後指導はもちろんであるが,日常の生活の中で機会をとらえて指導していくことも必要である。本論では,異性へのつきまとい行為で職場から相談のあった広汎性発達障害成人Aに対し,自然な生活文脈の中で他者視点取得の機会を作り,全6回の相談支援をおこなった。その結果,家族へのクリスマスのプレゼントを考えるという身近なライフイベントの中で,Aにとって「社会的に望ましい気持ちの伝え方」を知り,また「相手にうれしいと思うことをすることは自分もうれしい」というように,さらなる向社会的行動につながる気持ちの深まりがみられた。
著者
下田 芳幸
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.23-37, 2014-02

2006 年に福岡県筑前町で生じた中学生のいじめによる自殺は社会的に大きな注目を集め,この年度分から文部科学省は,“児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査”におけるいじめの定義を大きく変更した。また,2011年に発生した滋賀県大津市における中学生のいじめ自殺も一種の社会現象を引き起こし,既述のいじめの定義に,犯罪行為として取り扱われるべきものに関する既述が追加されたほか,いじめ防止対策推進法が2013 年に公布されるきっかけとなった。そこで本研究では,スクールカウンセリングを始めとしたいじめに対する心理学的支援に役立つ知見を整理して提供することを目的に,スクールカウンセラー事業が活用調査研究委託事業から活用事業補助に切り替わった2001年より2013年7月末時点までの,学校における主に心理学的な知見を中心に研究を概観した。
著者
安中 幸恵 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.11, pp.29-36, 2016-12

本研究ではTwitter を利用している大学生を調査対象とし,自己愛傾向がTwitter 利用におけるストレス反応に及ぼす影響について検討する。ここでは先行研究を参照にして,素因ストレスモデルの視点を取り入れることとする。自己愛傾向の高い大学生は,自己愛傾向の低い大学生よりもTwitter 利用におけるストレッサーに対して脆弱であり,その結果,ストレッサーにさらされると自己愛傾向の低い大学生よりも強いストレス反応が現れると予想される。それゆえ仮説として「自己愛傾向が高い大学生は,自己愛傾向が低い大学生よりもTwitter 利用におけるストレッサーに対して脆弱であり,その結果,ストレッサーにさらされると高いストレス反応を示す」を提示し検証することを目的とする。
著者
押田 正子 川崎 聡大
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.27-32, 2013-01

近年,特別支援教育に対する学校現場での関心が高まっているが,学習障害児に対する効果的な指導や支援は,ほとんど行われていない現状がある。本研究では,通常の学級に在籍する読み書きに困難さがみられた小学校3年生A児に対して,大学教育相談にて認知神経心理学的評価に基づき個別支援を行った。支援の経過および変化から通常小学校における学習障害児の支援の在り方について検討を加えたので報告する。対象児の個別支援では,まず書き困難に対する支援の第一段階として,本人の認知機能障害の把握と,カタカナ書字正確性をターゲットとした機能的再編成法による指導を行った。A児は,全般的知能発達遅滞は認めず,年齢相応の語彙力や漢字の読みの正確性を維持していたにもかかわらず,書き到達度は小学校1年生程度と2学年の乖離を認めた。また「繰り返し書いて覚える」書き指導を受け続け,失敗経験蓄積の結果,本学教育相談来所時には学習場面からの逃避行動も散見される現状であった。本学教育相談において,1)書き困難の背景として視覚性記憶の再認の弱さ(視覚情報処理障害)が存在する。2)語彙力,漢字音読力(正確性)と音声言語の長期記憶力は保たれていることが明らかとなった。その結果,良好に保たれた学習経路である音声言語の長期記憶力をバイパス経路とした機能的再編成法によって,短期間で困難であったカタカナ書字の正確性を向上させることが可能となった。
著者
西館 有沙 徳田 克己 水野 智美
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.27-33, 2015-12

中学生を含む青年前期の子どもには,特に女児において,価値観や好みを共有できる少人数の仲間集団をつくる傾向が見られる(石田,2002)。石田・小島(2009)は,児童期から青年期にかけて多くの時間を共有し多くの活動をともにする仲間集団は,彼らにとって重要な意味を持っていると述べている。一方でこの時期には,グループの外にいる子どもたちを寄せつけないような強い排除が生まれやすいとされている(有倉,2011;有倉・乾,2007)。この発達段階にある中学生が,クラスメートである発達障害児の特性を理解し,良好な関係を保っていくために,教員はどのような指導を行うべきであろうか。本稿では,発達障害児に関するクラスメートの理解を促すための指導を,障害理解指導と呼ぶ。発達障害児の学級適応を図るにあたり,教員が発達障害児に対して,その特性に応じた支援を行う必要があることは言うまでもない。しかし,発達障害児への指導のみでクラス内の子どもたちの関係を良好に保つことはむずかしいのであり,クラスメートへの障害理解指導のあり方についても検討を進めていく必要がある。
著者
玉腰 和典 山本 奈緒子
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.51-68, 2022-01-11

本研究は、これまで体育科教育において実践的な研究があまりみられなかったヨガ教材に着目し、高校体育の実践事例の分析を通して、学校体育におけるヨガ教材の授業づくりの課題を解明することを目的とする。研究方法は、実践資料の分析、担当教師への半構造化インタビュー、感想文の内容分析とした。結果、次のような課題を解明することができた。①ヨガについての基本的特徴を、技能面だけではなく、歴史、種類、効果といった多様な観点で解明する。②ヨガの典型教材となる教材やその指導内容と方法を解明する。③プログラムの創作発表をする学習では、ヨガの特性に応じた創作発表のポイントと、その系統的指導の展開を解明する。④プログラムの創作発表をする学習では、実用性だけではなく、身体への気づきや身体との対話に着目させる指導方法や評価方法を解明する。⑤体力や音楽・照度・湿度・声質・羞恥心・同調動作の感じ方など、ヨガの特性に応じて顕在化する、多様な個人差を想定した学習指導の工夫について解明する。⑥ヨガの科学的・文化的内容の発展的な学習方法を解明する。⑦教師がヨガを教材化する見通しがもてるよう、多様な授業展開や評価基準を解明する。
著者
小川 徳重 石津 憲一郎 下田 芳幸
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.9, pp.97-111, 2014-12

本研究では通信制に通う生徒を支えていくための外部連携の在り方について焦点を当てる。具体的には,通信制高校の教職員を対象に,他機関との連携について自由記述のアンケートを行った。また,通信制高校にとって連携が重要であると考えられる機関の担当者にインタビュー調査を行うことで,生徒やその家族をどのように支えることができるのかを明らかにすることを試みることとする。通信制高校で学ぶ生徒の中には,様々な経歴や事情を持ちながら,高校で学習し,将来の可能性を広げるべく努力しようとしているものも多い。彼らにとって,通信制高校は教育の機会が保障された最後の学校とも言える。そこでの学習が円滑に行われるためにも,通信制高校の教育相談は外部機関との連携も含めて効果的に機能しなくてはならない。このような通信制高校の教育相談の体制づくりを推進していく上で,どのような点を留意しなくてはならないかを検討することを,本研究では目的とする。
著者
大井 ひかる 成田 泉 島田 明子 水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-91, 2016-12

公職選挙法改正に伴い、選挙権が満18歳を迎えた者に対して与えられるようになった。それにともない、これまで以上に学校在学時からの充実した主権者教育が必要となる。障害者にはその特性に合った支援が提供されるべきであるにもかかわらず、これまでに知的障害者と選挙に関する研究はほとんどなされていない。本研究では、実際に選挙権のある知的障害・発達障害のある成人が選挙に直面したときにどのような課題があるのかについて把握することを目的とし、T県の発達障害児等親の会に所属する保護者を対象として質問紙調査を実施した。調査内容は、基本情報、選挙への参加の有無とその理由、候補者を選択する方法、選挙に向けた家庭での対策や練習、知的障害・発達障害者の選挙についての意見・要望である。その結果、知的障害・発達障害者の選挙において、主権者教育では、選挙の投票方法に加えて選挙の意義に関する学習や、政策を理解するための支援が必要であることが示唆された。また、基本的環境整備と合理的配慮に関する検討課題が明らかになった。
著者
大島 すみか 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-10, 2015-12

本研究では,自我同一性,時間的展望,心理的非柔軟性,スチューデント・アパシーがそれぞれどのように関連するのかについて探索的に検討することを目的とする。
著者
和田 充紀 水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.11, pp.115-122, 2016-12

選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公選法が6月19日に施行され、国公私立の高校では主権者教育の実施率が94%に上った。特別支援学校においても主権者教育を模索しながら始めている。本研究では国立大学法人附属の知的障害特別支援学校を対象として主権者教育の現状と課題について調査を実施した。その結果、主権者教育を「行なっている」または「行う予定がある」学校を合わせると9割以上の学校が主権者教育の必要性を感じていることがうかがえる。具体的には「選挙の具体的な仕組み」や「模擬選挙などの実践的な学習活動」への取組が行われ、「実際の投票箱を選挙管理委員会から借用」するなどの工夫がなされている。課題としては、「知的障害者用の授業用テキスト・ビデオ・教材」の作成と充実、「保護者への啓発」「出前講座などの他機関との連携」「投票時の対応(社会への啓蒙)」などが示された。
著者
長谷川 春生 古原 大嵩 井田 百合 平野 光輔
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
富山大学人間発達科学研究実践総合センター : Center News
巻号頁・発行日
vol.30, pp.13, 2014-03-31

「子どもとのふれあい体験」は,子どもを対象とした事業にボランティアとして参加し,各コースの活動を通して子どもとふれあい,子どもについての理解を深め,教師としての基礎的資質を向上させることを目的とした授業です。本年度も7つのコースが設けられ,140名近くの学生が活動に取り組みました。活動を終えての3人の感想を紹介します。
著者
徳橋 曜 小林 真
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.143-157, 2016-12

この10年ほどの間、高校の現場や大学の教員の間で、世界史教育の在り方がしきりに議論されるようになっている。その中で、高校の世界史教育がどうあるべきか、あるいは大学で世界史をどう教えるべきかという議論や研究は少なくないが、高校の世界史教育と大学の歴史学・歴史教育をどうつなぐかという点については、必ずしも十分な検討がなされていない。本稿では学生へのアンケートから、世界史教育の意義や高校と大学の歴史教育の関連性をめぐる彼らの意識を検討し、高校の世界史教育と大学の歴史教育の接続の在り方を考察する一助とする。
著者
安中 幸恵 石津 憲一郎
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.29-36, 2016-12

本研究ではTwitter を利用している大学生を調査対象とし,自己愛傾向がTwitter 利用におけるストレス反応に及ぼす影響について検討する。ここでは先行研究を参照にして,素因ストレスモデルの視点を取り入れることとする。自己愛傾向の高い大学生は,自己愛傾向の低い大学生よりもTwitter 利用におけるストレッサーに対して脆弱であり,その結果,ストレッサーにさらされると自己愛傾向の低い大学生よりも強いストレス反応が現れると予想される。それゆえ仮説として「自己愛傾向が高い大学生は,自己愛傾向が低い大学生よりもTwitter 利用におけるストレッサーに対して脆弱であり,その結果,ストレッサーにさらされると高いストレス反応を示す」を提示し検証することを目的とする。