著者
秋光 純 堀金 和正
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

「室温超伝導の実現」は、人類の夢の一つである。確かに、「物理学の夢」の10本の指の中に挙げられていることは間違いない。最近、申請者は「室温伝導体(Tc~350K)」と思われる物質Ti-B-Cを発見した。しかし、その超伝導体積分率は1%以下であり、その成分を取り出し、それを単相化し、結晶構造を決定する必要がある。それが本申請の目的である。本物質が実現出来れば、現在のエネルギー問題の解決に向けての第一歩になることは間違いない。
著者
難波 祐三郎
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

子宮卵巣移植モデルの確立を目指して手技の詳細、問題点の確立から開始した。雌ラットは雄ラットよりも体格が一回り小さく血管吻合やドナー採取に難渋した。手術時間を短縮するため、ドナー側・対側の子宮動静脈、卵巣動静脈のみで血流確保した場合の血流を短時間・長時間で評価、結果として片側の子宮動静脈及び片側子宮のみを挙上し移植を行うこととした。しかし、自家組織のみでの子宮移植の長期経過で安定した血流を確保可能な確立が低く、異性で構造が異なる雄ラットへの安定した組織移植は困難と考えられた。最終的に良好な結果を出すに至らず終了している。
著者
清水 裕子 井上 一由 森松 博史 高橋 徹 山岡 正和 大森 恵美子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヘム代謝の律速酵素であるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)は横紋筋融解症性急性腎傷害に対して保護効果を示すと報告されている。BTB and CNC homology 1 (Bach1)はヘム依存性の転写因子で、HO-1の発現を制御している。今回我々は、横紋筋融解症ラットモデルの急性傷害腎においてHO-1 mRNAとHO-1タンパクが有意に増加し、ヘム合成の律速酵素であるALAS1のmRNAの発現が抑制されることを確認し、さらに横紋筋融解症性急性傷害腎において、細胞内遊離ヘムの増加に伴い核内Bach1タンパクが核外へ移行し、本研究は腎臓のBach1発現の動態をin vivoで初めて明らかにした。
著者
小倉 俊郎 古賀 光
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

当大学2012年度新入生2,257名の甲状腺疾患の既往,甲状腺ホルモン,自己抗体および甲状腺腫のスクリーニング検査を行った。甲状腺疾患の既往は0.4%で,女子がほとんどであった。甲状腺腫は,男子0.8%,女子4.6%に認め,そのうち3名に甲状腺乳頭癌が発見された。自己抗体陽性は男子に比して,女子で高頻度(5.1%)であった。検査より女性2名でバセドウ病再発例と新規例が発見された。甲状腺ホルモン低下例はなく,高値例が半数以上を占めた。若年者の甲状腺異常は自覚症状のない潜在例が多く,早期発見のためには頚部触診,血液検査のスクリーニング,甲状腺超音波検査などを積極的に行うべきと考えられた。
著者
伊東 秀之
出版者
岡山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

抗発癌プロモーターのスクリーニング試験のうち、protein kinase C(PKC)の活性阻害試験において、緑茶の主ポリフェノール成分の(-)-epigallocatechin gallate(EGCG)が、顕著な阻害作用を示すことを当研究室と国立がんセンターとの共同研究により明らかにしている。一方、五倍子の主成分であるpentagalloylglucoseにもEGCGと同様に抗発癌プロモーター作用が認められており、その作用はPKC阻害作用によるものであることが予想されることから、PKC阻害活性を指標としてより有効な抗発癌プロモーター活性物質の探索を行った。まず、タンニンや関連ポリフェノールを含有する植物の多いトウダイグサ科、バラ科、ツバキ科の他、キク科、アヤメ科の諸植物のエキスについて、PKC阻害活性のスクリーニングを行った。その結果、アヤメ科植物のジャーマンアイリス(Iris germanica)の根のエキスに比較的強い阻害活性を認めたので、PKC阻害活性を指標としてその活性成分の単離、構造解明を行った。本植物の乾燥根をメタノールで冷浸した後、n-ヘキサン、酢酸エチル、n-ブタノールで順次抽出して、分画を行った。各エキスのPKC活性試験の結果、強い活性を認めた酢酸エチルエキスからphenol類、isoflavonoidおよびiridal型triterpenoidを単離した。単離した各化合物についてPKC活性試験を行った結果、isoflavonoidに阻害活性を認めるものがあり、逆にiridal型triterpenoidのなかには活性促進作用を認めるものもあった。このように同植物から、相反する作用を示す化合物を単離したことから、それら化合物の共存関係を調査するとともにさらに活性成分の単離、構造解明を進めている。
著者
虫明 眞砂子 財満 健史 大脇 雅直
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アマチュア合唱団員とプロ合唱団員は,合唱歌唱の発声をそれぞれどのように捉えているのか。まず、アマチュアとプロ合唱団員に対して質問紙調査を行った。その結果、両合唱団員は,ソロ歌唱と合唱歌唱それぞれの特質を認識し,両歌唱に適した発声技術で歌唱しようとしていることが明らかになった。次に、プロ歌手4名に発声を依頼し,合唱歌唱とソロ歌唱で,発声をどのように変化させているのか,歌い方の違いでどのような音響学的な差異が出るのかを,聞き取り調査と音の可視化装置によって,より客観的に捉えることを試みた。その結果、和音発声,旋律発声のいずれでも,4名の合唱歌唱では,音の到来方向が中央に収束する傾向が確認された。
著者
難波 祐三郎
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

性同一性障害に対する機能的再建手術の一つに異性間の生殖臓器移植が考えられる。精巣移植においては大動脈を犠牲にする従来の方法から、超微小外科を応用した移植法を開発した。同性間精巣移植ではテストステロンの分泌と精子形成を確認した。同性間卵巣移植ではエストロゲンの分泌と妊娠を確認した。異性間精巣移植ではテストステロンの分泌を確認したが celltrafficking は確認できなかった。
著者
稲垣 兼一
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

松果体より分泌されるメラトニンは網膜から入る光刺激により負に調節され、生体内の概日リズム形成に寄与している。近年副腎ホルモン分泌についてもメラトニンが直接作用、調整する可能性を示唆する研究が報告されている。本研究では副腎皮質及び髄質モデル細胞株を用いて、副腎におけるステロイド及びカテコラミン分泌に対してメラトニンが直接的に及ぼす影響とその細胞内メカニズムについて検討した。その中でメラトニンが細胞局所因子や他のホルモン調整因子と連関し副腎内ホルモン合成を調整している可能性が示唆された。
著者
安原 隆雄 黒住 和彦 亀田 雅博 菱川 朋人 佐々木 達也
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ヒト間葉系幹細胞由来多能性幹細胞を用いて、凍結保存の状態から溶解し直接移植する群とカプセル化細胞移植する群に分けて治療効果を検討する。対象とするのは一過性中大脳動脈閉塞モデルラットであり、行動学的評価・組織学的評価を中心に行う。うつ様症状に対する治療効果も重要な評価項目とする。虚血の程度をエコーにより確認し、血流遮断時の虚血負荷、運動機能、うつ様症状、組織学的評価(脳梗塞体積、炎症性変化、神経新生の程度等)を個体ごとに確認し解析する。過去に、脳梗塞モデル動物で直接移植とカプセル化移植の比較を行ったことはなく、細胞治療の意義・作用機序の解明に迫る研究である。
著者
樋口 輝久
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

これまでに行われた歴史的ダムの保全・改修の事例を調査し、ダムの形式ごとに特徴、問題点を整理した。さらに、保全・改修の方針、手法をもとに、a)堤体補強,b)嵩上げ,c)凍結融解防止,d)用途変更,e)残置,f)形式変更,g)付属設備の改修の7項目に分類し、個々の事例を紹介し、それぞれに対する評価を行った。特に歴史的価値が失われてしまった事例に対しては、採るべき適切な保全方法について言及した。
著者
松井 秀樹 富澤 一仁 大守 伊織 西木 禎一 松下 正之
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年、脳内ホルモンの未知の生理作用が大きな脚光を浴びている。オキシトシンは出産、授乳時に子宮収縮や射乳を促すホルモンとして知られている。一方、同ホルモンについては脳内特に辺縁系にも多数のオキシトシン受容体が発現しており、オキシトシンの脳内における働きが注目されている。我々は海馬におけるオキシトシンの作用に注目して解析を行い、授乳中の母親マウスではオキシトシンにより記憶学習能力が向上することをすでに報告している。一方、近年オキシトシンによる不安情動調節作用が報告され注目されているが、そのメカニズムについては不明な点が多い。この基盤研究Bでは扁桃体機能に注目し、不安情動の調節機構を検索した。マウスを閉所に強制的に長時間閉じ込めるストレス負荷を行い行動解析すると、約一週間程度でストレス耐性を獲得する。この耐性獲得機構が扁桃体ニューロンにおいて、オキシトシンの分泌とRgs2と呼ばれるシグナル伝達系を介して制御されているとの仮説を証明した。本研究で得られた成果を今後さらに発展させ、in vivoで扁桃体へのRgs2遺伝子トランスフェクションやRNAiによる発現抑制などを行い、行動学的解析も用いて抗不安、抗ストレス作用の機構の解明を行う研究につなげてゆく予定である。今後この研究の発展により不安情動の新しい制御機構が可能となり、新しい治療法開発への糸口が開かれることと期待される。この意味でも本研究は大きな成果を上げることが出来た。
著者
仲井 雪絵
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

ハイリスクの妊婦にキシリトールを用いて介入し、う蝕原性菌の母子伝播予防効果について検討した。得られた結果は以下のとおりである。1.介入前の妊婦の実態調査について(1)唾液中のMS数がハイリスクであった者は半数以上であった。(2)「現在、歯科医院を受診中である」と答えた者は1割未満だった。(3)喫煙習慣がMS菌数を増加させる可能性が示唆された。(4)ハイリスクの妊婦は、特定の食品の摂取頻度が高かった。(5)半数以上の妊婦が初産であった。第2子目以降の妊婦の方が初産の妊婦より有意にハイリスクであった。2.キシリトールによる介入研究について(1)介入3か月後の対照群では7人に1人、Xyl群では2人に1人がローリスクであった。キシリトールを摂取すると、母親はローリスクに転じやすい。(2)キシリトール摂取による副作用(下痢等)は、ほとんど生じなかった。(3)母親が妊娠期からキシリトールガムを摂取すると、子が9か月時以降にMS菌を保有する割合は、対照群よりも有意に低かった。以上の結果から、う蝕原性菌の母子伝播を予防するために、妊娠中から母親がキシリトールを摂取することは、primary-primary preventionの一方法として有効であることが示唆された。
著者
垣内 力 関水 和久
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

無脊椎動物を用いた細菌感染モデルは多数の個体数を扱うことが可能であるため、感染プロセスに関わる生体分子を探索する上で優れている。しかしながら、これまで無脊椎動物の感染モデルとして利用されてきた、カイコ、線虫、ショウジョウバエは、ヒトの体温である37度において長時間生存することができず、ヒトの感染症がおきる温度での病原性細菌の感染プロセスを明らかにするためには適当でない。本研究で我々は、熱帯性昆虫であるフタホシコオロギが37度におけるヒト病原体の感染モデルとして利用出来ることを見出した。さらに、本モデルを用いて、ヒト病原体による温度依存性の動物殺傷能に関わる遺伝子を同定した。
著者
虫明 眞砂子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

合唱表現における合唱指揮の役割は重要であると思われるが,日本には欧米の音楽系大学の合唱指揮科のような合唱指揮者の養成機関が少なく,合唱指揮は,個々の指揮者の力量に委ねられている。合唱指揮者によって,合唱者の歌声や表現が大きく変化することに着目し,本研究では,「合唱指揮」が演奏にどのように影響を及ぼすのかを可視化装置による実験,合唱指揮者・合唱者へのアンケート調査や聞き取り調査等を用いて分析する。それらをもとに,合唱曲作者の意図を汲み取り,豊かな表現に結びつける,演奏者にとってわかりやすい,合唱指揮法を検討する。
著者
木浦 勝行 瀧川 奈義夫 市原 英基 中村 栄三 吉野 正 高田 穣
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

健常雄性 Slc: Wistar ラット 10 匹に鉄およびキレート剤を腹腔内へ反復投与し,5 匹で悪性腹膜中皮腫を認めたが,コントロール群,キレート剤投与群では認めなった。免疫染色(Calretinin, CEA 染色),電子顕微鏡による観察を行い,いずれも上皮型中皮腫であることを確認した。また,DNA 酸化損傷マーカーである 8-hydroxy-2-deoxyguanosine による免疫染色は陽性であり,従来の学説は確認された。ラジウムを含む微量元素を最終解析中である。
著者
三好 康之 亀田 雅博 上利 崇 菊池 陽一郎
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012

視床下核などに対する深部脳電気刺激療法(DBS)は、パーキンソン病(PD)患者のwearing-offを改善し、ADL、QOLの向上をもたらすことが可能なため、重度のPD患者に対する有用な治療手段として確立している。近年、諸外国より、認知行動療法、薬物療法などのいかなる治療によっても十分な効果を得られなかった重度のうつ病患者に対してDBSが有効だったという報告が相次いで寄せられている。しかし、我々日本の脳外科医の立場からすると、動物実験に基づくscientificなデータの乏しさゆえ、DBSでうつ病を治療することが、医学的にも倫理的にも妥当なのか判断できないのが現状である。このような背景から、本研究ではうつ病に対するDBSの効果について、動物実験によるscientificな評価を行うことを目標として、今年度はうつ病モデルとしてどのモデルを利用するか検討した。これまでの報告では、うつ病モデルとしては、Tail suspension model、Forced swim model、Learned helplessness modelといったものがあり、これらはすでに抗うつ薬の評価などで用いられており、うつ病モデルとしてすでに十分に確立されているが、検討を重ねた結果、モデル作成から治療効果の評価といった一連の過程において安定した実験結果を得るためにはForced swimならびに,learned helplessnessを利用した市販システムを用いて実験を組むのがベストという結論を得た。
著者
中塚 幹也 関 明穂 新井 富士美
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

性同一性障害では,心の性と身体の性が一致せず,子どもの頃から性別違和感を持ち,不登校,自殺念慮,自殺未遂などを経験する率も高い.本研究では,各地の当時者の在学する学校,教育委員会,ジェンダークリニックを受診する性同一性障害当事者等への調査により,小学校,中学校,高等学校,大学での対応状況,問題点を明らかにし,対応マニュアルである『学校の中の「性別違和感』を持つ子ども:性同一性障害の生徒に向き合う』を作成,配布した.